「レッド・ウォーター鮫地獄!」
「レッド・ウォーター鮫地獄!」
「フーパー、川を遡るのは認められない。海へ向かえ」
「ルイジアナ、それは難しい、海はジョーズで一杯だ」
「とにかくまず火星へ行け、とにかくまず火星へ行け」
「レッド・ウォーター鮫地獄!」
「フーパー、川を遡るのは認められない。海へ向かえ」
「ルイジアナ、それは難しい、海はジョーズで一杯だ」
「とにかくまず火星へ行け、とにかくまず火星へ行け」
上陸部隊から魔法通信が入る。
部隊間通信はいくつかの符丁を使った暗号で行われている。
暗号は意味のないランダムな言葉に意味を当てはめ通信に使う。
「レッド・ウォーター鮫地獄!」の場合は「レッド、ウォーター、鮫、地獄」に分解できる。
レッドは状況レッドで旗色が悪く、ウォーターは場所で上陸地点を表す、
鮫は部隊符丁、地獄は撤退許可を求めるとなる。
状況が良い場合は「ブルー・ウォーター鮫天国」だ
部隊間通信はいくつかの符丁を使った暗号で行われている。
暗号は意味のないランダムな言葉に意味を当てはめ通信に使う。
「レッド・ウォーター鮫地獄!」の場合は「レッド、ウォーター、鮫、地獄」に分解できる。
レッドは状況レッドで旗色が悪く、ウォーターは場所で上陸地点を表す、
鮫は部隊符丁、地獄は撤退許可を求めるとなる。
状況が良い場合は「ブルー・ウォーター鮫天国」だ
通信を翻訳すると
「状況レッド、上陸地点で攻撃を受けている、撤退許可を求む」
「状況レッド、上陸地点で攻撃を受けている、撤退許可を求む」
「鮫歯隊へ、撤退は認められない。上陸地点へ向かえ」
「本部へ、それは難しい、上陸地点で待ち構えられている」
「繰り返す。上陸を続けろ。上陸を続けろ」となる。
「状況レッド、上陸地点で攻撃を受けている、撤退許可を求む」
「状況レッド、上陸地点で攻撃を受けている、撤退許可を求む」
「鮫歯隊へ、撤退は認められない。上陸地点へ向かえ」
「本部へ、それは難しい、上陸地点で待ち構えられている」
「繰り返す。上陸を続けろ。上陸を続けろ」となる。
部隊間通信は部隊付き魔導師が仕事をしている。
魔導師は、通信、傷の治療、水の精製、遠距離法撃、建物破壊、なんでも出来る万能兵科で
魔導師一人で兵士20人分の価値があるとされている。
部隊では主に傷の治療は彼らが行う。
通常兵150人~200人ごとに一人、魔導師が存在し、彼らは部隊の指揮官となっている。
魔導師はとても貴重で100人に1人も素質があれば良いほうとされ、
バッサン帝国では魔法使いの殆どが貴重な能力故にほぼ例外なく軍民関わらず要職に付いている。
ちなみに俺は臨時指揮官で「ただの人間」だ。
部下が魔導師ばかりで肩身が狭い。
魔導師は、通信、傷の治療、水の精製、遠距離法撃、建物破壊、なんでも出来る万能兵科で
魔導師一人で兵士20人分の価値があるとされている。
部隊では主に傷の治療は彼らが行う。
通常兵150人~200人ごとに一人、魔導師が存在し、彼らは部隊の指揮官となっている。
魔導師はとても貴重で100人に1人も素質があれば良いほうとされ、
バッサン帝国では魔法使いの殆どが貴重な能力故にほぼ例外なく軍民関わらず要職に付いている。
ちなみに俺は臨時指揮官で「ただの人間」だ。
部下が魔導師ばかりで肩身が狭い。
魔法通信は多少の制約はあるが、大抵の場合伝令を飛ばすより速い。
戦争に通信魔法を取り入れ、ただの人間を魔導師に対抗できる戦力としたのが
バッサン帝国躍進の転機とされている。
戦争に通信魔法を取り入れ、ただの人間を魔導師に対抗できる戦力としたのが
バッサン帝国躍進の転機とされている。
「死にた」パンッ
「ヒッ」ヒュンッ
「あ」パスンッ
「俺、帰ったら結」パンッ
「ヒッ」ヒュンッ
「あ」パスンッ
「俺、帰ったら結」パンッ
魔導師と対になるのが一般兵だ。
一般兵は魔法を使えない「ただの人間」である。軍の大部分の人間は一般兵科である。
バッサン帝国は意外にも志願制で兵役の義務はない。
義務はないだけで、入らないことによって受けられなくなる補助が出る。
税金の増額、非選挙権、公務員になれなくなるなど不便な点は多くなる。
そのため自ら志願する者が殆どだ。
また兵士になることで犯罪者の減刑や監視付きの保釈なども行われている。
一般兵は魔法を使えない「ただの人間」である。軍の大部分の人間は一般兵科である。
バッサン帝国は意外にも志願制で兵役の義務はない。
