自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた@創作発表板・分家

24

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集
383 名前:始末記[sage] 投稿日:2016/07/07(木) 00:10:00.91 ID:UyDmv9LE

高麗国巨済島
首都巨済市
国防警備隊本部

事の起こりは漁師達が海上に城が建っているとの通報から始まっている。
そして、高速で移動しているという。
城が海上でである。
警備隊はこの通報を悪戯或いは、誤報として処理した。
最初の襲撃は新巨済大橋跡で行われた。
新巨済大橋は転移前は巨済市と統営市を結ぶ、国道14号線の橋である。
転移と同時に橋の真ん中が分断されて消滅し、走行中の車両や徒歩の人間が海に落ちて大惨事を招いていた。
その後は新巨済大橋は閉鎖されて、その橋脚の付近は釣り人の釣り場となっている。
そんな釣り人が目撃したのは巨大な建築物が海上を移動しているところだった。
巨大な岩山をくり貫いて作られたような城のような建築物が3つばかり建っている。
それが崩壊した橋の先端部で、野次馬や釣り客の目の前でさらなる異様な動きを見せる。

「飛んだ?」

海中から島のような陸地ごと建築物が飛び上がった。
そのまま新巨済大橋の上に着地し、滑りながら欄干を破壊しつつ陸地を目指して移動している。
さすがに釣り人達はその物体を一目見て正体を看破した。
下から見上げたら一目瞭然だった。

「エイ?」
「馬鹿言え、200メートルはあるぞ!?」
「早く逃げろ、橋が!!」

幅も100メートルはあった。
その背中には岩場がそのまま付着して島のようになっている。
当然、そんな重量物に新巨済大橋が耐えられる筈もなく、崩壊した大橋の破片が逃げ惑う釣り人や野次馬達を押し潰していく。
巨大なエイは新巨済大橋の道路から続く、島内の国道14号線の最初の交差点まで車両や家屋を凪ぎ払いながら滑り込んで停止した。
すぐに国防警備隊のパトカーが、巨大なエイこと『荒波を丸く納めて日々豊漁』号の周辺を固めるように展開する。
だが『荒波を丸く納めて日々豊漁』号の背中の城塞の門が開いた。
そこには数千の武装した戦士達が整列している。
城塞の搭の物見台から船長イケバセ・グレが号令を掛ける。

「蹂躙せよ!!」

城門から数千の戦士が人口21万人を誇る巨済島への進軍を開始する。
10本の脚の内の獲物を瞬時に捕える時に使う特に長い2本の「触腕」は腕に進化し、二本の脚はそのまま大地に立てる足となっている。
触手には吸盤が多数付いており、吸盤の内部には角質で出来た歯が付いている。
外套膜と呼ばれる内臓を覆う体壁は胴体となっている。
それがシュヴァルノヴナ海を領海とする種族の正体であるイカの獣人だ。
それは皮肉にもサミットの会場たる百済市が襲われたのとほぼ同時刻だった。
巨済島には国防警備隊が約二千名ほど配備されていたが、このうち600名ほどがサミット警備の為に留守にしている。
首都の海を守る李舜臣級駆逐艦『大祚栄』や孫元一級潜水艦『鄭地』がサミット警備の為に出払っていたのも大きい。
首都襲撃という惨事の為に、首都防衛に携わる第一連隊に召集が掛けられた。
完全装備で出動するまでの間は所轄の警備隊隊員が拳銃と警棒で防戦に努めていた。
だが軟体の体は多少の打撃やパトカーによる轢き逃げ攻撃の効果を弱めていた。
さらに貝殻による両手盾で銃弾をしのぎ、触手に持たせた三本の銛で一人ずつ仕留めていく。
また、近距離の警備隊員には粘着力のある墨を吐いて浴びせて、動きを封じて仕留めていく。
複数ある触手で締め上げられたり投げ飛ばされている者もいる。
だがさすがに第一連隊の半数ほどで編成された先発隊が到着し、小銃や機関銃で応戦を始めると劣勢を押し返し始める。


それでもイカの兵士達の数が多く膠着状態となっていった。
浜辺からは更に千匹ほどのイカ人達が上陸してくるが、状況は動かない。

「ここは持ち堪えられそうだな。」

連隊長の伊太鉉大佐は一息つく。
敵の数は味方の5倍以上だが、完全に抑え込んでいる。
心配の種は弾薬の残弾だ。
生産が思うようにいかない弾薬の為に連射や無駄打ちは厳に戒めている。

