※これは本編の設定をお借りしたファンフィクションです
『貧血戦線』
北大陸戦役において最大規模の攻囲戦である南部戦線は、シホールアンル軍がその本土における貴重な防衛力を大幅に失落させる最大級の戦略ミスと言われる。
だが、ここで述べるのは歴史的に類を見ない連合軍の電撃侵攻でもなく、南部の死守に固執して150万人という大軍団を敵中に置くという致命的失敗を犯した防衛側でもない。
だが、ここで述べるのは歴史的に類を見ない連合軍の電撃侵攻でもなく、南部の死守に固執して150万人という大軍団を敵中に置くという致命的失敗を犯した防衛側でもない。
帝国本土の南部という大きな包囲地帯に取り残された150万人と、それがどう維持されたかという観点だ。
これは需品科の将校として、非常に興味をそそられるものでもあるのだ。
これは需品科の将校として、非常に興味をそそられるものでもあるのだ。
私の先輩であり上司である方が補給こそが軍隊の心臓だと指摘したことがある。
心臓が身体の各部に血を送ってこそ、人間は五体満足に身体を動かすことが出来るのだ。
他がどれだけ傷一つなくても、心臓が動かなくなれば例外なく人は死ぬ。
どんな兵科も補給が無ければ戦えない。弾もパンも水も燃料も補給があればこそ入手できる。
どれか一つが絶えただけでも、兵士は、軍隊はあっさりその動きを止めてしまうのだ。
心臓が身体の各部に血を送ってこそ、人間は五体満足に身体を動かすことが出来るのだ。
他がどれだけ傷一つなくても、心臓が動かなくなれば例外なく人は死ぬ。
どんな兵科も補給が無ければ戦えない。弾もパンも水も燃料も補給があればこそ入手できる。
どれか一つが絶えただけでも、兵士は、軍隊はあっさりその動きを止めてしまうのだ。
戦後入手された軍団の資料によれば、当時南部戦線には駐留軍が三ヶ月は満足に戦えるだけの備蓄が備えられていた。
これは敵軍の侵攻を受けた場合真っ先に敵軍が入り込むであろう南部を絶対死守する為、優先的に備蓄が整えられたからだ。
それだけの量の膨大な武器弾薬、食料や備品が各地の集積所や倉庫に蓄えられていたのは事実である。
これは敵軍の侵攻を受けた場合真っ先に敵軍が入り込むであろう南部を絶対死守する為、優先的に備蓄が整えられたからだ。
それだけの量の膨大な武器弾薬、食料や備品が各地の集積所や倉庫に蓄えられていたのは事実である。
しかし、それらが無事に保管、保存が行われていればである。
加えて、それらが十分な補給路を形成し、潤沢に輸送され各部隊に送られれば、の話である。
兵站計画は大概、予想外の出来事で破綻する場合が多い(これは補給が贅沢に行われてる、と言われがちな我が軍でも度々起こる事だ
加えて、それらが十分な補給路を形成し、潤沢に輸送され各部隊に送られれば、の話である。
兵站計画は大概、予想外の出来事で破綻する場合が多い(これは補給が贅沢に行われてる、と言われがちな我が軍でも度々起こる事だ
それが、敵軍側による明確的、かつ計画的な悪意に満ちたものであれば尚更なのだ。
攻囲戦前に行われた帝国軍の反撃は熾烈を極め、まともに攻撃を受けた軍は大きな損害を受けていた。
南部戦線が孤立していたとはいえ、そこに居るのは150万人の精兵と新型の兵器群である。
まともに攻勢を仕掛ければ最終的な勝利は間違いないにしても、多大な損害を受ける事は間違いないのだ。
ましてや、相手は崖の隅に追い込まれ殺気立った獣である。下手に戦えば手傷を負うのは目に見えていた。
南部戦線が孤立していたとはいえ、そこに居るのは150万人の精兵と新型の兵器群である。
まともに攻勢を仕掛ければ最終的な勝利は間違いないにしても、多大な損害を受ける事は間違いないのだ。
ましてや、相手は崖の隅に追い込まれ殺気立った獣である。下手に戦えば手傷を負うのは目に見えていた。
