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【薄異本をゲットしよう!】

 十津那学園。昼休みの屋上。
「ウォーチ、メール着てるぞ」
竜人ドランの大きな指でも操作ができて圧壊しないドイツメーカー製の大型スマホ。
差し出されたそれを受け取ったのはさらに大きな掌、オーガスラヴィアンのウォーチ。
「ありがとう。 …荷物は無事発送されたみたい。 うん、と、これをコピーしてこっちの宛先へ…」
「お?なんか珍しいことやってんじゃんか。 意外だよな~キカイにゃからっきしだったのにスマホしっかり使えるまでになるなんてよ」
「確か“やんごとなき御方”からの勅旨だったっけ? 通信販売で何か買えって」
パンを咥えたままでやってきた元原と、その人間の腰あたりからウォーチの手元を覗いたノームのクロト。
「よし、と。これで大丈夫」
「終わったのか?じゃあ放課後どこ行くか決めようぜ!」

 ポートアイランド内某マンション一室
「メノー!メノー!通帳にすっごいお金が入っているんだけど何コレ?!」
エルフのイスズが目をぐるぐる回し耳をぱたぱたさせながら作りかけの皮革品で埋もれた部屋に突撃してくる。
「んーあぁそれね、ちょっとしたバイトを受けたら報酬先払いって振り込まれてきてなぁ」
皮革用の太い針糸を慣れた手つきで扱う瑪瑙青年。
「先払いって…断れないってことだよね?大丈夫なの?!」
「何をそんなにビビってんだよイスズ。ただ宅配センターに荷物受け取りにいってフェリーに乗ってミズハに行って指定の相手に荷物を渡すだけだってのに」
「その相手が危険な人だったらどうするのさ!」
「…イスズ、今の俺達にはもっと危険なことがある… ちょっとそっちの請求書を見てくれ」
皮革の切れ端が散乱するテーブルの上にできた空白地帯に安置されている一枚の紙切れには“請求書・アリョーシャ厩舎”と書かれている。
「えっ?えええぇっ!?何この金額!」
「最近ワナヴァンが餌を獲りに行ってないっぽくてな… 厩舎が食事代を立て替えているんだと」
「??ワナヴァンはずっと厩舎から出てないってこと?」
「いや、それがちょっと分からなくてついでにミズハで確かめようと思ってな …っと仕事のメールが届きましたよっと。じゃあ宅配センター行ってくるわ」
「本当に大丈夫なのかなぁ…」

 ミズハミシマ某所にある居酒屋
「主人、酒をもう一杯なのだわ。さっぱりとした口当たりからピリっとした辛さが追い討ちをかけてくるのだわ」
人より大きな鳩のような鳩でないような一応ワイヴァーンであるワナヴァンが器用に丸椅子に腰掛けジョッキを傾けている。
「へい。クルスベルグでも名茸作りのコボルト族から仕入れた茸で作った茸酒に南近海の海老族がやっている海葡萄園の朝摘み出荷分で絞った汁を加えてます」
清潔な店内。厨房の棚に並ぶのは異世界の酒と人間の店主シゲの発想による創作酒。
「ふぉぉおぉ…店主さんや、ワシの酒はまだかいのぅ」
「爺さん、さっき飲んだばかりでしょう。そこ、手元のカップ」
「ふぁぁあぁ」
ワナヴァンと肩を並べて座っているのはこれまた大きな青鬼の老人。
目は眉毛で隠れ体はぷるぷる震えているがカップに酒は一滴も残っていない。
「う~ん、こんばんわい」
入ってきたのはスラヴィアンスキュラのアドミラ。溜息をついて肩を落としている。
「らっしゃい。アドミラさん、今日も来なかったんで?」
「んあ~。最後のフェリー便でもやってこなかったっちゃ。そもそもいつ頃やってくるのか聞いてなかったばい。
でもあの方からの命令だから仕方ないっちゃ~。また明日ばい。 ということでかけつけ一杯~」
小樽に注がれたオルニト森林果実酒にミズハ諸島でも稀少も稀少で神の酒とも言われる強烈な水。
それを小瓶から一滴足らすと小樽が勢いよく泡立つ。
「んあ~喉越しさわやかばい!」
青肌をみるみるうちに紅潮させるアドミラは一気にそれを飲み干した。

 スラヴィア南港
「まだなのかしら… 一体何日待たせるの!」
行き交う船を一望できる高台に設営された闇布で作られた日除けとテント。
影の中、赤銅色のリビングメイルセバスがテーブルに用意した真紅の茶を一口つけて頬を膨らませる。
スラヴィア最古の貴族の一角レシエ卿はすこぶる機嫌が悪いようだ。
<何も勅旨がおりてすぐに待ち始めなくてもよろしいでしょうに。 サミュラ様も数日は到着に要すると仰っておられたでしょう>
「甘いわ!アドミラの幽霊船なら本気を出せばミズハミシマからスラヴィアまであっという間に到着するわ!
もし私が荷の到着に気付かず時を経れば、それ即ちサミュラ様をお待たせすることなのよ!」
<そうであれば何も申し上げることはないでしょう。存分にお待ち下さい>

 スラヴィア都郊外 サミュラ邸
「というわけで今回は地球にいるスラヴィアンに頼んで送ってもらうって寸法なのサ!」
「この前は東京で迷子になっちゃいましたものねモルテ
「あっあれは電車ってヤツが言うことを聞かずに先先いっちゃうからはぐれちゃったんだよ! 精霊より聞かん坊だよ電車ってヤツは」
夜の庭園で茶と菓子を挟んで対峙するのはスラヴィアの神モルテと統べる吸血姫サミュラである。
「ところでちゃんとお代金は払ったのですか? 郵便だと地球まで一ヶ月はかかるでしょう?」
「ふふん、そこは抜かりはないヨ! 適当に金庫から引っ張り出して蟲人に頼んでスイス銀行経由で関係者に送金しておいたヨ~」

神はガラにもなく夜空に願った。 ミズハミシマゲートからすぐ行けるポートアイランドかその近くにコミックZINが出店しないものかなぁと。


薄異本新作通販開始おめでとうございます
コミティアもZINも遠くなければ直接いくのにぃいいい

  • モルテって考えてみたら地球にコネとかツテとかないんだな。遠まわしになっても仕方がないのか -- (名無しさん) 2015-09-20 20:54:55
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最終更新:2015年09月19日 21:39