「巨済大橋跡近辺に敵勢力が上陸、数は約千!!」

巨済大橋は転移前は朝鮮半島南部の固城半島との間に結ばれていた橋だ。
ここもやはり転移時に崩壊して惨事の舞台となっている。
問題は100万トン・ドックをもつ玉浦造船工業団地が長承浦邑に存在し、人口が集中している地域である点だ。
国防警備隊本部もこの地区にある。
そこに附属する駐屯地には、まだ召集中で出動出来ていない中隊が残っていたはずなので対応を任せれば問題はない
本部の要員も残っている。
その上、民間の武装警備員が200名ほどが玉浦造船所に配備されているので、そちらに動員を要請すればいい。

「玉浦造船所、外島にも敵が上陸、各々約千の敵を確認!!」

外島は巨済島の東海岸の沖に浮かぶ島で、同観光植物園は日本でも人気を泊した韓流ドラマのの最終回の撮影地として有名である。
こちらにはろくな戦力は配備されていない。
島が個人所有なので致しかなかった。
玉浦造船所は地球でも世界最大と言われた造船所だ。
現在では資源不足で、大半のドックが休止状態だがここが破壊される事態は避けねばならない。

「海洋警察署の署員を玉浦造船所の防衛にまわせ。
それと第5中隊は市民の避難と大統領官邸の警備に専念していろ。」

大統領官邸は巨済島の最北端にある島津義弘が築城したと言われる永登浦城跡とその麓にある永邑城跡を利用して建築されている。
要害と言ってよく官邸警備隊も配備されている。
多少の兵力では落とせないし、山頂のヘリポートから脱出は可能だ。
残った戦力である第六中隊は各所に補給を運ぶ為に動員されている。
これで手駒は尽きた。

「日本に増援を要請しろ。」

巨済は高麗国の首都。
決して落とされてはならなかった。




『荒波を丸く納めて日々豊漁』号の物見台から、イケバセ・グレ船長は巨済島に攻めこんだ自軍の指揮を執っていた。

「すでに島内に投入した兵は六千になる。
日本の援軍を阻止する為に海中に潜ませているのが三千ほど。
もう1隊は何をしている?」

予定通りに上陸していない部隊があり、イケバセ・グレ船長は首を傾げていた。

「海中に仕掛けられていた網に引っ掛かり、身動きが取れなくなった者が多数出たと伝令が届いています。」

船長イケバセ・グレは頭痛する思いだった。
彼はイカが漁師達の獲物であることを知っているので、魚網の存在は承知している。
だが千匹ものイカ人の行く手を阻む魚網の規模については理解が追い付かなかった。

「もう一押しなのだがな・・・
見ろあの造船所を!!
艦隊でも造れそうな規模のものがこんな離島にある。
おそらくはここは日本の戦略上の要所に違いない。
不釣り合いな規模の守備隊もいるしな。」

イケバセ・グレの確信の込めた言葉に部下達も頷いている。

「他の島に侵攻した部隊に伝令を出せ。
余力の戦力があればこの島に集結させよとな。」



南海市

南海市は転移後に市に昇格した高麗国の自治体である。
人口は約四万人。
主に南海と昌善という二つの島から成り立つ。
鳥島、虎島、櫓島など有人島が3つ、無人島が65ほど存在する。
守備隊は2個中隊ほどの戦力を有していたが、現在は住民とともに山岳部に敗走したか、市街地で自警団とともに抵抗を続けている。
旧南海警察署の庁舎を利用した守備隊本部はすでに焼け落ちている。
数ある島に隊員を分散させて勤務にあたらせていたのも敗因なのだが、これは仕方がない。


『みんなが願う安全漁業』号船長ウコビズ・ゲロは、西北部の蟾津江の河口に形成された巨大砂洲に巨大なエイと背中に乗せた城を上陸させて指揮に当たっていた。

「他の有人島は全て制圧した。
住民は予定通りに一ヶ所に集めておけ。
抵抗すれば殺しても構わない。
さあ、残るはこの島だけだ。」

イカ人達の侵攻は順調だったが、それだけに内陸部に攻めこんだ同族が体が乾いて動けなくなっている事態に困惑している。
年配のイカ人なら経験で知っているのだが、若手の兵士達は加減が判らずに被害が続出したのだ。
やはり海棲亜人に地上戦は向いていないと思い知らされる。
だが兵力の差で戦局は覆らない。

