自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた@創作発表板・分家

SS 001-020 14

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175 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/07/24(土) 22:39 [ qUq6iUEM ]
    「具合はどうなんだ?」
    「はい、出血等から見るに幸い臓器の損傷は無いみたいです。」
    天野の応急処置を終え青島は答えた。
    そして倒れている魔術師達のほうをチラと見る。
    「あの・・・殺さないんですか?」
    セフェティナがおずおずと青島に尋ねる。彼女の世界、いや青島たちの居た世界にとって敵は必ず殺すべき存在である、常識である。尋ねるまでも無い事なのだが、しかし、彼ら自衛隊はその点世界の非常識であった。
    証拠に彼は明らかに殺さないように魔術師達を攻撃した。それもセフェティナの常識を揺るがすものであった。それに元々同じ国の民である、傷つくのは見ていて気分の良いものではない。
    セフェティナの言葉に答える代わりに青島は叫んだ。
    「出雲!止血と消毒だけでもしてやれ。」
    「!」
    セフェティナは息を呑み、その表情が少し明るくなる。
    青島はその顔を見て少し口元を緩めるとまた真剣な表情になり狩野に向き直った。

176 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/07/24(土) 22:39 [ qUq6iUEM ]
    「ヘリコプターは自動小銃があれば確保できるとは思いますが、天野二曹の怪我もあります。あまり時間はありません、甲板に急ぎましょう。」
    「ああ。そうだな、大丈夫ですか福地さん。」
    「・・・ああ。少なくとも船に戻るまでは君たちに従うとしようか。・・・船に戻るまでだがな。」
    「十分です。」
    笑って言う狩野に福地は渋い顔をした。

177 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/07/24(土) 22:40 [ qUq6iUEM ]
    長い廊下を歩いていく、異様なまでに静かなその一本道。
    「いったい、あの攻撃はなんだったんだ?あの黒い釘のような・・・。」
    沈黙を紛らわすかのように青島がセフェティナに尋ねる。
    「はい、ネイルと言います、呪文詠唱がほとんど必要ない上、マナの干渉波もほとんど無いから良く暗殺用に使われる魔法です。」
    「へえ・・・。え?」
    少しだけ感心して、止まる。聞きなれない言葉、いや子供のころには何度も聞いたが―――が当然のように出てきた。
    「・・・今何て言ったの?」
    「え、・・・ネイルと言って」
    「いやそっちじゃなくて、魔法?」
    「はい、魔法です。別におかしくともなんとも・・・あ。」
    彼らの居た世界にはマナが無い、それに今更セフェティナは気づいた。
    「話すと長くなるので、後でお話します。」
    「ああ・・・頼むよ。」
    魔法。魔法、子供のころ猿のようにハマったRPGに良く出てきていた。
    まさかこの世界には月が紅いだけじゃ飽きたらず魔法まであると言うのか。
    舐めていた、この世界を。
    青島は自分が置かれた状況を改めて思い知らされた。

178 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/07/24(土) 22:41 [ qUq6iUEM ]
    「・・・おかしいな。なぜこうも攻撃が無い?」
    狩野は一人つぶやいた。
    当然の疑問と言えば疑問である。ここで後ろからの追撃も無い、前からの攻撃も無いとなればいつわれわれに攻撃を仕掛けてくるのか。甲板で一網打尽にする気なのか。
    「ジファンは・・・ここでみすみす私達を逃すような人間ではありません。」
    ダダアンッ!!セフェティナが呟くのが早いか、何かが弾けるような音がして、だいぶ離れたところにおいてあった樽が木っ端微塵に弾ける。
    「げうっ!」
    と、同時に鈍い悲鳴が上がり、陰に隠れていたのか、バンダナに剣と言う海賊スタイルの男が血を流して倒れた。

179 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/07/24(土) 22:46 [ qUq6iUEM ]
    「くそおっ!」
    倒れた男の影から、もう一人、右手に篭手を付けている――魔術師である証拠――がヤケクソ気味に青島たちに手を向ける。
    ダアンッ!
    「があっ!」
    しかしそれもまた足を撃ちぬかれ、地面に倒れる。
    音のしたほうをセフェティナが恐る恐る見ると、青島の持っている自動小銃が煙をまるでタバコのようにふかしていた。
    「天使・・・様?」
    その悪――セフェティナの価値観で、だが――を容易くなぎ倒すにもかかわらず、不殺を貫く彼を、セフェティナはある種の憧れの視線で見つめていた。

    「良い判断だ、青島二尉。」
    「いえ、もし自分が敵ならここに間違いなく伏兵を配置する、そう思っただけです。」
    「ほう・・・。」
    狩野はなぜこの一見軟弱に見える男が何故将来の高級幹部に選ばれたか、それが分かった様に思えた。
    一方青島は、セフェティナの自分に対する視線が変質してきているのに気づいていなかった

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