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【南から来た手紙】

はじめに
『この作品は【猫助・剣子の なぜなに未踏破地域!】よりも前に大半の部分を書いていたので未踏破地域の設定が反映されていません。
従ってこちらの文責は私にあり、この物語自体は劇中劇のお話であるとご理解くださいますようにお願い致します』


私の愛しいローザ、君にこの届くはずのない手紙を書き始めてどれくらいの便箋を無駄に使っているのだろう?
私がアメリカのゲートからここに飛ばされてから11年以上の月日が経った。
君は立派なレディになっただろうか?出かけに君を預けた父さ…おじいちゃんは困らせてないかい?
私は今日、自分の手のシワを見て年を取ったとしみじみと思ったよ…天国のママには見せられないな。

あの時、君をゲート施設に連れて行かなくて良かった。
むずがる君を連れて行っていたら、私だけでなく幼い君もどうなっていたかわからない。
パパはこれでも幸運だったんだよ?
他のみなはここにたどり着くこともなくあのテロで天に召されてしまったのだから…

ローザ、前にも言ったように私は今、異世界は東大陸の新天地オルニトマセ・バズークの遙か南方…俗に北方の国々から未踏破地域と言われる地域の電気種の都市に保護されている。
そこに住む彼らは電気ウナギ人を始めとして電気ナマズ人、シビレエイ人、発電アロワナ系の魚人などで外見は私達と大きく違うが心根は優しく非常に私に良くしてくれているので私のことは心配要らない。

…この手紙で何度彼らのことや『南方』の事を書いたか分からない。
しかし私は、この事を何度でも書かずにはおれないのだ…

ローザ…今、地球や異世界の11国では南方民族の事をどう教えているか知っているだろうか?
もし私がいた11年前のように「異世界の東西両大陸の南方は少数部族がひしめく未開の地だ」などという馬鹿な情報を教えているようならその誤りをすぐに正して欲しい。
彼らは……我々(異世界国家も含めて)の手に負えるようなものではないのだ。
賢い君なら気づいたかもしれない。私が最初に彼らの『都市』と書いたことを…

彼らは我々と違った非常に『高度な』文明をもっている。
それを支えるものは、彼らが発する電気と北方には何故か殆どいない雷の精霊を使った発電装置…そしてそれらを扱うために残された彼らが崇める聖人の教えだ。
そうだローザ!彼らは電気を扱っているんだ…我々地球人のように。信じられるかい?今、私は都市の要所に建設されたワーデンクリフタワー(無線送電塔)から送電された電気を使ったデスクライトの明かりの下で、この無意味なプロザック代わりの手紙を書いているんだ。

確かにここの暮らしは何不自由ないと思うよ。恐ろしいほどに。
この都市を一言で表すならばメトロポリスだ。あのフリッツ・ラングが撮った退廃した未来都市だ!
それともまるで60年代のケバケバしいステロな未来都市のような、気味の悪い小説ばかり書いていたパルプ・フィクション作家が書いた超古代都市のような…

…すまない。話が逸れた…ここに来てからまったく精神が不安定なんだ。パパを許してくれ…

とにかく彼らの技術レベルは非常に高くそれに応じて軍事レベルも凄まじく高い。
彼らの武器の中には銃こそ無いが、電流を纏わせた剣など単純な物からプラズマで相手を切り裂く大槍、開発中の物だとコイルガンに近いものや気象兵器や地震兵器なんてものもある。
私は正直言って恐ろしい。我々の世界ですらこのような物を作り出す技術はまだない。

しかし、彼らはこれらの物を彼らが崇めているという聖人ニコラが遺した一冊の聖書を解読して作り上げたらしい。
そして彼らは、この聖書から得た技術を自身の都市の発展のみならず、これを使って周りの民族と交易をしているのだ。

私は何度か彼らの交易に立ち会わせてもらったことがあるが様々な種類の人種が南方にはいることがよく分かった。

ここから東に住むインディアンのような格好をした鉄人や西の小人ブラウニー、異世界各地にいるらしい奇妙な力を持ったネズミ人に灼熱するスコップを武器とするモグラ人…
彼等は北にある奇妙な森林に住む植物でできた獣を大量に狩って木材として売りに来たり、希少な鉱石や食料、労働力を売りに来て、こちらでは武器や道具類の製造・修理、また鉄人などは自身が負った傷を車の板金修理のよう治療しに来ている。

それだけでなく、この東大陸以外からも色々な種族が交易に来ている。
西大陸に住む巨大で非常に力の強い像人や厳しく強靭な脚を持つ麒麟人、大延国の装束に似た服を来た羊人、翼の付いたライオンの体に人間の上半身が載っている開明獣と言われる種族やグレムリンと呼ばれる高い技術を持ち飛行機械を駆る悪魔のような外見の種族…