義務はないだけで、入らないことによって受けられなくなる補助が出る。
税金の増額、非選挙権、公務員になれなくなるなど不便な点は多くなる。
そのため自ら志願する者が殆どだ。
また兵士になることで犯罪者の減刑や監視付きの保釈なども行われている。
「グォオオオオッ」
「ハハアアハッハハッハ」
「はぁはぁはぁはぁ」
「ハハアアハッハハッハ」
「はぁはぁはぁはぁ」
獣染みた声が船から聞こえる。上陸部隊だ。
上陸部隊の一般兵は皆、獅子心薬を飲まされている。
獅子心薬はほんの少しの常習性のある一種の興奮剤で、痛みや恐怖心を抑え、身体の枷を外す。
副作用は激しい怒りに襲われることで、顔が獅子に見えることから名が付いた。
この薬のお陰でバッサン兵は「勇猛果敢で最後の一兵まで戦う戦闘民族」と恐れられている。
過度な服用は精神を壊す恐れがあるが、そうした者は別の使い方があるそうだ。
ちなみにバッサンには海兵隊という兵科はない。上陸部隊の所属は陸軍となっている。
獅子心薬はほんの少しの常習性のある一種の興奮剤で、痛みや恐怖心を抑え、身体の枷を外す。
副作用は激しい怒りに襲われることで、顔が獅子に見えることから名が付いた。
この薬のお陰でバッサン兵は「勇猛果敢で最後の一兵まで戦う戦闘民族」と恐れられている。
過度な服用は精神を壊す恐れがあるが、そうした者は別の使い方があるそうだ。
ちなみにバッサンには海兵隊という兵科はない。上陸部隊の所属は陸軍となっている。
「いいか、こっちが風下だ。近づけば分かる」
「どうやってです?匂いを嗅げとでも?」
「ああそうだ」
「どうやってです?匂いを嗅げとでも?」
「ああそうだ」
状況は悪かった。予想よりも生き残った数が多い。
バリスタ法撃で生き残った魔物達が上陸と同時に一斉に反撃を開始した。
魔物は巣を吹き飛ばされた後、トンネルや溝に潜み法撃を逃れたからだ。
擬装用の天幕を上に張って、竜騎士隊の肉眼での誤認が多発したのも背景にあった。
バリスタ法撃で生き残った魔物達が上陸と同時に一斉に反撃を開始した。
魔物は巣を吹き飛ばされた後、トンネルや溝に潜み法撃を逃れたからだ。
擬装用の天幕を上に張って、竜騎士隊の肉眼での誤認が多発したのも背景にあった。
バリスタ法撃は着弾時の爆発力や物体を破壊する力が劣る。
射程の長さと結界装甲を貫くことを目的としていて対魔法貫通力が第一である。
バリスタは艦上戦闘の補助で最終的には隣接して飛び移り、敵艦内を征圧するのが普通だ。
陣地を吹き飛ばすには威力が足りず、彼が使った沿岸法撃は鉄則から外れるものであり、
地面へ溝状に張られた通路を破壊するのも難があった。
射程の長さと結界装甲を貫くことを目的としていて対魔法貫通力が第一である。
バリスタは艦上戦闘の補助で最終的には隣接して飛び移り、敵艦内を征圧するのが普通だ。
陣地を吹き飛ばすには威力が足りず、彼が使った沿岸法撃は鉄則から外れるものであり、
地面へ溝状に張られた通路を破壊するのも難があった。
島はとても狭く、数隻の上陸船が接岸するだけで湾は一杯になった。
船から矢を射て上陸を援護しようとしても、狭すぎるために上陸部隊を巻き込んでしまう。
バリスタ隊や竜騎士隊の攻撃も同様で、同士討ちの恐れがある。
そのため歩兵隊単独で上陸を行わざるをえない。
船から矢を射て上陸を援護しようとしても、狭すぎるために上陸部隊を巻き込んでしまう。
バリスタ隊や竜騎士隊の攻撃も同様で、同士討ちの恐れがある。
そのため歩兵隊単独で上陸を行わざるをえない。
上陸のため船を接岸し、クルーを甲板に呼び出し、甲板から地上へ降下のための魔法梯子を下ろそうとすると
法撃で沈黙していたはずの魔物の攻撃が始まった。
法撃で沈黙していたはずの魔物の攻撃が始まった。
ヒュオン ヒュウウッン チュンッ
耳の横を敵の魔法が通り過ぎる音が聞こえる。
「何が起こっているんだ」
「何が起こっているんだ」
戦闘開始時から不可解な状況が多すぎる。
目で直接確認するために外へ行く。
甲板には身体に小さな穴が開いた大量の死体が転がっている。
デッキは真っ赤に染まっていた。
目で直接確認するために外へ行く。
甲板には身体に小さな穴が開いた大量の死体が転がっている。
デッキは真っ赤に染まっていた。
「危ないですから甲板に出ないでくだ」
と副官代理のシャルルが甲板ドアの外から俺を押し留めた瞬間。
と副官代理のシャルルが甲板ドアの外から俺を押し留めた瞬間。
ヒュオンッ ボズゥゥッ!
