「よう。兄ちゃん戻ったか」
ゲドが酒瓶を突き出した。
飲め、というサイン。
飲め、というサイン。
「あー、ちょっと悪いんだが向こうで意気投合してね。二人で飲もうと思う」
「やるねぇ、兄さん。黒エルフの女を引っ掛けるなんて普通できないぜ!」
「運が良かっただけさ」
「姉さんも一緒にのまねぇか」
「やるねぇ、兄さん。黒エルフの女を引っ掛けるなんて普通できないぜ!」
「運が良かっただけさ」
「姉さんも一緒にのまねぇか」
すっかり出来上がった様子のゲドが震える手でコップを掴む。
私も椅子にあのまま座っていたらべろべろに酔っていたに違いない。
私も椅子にあのまま座っていたらべろべろに酔っていたに違いない。
「バカヤロー。人の恋路を邪魔すんじゃねぇ」
「そうかい、そうかい!んじゃ、二人で楽しんできなっ!」
「そうかい、そうかい!んじゃ、二人で楽しんできなっ!」
芝居を打ってやっと酒場から出られた。
酒はゲドのおごりだそうなので金の心配はない。
もっとも、払えと言われてもエルブ国の通貨は持っていないのだが。
適当に礼を言って彼女と別れ、街の観光を楽しむことにした。
酒はゲドのおごりだそうなので金の心配はない。
もっとも、払えと言われてもエルブ国の通貨は持っていないのだが。
適当に礼を言って彼女と別れ、街の観光を楽しむことにした。
エルブ、自衛隊駐屯地、イクバール基地から河を挟んで少しはなれた場所にある都市。
エルブ国首都インジル。“あの日”の後、初めて海外と接触があった国。
7月のあの日、突如日本は未曾有のテロに襲われた。
海外からの有線無線を問わない無差別通信切断、謎の生物の襲来。
アメリカ、中国、ロシアなどあらゆる国家との関係は断絶した(今だ通信は回復しない)、
大規模破壊兵器でも使用されたのか、周辺各国の地形は劇的な変化が発生しており、
各国復旧の目処は立っていないとされている。
政府は破壊を謎の生物郡と大規模破壊兵器が原因にあると推測、現在調査が行われている。
エルブ国首都インジル。“あの日”の後、初めて海外と接触があった国。
7月のあの日、突如日本は未曾有のテロに襲われた。
海外からの有線無線を問わない無差別通信切断、謎の生物の襲来。
アメリカ、中国、ロシアなどあらゆる国家との関係は断絶した(今だ通信は回復しない)、
大規模破壊兵器でも使用されたのか、周辺各国の地形は劇的な変化が発生しており、
各国復旧の目処は立っていないとされている。
政府は破壊を謎の生物郡と大規模破壊兵器が原因にあると推測、現在調査が行われている。
日本政府は非常事態宣言を発令した。
竹島駐留韓国軍が謎の生命体による“一兵たりとも残さない”徹底的な襲撃。
未確認生物による報道ヘリ撃墜、自衛隊が発砲許可を得ておらず見殺しにした夕日事件。
その際明らかになった有事制法の不備の露呈と、総理の「国家は人あってのものである」
との発言に端を発した、超法規的措置による自衛隊国内展開。「異形との戦い」宣言。
他国と通信が付かなくなったことによる輸入物資の欠乏の危惧、物資統制令の開始。
竹島駐留韓国軍が謎の生命体による“一兵たりとも残さない”徹底的な襲撃。
未確認生物による報道ヘリ撃墜、自衛隊が発砲許可を得ておらず見殺しにした夕日事件。
その際明らかになった有事制法の不備の露呈と、総理の「国家は人あってのものである」
との発言に端を発した、超法規的措置による自衛隊国内展開。「異形との戦い」宣言。
他国と通信が付かなくなったことによる輸入物資の欠乏の危惧、物資統制令の開始。
そうした事態が急変する中で決定されたのが
“自衛隊による対外調査”と“早急な物資確保のための復興支援事業”。
エルブは復興支援に選ばれた、現地で接触した地方自治体の一つである。
