自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた@創作発表板・分家

掌編『幽霊会員的小国』

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東大陸北方の、とある内陸国。
北方諸国同盟に名を連ねてはいるが、殆ど名義貸し同然で同盟軍としての実態は無いに等しい小国だ。
軍の規模も相応で、飛竜や戦竜などは当然ながら存在せず、陸軍(河川水軍を含む)のみで総員1000人にも満たない。
同盟軍に派兵していない分は資金や物品を上納しているが、それとて大戦争の遂行に必要な分からすれば微々たるもの。

実際、マルロー王国からすれば名簿覧だけに存在する幽霊会員のようなものだ。
これだけ多くの国や都市が反リンド王国、反皇国であるのだぞという、大義名分の為の数合わせに過ぎない。
大国の王から「これに署名しろ」という公文書が送られて来れば、まあ普通は断れないだろう。
たとえそれが理不尽な内容であっても、泣く泣く署名する以外の選択肢は無い。

特に今回のような大国同士の戦争の場合、どちらについても大国の財布や弾除けとして扱われるだろう。
かといって中立(傍観)を通そうとすれば両陣営から敵扱いされるのがオチだ。


そんな小国に、皇国軍の飛行機が飛んで来た。
皇国陸軍の誇る精鋭、百式司令部偵察機である。

現状で、皇国軍が海外に派遣している飛行機の中では最も高速であり、航続距離も長い。
1000m程度の低空で飛竜に追いかけられても振り切れるし、対空砲もその迎撃準備が整う前に空域を離脱できる。
むしろ飛竜の迎撃を受ければ、飛竜基地や飛竜陣地を逆探知出来て好都合なくらいだ。

元々、高高度からの広域隠密偵察や中高度、低高度での強行偵察に使用するという意図で開発され
要求どおりの高性能を持つので、その長所を十分に発揮して地図作成に奔走している最中であった。

現地の地理に明るい案内人を雇っているとはいえ、それだけでは不十分。
そんな中で不完全ながらも自前の地図を持てているのは、長距離進出可能な偵察機の御蔭である。

現在、皇国軍が貴重なガソリンを使って飛ばしているのは殆どが輸送機と偵察機で、偶に爆撃機。
皇国軍にしてみればこんな小国に構っている暇など無く、単に地図作成の一環で通っただけだ。


しかし頭上を飛ばれた方からして見れば、そんな皇国の意図など知らない。
『飛行機が来る=爆撃されて大変な目に遭う』というのが今までの事実。
という訳で、国の上層部はどうしようどうしようと、右往左往である。

元より迎撃手段など無い。
飛竜は1騎もないし、対空砲兵も1個連隊でたったの4門が全て。
皇国でなくても、リンド王国のような大国の飛竜隊相手でも全く手も足も出ないレベルだ。

空を見上げながら、この国の元首が呟く。
「ああ、もう……駄目なのか」

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