「おや?起きたようですね」
中人は設置してある室内電話で連絡を取ると、茂人へ振り返った。
分厚い強化樹脂で保護されたマジックミラーの向こう側。
ベッドから上半身を起こしたまま、少女はぼんやりと飴色の瞳で光る天井を眺めていた。
小学生高学年ぐらいの、茂人より40cmも背の低い健康的な小麦色の肌をした、あどけない大きな瞳の幼女。
起きたばかりで目が冴えていないのか、大きく伸びをした。
中人は設置してある室内電話で連絡を取ると、茂人へ振り返った。
分厚い強化樹脂で保護されたマジックミラーの向こう側。
ベッドから上半身を起こしたまま、少女はぼんやりと飴色の瞳で光る天井を眺めていた。
小学生高学年ぐらいの、茂人より40cmも背の低い健康的な小麦色の肌をした、あどけない大きな瞳の幼女。
起きたばかりで目が冴えていないのか、大きく伸びをした。
「彼女がエルブ王国の親善大使です」
完璧に整い過ぎて人間離れした顔立ちと肩まで伸びたサラサラの銀髪。
葉っぱの様な長い耳がぴくぴくと動き、首を傾げる度に殆ど銀色に見えるプラチナブロンドの髪が光る。
浅黄色の薄い介護服の下で、まだ性別を匂わせない体が息衝いている。
完璧に整い過ぎて人間離れした顔立ちと肩まで伸びたサラサラの銀髪。
葉っぱの様な長い耳がぴくぴくと動き、首を傾げる度に殆ど銀色に見えるプラチナブロンドの髪が光る。
浅黄色の薄い介護服の下で、まだ性別を匂わせない体が息衝いている。
「子供が大使をやるなんて、酷い国だ」
「親善大使と言っても、我々研究チームが勝手に呼んでるだけですがね。
彼女は無理心中で生き残っただけの子供です。親善大使なんて大それたものじゃありません。
ですが、異世界人との第一接触。親善か敵対かはあなたの態度に掛かっているわけです」
「責任重大だね」
「相手は子供ですから、気楽にやって下さい」
そうはいうがね中人さん。彼女、とても偉そうだよ。
滑らかな肌と薄いピンクがかかった頬、軽くルージュがのった唇と桜色の手入れされた爪。
眠たげに開かれた目は退廃と清楚さが混ざり合い、不可思議さと妖艶さを増している。
色気のある 妖艶な幼女。
「親善大使と言っても、我々研究チームが勝手に呼んでるだけですがね。
彼女は無理心中で生き残っただけの子供です。親善大使なんて大それたものじゃありません。
ですが、異世界人との第一接触。親善か敵対かはあなたの態度に掛かっているわけです」
「責任重大だね」
「相手は子供ですから、気楽にやって下さい」
そうはいうがね中人さん。彼女、とても偉そうだよ。
滑らかな肌と薄いピンクがかかった頬、軽くルージュがのった唇と桜色の手入れされた爪。
眠たげに開かれた目は退廃と清楚さが混ざり合い、不可思議さと妖艶さを増している。
色気のある 妖艶な幼女。
「なんでエルブ王国なんだ。エルフ王国ならスッキリするのに」
「いやはや。彼女達が自決する際に『エルブ王国に栄光あれ』と言ったからですかね」
「言葉が通じるのか!?」
「いえ。そう聞こえただけです。正しい発音かも判りませんし、違う意味の言葉かもしれません」
「ようは何も判っていないんだね」
「確かめる前に自爆してしまいましたから。
だからあなたを呼んだのです。エルフ語なんて言語も使えますし」
確かにエルフ語は珍しいよな。指輪物語を読む時ぐらいしか役に立たないし、使えても意味がない。
D&Dの小道具に使えたら便利かなと思って、半ば趣味で覚えた言語だ。
ゲームに使ったら、相手が意味を理解できなくて絶不評だった。
「いやはや。彼女達が自決する際に『エルブ王国に栄光あれ』と言ったからですかね」
「言葉が通じるのか!?」
「いえ。そう聞こえただけです。正しい発音かも判りませんし、違う意味の言葉かもしれません」
「ようは何も判っていないんだね」
「確かめる前に自爆してしまいましたから。
