自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた@創作発表板・分家

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匿名ユーザー

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「おつかれさまです」
「よう、非番かい?ええなあ。ええなあ」

 警備の谷中さんに挨拶する。
午前6時、朝日が昇りつつある頃。
私は基地の外へ散歩に出かけていた。
戦闘行為を行ったので休暇が出たのだ、PTSD(心的外傷後ストレス障害)
を防ぐうんたらかんたら制度のおかげである。

 IDカードを提示し、有刺鉄線と二重の車両止めが置かれた道を跨ぎ、
上に監視カメラが設置された分厚いコンクリの壁を抜け、外へ出る。
日本各地から派遣されている自衛隊の中でも、習志野組み、空挺出身者の警備は内と外に対して厳しい。
教導隊としての側面と対テロをはじめとする、
各種特殊任務を実際に遂行する必要性から情報管理は厳しいのだ。
帰化外国人が10年以上にわたってスパイ行為を働いていた某海上本部とは違う・・・と思う。

「おはよう。レッド、今朝は冷えるな、えぇ?」

 朝の冷たい空気が身に染みる。
日が昇る前が寒いのは異国であるエルブでも変わらない。

「ああ、何を!ああっここで動かしちゃ駄目ですよ!待て!止まれ!うぁあああ・・・」
『レッド聞こえるか。頭のイカれた小男達がいる。ひとりでは手に負えん』

 許可証を見せ二度目のチェックを受けていると、ゲートの向こうから男の情けない悲鳴が聞こえた。
朝っぱらから平和団体の殴り込みだろうか?
相手に苦労している、手を貸した方がいいだろう。
詰め所の無線に答えた。

『よぉしすぐ行く。カッコイイとこ見せましょ♪』
『容疑者は男性、髭面、130cm、髪は茶、筋肉モリモリマッチョマンの変態だ』

 ―――――――ゲートを抜けると、そこは男祭りだった。

 セダンに群がる、バイキングみたいな帽子を被った、髭顔、丸鼻、オーバーオールの小男達。
チョビ髭、マッチョの群れは無限1機UPで増殖した任天堂の配管工を連想させた。

「のう!のう!ちょっとぐらい機械弄らせてもらってもいいじゃろ?」
「ちゃんと元に戻して返すからのう?」
「そうじゃ!そうじゃ!」
「困りますよ!この車、公用車なんですよ。税金から出てるんです!壊したら弁償なんですっ!」

 ビジネススーツを着た乗客が必死に説得している。
女性だ。民間人だろうか。
小男達はやんややんやと車へ詰め掛け、車はクラクションを鳴らしワイパーを動かして抵抗している。
現地住民とトラブっているようだ。

「ちょ、困りますよぉ!シート外そうとしないでくださぃ!あああ!それも駄目です」

 警備達はボンネットに乗ろうとするちょび髭を降ろすのに精一杯。 
乗客は困りすぎて車内半泣きになっている。
可哀そうなので声を掛けた。

「てこずっているようだな、手を貸そう」
「リーダーは居るか?」

 一斉に小男達の視線が私に集まる。
胸を張る。
これぐらいの視線で動じていては分隊長など務まらない。

「居ないのか?」
「俺じゃ。ゲルニカじゃ、ゲドと呼ばれておる」
「赤沢です。レッドと呼んでください」

 髭もじゃもじゃのバイキングみたいな小男が進み出た。
ボスの証なのか、ゲドだけ服装が豪華で、派手に刺繍がされた羽織を着て
指に金銀宝石の付いた指輪をメリケンサックみたく付けていた。
時代劇で見る一昔前のヤクザの大親分である。

「日本人の自動車とやらに興味が出たんじゃ。少し、いじらせて貰えないかの」
「自動車については輸送科か機甲科に問い合わせてください。
 正当な理由があっても、これでは強盗と変わりませんよ」

 やんわりと諭した。現地人との関係は大事だ。

「一口では言えん、とにかく俺を信じろ」

 いきなり信じろ、と来た。
もしかして理屈が通じない種類の人間か? 

「無理だそんなの、知り合ってまだ5分と経ってない」
「何所も宮仕えの役人は頭が固いのう。そこで、いい話があるんじゃ」

 ゲドは小袖を探ると、小指の先ほどの金塊を握っていた。
ごつい皮の手を開き見せる。

「役人はトロトロしてて面倒でのお、これで手続きが短くならんかの?
 これひとつで馬が5頭買えるぞい?」

 門の真正面で買収するとは、肝の据わったじじいである。

「お断りします。私は公僕です」

 きっぱり断る。
日本ではあいまいは美徳である。
海外ではそうはいかない。
前にインドで旅行した時、言葉を濁して断ったらえらい目にあった。
何がニポンジンカネバライヨイネーだ。
木彫りの民族工芸をボッた値段で買わされてしまった。

「断ったぞ」
「断った」
「ほう?あれをのう?」

 良くない雰囲気だ。
バイキングマリオ達がざわめいている。
え?ちょ、選択を間違えたのか?

「いい度胸だな。気に入った。街であったら一緒に酒を飲むとしよう」

 ゲドは豪快に笑い飛ばすと、からころと足音を響かせ
取り巻きを引き連れ去っていった。

「あ、ありがとうございます」

 車の窓から眼鏡を掛けた民間人の女性が頭を下げていた。
髪の長い吹けば飛びそうな女だった。

「いや、あんたも悪いんだぞ。
もし、車を乗り入れたのがベトナムの貧民街だったら五分でフレームだけになっちまう。
基地の周囲なら警備隊が廻ってるし、治安も良いが日本とは違う。
余り見せびらかさない方がいい」

 わざと言葉を汚くして言った。
まったく、海外派遣で観光気分で来る国会議員の警護にどれだけ私達の手間と危険が増すか、
接待の準備と警護ルートを変更するのがどんだけ大変か、
来るのは落語家とアイドルだけでいいんだよ・・・ぶつぶつ。

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