大陸最強の種族、竜神族の若者は、孵化から15年経つと、成人の儀を行う。
成人の儀とは、すなわち狩りだ。
地べたを這いずり回ることしか能が無いくせに、数だけは多いヒトという下等動物。
竜神族は日常的にヒトを捕らえ、奴隷として使役したり、慰み物として嬲ったりしているが、その下等動物を狩るのが、彼らにとって成人となるための通過儀礼だ。
成人の儀とは、すなわち狩りだ。
地べたを這いずり回ることしか能が無いくせに、数だけは多いヒトという下等動物。
竜神族は日常的にヒトを捕らえ、奴隷として使役したり、慰み物として嬲ったりしているが、その下等動物を狩るのが、彼らにとって成人となるための通過儀礼だ。
今年成人の儀を迎える竜神族の一人、ゥヴヴェオオェリは興奮していた。
始めて、親の手を借りず、自分達の手で行う狩りなのだから、それも仕方が無い。
隣を飛ぶ親友で幼馴染のェェィヤォゥォアォも同様だ。
特に彼は、故郷に恋人がおり、成人の儀を無事に完遂した暁には、既に用意している花束に捕らえた奴隷を添えて、プロポーズするつもりで居るらしい。
始めて、親の手を借りず、自分達の手で行う狩りなのだから、それも仕方が無い。
隣を飛ぶ親友で幼馴染のェェィヤォゥォアォも同様だ。
特に彼は、故郷に恋人がおり、成人の儀を無事に完遂した暁には、既に用意している花束に捕らえた奴隷を添えて、プロポーズするつもりで居るらしい。
「ッギャーオ! ギイィィギゲッヘ!!」
仲間の一人が、水平線の向こうに、水面に浮かぶ物体を見つけた。
ヒトが海を渡るときに使用する船という乗り物だ。
まったく、ヒトとは馬鹿な生き物だ。
遮る物の無い海の上では、逃げ場が無いということが分らないのだろうか。
空を飛ぶことが出来ないくせに、なぜ、無理に海を渡ろうと考えるのだろうか。
だが、こちらにとっては好都合だ。
隠れるところの多い地面の上をうろちょろと逃げ回られるよりも、余程狩り易いからだ。
ヒトが海を渡るときに使用する船という乗り物だ。
まったく、ヒトとは馬鹿な生き物だ。
遮る物の無い海の上では、逃げ場が無いということが分らないのだろうか。
空を飛ぶことが出来ないくせに、なぜ、無理に海を渡ろうと考えるのだろうか。
だが、こちらにとっては好都合だ。
隠れるところの多い地面の上をうろちょろと逃げ回られるよりも、余程狩り易いからだ。
「ギャイ……?」
僅かな違和感を感じたゥヴヴェオオェリは、首をかしげた。
記憶にある船とは、随分と形も大きさも違う。
ヒトの船は木製で、帆や櫂がついているものだが、そういったものは一切見当たらない。
海の色に溶け込むような灰褐色の船体は、とても木造には見えない。
それに、速度も異常だ。
我々竜神族のスピードに及ぶべくは無いが、それでも今まで襲ったことのあるヒトの船に比べれば驚異的だ。
何かは分らない。
言葉には出来ないが、何かが違う。何かがおかしい。
記憶にある船とは、随分と形も大きさも違う。
ヒトの船は木製で、帆や櫂がついているものだが、そういったものは一切見当たらない。
海の色に溶け込むような灰褐色の船体は、とても木造には見えない。
それに、速度も異常だ。
我々竜神族のスピードに及ぶべくは無いが、それでも今まで襲ったことのあるヒトの船に比べれば驚異的だ。
何かは分らない。
言葉には出来ないが、何かが違う。何かがおかしい。
「ギャギャギャー! ギャーギャッ、ギャーギャッ」
仲間の声に、ェェィヤォゥォアォは我に返った。
多少、見慣れないものとはいえ、所詮はヒトの作った道具だ。
何を恐れることがあるのかと、僅かにでも抱いた自分の弱気を振り払う。
第一、むこうはまだこちらに気付いてすらいないではないか。
多少、見慣れないものとはいえ、所詮はヒトの作った道具だ。
何を恐れることがあるのかと、僅かにでも抱いた自分の弱気を振り払う。
第一、むこうはまだこちらに気付いてすらいないではないか。
「ギギャギャギャギャー!!」
