748 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/11/04(木) 22:24 [ kHqoVL5Q ]
「こちらアルファ中隊、敵飛行兵器確認できず。」
「こちら哨戒任務中、敵船、敵飛行兵器確認できません、制空権及び制海権はこちらが完全に確保した物と思われます、以上。」
三介島から約60キロ沖、そこには今回の作戦参加艦艇が結集していた。
結集、と言っても島の南と東の二つに艦隊は分かれてはいたが。
島中央部にある敵拠点を中心として一つは比較的平野が広がっている南から本隊が、
そしてこの縦に細長い島の東から最短距離で拠点制圧を狙う部隊であった。
もはやこの位置まで来ればイージス艦であれば島中心部の拠点も把握できる。
「不自然だな…。」
輸送艦「おおすみ」艦長、伊藤は呟いた。
本来ならばこの状況にまで持ってくるまでに制海権奪取、制空権奪取が必要なのだが、
不自然なことに島周辺には一つの船も、一匹の竜すら存在しないのである。
「伊藤君、そろそろ揚陸の用意をさせてくれ。」
「了解しました。」
今、そんなことを考える必要は無い、必要なのはただ与えられた命令を遂行することのみ。
軍人となった時から上官の命令に対しては自分の頭は帽子掛けなのだから。
赤羽からの通信が入り伊藤は頭の中のモヤモヤを振り払った。
749 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/11/04(木) 22:26 [ kHqoVL5Q ]
イージス艦「ちょうかい」
「こんごう」が尖閣諸島地域へと出払っている今、
赤羽はイージス艦を呉からわざわざ持って来なければならなかった。
そしてこのイージス艦の最新鋭のレーダーは、海にも空にも敵機が存在していないことを示していた。
もちろん赤羽「元」佐世保司令もこの不審さに気付かないわけはなかった。
というよりも彼は伊藤よりも遥かに早くこの事態に気付いていた。
それ故に航空部隊の護衛をつけて哨戒任務を行わせているのだ。
その報告を待っている時、艦橋に入ってくる人間があった。
「赤羽司令長官。」
「加藤か。」
「はい。」
普段艦橋にはありえない陸上自衛隊の制服。赤羽以外の人間は少し眉をひそめた。
しかしそれも気にせず加藤はツカツカと赤羽の傍へ近づいた。
「私に上から任務が下りました。」
「…。」
緊張した面持ちで赤羽を見る加藤に対し、赤羽は何も答えなかった。
「海自と陸自の『連絡役』とのことです。」
「私の監視か?」
「…。」
赤羽の言葉に加藤は黙った。
750 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/11/04(木) 22:27 [ kHqoVL5Q ]
赤羽は薄く笑った。
「ふむ、向こうも私のような青二才は信用できないと見える。」
「っ、そんなこと―――」
加藤はそれ以上言う事はできなかった、実際若い赤羽への自衛隊内での反発は(特に陸自では)大きい、
しかし加藤は赤羽を青二才などと言うことは例え自虐の言葉でも我慢がならなかった。
「声が大きい。お前が思うかどうかではない、向こうがこちらをどう思っているかどうかの話だ。」
「…。」
加藤は再び口を閉ざした。赤羽はそれを見ると何事もなかったかのように言った。
「それでは任務に全力を尽くすように。」
「…了解しました。」
半ば、突き放すような形で会話を終えた赤羽に対し、加藤は何か言いたそうな眼差しをしたが、結局何も言わずに敬礼を返した。
「哨戒の結果、敵は島中心部の拠点と上陸地点のほぼ中間の平野に集結していることが分かりました。
上陸予定地点には敵の存在は確認できませんでした。それどころか敵拠点にも存在が確認できません。
兵力はおよそ4万。敵竜騎士も一部がそこに存在、残り大半は森などに隠れているようです。以上。」
そして哨戒機からの連絡が入り、艦橋はにわかに活気付いた。
751 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/11/04(木) 22:28 [ kHqoVL5Q ]