だからあなたを呼んだのです。エルフ語なんて言語も使えますし」
確かにエルフ語は珍しいよな。指輪物語を読む時ぐらいしか役に立たないし、使えても意味がない。
D&Dの小道具に使えたら便利かなと思って、半ば趣味で覚えた言語だ。
ゲームに使ったら、相手が意味を理解できなくて絶不評だった。
「エルフだからエルフ語なんて身も蓋もない。
灰色エルフにクウェンヤで話しかけるかシンダール語で話すかだけでも態度が違うんだよ」
「クゥエンヤですか?」
「ああ、エルフにも方言があるってことさ。クウェンヤは中つ国では禁止されてる西の公用語だ」
灰色エルフとは指輪物語に出てくるエルフの亜種で、部屋の向こうにいる彼女に似た容姿をしている。
やや背が高く、灰色がかった白い肌に銀色の髪と琥珀色の瞳、 あるいは薄い色合いの金髪と菫色の瞳。
よそ者嫌いの偉そうなエルフである。願わくば幼女が人間嫌いのタカビーでないことを祈ろう。
灰色エルフにクウェンヤで話しかけるかシンダール語で話すかだけでも態度が違うんだよ」
「クゥエンヤですか?」
「ああ、エルフにも方言があるってことさ。クウェンヤは中つ国では禁止されてる西の公用語だ」
灰色エルフとは指輪物語に出てくるエルフの亜種で、部屋の向こうにいる彼女に似た容姿をしている。
やや背が高く、灰色がかった白い肌に銀色の髪と琥珀色の瞳、 あるいは薄い色合いの金髪と菫色の瞳。
よそ者嫌いの偉そうなエルフである。願わくば幼女が人間嫌いのタカビーでないことを祈ろう。
「忌み語ですか。機嫌を損ねたら厄介ですね。そういえば彼女、先ほどからミラーをずっと見ていますね」
「マジックミラーの向こう側が見えるのかな」
常識外の魔導師の目には、自分達の街はどんな風に見えるのだろう?
自然の精霊のない死に絶えた街に見えるのか、はたまた都市の精霊が集まる世界か、
想念渦巻く魔界か、それとも普段と代わりないか、興味は絶えない。
「興味深い行動です。彼女の目に私達はどんな風に見えているのでしょうね」
魔法使いの瞳には現代社会はどのように見えるのだろうか。
「マジックミラーの向こう側が見えるのかな」
常識外の魔導師の目には、自分達の街はどんな風に見えるのだろう?
自然の精霊のない死に絶えた街に見えるのか、はたまた都市の精霊が集まる世界か、
想念渦巻く魔界か、それとも普段と代わりないか、興味は絶えない。
「興味深い行動です。彼女の目に私達はどんな風に見えているのでしょうね」
魔法使いの瞳には現代社会はどのように見えるのだろうか。
「不思議に思っていたんだが、彼女を隔離してるのは?耳が長いだけの可愛い子じゃないか」
「正体不明の細菌から私達と貴重なサンプ…彼女を守るためですよ。
宇宙から帰還した宇宙飛行士には入念な身体検査が義務付けられているのは知っていますか」
「宇宙暮らしで骨が弱くなっていたり、病気を持ち込んだりしないためだね」
「その通り。どんな正体不明の菌を持ち込んでいるか判りませんから。宇宙は謎が多いんです」
じろりと中人を睨んだ。『魔法』の研究に人体実験、まるでサイバーパンクの悪徳企業だ。
「異世界は宇宙以上か。モルモットだな」
「正体不明の細菌から私達と貴重なサンプ…彼女を守るためですよ。
宇宙から帰還した宇宙飛行士には入念な身体検査が義務付けられているのは知っていますか」
「宇宙暮らしで骨が弱くなっていたり、病気を持ち込んだりしないためだね」
「その通り。どんな正体不明の菌を持ち込んでいるか判りませんから。宇宙は謎が多いんです」
じろりと中人を睨んだ。『魔法』の研究に人体実験、まるでサイバーパンクの悪徳企業だ。
「異世界は宇宙以上か。モルモットだな」
「冷たい目はやめて下さい。隔離は私達を守ると同時に彼女を守るのに繋がります。