弾け飛ぶ頭
飛び散る脳漿
鼻に付く錆びの臭い
シャルルの頭がこめかみからブチ抜かれ、棒に叩かれた瓜のごとく弾け跳んだ。
横から飛来した見えない魔法に頭を吹き飛ばされたのだ。
横から飛来した見えない魔法に頭を吹き飛ばされたのだ。
「シャル!魔法兵!魔法兵を呼べ!」
甲板に飛び出そうとすると後ろから寄ってたかって羽交い絞めされた。
「落ち着いてください!無理です!死んでます」
「あなたが死んでしまったら誰が指揮をとるんです」
そう言われハンスに視線が向いた。
甲板に飛び出そうとすると後ろから寄ってたかって羽交い絞めされた。
「落ち着いてください!無理です!死んでます」
「あなたが死んでしまったら誰が指揮をとるんです」
そう言われハンスに視線が向いた。
「指揮官は最後まで責任があります」
「ああ」
首を動かすのがやっとだった。
「ああ」
首を動かすのがやっとだった。
魔法は「役職が上の人間から順番に」殺している。
ズドンッ!
腹に響く大きな音。
甲板に吹き上がる建材、兵士、悲鳴、怒号。
甲板に吹き上がる建材、兵士、悲鳴、怒号。
「船がバリスタで法撃されました」
「損害状況を知らせろ」
間髪入れず答えが返ってきた。
「損害状況を知らせろ」
間髪入れず答えが返ってきた。
「爆発するバリスタ弾で前部甲板が全損。浸水なし。
漕ぎ手達の被害なし。マストは折られていません。航行できます」
「ヴォルギン千人長は死亡。死者30人、重傷者10人です」
「死者が多いな」
「敵の魔法は威力が高い為です。鎧を貫き正確に命中します」
「上陸前を狙われたので被害が拡大しています」
「そうか」
手を口元で組む。
漕ぎ手達の被害なし。マストは折られていません。航行できます」
「ヴォルギン千人長は死亡。死者30人、重傷者10人です」
「死者が多いな」
「敵の魔法は威力が高い為です。鎧を貫き正確に命中します」
「上陸前を狙われたので被害が拡大しています」
「そうか」
手を口元で組む。
「冷静ですね」
報告する魔導師の口調に怒りが垣間見える。
彼女の周囲の魔力が高まって嫌な圧力を感じた。
報告する魔導師の口調に怒りが垣間見える。
彼女の周囲の魔力が高まって嫌な圧力を感じた。
「焦りなどとっくに通り過ぎてしまったよ」
同僚の死を見て抜け殻になってしまったとするべきか。
今度は爆発するバリスタ弾、敵の新魔法。
竜魔導師や300人もの魔導師が無価値に見える島に駐留してるんだ。
今更何が出てきても驚かないつもりだ。
同僚の死を見て抜け殻になってしまったとするべきか。
今度は爆発するバリスタ弾、敵の新魔法。
竜魔導師や300人もの魔導師が無価値に見える島に駐留してるんだ。
今更何が出てきても驚かないつもりだ。
『現代の魔法学的に絶対ありえない』ことが多すぎて心が麻痺してしまっていた。
シャルルの頭が弾けたことで心は決まった。
「敵陣地は硬く。不確定要素も多い。損害も多く、不確定さも我々にとって不利な要素が多い」
「よって全部隊の撤収を開始する」
「よって全部隊の撤収を開始する」
司令室に撤退戦だというのに安堵した空気が流れた。
慌しく魔導師達が動き出す。
慌しく魔導師達が動き出す。
「撤退など許されるものかああああああ!」
ふくよか過ぎるお体に脂ぎったお顔をしていらっしゃるランゲルハンス政治将校殿が
司令部のドアを魔法で吹き飛ばして入っていらっしゃった。
ふくよか過ぎるお体に脂ぎったお顔をしていらっしゃるランゲルハンス政治将校殿が
司令部のドアを魔法で吹き飛ばして入っていらっしゃった。
聞かれる前に答える。
「戦術的撤退ですよ。ランゲルハ“ウ”ス殿」
「私の名前はランゲルハンスだ!」
はいはいそうですか。
声の大きい相手は疲れる。
「戦術的撤退ですよ。ランゲルハ“ウ”ス殿」
「私の名前はランゲルハンスだ!」
はいはいそうですか。
声の大きい相手は疲れる。
「敵前逃亡は許されん。逃亡を助けた指揮官として君を逮捕する」
ハンスの両側に控えた護衛兵が進み出て両腕を掴んだ。
「但し、君は殺さん。敗戦の責任をとる者が必要だからな」
ハンスの両側に控えた護衛兵が進み出て両腕を掴んだ。
「但し、君は殺さん。敗戦の責任をとる者が必要だからな」
また「責任」か。
ハンスが勝利に拘る理由はそこにあった。
政治将校とはバッサン帝国において、政府が軍を統制するために各部隊へ派遣した将校だ。
長く続く戦争は国外の敵以外に外部干渉、国内の敵と戦いでもあった。
バッサン帝国は戦争で広い領土とたくさんの奴隷を獲得したが、
