小国の苦悩 第十話
「帝國について、分かっている事は多くありません」
外務担当のロスピエール伯爵はレジメをぺらぺらとめくる。
ゴンザレス王国王城ゴンザレス城の会議室には(農作業を中止して)複数の閣僚が集まっていた。
「商人からの曾孫聞きですが人口は1億」
「1億か・・・人口だけでも相当な大国だな」
ロドニー男爵はそう感想を述べる。
「そして」
ピエール男爵は続けた。
「帝國の皇帝家の治世は2600年以上に渡るそうです」
「2600年・・・と言うと古代魔道帝国より前か?」
「神話時代に食い込みますな」
「とんでもないな」
重鎮の何人かがコソコソと会話する。
「帝國の発表では、皇帝は神の血統だそうです」
「これはまた大きく出ましたな」
「2600年だとありえなくも無いですが」
「ゴホン」
ピエール男爵が咳払いをして再び話し始める。
「ご存知の通り帝國は強大な軍事力を持って大陸東海岸に上陸、各国を次々に制圧しております」
「帝國軍の発表では常備兵力500万、その内ローデリア攻略に50万の兵力を当てています」
大国ならば幻影魔法で、映像資料等が映されるのだろうが、極小国であるゴンザレスにはそもそも魔術師など居ない。
「うちの常備兵力は?」
国王ゴンザレス5世が隣に控えていた騎士団長ピエール男爵に尋ねる。
「・・・現行で騎士を除いて8人です」
ピエール男爵は言いずらそうに答えた。
そう、この世界の軍備には致命的な問題がある。
兵士というのは基本的に農民を戦時に徴兵して編成するものであり、常備兵力は極めて少ないのだ。
大国ですら10万も常備兵力が居れば軍事大国といわれる。
「まぁ、ウチみたいな小国と事を構える程暇でもなかろう。それで・・・」
ゴンザレス5世は楽観的に言った。
「アルフォンス伯爵、帝國の要求について頼む」
「帝國について、分かっている事は多くありません」
外務担当のロスピエール伯爵はレジメをぺらぺらとめくる。
ゴンザレス王国王城ゴンザレス城の会議室には(農作業を中止して)複数の閣僚が集まっていた。
「商人からの曾孫聞きですが人口は1億」
「1億か・・・人口だけでも相当な大国だな」
ロドニー男爵はそう感想を述べる。
「そして」
ピエール男爵は続けた。
「帝國の皇帝家の治世は2600年以上に渡るそうです」
「2600年・・・と言うと古代魔道帝国より前か?」
「神話時代に食い込みますな」
「とんでもないな」
重鎮の何人かがコソコソと会話する。
「帝國の発表では、皇帝は神の血統だそうです」
「これはまた大きく出ましたな」
「2600年だとありえなくも無いですが」
「ゴホン」
ピエール男爵が咳払いをして再び話し始める。
「ご存知の通り帝國は強大な軍事力を持って大陸東海岸に上陸、各国を次々に制圧しております」
「帝國軍の発表では常備兵力500万、その内ローデリア攻略に50万の兵力を当てています」
大国ならば幻影魔法で、映像資料等が映されるのだろうが、極小国であるゴンザレスにはそもそも魔術師など居ない。
「うちの常備兵力は?」
国王ゴンザレス5世が隣に控えていた騎士団長ピエール男爵に尋ねる。
「・・・現行で騎士を除いて8人です」
ピエール男爵は言いずらそうに答えた。
そう、この世界の軍備には致命的な問題がある。
兵士というのは基本的に農民を戦時に徴兵して編成するものであり、常備兵力は極めて少ないのだ。
大国ですら10万も常備兵力が居れば軍事大国といわれる。
「まぁ、ウチみたいな小国と事を構える程暇でもなかろう。それで・・・」
ゴンザレス5世は楽観的に言った。
「アルフォンス伯爵、帝國の要求について頼む」
「既に皆様方に報告されてると思いますが帝國は我が国に次の様な要求をしています」
1.帝國との通商条約締結
基本的に帝國の要求する物の輸出を最優先とする。
2.帝國を盟主とする軍事同盟への参加
大陸の恒久的平和の為、帝國が結成した『帝國世界連合』参加。
3.領内での帝國軍による軍事施設の建設と、軍事行動の容認
帝國軍の作戦行動の円滑化のため、軍事施設と作戦行動の容認。
4.鉱山等の所有権の移行