ならば、充分に弱らせてから叩くことになるのは定石である。
幸い、南部の敵航空戦力は限定的なものであり、連合軍側は数も多く唯一の懸念であった悪天候もその時期を過ぎていた。
幸い、南部の敵航空戦力は限定的なものであり、連合軍側は数も多く唯一の懸念であった悪天候もその時期を過ぎていた。
連合軍は、南部戦線に存在する150万の軍隊という巨体の身体の心臓を弱らせ、血管を切断する事から始めた。
集積所や倉庫、それがあると思しき街や施設は残らず爆撃機隊の標的となった。
不自然に人や車両が多数出入りしてる森なども、怪しいと判断されれば爆撃機が飛んできた。
集積所や倉庫、それがあると思しき街や施設は残らず爆撃機隊の標的となった。
不自然に人や車両が多数出入りしてる森なども、怪しいと判断されれば爆撃機が飛んできた。
巨人の心臓が吐き出す血を止め、全体を弱体化させる為だ。
主要な街道や鉄道網は尽く戦闘爆撃機隊が小型爆弾の雨とロケット、機銃射撃で列車や補給段列ごと粉砕した。
大まか破壊した後は、それこそ数台の馬車に対してすら機銃射撃を行っていた位である。
そのさまは『南部で動くもの全てにコルセアは弾か爆弾を撃ち込んだ』と言われていたぐらいだ。
そのうち、夜間に輸送するようにシホールアンル軍は切り替えた。昼の輸送はただ損害を増やすだけだからだ。
エアカバーの無い南部戦線では、路上で動くものは等しく標的に過ぎないのだ。
大まか破壊した後は、それこそ数台の馬車に対してすら機銃射撃を行っていた位である。
そのさまは『南部で動くもの全てにコルセアは弾か爆弾を撃ち込んだ』と言われていたぐらいだ。
そのうち、夜間に輸送するようにシホールアンル軍は切り替えた。昼の輸送はただ損害を増やすだけだからだ。
エアカバーの無い南部戦線では、路上で動くものは等しく標的に過ぎないのだ。
しかし、それにすら連合軍は対応してみせた。
夜間輸送に関しては、暗視が効くヴァンパイアのパイロットが乗った夜間戦闘機が先導した夜間飛行部隊が担当した。
彼らにとってはこそこそ移動するシホールアンルの補給部隊は筒抜けであり、彼らが照明弾を正確無比な位置に落とし、後続の部隊が地上を爆撃した。
シホールアンルの補給部隊は、この夜襲部隊を文字通り『吸血鬼』と呼んで恐れ何よりも憎んだという。
夜間輸送に関しては、暗視が効くヴァンパイアのパイロットが乗った夜間戦闘機が先導した夜間飛行部隊が担当した。
彼らにとってはこそこそ移動するシホールアンルの補給部隊は筒抜けであり、彼らが照明弾を正確無比な位置に落とし、後続の部隊が地上を爆撃した。
シホールアンルの補給部隊は、この夜襲部隊を文字通り『吸血鬼』と呼んで恐れ何よりも憎んだという。
こうして、陸軍は砲爆撃を繰り返しながらゆっくりと前進。
後方は連合軍の空軍が常に空爆を繰り返し、その血潮が無駄に吹き出すように仕向けられた。
150万人のシホールアンル軍には、前線も後方もなかった。彼らが居た全土、南部全てが戦場なのだから。
心臓を打ちのめされ、身体のあちこちから血が吹き出していく巨人がどうなったか。
それは戦史が示している事である。
後方は連合軍の空軍が常に空爆を繰り返し、その血潮が無駄に吹き出すように仕向けられた。
150万人のシホールアンル軍には、前線も後方もなかった。彼らが居た全土、南部全てが戦場なのだから。
心臓を打ちのめされ、身体のあちこちから血が吹き出していく巨人がどうなったか。
それは戦史が示している事である。
そして、その地には帝国の国民200万人がいた事も付け加えておく。
ある意味、彼らの存在こそがこの南部戦役においての一番の悲劇と言えるのだから。
ある意味、彼らの存在こそがこの南部戦役においての一番の悲劇と言えるのだから。