徴兵によって動員された兵士達は指揮に乏しく、統制の取れた行動などは出来なかった。
デ・キッコ・ナイサの乱時、煽動を巧みに利用したダークエルフ側の活動のため、
バッサン帝国軍内では、抗命や脱走が相次ぎ、国民中に反戦運動が高まる等、厭戦気運が蔓延した。
長く続く戦争は国外の敵以外に外部干渉、国内の敵と戦いでもあった。
バッサン帝国は戦争で広い領土とたくさんの奴隷を獲得したが、
徴兵によって動員された兵士達は指揮に乏しく、統制の取れた行動などは出来なかった。
デ・キッコ・ナイサの乱時、煽動を巧みに利用したダークエルフ側の活動のため、
バッサン帝国軍内では、抗命や脱走が相次ぎ、国民中に反戦運動が高まる等、厭戦気運が蔓延した。
魔法首輪や呪い、人質、配給優遇など様々な予防措置がとられたが
その軍を指揮する立場の将校は、俺のような元敵国人、奴隷兵や傀儡兵が殆どを占めていたため
戦場では職務放棄と離反が相次いだ。事態を重く見たバッサン帝国は政治将校の派遣を決定。
各国の軍事運用を受け継ぐために、各国軍人を監視する目的で政治将校制度を創設。
軍内外の宣伝や情報統制と政治的忠誠心の保持を目的にし、
兵士の心理戦防護と戦争の目的を宣伝する役目を担った。
その軍を指揮する立場の将校は、俺のような元敵国人、奴隷兵や傀儡兵が殆どを占めていたため
戦場では職務放棄と離反が相次いだ。事態を重く見たバッサン帝国は政治将校の派遣を決定。
各国の軍事運用を受け継ぐために、各国軍人を監視する目的で政治将校制度を創設。
軍内外の宣伝や情報統制と政治的忠誠心の保持を目的にし、
兵士の心理戦防護と戦争の目的を宣伝する役目を担った。
政治将校は“軍事運用以外”のあらゆる権利を有し、秘密警察に代表される反乱分子の粛清。
「魔法を含むあらゆる手段によって、反革命分子に対して非情に対処する権限」を持った。
「魔法を含むあらゆる手段によって、反革命分子に対して非情に対処する権限」を持った。
エターナル・コミッルーク、全員死ぬ。
在来中のランゲルハンス伝説にこんなものがある。
「疑われた者と出身地が同じだっただけで死亡」
「ハンスの部屋から徒歩1分の廊下で陸軍司令が胸から氷槍を突き出して倒れていた」
「足元がぐにゃりとしたのでござをめくってみると真っ黒に日焼けした海軍司令だった」
「秘密警察の取調べを受け、女も『男も』全員ヤられた」
「逮捕者の2/3が美女又は美男子。しかも魔導師ほど強力なので
安全と言う都市伝説から貴族あがりほど危ない」
「全部艦内の出来事なのに事件になってない」
「疑われた者と出身地が同じだっただけで死亡」
「ハンスの部屋から徒歩1分の廊下で陸軍司令が胸から氷槍を突き出して倒れていた」
「足元がぐにゃりとしたのでござをめくってみると真っ黒に日焼けした海軍司令だった」
「秘密警察の取調べを受け、女も『男も』全員ヤられた」
「逮捕者の2/3が美女又は美男子。しかも魔導師ほど強力なので
安全と言う都市伝説から貴族あがりほど危ない」
「全部艦内の出来事なのに事件になってない」
強大な権力を有する反面、
作戦が失敗すると政治将校は上層部から強く責任追及され、処刑される者もいる。
ハンスはそれを恐れていた。
勝利の土産を持っていかないと彼が危ない。
作戦が失敗すると政治将校は上層部から強く責任追及され、処刑される者もいる。
ハンスはそれを恐れていた。
勝利の土産を持っていかないと彼が危ない。
ハンスは焦っていたのである。
「代理司令殿は拘束された。ビル・ランゲルハンスが代理司令に代わり指揮を取る」
ざわ・・・ざわ・・・ざわ
軍全体に動揺が広がる。
一度の航海に三度の司令交代。それも上陸準備中。
ざわ・・・ざわ・・・ざわ
軍全体に動揺が広がる。
一度の航海に三度の司令交代。それも上陸準備中。
「撤収すると命令があったが、誤報だ」
「撤退は中止。撤退は中止。各自、上陸作業を続けよ」
甲板で兵達が法撃にさらされつつ、中断された甲板から陸への降下作業を再開する。
「撤退は中止。撤退は中止。各自、上陸作業を続けよ」
甲板で兵達が法撃にさらされつつ、中断された甲板から陸への降下作業を再開する。
ハンスは振り返ると床へ転がっている俺に
「そこで無様に見ていたまえ。私が勝利をもぎ取ってやろう」と言った。
「そこで無様に見ていたまえ。私が勝利をもぎ取ってやろう」と言った。
「盾を着装。亀甲の陣で前進」
「各艦弓部隊、上陸部隊の陣形展開が終わると同時に弓を放て」
「各艦弓部隊、上陸部隊の陣形展開が終わると同時に弓を放て」
