自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた@創作発表板・分家

177 外伝28

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カレアント公国ナーワッグ練兵場
ミレナ女王はじめ国軍の高官が見守るなか一機のP-39が低空から侵入してきた
P-39の胴体にはカレアント軍のエンブレムが誇らしげに描かれ
両翼には37ミリ砲一門を収めたガンポッドが吊り下げられている
意外なことにカレアント公国が主力戦闘機に選定したのはP-51でもP-47でもなく
P-39エアラコブラであった
その理由はアメリカ軍で一番デカい火器を積んだ戦闘機だからという至極単純なものであったが
パワー信奉・一点豪華主義というカレアント人の国民性を考えればそれなりに頷ける
それに戦闘空域を選ぶ限りP-39も充分に強力な戦闘機である
少なくとも正史においてドイツ空軍のエクスペルテンが操るMe109・Fw190と相対した
ソビエト空軍の高位エースのうち相当数がそのスコアをP-39で稼いだという事実は無視できない
そしてP-39の大火力に惚れ込んでいたカレアント軍は更なる火力強化を図り
ベル社の設計チームが再三に渡って警告を発してしていたにもかかわらず
怖いもの知らずの王立空技廠は試作機の製作を強行し
ここにミレナ女王はじめ国軍上層部を招いてのデモンストレーション飛行と相成ったのである

プロペラ軸の37ミリ砲に加え両翼に37ミリ砲を装備したP-39は標的として用意された
M6装甲車-性懲りも無くハンドルを握ったミレナが用水路に沈めたものだ-に向って
砲火を開く
37ミリ砲三門の斉射による反動はP-39の対気速度を一気に100マイル以上減殺し
失速状態に陥ったP-39はキリモミ降下に入ってしまった
並みのパイロットなら為すすべも無く地面に激突していたところだが
操縦桿を握るクサム大尉は早期から義勇兵としてアメリカ陸軍航空隊に参加し
公認撃墜16騎のスコアを持つカレアント人のトップエースだった
クサムは地上すれすれでコントロールを取り戻し
P-39は練兵場の芝生の上に完璧な胴体着陸を決めた
コクピットを降りたクサムは駆け寄ったミレナにこう言ったという
「この機体を実戦配備したら飛行機と同数の死亡通知を出すことになるでしょう」

「だから止めとけって言ったんだよ…」
空技廠のオフィスでブルース・ボーランドは報告書を読みながらボヤいた
ロッキード社の新鋭デザイナーだったボーランドが高給とネコ耳メイドに釣られて
カレアント公国王立航空技術廠主任の座についたのは半年前
以来お偉方の無知からくる常軌を逸した要求を
航空工学のイロハを説きながら撤回または修正させるという作業を日々休み無く繰り返してきた
ボーランドは消耗の極に達しようとしていた
やけくそ気味にワイルドターキーのグラスを傾けるボーランドのもとに
“機密”のスタンプが捺された封筒が届けられる
中身を一瞥したボーランドはテーブルに突っ伏した
それはP-39のプロペラ軸に装備された37ミリ砲を
B-25のH型が搭載している75ミリカノン砲に換装した試作機の製作命令だった
「俺は設計屋だー!魔法使いじゃね―――ッ!!」
ボーランド心の底からの叫びだった

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