ついにやってきた大
ゲート祭! ゲートをくぐればどの異世界の国にも行ける特別な一ヶ月! …六月が過ぎると最初にくぐったゲートに戻されるんだけどね
ここ神戸のポートアイランド、異世界交流解放特区に設立された海と山の十津那学園は異種族亜人の多く通う特別な学園。
里帰りしたり行った事のない国へ行こうとする異世界出身者も多いけど、異世界に興味を持つ人間も多いんだ。
六月前から休学届けを出す生徒でごった返すのが毎年の恒例行事みたいになってるんだよね。
「…君達が一ヶ月も学業から遠ざかって大丈夫とでも?」
「大丈夫に決まってるじゃないすか!」
「…中間試験の結果を忘れてはいないだろうな?」
「が、学期末まで頑張ります」
「…」
「先生、七月の補修と補テストを受け、それをパスするというのはどうでしょうか?」
「坊ちゃんが試練を受けると言うのなら俺も!」
「分かった。 とりあえず休学届の件は少し待ってもらおう」
(うわー“あの”四人組も異世界に行くんだ)
既に勝利モードの人亜混ざる四人組と入れ違いで職員室に入ってきたのはとても小さな翼で羽毛がちょっと目立つ近人間見の鳥人。
「ふむ。川瀬は
オルニトに行くのか。 親戚の方にでも会いにいくのか?」
「いえ、“なんとなく”鳥人として空の国ってのを見ておきたいんですよー」
かつて大陸狭しと支配を広げ、栄華を誇りそして衰退した鳥人の国、オルニト。
異世界旅行のパンフレットで見かける売りは、浮遊群島とそこからの絶景。
「オルニトか…治安は良くも悪くもないが、誰かと一緒に行かないのか?」
「水泳部の皆は
ラ・ムールの、えぇと砂漠のオアシスの町?パンフで異世界のラスベガスとか紹介されてるとこに行くらしいんですよー。オアシスで泳ぐ気なんかなぁ」
「ディセト・カリマ…か。 部員の皆に伝えておいてくれ、あそこのオアシスは遊泳禁止だと。鱗人にしょっぴかれるとな」
「えー?オアシスなのに遊泳禁止とかあり得ないっしょ?」
「きつく言っておくように」
所々龍鱗備える猫の手がポンと印を突く。 【川瀬翠の休学を認める】
「こっこがオルニトかー!」
ちくわを咥えた川瀬が素っ気のない石積みの枠から飛び出すと、これ見よがしに着地してみせた。
頭上斜め前方上空に巨大な岩の塊、浮遊する島が浮かぶ山頂がオルニトの
ゲート所在地である。
「ごっつい太い鎖! これ登ってあの島に行くんかなー」
「それは、時間がかかりすぎる。 鳥籠に、運んでもらうのがいい」
いつからそこにいたのか全く気にも触れなかった川瀬の隣。 透き通る羽とは対照的な夜の様な目と浮かぶ紅い瞳。ハーピー。
耳通りの良い微風の様な囁きの後、前方の粗末な小屋を鉤爪で指し示した。
「鳥人タクシーとかあるんだ。 ありがと…う?あれ?いない」
小屋を見た一瞬。ハーピーはまるでそこに何も無かったように消えていた。
「よっし。とりあえず島いこ島!」
「美味しいよー串だよー」
「串だよー美味しいよー」
小屋の他は何もないと思っていた矢先に飛び込む呼び掛け。 高山の山頂にはまるで似つかわしくない高架下にある様な屋台がそこに。
大葉で作られた暖簾には“絶品!オルニト串!”と色んな文字で書かれていた。 日本語もその中にある。
周囲まばらにいた観光客も、元気なそっくりな二人のハーピーの呼び声に誘われ屋台を覗いていた。
「お客さんだよー焼くよー」
「焼いたよーお客さんー」
「お?ジャージとか珍しいもの着てるね。 見たとこ鳥人さんだけど日本から里帰りか何かかい」
翼で火を起こしては駆け抜ける風精霊が器用に串をくるりと反転。 ぱたぱたと肉野菜見たことも無い“何か”を刺した串が香ばしい風を生み出す。
両脇に焼いては呼び掛けるハーピーを置いて、中央に陣取り接客と焼き、包装を器用にこなす日本人。
「故郷とかじゃないんですけど、旅行みたいなもんですよー。 あ、その“団子足虫串”下さいー」
川瀬が注文したのは、どう見ても初見では遠慮するであろうわさわさと足が生える丸い虫を野菜が交互に挟む串(醤油ダレ)だ。
「鳥人さんにはほんと虫串が人気だねぇ。はいよ!」
「えへへー。ありがとー」
川瀬が串をぱくり一口したその時 ─── とても美味!ではなく