副官代理の代理が恐る恐るハンスに進言した。
「味方を巻き込んでしまいますが・・・」
「構わん。そのための亀甲陣だ」
「味方を巻き込んでしまいますが・・・」
「構わん。そのための亀甲陣だ」
亀甲陣は上に大盾を構え、空から降る矢に対抗する陣である。
飛竜から陣を見ると亀の甲羅に見えるから亀甲と呼ばれる、よくある上陸用の陣である。
ハンスはわざわざ亀甲と指定した、それなりに軍学を修めているのだろうと少し見直す。
バッサン帝国の軍将校には正規の軍事教育を受けたものは非常に少ない。
彼らの仕事は専ら、利権争いと地方国の軍を使い潰すのが仕事で、机仕事を重要視されているからである。
机の上の戦術上では彼の考えは正しいだろうと俺も思う。
仕官学校の俺だったらハンスと同じことを言っただろう。
しかし甘い考えだ。
飛竜から陣を見ると亀の甲羅に見えるから亀甲と呼ばれる、よくある上陸用の陣である。
ハンスはわざわざ亀甲と指定した、それなりに軍学を修めているのだろうと少し見直す。
バッサン帝国の軍将校には正規の軍事教育を受けたものは非常に少ない。
彼らの仕事は専ら、利権争いと地方国の軍を使い潰すのが仕事で、机仕事を重要視されているからである。
机の上の戦術上では彼の考えは正しいだろうと俺も思う。
仕官学校の俺だったらハンスと同じことを言っただろう。
しかし甘い考えだ。
「陣が完成しません!」
「命令に従わない隊が居ます!」
「通信が届きません!」
「従わない隊を呼び戻せ。部隊を再編しろ」
「命令に従わない隊が居ます!」
「通信が届きません!」
「従わない隊を呼び戻せ。部隊を再編しろ」
図上の部隊なら命令どおり動いただろうが、生きている人間が指揮する部隊に命令が届くはずがない。
敵はどういうわけか役職が上の人間から順に狙ってきていた。
身なりの良い魔導師などは真っ先に狙われただろう。
一人の魔導師が殺られると100人以上の通信が途絶する。隊の治療もできなくなる。
陸上戦とは違い、中央から伝令を走らせるのも困難で、走る広さもない。
敵はどういうわけか役職が上の人間から順に狙ってきていた。
身なりの良い魔導師などは真っ先に狙われただろう。
一人の魔導師が殺られると100人以上の通信が途絶する。隊の治療もできなくなる。
陸上戦とは違い、中央から伝令を走らせるのも困難で、走る広さもない。
「弓隊は、まだかと聞いています!」
「中止だ!中止!」
「亀甲陣の展開終わりません!」
「中止だ!突撃せよ!突・撃・だ!」
通信魔導師とハンスが怒鳴りあう。
ハンスの怒りに引き摺られて互いに彼らも血が上ってしまっている。
「中止だ!中止!」
「亀甲陣の展開終わりません!」
「中止だ!突撃せよ!突・撃・だ!」
通信魔導師とハンスが怒鳴りあう。
ハンスの怒りに引き摺られて互いに彼らも血が上ってしまっている。
浜は死人で一杯だ。おまけに兵士もぎっしりで、人の波に飲まれ一歩動くのすら困難だ。
直前の指揮官交代。緊急の陣の変更。正体不明の魔法。撤退命令と後退命令、再編命令。
魔導師が倒され、通信が出来なくなっていた。後ろの浜から兵士達が押し寄せる。
前に進むしか出来ず前からは魔法が飛んできて進めない。陣形を組む余裕など当然ない。
直前の指揮官交代。緊急の陣の変更。正体不明の魔法。撤退命令と後退命令、再編命令。
魔導師が倒され、通信が出来なくなっていた。後ろの浜から兵士達が押し寄せる。
前に進むしか出来ず前からは魔法が飛んできて進めない。陣形を組む余裕など当然ない。
「敵の魔法です!」
「ま・た・か!」
「上陸部隊の足が吹き飛ばされています!」
「構わん!進め、敵に近寄りさえすれば我らの勝利だ!」
3万人も居る、300人の敵は、人の海に飲み込めさえすれば勝てるだろう。できればだが。
「ま・た・か!」
「上陸部隊の足が吹き飛ばされています!」
「構わん!進め、敵に近寄りさえすれば我らの勝利だ!」
3万人も居る、300人の敵は、人の海に飲み込めさえすれば勝てるだろう。できればだが。
「あと少し!あと少しで勝利が掴めるのだ!」
「上陸部隊!停止しました!」
「上陸部隊!停止しました!」
足の吹き飛ばされる魔法を受ける場所で進軍が止まった。
揉み合い、圧し合いしながら船へ戻ろうとする。
群れの中に居た背の低いドワーフは踏み潰されエルフと人間が後続を押し合いへし合う。
獅子心薬が起こした怒りは敵から味方へ向き、無残な殴り合いへ変わる。
揉み合い、圧し合いしながら船へ戻ろうとする。
群れの中に居た背の低いドワーフは踏み潰されエルフと人間が後続を押し合いへし合う。