「船長、敵艦です!!
また、来ました!!」

島を周回している高麗国の仁川級フリゲート『大邱』である。
転移前に巨済島の玉浦造船所で起工していた艦だ。
翌年の6月に進水する予定だったが、転移の影響で就役が十年遅れた艦だ。
就役して半年ほどだが、Mk 45 5インチ砲でイカ人の軍勢を見つけては砲撃し、民間人を救出しては確保した漁船で脱出させている。
イカ人達は今のところ対抗する術を持たない。
数十匹のイカ人が乗り込もうと突撃していくが、あまりの早さに追い付けていない。
『大邱』の正面に陣取り、迎え討った部隊はあっさりと正面から蹴散らされた。
地上にいたイカ人達は、『大邱』が接近する度に建物に身を隠してやり過ごしている。
しかし、『みんなが願う安全漁業』号だけは回避するわけにもいかないので、砲撃に堪え忍んでいた。

「砲弾がいつまでも続くわけがない。
まあ、この島も明日には墜ちるだろう。
ゆるりと殲滅してやろう。」

今も『大邱』の周囲の海中を千匹ものイカ人が追跡したり、定置網に引っ掛かっているのだ。
封鎖は完璧のはずだった。



珍島
珍島市
珍島市の人口は約3万5千人。
本島の他に有人島45、無人島185の計230の島々で構成されている。

転移に伴い珍島郡から珍島市に昇格した。
この島々でもやはりイカ人の襲撃を受けていた。
例によって定置網と付属の島々の制圧。
日本からの援軍を断つ為の部隊を省いて、五千の大群が本島に迫っていた。
だが珍島の守備隊は事前に巨済や南海が襲撃された連絡を受けていた。
その為、海上を疾走する城が目撃されたと同時に上陸予想地点に全戦力を集結させ、住民には避難命令を出していた。
珍島東南部の回洞里と沖の茅島との間で、大潮の日に海割れの現象が起きて砂州が現れる場所が存在する。

『シュヴァルノヴナの海の幸がてんこ盛り』号は、そのまだ砂州が現れていない浅瀬に乗り上げて、上陸の準備を始める。
だがパトロール任務中で、珍島近海を航行中だった警備救難艦『太平洋9号』が駆けつけて、座礁するギリギリまで接近する。
『太平洋9号』から発艦したKa-32ヘリコプターがイカ人の兵達が集結する場所を確認する。
その指示のもとに『シュヴァルノヴナの海の幸がてんこ盛り』号の背中に鎮座する城の城壁に、『太平洋9号』の40mm連装機銃とシーバルカン 20mm機銃から放たれた弾丸が炸裂する。
機銃弾の前には岩石で出来た城壁はたちまち穴だらけになり、集結していたイカ人達の兵達は薙ぎ倒されていく。

「せ、船長!?」

部下達の悲鳴を聞いたエサブゼ・ゴワ船長は直ちに号令を下す。

「門を開いて、島に攻め込め!!
このままでは狙い撃ちにされるぞ。
海中にいる部隊にも上陸とあの船を直接狙う命令を出せ!!」

開門された門からイカ人の軍勢が島に雪崩れ込もうとしたが、陸地には国防警備隊守備隊1個中隊が総出で車両を盾に陣取っている。

「撃て!!
ここから一歩も通すな!!」

本部要員や自警団も攻撃に加わり、イカ人の軍勢の死体が積み重なっていく。
だが海中から上陸してきた軍勢が防衛ラインの各所に突入してきて突き崩されていく。

「海岸の敵に直接攻撃を仕掛ける。」

『太平洋9号』機銃の銃口が海岸に向けられるが、触手の吸盤を利用して、イカ人達が船体の壁をよじ登ってくるのが確認された。

『シュヴァルノヴナの海の幸がてんこ盛り』号を直接攻撃する為に低速で航行していたのが裏目に出たのだ。
乗員達は船縁に出て、艦内に備え付けられた小銃や拳銃でイカ人達を仕留めていく。
ある乗員は斧を振り回して触手を切り落とすという奮闘までしてみせた。
しかし、機銃の銃弾も底を尽き、『太平洋9号』も沖まで後退する。
守備隊も海岸線を放棄して後退を余儀無くされた。
一方でイカ人達も多大な出血を強いられて、この日の戦闘を終えることになる。


タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
ウィキ募集バナー