「上陸際を叩かないのは余り海の戦闘を経験していないからですかな?」
「美学を求めた玉砕体制か?それとも…。」
しかし隊員の一人の呟いた気楽な一言とは逆に赤羽の表情は険しかった。
「上陸地点および敵拠点の爆撃を指示する。同時に東部艦隊は上陸用意、爆撃後拠点制圧に向かえ。」
そして意を決し彼は言った。
艦橋の人間誰もが赤羽を振り返る。
今の彼の言葉は警察予備隊時代から約50年にわたる自衛隊の歴史の中、
初めて、自ら積極的に相手を攻撃することを命令する物であったのだ。
しかし、艦橋の人間に対し、現場、空自の返答は落ち着き払った物だった。
「集合した敵歩兵にも爆撃を仕掛けられますが。」
至極当然のように返された言葉に赤羽は満足そうに口の端に笑みを浮かべた。
「いや、それは禁止する。敵兵の大半は地元民だ、なるべく殺傷は避けるように。
爆撃終了後は森林部に隠れている敵竜騎士をあぶり出して貰うが、その時はおって指示する。」
そう、これはあくまでも解放のための行動であって、戦争ではない。
解放する対象の現地民を傷つけるのならそれは戦争になってしまう――――
赤羽はその歯がゆさに頭の中で一人ぼやいた。
「了解。爆撃、三十分後に開始します。」
そして空自の隊員の明瞭な返答に赤羽は現実へと引き戻れた。
752 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/11/04(木) 22:28 [ kHqoVL5Q ]
「―――島内協力者オザル氏から無線です。」
「よし。」
――赤羽殿ですか!?――
「はい。そちらの状況を教えてくださいませんか?」
――はい、今、我々は島内の森に潜伏しています。
けれども今日は毎日あるはずのレジスタンス討伐も無い上、敵全軍が島南の平野部に集結しとります。――
そんなことは知っている、これでは無線機を貸した意味が無い。
「敵はこちらの行動を事前に察知していたようですが、心当たりはありませんか?」
――いえ、ありません。――
「そちらのグループ内での裏切りの可能性は?」
――そんな訳ありません!我々はこの島の人間のために命をかけているのです!――
「…それは失礼。それでは我々は約2時間後に上陸を開始します。
上陸地点に展開が終了したら現地徴収兵と接触を取ってください。
約四万の大群ですから、紛れるのは簡単でしょう。」
「当然です、今の拠点は敵にばれておりませんし、敵集合地点にも近いですから。」
「期待しています。」
それに万一説得に失敗したとしても、敵が密集しているのならばこちらの兵器を持ってすれば殲滅することは容易い。
当然、最後の、そして禁断の手段ではあるが。
753 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/11/04(木) 22:30 [ kHqoVL5Q ]
輸送艦「おおすみ」内。
青島達は南部からの上陸部隊としてそこに居た。
「俺達の任務は、セフェティナさんの護衛だ。
彼女の任務は魔法の感知、つまりかなり前線まで出ることになる。
多少危険ではある、だが、この任務を失敗することは許されない。」
青島は小隊の面々を前にして言った。
その表情にはいつもの大人しい、気弱そうな色は全くなく、
軍人として、指揮官としての厳しい顔がそこにあった。
部隊の面々もまた天野の居ない初めての任務に多少なりとも不安そうな表情を隠せないで居た。
「これに失敗するということはセフェティナさんを、日本の大切な協力者を失うと言うことだ。」
その他人行儀な彼の言葉にセフェティナは一瞬悲しそうな顔を見せる、
そのことに気付いたのか佐藤は青島に対し、不満そうな目を向けた。
そして青島はそれに全く気付いては居なかったが、その厳しい表情を和らげ、言った。
「そしてなにより、セフェティナは俺達の大切な仲間だ。
仲間は絶対に守る、それが俺達自衛隊の鉄則だ。各自の健闘に期待する!」
「おお!」
彼の言葉に面々も緊張が解けたのか、大きな叫び声を出した。
それを嬉しそうに見つめると青島はセフェティナに向かって笑いかけた。
「仲…間。」