獅子心薬が起こした怒りは敵から味方へ向き、無残な殴り合いへ変わる。
上陸隊が壊走する。
「使いたくなかったが、仕方ない」
ハンスは一瞬ためらった後、ぶつぶつと呪文を唱えた。
「nmdGxSitAL2lGxSitAb7AW9PnDUYlb7AW9dAGx」
「使いたくなかったが、仕方ない」
ハンスは一瞬ためらった後、ぶつぶつと呪文を唱えた。
「nmdGxSitAL2lGxSitAb7AW9PnDUYlb7AW9dAGx」
「ひぃぃぃっ」
「あががががががっ」
「ぐうっ」
「あががががががっ」
「ぐうっ」
上陸部隊が一斉に倒れ伏し、頭を抱え、よだれを垂らし苦悶する。
海に停泊する船の中でも同じことになっているだろう。
ハンスは“もしも”の安全装置に付けられている「呪い」第二段階を発動したのだ。
第二段階は長時間続けば死に至る激しい頭痛。
此処は指揮所なので俺達には関係ないが、外は悲惨だろう。
一斉に倒れ伏した人込みで潰された者達に死者が出ているかもしれない。
海に停泊する船の中でも同じことになっているだろう。
ハンスは“もしも”の安全装置に付けられている「呪い」第二段階を発動したのだ。
第二段階は長時間続けば死に至る激しい頭痛。
此処は指揮所なので俺達には関係ないが、外は悲惨だろう。
一斉に倒れ伏した人込みで潰された者達に死者が出ているかもしれない。
ハンスは呪文の力を解くと続けて命令した。
「上空に待機する竜騎士監督隊へ。攻撃を開始せよ」
「了解」
「上空に待機する竜騎士監督隊へ。攻撃を開始せよ」
「了解」
声と同時に空から火の玉が“味方”へと降り注ぎ、最前列と最後列の数人を火達磨にした。
身体を燃やされた最前列の兵士が前方に向かって走り出し、盛大に足を吹き飛ばされた。
彼の後ろから走り出した二人目三人目も派手に踝から下を吹き飛ばされ地面に倒れこむ。
後続がまだ生きたままの彼らの手を足を頭を踏みつけ前進する。
死体の壁を積み上げ、生きている者、死んでいる物を蹴り飛ばしながら確実に兵士達は進んでいった。
身体を燃やされた最前列の兵士が前方に向かって走り出し、盛大に足を吹き飛ばされた。
彼の後ろから走り出した二人目三人目も派手に踝から下を吹き飛ばされ地面に倒れこむ。
後続がまだ生きたままの彼らの手を足を頭を踏みつけ前進する。
死体の壁を積み上げ、生きている者、死んでいる物を蹴り飛ばしながら確実に兵士達は進んでいった。
「もう一押しか」
「ですが日も暮れてしまいました」
「そうだな。暗くなる。夜間上陸は妨害もされにくい。上陸を続けろ」
「り、了解しました」
「不服そうだな。良いかね?私は無意味に突撃命令は出していない」
「ですが日も暮れてしまいました」
「そうだな。暗くなる。夜間上陸は妨害もされにくい。上陸を続けろ」
「り、了解しました」
「不服そうだな。良いかね?私は無意味に突撃命令は出していない」
「今結果も出せずに引いたら死んだ英霊達に申し訳が立たんのだよ。
上陸部隊は甚大な被害を受けているが、戦闘は1日2日で終わるものでもない。
私達は対極的な物を判断しなければいけないのだ。
1回2回失敗したからといって引くわけにもいかん。
先鋒の彼らは失敗したが、彼ら自身の肉で壁を造ってくれた。
犠牲を無駄にするわけにはいかん」
上陸部隊は甚大な被害を受けているが、戦闘は1日2日で終わるものでもない。
私達は対極的な物を判断しなければいけないのだ。
1回2回失敗したからといって引くわけにもいかん。
先鋒の彼らは失敗したが、彼ら自身の肉で壁を造ってくれた。
犠牲を無駄にするわけにはいかん」
「それに、まだ半分使えるではないか」
夜間。島中から聞こえる爆竹音、地上に瞬く星々。倒れる人影。
魔物の陣地からは影が動かなくなるたびに聞いたことのない言葉で歓声が上がった。
兵士達は伏せ、味方の死体の山に隠れ歯噛みする。
魔物の陣地からは影が動かなくなるたびに聞いたことのない言葉で歓声が上がった。
兵士達は伏せ、味方の死体の山に隠れ歯噛みする。
「奴らめ、楽しんでやがる」
「悪魔共。簡単には死なせてやらねえ」
「死体が臭いよ・・・」
「突撃命令が出たぞ」
「またかよ。無駄じゃねえのか」
「夜だと敵が見えにくいってよ」
「悪魔共。簡単には死なせてやらねえ」
「死体が臭いよ・・・」
「突撃命令が出たぞ」
「またかよ。無駄じゃねえのか」
「夜だと敵が見えにくいってよ」
パンッ!パタタッタタッ!
「誰だよ!夜は見えないって言った奴はよ!昼間と変わらな」
パヒュン!