“自衛隊による対外調査”と“早急な物資確保のための復興支援事業”。
エルブは復興支援に選ばれた、現地で接触した地方自治体の一つである。
地方自治体とされているのは、旧来国家の消滅。
つまりはインドやイラク、パキスタンなどあらゆる国が消滅していたと現地調査後判明したからで、
彼ら現地自治体がエルブ国と名乗っているからである。
交易の都合上、日本としては都市国家エルブを公的に国と認めている。
つまりはインドやイラク、パキスタンなどあらゆる国が消滅していたと現地調査後判明したからで、
彼ら現地自治体がエルブ国と名乗っているからである。
交易の都合上、日本としては都市国家エルブを公的に国と認めている。
現在日本は国外情報は極端に少ない。
そして私は自衛隊海外派遣に志願し此処に居る。
そして私は自衛隊海外派遣に志願し此処に居る。
「・・・・・なんつーか。汚い街だな」
薬と蒸気と鉄の街。
それがエルブに対する印象である。
黒や金、白の髪をした多彩な人種が、ゆったりとした着物に似た風通しの良い
ベドウィン(砂漠の遊牧民)に似た外套を羽織い、背中に多くの荷物を担ぎ行き交う。
背嚢を担いだ姿はまるで登山客のようで、履き古した靴はくたびれている。
皆剣を携帯しており、皮鎧や鉄鎧、防護効果が不明のビキニ鎧など様々で見るものを飽きさせない。
雑多な人間が行き交い、中にはネコミミや犬耳をした人間?、緑や青のありえない髪や
鎧を着た人型トカゲが人影に混じる。
それがエルブに対する印象である。
黒や金、白の髪をした多彩な人種が、ゆったりとした着物に似た風通しの良い
ベドウィン(砂漠の遊牧民)に似た外套を羽織い、背中に多くの荷物を担ぎ行き交う。
背嚢を担いだ姿はまるで登山客のようで、履き古した靴はくたびれている。
皆剣を携帯しており、皮鎧や鉄鎧、防護効果が不明のビキニ鎧など様々で見るものを飽きさせない。
雑多な人間が行き交い、中にはネコミミや犬耳をした人間?、緑や青のありえない髪や
鎧を着た人型トカゲが人影に混じる。
トラックが一台通るのがやっとな石畳の街路には、馬やロバが通り、糞を撒き散らし
横丁では赤や黄色に光る妖しい飲み薬を売る耳の長い美女達が目立つ。
街のあちこちにある民家からは、色の付いた蒸気の煙が立ち上り、
排水溝には極彩色の液が流れている。トンテンカンテン聞こえる工房の配管からは
湯気が湧き出し、噴出す水が色を洗い流した。
横丁では赤や黄色に光る妖しい飲み薬を売る耳の長い美女達が目立つ。
街のあちこちにある民家からは、色の付いた蒸気の煙が立ち上り、
排水溝には極彩色の液が流れている。トンテンカンテン聞こえる工房の配管からは
湯気が湧き出し、噴出す水が色を洗い流した。
木造家屋と石製家屋、日本風の家屋に古代中国風のアレンジを加えた妙な家が並んでいて、
道は細く曲がりくねり混沌とした町並みである。
道は細く曲がりくねり混沌とした町並みである。
先ほど見た小男と同じ人種が店先で鎌(かま)や鍬(くわ)の陰干しをしていた。
まるでファンタジー世界のドワーフだなと思いつつ街の様子を聞いた。
まるでファンタジー世界のドワーフだなと思いつつ街の様子を聞いた。
「いい品ですね。叩いたら響きそうだ。エルブは鍛冶が多いんですか?」
ドワーフは店の縁側に胡坐をかき、剣の手入れをしていた。
鞘から剣の刃を上にしてゆっくり鞘から抜きつつ答える。
鞘から剣の刃を上にしてゆっくり鞘から抜きつつ答える。
「旅人さんかの?ああ、この街は市場の他にもドワーフ鍛冶と黒エルフの薬が有名でね、
大陸以外からも物が集まるのじゃ。
ウチは修理と刃物だから土産になる細工物は置いてないよ」
大陸以外からも物が集まるのじゃ。
ウチは修理と刃物だから土産になる細工物は置いてないよ」