セフェティナは呟くと青島の笑みに気付き、目一杯の笑顔を彼に向けた。
佐藤はそれを見て満足そうに笑った。
「こちらアルファ中隊、敵飛行兵器確認できず。」
「こちら哨戒任務中、敵船、敵飛行兵器確認できません、制空権及び制海権はこちらが完全に確保した物と思われます、以上。」
三介島から約60キロ沖、そこには今回の作戦参加艦艇が結集していた。
結集、と言っても島の南と東の二つに艦隊は分かれてはいたが。
島中央部にある敵拠点を中心として一つは比較的平野が広がっている南から本隊が、
そしてこの縦に細長い島の東から最短距離で拠点制圧を狙う部隊であった。
もはやこの位置まで来ればイージス艦であれば島中心部の拠点も把握できる。
「不自然だな…。」
輸送艦「おおすみ」艦長、伊藤は呟いた。
本来ならばこの状況にまで持ってくるまでに制海権奪取、制空権奪取が必要なのだが、
不自然なことに島周辺には一つの船も、一匹の竜すら存在しないのである。
「伊藤君、そろそろ揚陸の用意をさせてくれ。」
「了解しました。」
今、そんなことを考える必要は無い、必要なのはただ与えられた命令を遂行することのみ。
軍人となった時から上官の命令に対しては自分の頭は帽子掛けなのだから。
赤羽からの通信が入り伊藤は頭の中のモヤモヤを振り払った。
749 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/11/04(木) 22:26 [ kHqoVL5Q ]
イージス艦「ちょうかい」
「こんごう」が尖閣諸島地域へと出払っている今、
赤羽はイージス艦を呉からわざわざ持って来なければならなかった。
そしてこのイージス艦の最新鋭のレーダーは、海にも空にも敵機が存在していないことを示していた。
もちろん赤羽「元」佐世保司令もこの不審さに気付かないわけはなかった。
というよりも彼は伊藤よりも遥かに早くこの事態に気付いていた。
それ故に航空部隊の護衛をつけて哨戒任務を行わせているのだ。
その報告を待っている時、艦橋に入ってくる人間があった。
「赤羽司令長官。」
「加藤か。」
「はい。」
普段艦橋にはありえない陸上自衛隊の制服。赤羽以外の人間は少し眉をひそめた。
しかしそれも気にせず加藤はツカツカと赤羽の傍へ近づいた。
「私に上から任務が下りました。」
「…。」
緊張した面持ちで赤羽を見る加藤に対し、赤羽は何も答えなかった。
「海自と陸自の『連絡役』とのことです。」
「私の監視か?」
「…。」
赤羽の言葉に加藤は黙った。
750 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/11/04(木) 22:27 [ kHqoVL5Q ]
赤羽は薄く笑った。
「ふむ、向こうも私のような青二才は信用できないと見える。」
「っ、そんなこと―――」
加藤はそれ以上言う事はできなかった、実際若い赤羽への自衛隊内での反発は(特に陸自では)大きい、
しかし加藤は赤羽を青二才などと言うことは例え自虐の言葉でも我慢がならなかった。
「声が大きい。お前が思うかどうかではない、向こうがこちらをどう思っているかどうかの話だ。」
「…。」
加藤は再び口を閉ざした。赤羽はそれを見ると何事もなかったかのように言った。
「それでは任務に全力を尽くすように。」
「…了解しました。」
半ば、突き放すような形で会話を終えた赤羽に対し、加藤は何か言いたそうな眼差しをしたが、結局何も言わずに敬礼を返した。
「哨戒の結果、敵は島中心部の拠点と上陸地点のほぼ中間の平野に集結していることが分かりました。
上陸予定地点には敵の存在は確認できませんでした。それどころか敵拠点にも存在が確認できません。
兵力はおよそ4万。敵竜騎士も一部がそこに存在、残り大半は森などに隠れているようです。以上。」
そして哨戒機からの連絡が入り、艦橋はにわかに活気付いた。
751 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/11/04(木) 22:28 [ kHqoVL5Q ]
「上陸際を叩かないのは余り海の戦闘を経験していないからですかな?」