「「 ソ ラ 」」
「っ!」
それまで串を楽しそうに焼き、歌うように呼び掛けをしていたハーピーの頭巾がはらりと落ちる。
二人して天を仰ぎ瞳は深海を思わせる黒い青に染まる。
二人が同時に同じ言葉、いや言葉“であろう”モノが綴る詩を唄う。
「お客さん方!何処でもいいからここから離れて下さい! “嵐”がきます!!」
男が即座に“閉店”の札を、まだ火の残る炭火焜炉に叩き置いた。 周囲の皆々がざわめき出す。
それもそのはず、空は快晴で積乱雲の一つも見当たらない。
「「 サ ラ ソ 」」
ズ ン ッ
突如空気は比重を増し頭を肩を押さえ落とす。
快晴だった空に雲の紐が幾重にも折り重なる。
渦を描く白と灰。 そしてその中央にゆっくりと開く ───
「“風神嵐(ハピカトル・メル)”だーーっっ!!」
「…」
「…」
「う…ん?」
「焼くの?」
「焼くよ?」
「あれ?」
首を傾げるハーピー二人が屋台から転がり出て頭を抑えていた男をつんつんつつく。
周囲の人々もはっと我に返る。 空はまた快晴に戻っていた。 雲一つない。
「なんだこりゃー!?」
男が屋台の前にぽっかり開いた穴。人一人分がすっぽり収まる深い深い底の見えない穴を覗き込んで叫んだ。
「はいー?!」
轟々と耳と擦れ違う空気の抵抗音が無理矢理に川瀬を正気に戻した。
何故か川瀬は飛んでいる。飛び上がり続けている。 物凄い速さで。
足元には何もなく、何度も何度も雲を突き破りその上、その上へと。
「何何何何!」
いきなり巨大な雲に突入した川瀬は、その白で埋め尽くされた世界の中でとてつもなく巨大な光を見る、飛び越える。
ヴォァアアァァゴゥォォアァアアーーーーーッッ
爆音、激震、耳を劈く野獣の咆哮。 一瞬で白の世界が飛び散り霧散。
雲の晴れ行く最中、川瀬が上空へと通り過ぎたのは岩、壁、脈動する鱗、熱気、蒸気、雄雄しい灰色の角。
「ド…ラゴンっ!?」
超速度で数分を要して頭部を過ぎると巨大の範疇を越えた首の揺らぎ、運動が螺旋の荒風を巻き起こす。
川瀬はそれに巻き込まれ、天地も混濁のまま吹き飛ばされた。
「は、へ?」
重力。それは落下する我が身により認識を強める。
それまで上昇を続けていた川瀬の体が糸を切った様に下降を始めたのだ。
今度は何の力によるものでもない、慈悲も無い。
「ちょっ!ちょちょちょちょちょちょーーっっ!?」
思わず向いた眼下には山と森が待ち構えている。 そんなに時間をかけずに激突するであろう、何処かに。
思わず手足をバタつかせるが漫画やアニメの様に停止するわけもなく、ましてや川瀬の翼は空を飛べるものでもなく。
「ちょっと待つっしょ! お助けーーーーーっっ!!」
『助けて欲しいの? 助けたら“アリガトウ”ってしてくれる?』
胸から飛び出したのは光る“蒼”。
ミズハミシマの合宿からずっと身に着けていた“呼び水の珠”の首飾りだった。
所々に独自設定が入っています(ゲート立地など)
大ゲ祭でオルニトにやってきた川瀬にいきなりハプニング!
ダイブ to ブルーからの地面にキッスかどうなるか!?
次回に続く!
- 嵐で一人だけ飛ばされた?巨大な竜の背中が山とか森なんかな -- (名無しさん) 2014-07-02 23:47:01
- お、水の精霊さんが助けてくれるのかな。アリガトウ欲しがる精霊さんの喋り方可愛い -- (名無しさん) 2014-07-03 22:23:48
- はっぴーセンサーの役割してる双子ハーピーのしぐさがkawii。審査みたいなことしているけど一ヶ月間の休みって夏休みと同じくらいだよね -- (名無しさん) 2014-07-03 22:57:49
- 異世界に行ったら地球の保険は適用外なんだろうなと実感した。風神嵐の影響が気になる -- (名無しさん) 2014-07-11 23:45:55
- 異世界と隣り合う地球の学生的日常がよく分かります。やはり鳥人とハーピーはオルニトに引き寄せられるものなのでしょうか。到着すぐに摩訶不思議に巻き込まれた川瀬の運命はどうなるのでしょうか -- (名無しさん) 2017-11-12 16:13:03
最終更新:2014年10月26日 20:34