解剖で判明しましたが、エルフと人類は身体構造が違うんです。似通っているところも多いのですが。
それに生体解剖や電極付けたりするマッドな実験はやりませんよ。
解剖は死体のサンプルが沢山ありますし、彼女は貴重な存在ですから」
つまり機会があればやるかもしれない、か。
日本政府は現在のところ、彼女達に人権を付加していない。
たとえ人の姿をしていても動物扱いだ。
「別の生命体なのか。異世界人にとっても致命的な菌があるかもしれないからね」
解剖で判明しましたが、エルフと人類は身体構造が違うんです。似通っているところも多いのですが。
それに生体解剖や電極付けたりするマッドな実験はやりませんよ。
解剖は死体のサンプルが沢山ありますし、彼女は貴重な存在ですから」
つまり機会があればやるかもしれない、か。
日本政府は現在のところ、彼女達に人権を付加していない。
たとえ人の姿をしていても動物扱いだ。
「別の生命体なのか。異世界人にとっても致命的な菌があるかもしれないからね」
「説明が省けて助かります」
「旅行でもアフリカや南アメリカの未開地に行く場合、防疫注射するからね」
彼女の言葉にも一理あった。
危険な寄生虫や虫を国内に持ち込まれたら、免疫力のおちた現代人には耐えられまい。
異世界の病気に対し私達が免疫があるのかすら不明だ。
「旅行でもアフリカや南アメリカの未開地に行く場合、防疫注射するからね」
彼女の言葉にも一理あった。
危険な寄生虫や虫を国内に持ち込まれたら、免疫力のおちた現代人には耐えられまい。
異世界の病気に対し私達が免疫があるのかすら不明だ。
「異世界人は中世レベルの科学技術ですから、
赤痢やマラリア、日本では絶滅した病気を彼女が保菌しててもおかしくありません」
「彼女は健康じゃないか。ほら、伸びをしてる」
緊迫した会話が交わされる向こうで、
長い銀髪に炒った小麦の肌をした幼女がベッドで華奢な体を伸ばしていた。
赤痢やマラリア、日本では絶滅した病気を彼女が保菌しててもおかしくありません」
「彼女は健康じゃないか。ほら、伸びをしてる」
緊迫した会話が交わされる向こうで、
長い銀髪に炒った小麦の肌をした幼女がベッドで華奢な体を伸ばしていた。
「たとえ健康そうでも油断は出来ません。発症していないだけの保菌者かもしれませんから。
もし健康でも…大腸菌ってありますよね。夏になると毎年騒がれるO-ナントカ菌です。
そういったものを持っているとも限らない」
「それじゃ、外に一歩も出られないじゃないか」
「私達は病気に関してはある程度は楽観視してます。彼らは人類と一緒に暮していますからね。
ちなみに当研究所は日本でも有数のレベル4BSL(バイオセーフティレベル)を誇っています。
レベル2区画は何処にでもありますが4は数えるほどなんですよ。細菌研究だってできます。
病気に関してはあくまで念の為ですよ」
別の狙いがありますがね。と彼女は言葉を切った。
もし健康でも…大腸菌ってありますよね。夏になると毎年騒がれるO-ナントカ菌です。
そういったものを持っているとも限らない」
「それじゃ、外に一歩も出られないじゃないか」
「私達は病気に関してはある程度は楽観視してます。彼らは人類と一緒に暮していますからね。
ちなみに当研究所は日本でも有数のレベル4BSL(バイオセーフティレベル)を誇っています。
レベル2区画は何処にでもありますが4は数えるほどなんですよ。細菌研究だってできます。
病気に関してはあくまで念の為ですよ」
別の狙いがありますがね。と彼女は言葉を切った。
「議論を重ねても埒が明かない、そろそろ話しかけてみようか」
「話しますか?」
「お願いします」
「話す際は会話ボタンを押して声を出してください。
押しながら話さないと此方の会話は向こうの彼女には聞こえません。彼女の機嫌には気を付けて下さいね」