抜いた刀を左手で持ち刀の棟に拭い紙をあて、そして下から上に向かって刀を拭いた。
手元を一切見ずに離しながら手入れをする様は慣れを感じさせる。
下から上に向かってゆっくりと、丁寧に丁寧に拭っていた。
手元を一切見ずに離しながら手入れをする様は慣れを感じさせる。
下から上に向かってゆっくりと、丁寧に丁寧に拭っていた。
「仕事の関係で、最近この辺りに越してきてから街を廻っているとこです。
皆剣を腰に付けているようですが、この辺りの治安は悪いのですか?」
皆剣を腰に付けているようですが、この辺りの治安は悪いのですか?」
白い粉の付いた鳥の毛玉で刀身を軽く叩く、
粉は刀身の両面に満遍なく付け、新しい紙で拭き取り、動作を繰り返した。
粉は刀身の両面に満遍なく付け、新しい紙で拭き取り、動作を繰り返した。
「治安を気にするってーとおめえさん、兵隊か何かか。
商人にゃあ見えないな。剣を打つのと修理なら受け付けてるよ」
「まあそんなものです」
商人にゃあ見えないな。剣を打つのと修理なら受け付けてるよ」
「まあそんなものです」
また折りたたんだ和紙にある粉を剣にかけて拭う。
何度もしているうちに刀身にぼんやりと顔が映り始めた。
何度もしているうちに刀身にぼんやりと顔が映り始めた。
「アヤカシは最近また出てくるようになったからなあ、外は必要だね。
中は・・・・・自警団ががんばっていてくれるがなあ、備えは必要だな。
前の執政官で甘い汁吸ってたリアスってえ野郎がまだ捕まってなくてな、
独立当初は治安が良かったんだが、奴らのせいでまた治安が悪くなってきてるねえ」
中は・・・・・自警団ががんばっていてくれるがなあ、備えは必要だな。
前の執政官で甘い汁吸ってたリアスってえ野郎がまだ捕まってなくてな、
独立当初は治安が良かったんだが、奴らのせいでまた治安が悪くなってきてるねえ」
刀身が鏡のようになると、また懐から新しい和紙を取り出し磨く。
「お宅、剣は持ってるかい?異国の剣ってのは色々工夫が感じられて、見るのが楽しくての」
「私物ですが」
「私物ですが」
身に付けているナイフを見せる。
小銃や手りゅう弾の携帯は許されていないものの、
駐屯地でのナイフと拳銃程度は個人使用は許されている。
あの日以来、日本の外は得体の知れない土地となったのだ。
海外での携帯に関しては、現地住民が剣を携帯し得体の知れない生物が
発生していることから自衛隊の携帯基準は緩い。
小銃や手りゅう弾の携帯は許されていないものの、
駐屯地でのナイフと拳銃程度は個人使用は許されている。
あの日以来、日本の外は得体の知れない土地となったのだ。
海外での携帯に関しては、現地住民が剣を携帯し得体の知れない生物が
発生していることから自衛隊の携帯基準は緩い。
「ふむ、シースナイフ(鞘付きナイフ)か。
使い込まれておるな。艶消しに凹凸・・・・ソードブレイカー。
先端部はバッサン系の刺突重視型・・・・先端だけが諸刃か・・ほほう、ほうほう」
使い込まれておるな。艶消しに凹凸・・・・ソードブレイカー。
先端部はバッサン系の刺突重視型・・・・先端だけが諸刃か・・ほほう、ほうほう」
ドワーフはナイフを嘗め回すように見て、しきりに頷いたり爪で弾いて音を聞いていた。
興味津々といった感じだ。
興味津々といった感じだ。
「どうやったかは知らんが・・・・柄は刃と一体化しておるのか。
鋳造か?ありえんな、精度が高すぎる。
金属の柄に刻みを入れて掴みやすく・・・・・
バランスも悪くない・・・柄は長めで投げるのにも使えると」
鋳造か?ありえんな、精度が高すぎる。
金属の柄に刻みを入れて掴みやすく・・・・・
バランスも悪くない・・・柄は長めで投げるのにも使えると」
たっぷり検分した後、ドワーフの親方は真剣な目で聞いた。