「帰りたい・・・」
「立つな!コラッ!」
「立つな!コラッ!」
ミュィィィィィン
「あっ」「」
「お」「」「え?」
「お」「」「え?」
聞いたことのない蟲の鳴き声と共に、立ち上がろうとした兵士の腰が吹き飛んだ。
二本の足だけが岩場に残る。
二本の足だけが岩場に残る。
「は?」
「お?」
「お?」
首から上が吹っ飛んだ別の兵士の首と宙で目が合った。
あの顔は一生忘れないだろう。
「うあああああっ」
斜面に沿って首がころころと転がってきた。
表情に痛みが無さそうなのが救いだ。
温い血が背中に降りかかる。髪に血が付いて粘ついた。
岩場に残った二本の足は前方に数歩歩いた後、横に倒れた。
あの顔は一生忘れないだろう。
「うあああああっ」
斜面に沿って首がころころと転がってきた。
表情に痛みが無さそうなのが救いだ。
温い血が背中に降りかかる。髪に血が付いて粘ついた。
岩場に残った二本の足は前方に数歩歩いた後、横に倒れた。
朝日が眩しい。
いつの間にか寝ていたらしい。
隣で伏せて居た兵士達は全員いなくなっていた。
「まだ名前も聞いてなかったな」
隣で伏せて居た兵士達は全員いなくなっていた。
「まだ名前も聞いてなかったな」
ピュウウウウウウウウン
味方の方角からは蕪矢の音。
一斉射撃の合図だ。
一斉射撃の合図だ。
ヒュンヒュンヒュヒュヒュヒュヒュンッ
空には黒い、沢山の矢
空には黒い、沢山の矢
綺麗だった
「奇襲成功です。敵陣に甚大な被害を与えています!」
魔導師の報告に司令部で歓声が上がった。
上陸開始から4日目、ようやく活路が開けてきたのだ。
魔導師の報告に司令部で歓声が上がった。
上陸開始から4日目、ようやく活路が開けてきたのだ。
「深夜に死体の壁に隠れて、弓隊を展開しておいたのが効いたか」
ハンスはしたり顔だ。
ハンスはしたり顔だ。
奴らは夜中、上陸部隊を防ぐために魔法を撃つのに夢中だった。
数十メートル近くの敵が常に侵攻してくる状況。魔法が飛ぶ際の大きな音。
そのため奴らは一晩中眠れず注意力が落ちていただろう。
加えて深夜の悪条件と目を背けたくなる死体の山が弓兵を見逃す原因となった。
まとまった数の弓兵が射程内へ配置に付くと、朝日が上がるのに合わせて一斉射撃。
撃つのに夢中で弓兵の発見も遅れた魔物は甚大な被害を受けた。
数十メートル近くの敵が常に侵攻してくる状況。魔法が飛ぶ際の大きな音。
そのため奴らは一晩中眠れず注意力が落ちていただろう。
加えて深夜の悪条件と目を背けたくなる死体の山が弓兵を見逃す原因となった。
まとまった数の弓兵が射程内へ配置に付くと、朝日が上がるのに合わせて一斉射撃。
撃つのに夢中で弓兵の発見も遅れた魔物は甚大な被害を受けた。
「アンタ、味方を巻き込んだのか?」
ハンスに敬称を使うのをやめた。人でなしに敬意を払う必要もない。
島は狭すぎ、船からは遠すぎる中途半端な距離故に矢などは使えない、しかしハンスは強行した。
無謀な突撃を繰り返して誘き出し、味方ごと矢で串刺しにしたのだ。
ハンスに敬称を使うのをやめた。人でなしに敬意を払う必要もない。
島は狭すぎ、船からは遠すぎる中途半端な距離故に矢などは使えない、しかしハンスは強行した。
無謀な突撃を繰り返して誘き出し、味方ごと矢で串刺しにしたのだ。
「居るのは死体だけだ。人は効率的に死なねばならん」
「人でなしめ」
島を無視することも出来たし、船を破壊して島から出られなくすることも出来たはずだ。
それにハンスの用兵は冷酷なまでに効率的だ。
味方を止む無く見捨てるならともかく、最初から味方ごと敵を吹き飛ばすのを前提に動いていた。
目的のため手段は問わず兵士は使い捨てる。バッサン式合理主義の典型だった。
奴は畑から人でも取れると思っているのか?
「人でなしめ」
島を無視することも出来たし、船を破壊して島から出られなくすることも出来たはずだ。
それにハンスの用兵は冷酷なまでに効率的だ。
味方を止む無く見捨てるならともかく、最初から味方ごと敵を吹き飛ばすのを前提に動いていた。
目的のため手段は問わず兵士は使い捨てる。バッサン式合理主義の典型だった。
奴は畑から人でも取れると思っているのか?
「弓兵に続いて再度歩兵隊を強襲上陸させよ。再編が終わった竜騎士隊も呼び戻せ。
魔導師も投入しろ。総攻撃を掛ける」
魔導師も投入しろ。総攻撃を掛ける」
コイツは友軍ひしめく島に爆撃を掛け、矢を降らせようってか。
これじゃどっちが敵かわからないじゃないか!
これじゃどっちが敵かわからないじゃないか!