「美学を求めた玉砕体制か?それとも…。」
しかし隊員の一人の呟いた気楽な一言とは逆に赤羽の表情は険しかった。
「上陸地点および敵拠点の爆撃を指示する。同時に東部艦隊は上陸用意、爆撃後拠点制圧に向かえ。」
そして意を決し彼は言った。
艦橋の人間誰もが赤羽を振り返る。
今の彼の言葉は警察予備隊時代から約50年にわたる自衛隊の歴史の中、
初めて、自ら積極的に相手を攻撃することを命令する物であったのだ。
しかし、艦橋の人間に対し、現場、空自の返答は落ち着き払った物だった。
「集合した敵歩兵にも爆撃を仕掛けられますが。」
至極当然のように返された言葉に赤羽は満足そうに口の端に笑みを浮かべた。
「いや、それは禁止する。敵兵の大半は地元民だ、なるべく殺傷は避けるように。
爆撃終了後は森林部に隠れている敵竜騎士をあぶり出して貰うが、その時はおって指示する。」
そう、これはあくまでも解放のための行動であって、戦争ではない。
解放する対象の現地民を傷つけるのならそれは戦争になってしまう――――
赤羽はその歯がゆさに頭の中で一人ぼやいた。
「了解。爆撃、三十分後に開始します。」
そして空自の隊員の明瞭な返答に赤羽は現実へと引き戻れた。
752 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/11/04(木) 22:28 [ kHqoVL5Q ]
「―――島内協力者オザル氏から無線です。」
「よし。」
――赤羽殿ですか!?――
「はい。そちらの状況を教えてくださいませんか?」
――はい、今、我々は島内の森に潜伏しています。
けれども今日は毎日あるはずのレジスタンス討伐も無い上、敵全軍が島南の平野部に集結しとります。――
そんなことは知っている、これでは無線機を貸した意味が無い。
「敵はこちらの行動を事前に察知していたようですが、心当たりはありませんか?」
――いえ、ありません。――
「そちらのグループ内での裏切りの可能性は?」
――そんな訳ありません!我々はこの島の人間のために命をかけているのです!――
「…それは失礼。それでは我々は約2時間後に上陸を開始します。
上陸地点に展開が終了したら現地徴収兵と接触を取ってください。
約四万の大群ですから、紛れるのは簡単でしょう。」
「当然です、今の拠点は敵にばれておりませんし、敵集合地点にも近いですから。」
「期待しています。」
それに万一説得に失敗したとしても、敵が密集しているのならばこちらの兵器を持ってすれば殲滅することは容易い。
当然、最後の、そして禁断の手段ではあるが。
753 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/11/04(木) 22:30 [ kHqoVL5Q ]
輸送艦「おおすみ」内。
青島達は南部からの上陸部隊としてそこに居た。
「俺達の任務は、セフェティナさんの護衛だ。
彼女の任務は魔法の感知、つまりかなり前線まで出ることになる。
多少危険ではある、だが、この任務を失敗することは許されない。」
青島は小隊の面々を前にして言った。
その表情にはいつもの大人しい、気弱そうな色は全くなく、
軍人として、指揮官としての厳しい顔がそこにあった。
部隊の面々もまた天野の居ない初めての任務に多少なりとも不安そうな表情を隠せないで居た。
「これに失敗するということはセフェティナさんを、日本の大切な協力者を失うと言うことだ。」
その他人行儀な彼の言葉にセフェティナは一瞬悲しそうな顔を見せる、
そのことに気付いたのか佐藤は青島に対し、不満そうな目を向けた。
そして青島はそれに全く気付いては居なかったが、その厳しい表情を和らげ、言った。
「そしてなにより、セフェティナは俺達の大切な仲間だ。
仲間は絶対に守る、それが俺達自衛隊の鉄則だ。各自の健闘に期待する!」
「おお!」
彼の言葉に面々も緊張が解けたのか、大きな叫び声を出した。
それを嬉しそうに見つめると青島はセフェティナに向かって笑いかけた。
「仲…間。」
セフェティナは呟くと青島の笑みに気付き、目一杯の笑顔を彼に向けた。
佐藤はそれを見て満足そうに笑った。