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【大ゲート祭の思い出】

  大ゲート祭、それは数々の出会いと別れを生んだ

新天地…やっぱりすげェよ!町から山一つ越えただけでワンダーランドだぜ!
 枝を踏んで走る!枝を折って走る!幹を避けて走る! そして全てを砕き岩獣が迫る!
「ダイチ大丈夫?このままだと追いつかれるよ?!」
「おいおい神戸学院大登山部改め異世界冒険部の基礎体力ナメんなよ!? これくらいならあと半日でも走り続けれるぜー!」
「追いつかれたらどうしようもないよ?」
「そんときゃそん時考えらァ!」
 背後から咆哮と轟音を鳴らし迫るのは無数を牙を螺旋の様に走らせる三階建てを越える岩の口。追いつかれれば最後。
「ダイチ、私あっち行く!二手に分かれて囮になる!」
 体表を埋める鱗としなやかな四肢と尾を揺らす少女が道を別った。
「でも俺に向かってきてるじゃねーかァ! へっ、逃げ切れよリンコぉ!」

 少女は竜だった。しかし少女は人の姿になった。人の生活に憧れ、その中に入るために。
 少女は村の中で元気な世話好き者として人気になった。
 そんな時、冬眠から覚めて空腹に狂った巨獣が数匹村に雪崩れ込んできた。
 少女は皆の眼前で竜と成り巨獣を追い払ったが、村人は再び少女となった竜を恐れ遠ざかった。
 少女は村を出て一人、己はどう生きたいのかを悩んでいた。

おいおいマジかよ加速してねェかおい!
 岩獣の歩幅が広くなったと思えば一気に間が縮まる。 ── その時
ギャオォオン!
 木々の上から横殴りに岩獣を蹴飛ばす竜の前足。 転がる岩獣も負けじと起き上がる。ダメージは無さそうだ。
「すげェ!ドラゴン!異世界何でもありだな…っておぉおっ?!」
 竜はリュックにかぶりつきひょいと背に乗せ羽ばたき森の上空へ。
ダイチを安全な場所まで運んで降ろして…私は…
「最高だぜリンコ!まさかドラゴンに変身できるなんて、最初から言えよ!」
 竜は不意の言葉に首を捻り歓喜溢れる男の顔を二度三度確かめ見た。
 背から大森林の向こう、雲突く山脈を指差すままに竜は飛ぶ。
 そして目まぐるしい冒険の終わり、静寂をたたえる湖畔で再開を約束し男は元の世界へと帰還した。

「…俺、ミズハミシマの門から戻るって言ったっけ?」
「風の精霊に頼んだの。このバンダナと同じ匂いを持つ人が来たら教えてって」
 少女は竜に、男はその背に、飛び立つ先の冒険で二人を別つものはもう、ない。

 エリスタリアの春季領にできた体験型アトラクションテーマパーク。日本のゲームメーカーが協賛し建造したという。
「重さも硬さも本格的だな。武器も防具もしっかりしててさ」
「おーい新入部員はこっちに集合ー」
「王仁主将の姿見ろよ。あれハンターってよりも魔王だぜ」
 今の若者に失われつつある生存と闘争本能を呼び覚ますためにと企画された十津那学園剣道部のエリスタリア合宿。
 狩猟を軸に様々な菜獣と戦うことのできるここが選ばれたのだ。

「主将、来た道を戻ってみたけどダルクの姿も足跡も見つかりませんでした!」
「うぅむ何ということだ。急に獰猛な菜獣が襲ってきて散り散りになるなんて… 入明さん、初級コースには獰猛な種はいないはずでは?」
「あらあらまぁまぁ。ひょっとしたら他のコースから紛れ込んだのかもしれませんね。うふふ」
「ダルクの奴、入部早々にとんでもない目にあっちまって… 主将、次はどこを探しますか?」

 ごつごつした表皮は硬く、その突進はさながら猛牛。 広葉の盾で防ぐが一撃で砕け散る。強化が足りないのだ。
 ジャガー菜獣はその場で一回転し木々を薙ぎ倒し、頭を片手細剣を構える少年へと向けた。
「初期装備でこれって酷すぎだろ!せめて道具で色々くれよ…ってまたか!」
 どんどんと後ろ脚が落ち葉を巻き上がらせると、止めと言わんばかりの突進を仕掛けてきた。
「えぇーい!正中一点突きぃいーー!」
「まさか貴女自らこちらの世界に参られるとは… 貴女の魂の波動により、我、琥珀の眠りより目覚めましてございます」
 剣突く少年を、まるで子をあやす様に抱え、もう片手に持つ錆びた鉄棍で菜獣の額を貫く。
 崩れ落ちる菜獣を背に少年に傅くみすぼらしい衣服の大柄なエルフの男性。
「あの戦いの中、ゲートに巻き込まれ我だけが異世界に戻ってから永劫の不安に満たされる苦痛…
それより逃れるために眠りに逃げた我をお許し下さい。 今ここで再び、永久なる従属の誓いを…」
 そう言うと、エルフは少年の手に口付けた。
「ちょ、ちょっと待てよ!貴女って俺は男だぞ! 母はイギリス人だから外人の親戚はいるけど…エルフの知り合いなんて聞いたことないし!」
「姿形は違えど、貴方の魂は確かに主と同じものでございます。 さぁ、行きましょう、世の悪の全てを正す戦いへ」