他にもミズハミシマの遙か南方にある禁断の島から来たという深海魚人など様々な人種が来て、例えば向こうで豊富に取れるという鉱石でできた巨獣を狩って得た貴金属の鉱石や美しい宝石の原石や珍しい獣の皮、向こうの呪符や西大陸の書物、海産物などとこちらの武器や工業品、雷の精霊を詰めたバッテリーのような物が交易されていき、ラ・ムールの大バザールもかくやという交易の活発さだ。

ローザ、君に見せてあげたかったよ。木でできた巨大な獣や宝石でできた獣…そしてそれらを難なく狩ってしまう南方民の狩人達の姿を。

…すまない。また話がずれたようだ。
ともかく、彼等は我々が思っているような遅れた未開の地の民ではないんだ。
彼等は…地球と異世界の11国どちらにとっても脅威となりうる存在なんだ。

可愛いローザ、お願いだ。書き上がったら瓶に詰めて川へ流すこの手紙を読んだら、どうか政府の人間に見せてくれ。ローザ以外の人間でもいい。
彼等は今、彼等の神との約束を守って北へ総攻撃をかけていないだけだ。早くこの事を報せないと…手遅れになる前に!

そもそも私がここに無事にいられるのも彼らがあの人を!ニコラを聖人と崇めているからなだけだ。
分かるかい?ローザ!蛍光灯!ワーデンクリフタワー!トンデモ兵器!
電力システムの基礎を作り上げた我が国が誇る天才……稲妻博士ニコラ、ニコラ・テスラだよ!

彼がどうやってここに来て、ここの純朴な現地民達を啓蒙したのか知らないが、彼等はあのニコラの夢想の産物を本当に創りあげてしまったんだ。
それがどんなに恐ろしいことか…お願いだ。誰か、この手紙を拾った人はアメリカの*****州***市のクリス・ハミルトン家のローザまで届けてくれ!頼むよ。後生だから…

……ローザ、パパはこの遙か遠くからでも君の幸せを毎日祈っているよ。
遙か遠くからいつも君のことを思うパパ、ミゲルより愛しいわが子ローザへ


海水で滲んだ手紙の文面を、流木の上に座ってやぶにらみで読んでいた二人が揃って顔を上げる。
「あっはっはっは!ねえ、師匠?本当なんスかね?これ」
背の高い方が笑いながら低い方へそう問いかける。
「さあ?文面自体が支離滅裂になってるし、僕は南方へは行ったことがないので」
低い方が難しい顔でそう返す。

「でも師匠がこの前、朝までどんちゃん騒ぎやった後に這々の体で逃げてきた相手って鉄人インディアンじゃありませんでしたっけ?」
「…アレは目的を果たしたんで戦略的撤退って言うんです。まともにやってられませんよあんなトンデモの相手…・・まあ、どちらにせよコレでは真実を書いているのか、それとも基地外が妄想に駆られて書きなぐったのかわかりません」
ため息をついて便箋をカバンに放り込む。
「地球に届けるんですか?それとも南方へ殴りこみに?」
「今はどっちも行きませんよ。こういうのはどっちにせよ時期が来たら行くハメになるんです。だから今は、自分たちの食い扶持を稼ぐために予定通り地上げ屋の対処に行きましょう」
清々しくそう言って立ち上がり歩き始める。
「あっはっはっは!その考え、分かりやすくてイイっすよ。いや~楽しみだなぁ。久しぶりに大量にぶっ殺せそうだ!」
背の高い方が楽しげに笑いながら立ち上がって背の低い方の後に続く。

ミゲルの手紙はローザの元へ着くのか、世界の安寧は守られるのか…それは誰にも分からない


  • 電気ウナギ人達の都市や武器、未踏破地帯の未知の種族、国家同士の交流は面白いアイデア。彼等がもっと強固な連合を組んだら主要十一か国にとっても相当な脅威になる -- (名無しさん) 2012-11-03 16:29:22
  • 地図上で黒いですけど異世界のブラックボックスな未踏破はあり得ない物や種族が溢れていそうだ -- (とっしー) 2012-11-04 14:25:58
  • もっと色んな種族が出てきてもいいですよね異世界 -- (名無しさん) 2012-11-04 18:22:09
  • 未踏破地帯は未開なので文明が遅れているというのは駄目な先入観でした。そこにある種族や戦力は神を不要と思わせるものですがそれゆえに隔絶されているのかなとも思いました -- (名無しさん) 2015-04-05 17:39:58
  • 電気種族多すぎる土地なら息を吸うくらい当然のようにそれを使った文明が異世界でも発展するのは当然だろうか -- (名無しさん) 2017-04-05 14:00:13
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最終更新:2013年08月11日 10:51