俺はハンスに背を向けて歩き出した。
「どこへ行こうというのだね?」
「トイレだ。気分が悪い。吐き気がする」
「どこへ行こうというのだね?」
「トイレだ。気分が悪い。吐き気がする」
少しだけ、火焙りになった上司の気持ちが理解できた。
「私は必ず作戦を成功してみせる。どんな犠牲を払ってもだ」
「君には達成できないだろうがね」
「君には達成できないだろうがね」
「戦狂いが」
後ろを向いたまま言葉を吐き捨てた。
後ろを向いたまま言葉を吐き捨てた。
「兵士は戦うために居る。革命には血が必要なのだよ」
ハンスはどんな顔をしていたのか、俺には知る由もなかった。
上陸戦は地獄だ。
こちらの戦力は、島の魔法部隊を相手取るには過大であり、
我々は僅か300体の魔物の首を取るには過多ともいえる戦力を保有している。
100隻を超える軍用ガレー船、500名近くの魔導師、バッサン帝国の誇る竜騎士団90騎。
我々は僅か300体の魔物の首を取るには過多ともいえる戦力を保有している。
100隻を超える軍用ガレー船、500名近くの魔導師、バッサン帝国の誇る竜騎士団90騎。
それがことごとく狩られた。
敵は要塞化された島や穴に立て篭もり、地面へ這うように魔法を放ってくる。
上陸しようと船の甲板に出た瞬間から狙い撃ちされ、砂浜に下りるまでに隊の人数は3分の1になっていた。
島は狭く不毛の地で、略奪できる物資もないために残り二日の攻勢が限度であると見られている。
でないと我々は攻めきれず負ける。待つのは餓死と反乱だ。
無理矢理連れてきた兵士達はいざというとき信用ならないからだ。
上陸時、街を襲えなかった点で作戦は破綻していた。
軍は略奪なしには体制を維持できないのだ。
上陸しようと船の甲板に出た瞬間から狙い撃ちされ、砂浜に下りるまでに隊の人数は3分の1になっていた。
島は狭く不毛の地で、略奪できる物資もないために残り二日の攻勢が限度であると見られている。
でないと我々は攻めきれず負ける。待つのは餓死と反乱だ。
無理矢理連れてきた兵士達はいざというとき信用ならないからだ。
上陸時、街を襲えなかった点で作戦は破綻していた。
軍は略奪なしには体制を維持できないのだ。
上陸開始から二日、我々は海岸から十メートルの距離でずっと足踏みさせられている。
走ってすぐのその距離が果てしなく遠い。
走ってすぐのその距離が果てしなく遠い。
今朝、状況は好転した。
弓隊の攻撃が成功したのである。
砂浜を駆ける際に最も厄介だったミュイーンと鳴くアーティファクトも静かになった。
絶好の機会である。攻勢としても最後になるだろう。決着の時だ。
弓隊の攻撃が成功したのである。
砂浜を駆ける際に最も厄介だったミュイーンと鳴くアーティファクトも静かになった。
絶好の機会である。攻勢としても最後になるだろう。決着の時だ。
「構えー!進めー!」
太鼓を叩かせ、前へ進ませる。
兵達を恐れさせた足を吹き飛ばす魔法も今や発動しない。
あるのはパンッ!パンッ!と散発的な魔法音だけだ。
太鼓を叩かせ、前へ進ませる。
兵達を恐れさせた足を吹き飛ばす魔法も今や発動しない。
あるのはパンッ!パンッ!と散発的な魔法音だけだ。
空から氷の塊と矢が降り、動くもの全てを串刺しにし、火の玉が敵味方を焼き尽くす。
3人撃たれても2人が雄叫びを上げて進む。
その2人が足を撃たれ倒れても、後ろの10人が生きたままの彼らを踏み潰して進んだ。
3人撃たれても2人が雄叫びを上げて進む。
その2人が足を撃たれ倒れても、後ろの10人が生きたままの彼らを踏み潰して進んだ。
獅子心薬の効果は上々だ。
上陸前にも兵達に飲ませていたのだが、量が少なかったようだ。
死体の山のせいで目が覚めてしまい、混乱を来たし戦線は総崩れとなった。
そこで新薬と併用して通常量の2倍を飲ませた。
上陸前にも兵達に飲ませていたのだが、量が少なかったようだ。
死体の山のせいで目が覚めてしまい、混乱を来たし戦線は総崩れとなった。
そこで新薬と併用して通常量の2倍を飲ませた。
「カカ、カカ、カカロカカカカロカカロカカロ」
「ぐるるるるうああああっ」
「最高にハイって返答だぁあああ!」
「ぐるるるるうああああっ」
「最高にハイって返答だぁあああ!」
すると人間とは思えない獣染みた声を出し始め、
前の味方を突き飛ばし、常識外の速度で敵へと走っていった。
魔法が飛び交う中を果敢に進み、足を撃たれても両の手で這い進む。
両手剣を片手で軽々と操り、雄雄しく吼えながら剣を振るう。
前の味方を突き飛ばし、常識外の速度で敵へと走っていった。
魔法が飛び交う中を果敢に進み、足を撃たれても両の手で這い進む。
両手剣を片手で軽々と操り、雄雄しく吼えながら剣を振るう。
獅子心兵は肉の力で鉄の茨を強引に振り切り、魔物の潜む溝の中へ強引に踊り込んだ。
キンピカのゴキブリのごとく、異常な速度で暴れまわる。
敵陣で嵐のごとく荒れ狂い、魔物の首を跳ね飛ばし、黒い強靭な外皮ごと中身を叩き潰した。
キンピカのゴキブリのごとく、異常な速度で暴れまわる。
敵陣で嵐のごとく荒れ狂い、魔物の首を跳ね飛ばし、黒い強靭な外皮ごと中身を叩き潰した。
「GAAAAAA」
「ぐげっ」
「ぐげっ」
魔物の魔法が届くと同時に獅子心兵はあっさりと崩れ落ちた。
「脆い」
ただの人間の肉体では仕方ない。
だが魔導師と違って“代え”が効く。
鉄の茨が開いた穴から次から次へと獅子心兵達が溝へ飛び込み、魔物によって殺されていく。
しかし獅子心兵も簡単には殺されない。
一人一殺。断末魔の叫びを上げて魔物の首をもぎ取った。
「脆い」
ただの人間の肉体では仕方ない。
だが魔導師と違って“代え”が効く。
鉄の茨が開いた穴から次から次へと獅子心兵達が溝へ飛び込み、魔物によって殺されていく。
しかし獅子心兵も簡単には殺されない。
一人一殺。断末魔の叫びを上げて魔物の首をもぎ取った。
魔導師達の詠唱、爆砕される壁、雪崩れ込む獅子心兵。
島は制圧された。