「随分と警戒するんだな。幼女が口から炎でも吐くのか。
目からビームはシュールだ。ただし、魔法は尻からでるのは見たくないな」
だとしたら嫌だ。魔法に対する自分のイメージが根元から崩壊する。
夢は夢のままでいさせて欲しい。
足の臭いで発動する臭魔法や皮膚を切り裂かれる痛みで発動するドM魔法なんか見たかない。
せめて音を聞いて発動する魔法や全裸で発動するぐらいに留めて欲しい。
「くくく。似たようなものです。魔方陣が出て、手から火炎を吐き出したり氷の矢を飛ばすぐらいですよ」
良かった。イメージの範疇で。
「話しますか?」
「お願いします」
「話す際は会話ボタンを押して声を出してください。
押しながら話さないと此方の会話は向こうの彼女には聞こえません。彼女の機嫌には気を付けて下さいね」
「随分と警戒するんだな。幼女が口から炎でも吐くのか。
目からビームはシュールだ。ただし、魔法は尻からでるのは見たくないな」
だとしたら嫌だ。魔法に対する自分のイメージが根元から崩壊する。
夢は夢のままでいさせて欲しい。
足の臭いで発動する臭魔法や皮膚を切り裂かれる痛みで発動するドM魔法なんか見たかない。
せめて音を聞いて発動する魔法や全裸で発動するぐらいに留めて欲しい。
「くくく。似たようなものです。魔方陣が出て、手から火炎を吐き出したり氷の矢を飛ばすぐらいですよ」
良かった。イメージの範疇で。
「怖い怖い。精々礼を尽くすとしよう。壁は大丈夫なのかな」
「もちろんです。竹島沖で使われていた火炎放射程度なら大丈夫でしょう」
「怪獣みたいですね」
「みたいじゃありません。怪獣、なんですよ」
普通、人が火を放ったり氷を出したりできないものな。
「もちろんです。竹島沖で使われていた火炎放射程度なら大丈夫でしょう」
「怪獣みたいですね」
「みたいじゃありません。怪獣、なんですよ」
普通、人が火を放ったり氷を出したりできないものな。
スピーカーに向かってエルフ語を話すと、壁の向こうにいる銀髪の幼女はびくりと動いた。
『練習、練習、聞こえているなら右手を上に上げてください』
『聞こえているなら右手を上げてください』
『聞こえているなら右手を下げてください』
『練習、練習、聞こえているなら右手を上に上げてください』
『聞こえているなら右手を上げてください』
『聞こえているなら右手を下げてください』
外交官の第一声としては有るまじき言葉。
実験だから仕方がない。外交の前提条件は言葉が通じるか否かだ。
部屋に設置されたスピーカーから声が出ると
幼女はびっくりした様子で壁に偽装してある音源へ目を向けた。
実験だから仕方がない。外交の前提条件は言葉が通じるか否かだ。
部屋に設置されたスピーカーから声が出ると
幼女はびっくりした様子で壁に偽装してある音源へ目を向けた。
「反応がオーバーですね」
「かなり驚いてるな。正確にスピーカーへと顔を向けたぞ」
「ボリュームが大きすぎるのではないでしょうか」
「彼女は耳が大きいからね。耳がいいのかな。音を下げるか」
エルフ語のシンダール語とクゥエンヤが通じなかったので
言葉の元となった古ケルト語で話す。
『聞こえているなら右手を上げてください』
『聞こえているなら右手を下げてください』
「かなり驚いてるな。正確にスピーカーへと顔を向けたぞ」
「ボリュームが大きすぎるのではないでしょうか」
「彼女は耳が大きいからね。耳がいいのかな。音を下げるか」
エルフ語のシンダール語とクゥエンヤが通じなかったので
言葉の元となった古ケルト語で話す。
『聞こえているなら右手を上げてください』
『聞こえているなら右手を下げてください』
幼女は聞き覚えのない言葉で困惑しているようだった。
右に左に首をふりふり。部屋の中をぐるぐる。ぺたんっと床にこけた。
ちょっとかわいそうだ。
「うーむ。おろおろするばかりだね。警戒してるのか」