「こいつはなんて素材じゃ」
「カーボンと鉄が混ざった合金です」
「合金?ふーーーむ。青銅みたいなものか」
「カーボンと鉄が混ざった合金です」
「合金?ふーーーむ。青銅みたいなものか」
いつの間にか、剣の手入れは済んでいた。
「面白いものを見せてもらった。
どれ?ナイフじゃ身を守るのに心もとないじゃろ。
ウチの剣を見てくかい?」
どれ?ナイフじゃ身を守るのに心もとないじゃろ。
ウチの剣を見てくかい?」
ドワーフ親方はどっこいしょと胡坐をかいていた腰を持ち上げ、
店の奥へと案内した。
店の奥へと案内した。
店の中は剣だらけだった。
劣化を防ぐためなのか薄暗く狭い乾燥した店内には
刀やクレイモア、フランベルジュ、槍、長巻(ながまき)といった派手なものから
剣のグリップ、鍔(つば)、鞘の見本、手入れ用の油や紙まで揃っている。
見本用なのか広く取られた床には人の丈ほどもある大剣が抜き身で
置かれており、存在感があった。
劣化を防ぐためなのか薄暗く狭い乾燥した店内には
刀やクレイモア、フランベルジュ、槍、長巻(ながまき)といった派手なものから
剣のグリップ、鍔(つば)、鞘の見本、手入れ用の油や紙まで揃っている。
見本用なのか広く取られた床には人の丈ほどもある大剣が抜き身で
置かれており、存在感があった。
営業に入ったドワーフ親方のセールストークは凄い。
「ドワーフ刀の製法は我々の地で生まれました。
西側の発明品じゃありません。我が国のオリジナルです。
しばし遅れを取りましたが、今や巻き返しの時です」
「剣は好きだ」
「剣がお好き? 結構。ではますます気になりますよ。さあさどうぞ」
西側の発明品じゃありません。我が国のオリジナルです。
しばし遅れを取りましたが、今や巻き返しの時です」
「剣は好きだ」
「剣がお好き? 結構。ではますます気になりますよ。さあさどうぞ」
カウンターの奥から金銀で豪華に装飾されたサーベルを持って来た。
鞘から剣を抜き、身を見せる。
鞘から剣を抜き、身を見せる。
すらり。
「大業物のドワーフ刀です」
カチン
ほんの一瞬見せただけで刀を鞘に戻す。
しっかりと見るためにはもう一度自分から触らねばならない。
なかなか商売上手だ。
しっかりと見るためにはもう一度自分から触らねばならない。
なかなか商売上手だ。
「美しいでしょう?んああ仰らないで。値段は高いし、切れ味が最高でも
見かけだけで少し斬っただけで血糊が付いて切れなくなるわ、油が付くわ、ろくな事はない。
剣身もたっぷりしなりますよ、どんな強力な打撃でも大丈夫。
どうぞ持ってみて下さい、いい重さでしょう。余裕の長さだ、使い心地が違いますよ 」
「一番気に入ってるのは・・・」
「何です?」
見かけだけで少し斬っただけで血糊が付いて切れなくなるわ、油が付くわ、ろくな事はない。
剣身もたっぷりしなりますよ、どんな強力な打撃でも大丈夫。
どうぞ持ってみて下さい、いい重さでしょう。余裕の長さだ、使い心地が違いますよ 」
「一番気に入ってるのは・・・」
「何です?」
「値段だ」
追い出されてしまった・・・
今、金を持ってきてないと言うとそのナイフと交換はどうだと言われた。
愛用の品だからいいと話すと客以外に用はないさあ!帰ったと背中を押されてしまった。
金のないものに厳しいのは何処の国でも同じらしい。
今、金を持ってきてないと言うとそのナイフと交換はどうだと言われた。
愛用の品だからいいと話すと客以外に用はないさあ!帰ったと背中を押されてしまった。
金のないものに厳しいのは何処の国でも同じらしい。
・・・・・・・・
やばい、非常にやばい。
完全に迷った。
夕方が近い。基地の門限が迫る。
人に聞こうとしても・・・・いねえ。
夕方には店じまいしている。電気が通ってないんじゃ仕方がないか。