鉱山等の所有権は国営・民営を問わず一時的に帝國保有とし、必要と判断された場合は帝國が適正価格で買い上げる。それ以外の場合は返却する。
基本的に帝國の要求する物の輸出を最優先とする。
2.帝國を盟主とする軍事同盟への参加
大陸の恒久的平和の為、帝國が結成した『帝國世界連合』参加。
3.領内での帝國軍による軍事施設の建設と、軍事行動の容認
帝國軍の作戦行動の円滑化のため、軍事施設と作戦行動の容認。
4.鉱山等の所有権の移行
鉱山等の所有権は国営・民営を問わず一時的に帝國保有とし、必要と判断された場合は帝國が適正価格で買い上げる。それ以外の場合は返却する。
「帝國は勢力下の全ての王国にこの要求を行っています」
「まぁ妥当な所か」
ロエニー伯爵が呟く。
傲慢な要求だが、大国が小国に要求する物としては、貢物が無い分穏当とも言える。
「なぜ鉱山の条項が入っているんですかね?」
「鉄が足りないのかも?」
「帝國の船は全部鉄で出来てるらしいですからな」
「沈むんじゃないかそれ?」
「無知な奴だな、魔法だよ魔法」
「ゴホン」
ピエール男爵が咳払いをして再び話し始める。
「それと、非公式な話になりますが・・・」
「非公式?」
ロエニー伯爵が頭を捻る。
「はい、非公式にダークエルフの人権保護を求めています」
「ダァクエルフゥ?」
ピエール男爵は素っ頓狂な声を上げた。
「何でも、五族協和は僕らの理想とか言ってましたが・・・」
「なんじゃそりゃ?」
「人間、エルフ、ドワーフ、ダークエルフ・・・後一つなんだ?」
「さあ? リザードマンとか?」
「まぁ、どうせダークエルフが住み着くほど広くないし関係あるまい」
「えー、では議決に移りたいと思います。帝國との条約締結に賛成の方の挙手を・・・賛成多数で本案は可決されました」
全員で拍手。
「では本案について国王陛下からのご承認を」
「ほれ」
ゴンザレス5世は教会から授けられた国王印を書類に押す。
「これで全て成立いたしました!」
再び全員で拍手。
ここでピエール男爵が立ち上がる。
「さて次は騎士団の拡大の提案を」
「却下」
ロエニー伯爵がすぐさま切り捨てる。
「・・・騎士団を拡充しなくては・・・」
「どうせ周辺国全て帝國の属領ではないか」
「・・・」
ピエール男爵が目に見えてションボリする。
こうしていつも通り軍事費の増加は抑えられ、ゴンザレス王国は僅かながらも黒字経営を続けるのであった。
「まぁ妥当な所か」
ロエニー伯爵が呟く。
傲慢な要求だが、大国が小国に要求する物としては、貢物が無い分穏当とも言える。
「なぜ鉱山の条項が入っているんですかね?」
「鉄が足りないのかも?」
「帝國の船は全部鉄で出来てるらしいですからな」
「沈むんじゃないかそれ?」
「無知な奴だな、魔法だよ魔法」
「ゴホン」
ピエール男爵が咳払いをして再び話し始める。
「それと、非公式な話になりますが・・・」
「非公式?」
ロエニー伯爵が頭を捻る。
「はい、非公式にダークエルフの人権保護を求めています」
「ダァクエルフゥ?」
ピエール男爵は素っ頓狂な声を上げた。
「何でも、五族協和は僕らの理想とか言ってましたが・・・」
「なんじゃそりゃ?」
「人間、エルフ、ドワーフ、ダークエルフ・・・後一つなんだ?」
「さあ? リザードマンとか?」
「まぁ、どうせダークエルフが住み着くほど広くないし関係あるまい」
「えー、では議決に移りたいと思います。帝國との条約締結に賛成の方の挙手を・・・賛成多数で本案は可決されました」
全員で拍手。
「では本案について国王陛下からのご承認を」
「ほれ」
ゴンザレス5世は教会から授けられた国王印を書類に押す。
「これで全て成立いたしました!」
再び全員で拍手。
ここでピエール男爵が立ち上がる。
「さて次は騎士団の拡大の提案を」
「却下」
ロエニー伯爵がすぐさま切り捨てる。
「・・・騎士団を拡充しなくては・・・」
「どうせ周辺国全て帝國の属領ではないか」
「・・・」
ピエール男爵が目に見えてションボリする。
こうしていつも通り軍事費の増加は抑えられ、ゴンザレス王国は僅かながらも黒字経営を続けるのであった。