「目の保養になりますが。そろそろ新しい反応が欲しいですね」
『聞こえているなら右手を上げてください』
『聞こえているなら右手を下げてください』
北京語、ドイツ語で同じ意味の語を話す。
「彼女もがんばって聞き取ろうとしているみたいだが、声には驚くものの反応が薄いな」
ケルト語で何らかの反応を示さない時点でインド・ヨーロッパ語族は望み薄なのかも。
右に左に首をふりふり。部屋の中をぐるぐる。ぺたんっと床にこけた。
ちょっとかわいそうだ。
「うーむ。おろおろするばかりだね。警戒してるのか」
「目の保養になりますが。そろそろ新しい反応が欲しいですね」
『聞こえているなら右手を上げてください』
『聞こえているなら右手を下げてください』
北京語、ドイツ語で同じ意味の語を話す。
「彼女もがんばって聞き取ろうとしているみたいだが、声には驚くものの反応が薄いな」
ケルト語で何らかの反応を示さない時点でインド・ヨーロッパ語族は望み薄なのかも。
英語、イギリス英語で話すとついに反応があった。
『聞こえているなら右手を上げてください』
『聞こえているなら右手を下げてください』
子供が英会話教室で先生の発音を頼りに話すような、片言の英語っぽい発音。
「あっ、asdfghjty。コレハ トムデス」
「おっと。反応がありましたよ」
「続けてください」
会話の基本は単語の確認だ。
ひとつひとつ言葉をはっきりさせれば回答へ近づく。
『トムはわたしですか?』
「あなたはペンです」
『わたしはペンですか?』
「はい、わたしがトムです。それもかなりのトムです」
『ペンとは何ですか?』
「いいえ、ちがいます」
外国人に道を尋ねられた日本人のようなちぐはぐな会話だった。
『聞こえているなら右手を上げてください』
『聞こえているなら右手を下げてください』
子供が英会話教室で先生の発音を頼りに話すような、片言の英語っぽい発音。
「あっ、asdfghjty。コレハ トムデス」
「おっと。反応がありましたよ」
「続けてください」
会話の基本は単語の確認だ。
ひとつひとつ言葉をはっきりさせれば回答へ近づく。
『トムはわたしですか?』
「あなたはペンです」
『わたしはペンですか?』
「はい、わたしがトムです。それもかなりのトムです」
『ペンとは何ですか?』
「いいえ、ちがいます」
外国人に道を尋ねられた日本人のようなちぐはぐな会話だった。
「だめだこりゃ」
「言葉は難しいですね」
「なら最後に日本語でやってみようか」
『聞こえているなら右手を上げてください』
『聞こえているなら右手を下げてください』
幼女はサッと右手を上げ下げた。
「通じてる!?」
しかも日本語だ!
「偶然かもしれない」
興奮を抑え確認の言葉を紡ぐ。
『私の言葉が聞こえますか?聞こえているなら首を振ってください』
幼女はぶんぶんと首を振った。
そりゃあもう、残像ができそうな勢いで。
首がかくんかくんと揺れた。
慌てて止めさせる。
『振り過ぎです』
「言葉は難しいですね」
「なら最後に日本語でやってみようか」
『聞こえているなら右手を上げてください』
『聞こえているなら右手を下げてください』
幼女はサッと右手を上げ下げた。
「通じてる!?」
しかも日本語だ!
「偶然かもしれない」
興奮を抑え確認の言葉を紡ぐ。
『私の言葉が聞こえますか?聞こえているなら首を振ってください』
幼女はぶんぶんと首を振った。
そりゃあもう、残像ができそうな勢いで。
首がかくんかくんと揺れた。
慌てて止めさせる。
『振り過ぎです』
「お茶が欲しいのう」
幼女が喋った。
幼女特有の甲高い声、老成した響きの言葉。
記念すべき、現代人と異世界人が通じ合った第一声であった。
幼女特有の甲高い声、老成した響きの言葉。
記念すべき、現代人と異世界人が通じ合った第一声であった。