このまま一気呵成に襲い掛かり、哀れでおろかなヒト共を蹂躙すべく、ェェィヤォゥォアォは雄叫びを上げた。
「ミギギギッギイイイエイ!!」
「ギャギゥリイリイイリ!!」
「ギャギゥリイリイイリ!!」
親友ェェィヤォゥォアォを始めとした仲間達がそれに答えるように雄叫びを上げ、ヒトの船に向かって襲い掛かっていった。
結論から言えば、彼はこの時、自分の直感に従うべきだったのだが、それを理解する間もなく、短い一生を終えることになる。
結論から言えば、彼はこの時、自分の直感に従うべきだったのだが、それを理解する間もなく、短い一生を終えることになる。
「ギャッ……?」
獲物であるヒトの船の前部が、突然爆発したかのように火を噴いた。
逃げ切れぬと見て、自分で船に火を放ったのだろうかと思ったが、どうやら違うようだ。
間欠泉のように立ち上った何かが、一直線にこちらに向かって飛んできたからだ。
逃げ切れぬと見て、自分で船に火を放ったのだろうかと思ったが、どうやら違うようだ。
間欠泉のように立ち上った何かが、一直線にこちらに向かって飛んできたからだ。
「アギ!?」
竜神族の動体視力をもってしても捕らえきれない「それ」は、群れの真っ只中で弾けた。
「ミギャアアアアアアアッ!?」
「アウッ!? アウウウウウォォォ……」
「アウッ!? アウウウウウォォォ……」
直撃を受けて四散する者、弾けた破片を全身に浴びて、肉体をズタズタに切り裂かれる者、狩の興奮で絶頂にあった群れは、途端に阿鼻叫喚の地獄絵図となった。
何が起こっているのか全く理解できなかった。
ヒトの使う貧弱な道具で、竜神族をどうこう出来るはずがないのに。
何が起こっているのか全く理解できなかった。
ヒトの使う貧弱な道具で、竜神族をどうこう出来るはずがないのに。
「アアアアアアアアァァァ……!!」
竜神族の頑健さが仇になり、下半身を吹き飛ばされながらも死に切れず、内臓をばら撒きながら墜落していく者もいた。
隣を飛んでいた親友ェェィヤォゥォアォの姿を探すが、何処にも見当たらない。
隣を飛んでいた親友ェェィヤォゥォアォの姿を探すが、何処にも見当たらない。
「ヒ、ヒギイイイイイッ……!」
じっとしていれば殺られると本能的に悟ったゥヴヴェオオェリは、海面付近まで高度を下げた。
その判断が、ほんの僅かではあるが、彼と他数名の命を生き長らえさせることになった。
その判断が、ほんの僅かではあるが、彼と他数名の命を生き長らえさせることになった。
「ヒ、ギ……!」
彼の目の前で、獲物と目していたヒトの船が旋回してこちらに舳先を向けた。
旋回の速度も尋常ではない。
そして、遠方からでは分らなかったが、大きさも尋常ではなかった。
まるで、潮に浮かぶ城郭。
それを取り囲むように配置された六角形の奇妙な模様と相俟って、その威容にしばし圧倒された。
旋回の速度も尋常ではない。
そして、遠方からでは分らなかったが、大きさも尋常ではなかった。
まるで、潮に浮かぶ城郭。
それを取り囲むように配置された六角形の奇妙な模様と相俟って、その威容にしばし圧倒された。
「ギギッギイギイッギィイッ!!」
だが、ヒトごときにこうまで好き放題やられて、このままおめおめと引き下がるわけには行かない。
60を数えていた仲間の数は、既に10にも満たないほどに打ち減らされていたが、他の仲間もゥヴヴェオオェリと同じ心境だった。
60を数えていた仲間の数は、既に10にも満たないほどに打ち減らされていたが、他の仲間もゥヴヴェオオェリと同じ心境だった。
「ウギャオオオオオオオオ!!」
鬨の声を上げて突撃を行う彼らの眼に、城郭の前に設置された長い棒が向けられた。
その先端から煙が吐き出される。
次の瞬間、仲間の半数が弾けた。
それほど間を置かず、再び煙が吐き出され、ゥヴヴェオオェリは魚の餌となった。
その先端から煙が吐き出される。
次の瞬間、仲間の半数が弾けた。
それほど間を置かず、再び煙が吐き出され、ゥヴヴェオオェリは魚の餌となった。