人に聞こうとしても・・・・いねえ。
夕方には店じまいしている。電気が通ってないんじゃ仕方がないか。
やっと人を見つけた。
手に布で包まれた傘ほどの箱を持っている男だ、
彼は待ち合わせに遅れた様子で剣士風の男二人に荷物を差し出していた。
手に布で包まれた傘ほどの箱を持っている男だ、
彼は待ち合わせに遅れた様子で剣士風の男二人に荷物を差し出していた。
「おーい待ってくれ!・・・ふぅ、行ったかと思ったよ」
声を掛けようとすると横から出た細い女の手に陰へ引きずり込まれた。
指を手に当てて静かにしろとの動作。
密着する柔らかい体、息が届きそうな距離にある琥珀色の澄んだ瞳に股座がいきり立つ。
昼間、店で助けてくれた女だった。
指を手に当てて静かにしろとの動作。
密着する柔らかい体、息が届きそうな距離にある琥珀色の澄んだ瞳に股座がいきり立つ。
昼間、店で助けてくれた女だった。
「追い剥ぎか」
「私に借りがあるだろ。お前にあの男を追うのを手伝って欲しい」
「駄目だ」
「私の言う通りにしろ」
「駄目だ。7時半に射撃の練習がある。付き合えない」
「今日は休め」
「私に借りがあるだろ。お前にあの男を追うのを手伝って欲しい」
「駄目だ」
「私の言う通りにしろ」
「駄目だ。7時半に射撃の練習がある。付き合えない」
「今日は休め」
この街の人間は強引だ。
ゲドといい、女といい、借りはその日のうちに返さなきゃならない法律でもあるんだろうか。
ゲドといい、女といい、借りはその日のうちに返さなきゃならない法律でもあるんだろうか。
「とんでもねえ、待ってたんだ」
剣士の片方が言葉と共に剣を振り上げ、遅れてきた男を撫で斬りにした。
悲鳴も上げられず男は斬り殺され、血飛沫を上げる。
剣士は布に包まれた箱を拾い、泣き別れになった胴体の心臓に剣を刺し、
血に濡れたマントをくるんで歩き去った。
悲鳴も上げられず男は斬り殺され、血飛沫を上げる。
剣士は布に包まれた箱を拾い、泣き別れになった胴体の心臓に剣を刺し、
血に濡れたマントをくるんで歩き去った。
私は陰で悲鳴を噛み殺していた。
職業柄、海外派遣で何度も死体は目にしている。
頭を狙撃で割られた者、近距離からアサルトライフルでずたずたにされた者、
地雷を踏んで足からの出血多量で死んだ者。
それでも、どの死体も今見ている死体よりはまともだった。
原型を留めていた。
職業柄、海外派遣で何度も死体は目にしている。
頭を狙撃で割られた者、近距離からアサルトライフルでずたずたにされた者、
地雷を踏んで足からの出血多量で死んだ者。
それでも、どの死体も今見ている死体よりはまともだった。
原型を留めていた。
剣で切られた死体は惨い。
二つに別れた胴体からは鮮やかな血が湧き出し、ショッキングピンクの腸がはみ出している。
死んで間もないせいか、死体はピクピク痙攣し
体の中央から噴出す血は石畳を紅く染め石の隙間へと入り込み、血の池が出来ていた。
心臓を突き刺され、縦に割られた上半身からは赤とピンクと濃い赤の内臓が見え、
喫煙者だったのか赤い毛細血管に包まれたピンクの肺は、黒と灰色とピンクのまだらになっている。
鉄臭が鼻に付いた。苦い唾が口に広がった。
二つに別れた胴体からは鮮やかな血が湧き出し、ショッキングピンクの腸がはみ出している。
死んで間もないせいか、死体はピクピク痙攣し
体の中央から噴出す血は石畳を紅く染め石の隙間へと入り込み、血の池が出来ていた。
心臓を突き刺され、縦に割られた上半身からは赤とピンクと濃い赤の内臓が見え、
喫煙者だったのか赤い毛細血管に包まれたピンクの肺は、黒と灰色とピンクのまだらになっている。
鉄臭が鼻に付いた。苦い唾が口に広がった。
クソッ!妙なのに巻き込まれちまった!