「うふふ。そろそろ目覚めさせて地球に送り込もうと思っていましたが手間が省けましたね。
彼の者の記憶は大変有意義なものでしたが…これからも面白いデータが取れそうですね。うふふ」

ドニー・ドニー北海めぐり遊覧船ツアー。まさかちょっと都島から二つ島を回ってすぐに海賊船に拉致されるなんて!
「ちょっと!もうドニーで海賊行為は禁止されてるんじゃないの?貴方達、とっ捕まるんじゃないの?」
「へっ!神の言葉で丸くなるようなワカメと一緒にすンじゃねぇよ!俺達は海賊!奪ってなんぼの商売よ!」
「どうせ身代金の引渡しで全員お縄よ!解放するなら今のうちよ!」
「ちょっと姫代さん。あまり刺激しすぎるとまずいって…」
 海賊のアジトの洞窟に連れてこられた海之前校乗馬部の面々。一人闊達に海賊とやり合うのは姫代(ひめよ)一人。
「むぐぐ…確かに無法仲間はどんどんとっ捕まっているのは確か…しかし俺らもはいそうですかと引き下がるワケにはいかねぇ!
おい娘!お前がここいらの島を廻って海賊連中が隠している宝をありったけ持って来たら全員解放してやるぞ!どうだ!」
「ふーん、面白そうじゃない。でも私、船なんて動かせないわよ」
「へっ、ンなもん見たら分からぁ! あそこの牢に閉じ込めてある馬でも使いな!」
 ウツボ男が銛で指す方には岩牢。その中には六本足の青肌と白毛の馬が佇んでいた。
「海を駆ける馬だと聞いて輸送船を襲ってかっぱらったが俺らの言うことなんて聞きやしねぇ。このままさばいて食っちまおうかと思ってたが…使いな!」
「逞しい脚、流れるような毛並みと艶やかな肌、綺麗な瞳… こんな所に閉じ込められて鬱憤も溜まってるんじゃない?どう?私と一緒に走ってみない?」
フシュゥウウ 青い馬は静かに息まき頷いた。
「待っていなさいよ!すぐに集めてくるんだから!」
 青馬に跨るや、姫代は何の躊躇いもなく海面へと駆け出させる。 何と馬の脚は海に沈むことなく飛沫をあげて蹴り進んだ。

「待たせたわね!宝を持って来たわよ!」
 畳二畳ほどの海橇にありったけの宝物。その煌びやかな光に海賊は驚く。
「…ところで娘、この宝はどうやって集めたんだ?」
「どうって、島にいた海賊に頼んだら気前よくくれたのよ。何よ?文句あるの?」
 宝を前に顔を見合わせる海賊がはっと気づくや否や、洞窟を埋め尽くすほどの一団が雪崩れ込んでくる。
「お前達、大人しくしろ!ラウダフルが一団の双剣バルバンクールだ!違法海賊行為で捕縛する!」
「「「ひぇ~~!!」」」
 その後、大捕り物で全員無事に解放され帰路についた。

「どうしたんですか姫代さん。ドニーから帰ってきてから溜め息ばかりついてますけど」
「聞いてよ眞潮~。何だか保護だの何たら検疫条約とかで異世界の動物を日本に連れてくるのは駄目って言われてさー。
どうしてもってのならこれくらいの審査検査をパスしないといけないって山の様な書類見せられて泣く泣く断念したのよねー」
「ドニーに行けばまた会えるんですよね? …ちょっと淡路ゲートからは遠いですけど」
 その時、海之前校の砂浜グラウンドから軽やかな鳴き声が響いてくる。
「?どうしたんですか姫代さん、まだ授業中ですよ!」
 夕子先生の制止も余所に扉を開けてグラウンドへ走る姫代。 そしてそこには ──
「アオ!」
 あのドニーの海を共に駆けた六本脚の馬が脚を海に浸かり佇んでいた。
「あら?知っている馬なのですか? 今回ドニーから進呈された水馬なのですが…」
「乙姫様!この馬って乗馬部に…」
 太陽の様な微笑みが姫代に向けられる。
「はい。この水馬もそれを望んでいるようですし」
「やったー!」
 下げた鼻面に頬を摺り寄せた姫代に、静かに息づき水馬が応えた。

普段は行き辛い場所へも行ける大ゲート祭
世界各地で色々な思い出が生まれたことでしょう

  • 見せたい部分を重点で書くってのもいいなぁ。爽やかなのもよかった -- (名無しさん) 2014-07-21 04:16:44
  • 短いけどちゃんとオチついてる。けどどれも次に繋がる話というのもイイ -- (名無しさん) 2014-07-22 21:50:54
  • 交流時代と言っても世界を行き来できないケースもあるのでしょうか。そういった人達にとっての大ゲート祭は一際大きな意味合いがありそうで、そこからまた運命が変わってくることもありそうですね -- (名無しさん) 2017-11-26 17:42:46
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最終更新:2014年07月20日 23:05