自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた@創作発表板・分家

SS 001-020 15

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185 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/07/29(木) 08:30 [ qUq6iUEM ]
    一方佐藤は血溜りの中に居た。自分を襲おうとしていた人間は大半がその血溜りでピクリとも動かない。鉄の殺人兵器「64式自動小銃」人を殺す、そのことだけを追い求めた人類技術の結晶はその威力を佐藤の眼前でまざまざと証明した。
    「し、死んでる・・・人が・・・?」
    「落ち着け、佐藤。止血するぞ。」
    肩から流れる血に気がつきもせずに呆然とする佐藤の頭を鉄兜越しではあるが村田三曹がポンと叩いた。
    しかし治療をしている村田もまた足に浅くない傷を負っていた。

186 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/07/29(木) 08:31 [ qUq6iUEM ]
    「明らかに火炎瓶や銃と思われる攻撃があった・・・。しかし何故だ?この船の文明レベルを見るにそんなものはあったとしても火縄銃ぐらいだが・・・。ええい、沢村!ヘリに故障は無いか!?」
    考えるのをそこで打ち切ってヘリの点検をしている沢村に声をかける。
    「はい!表面が少し火にあぶられた程度です!飛行に支障はまったくありません!」
    「そうか。」
    明るい沢村の声に少し安心、少し苦笑して通信機を取り出し狩野へと連絡を取る。と言っても向こうには青島と天野が居る、滅多な事はあるまい。
    「司令、ヘリの確保に成功しました。こちら側は軽傷、自分を含む二名、重傷、死亡者はなし。敵方は死亡者8人軽傷者6名です。・・・司令、我々は人を殺してしまいました・・・。」

187 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/07/29(木) 08:31 [ qUq6iUEM ]
    「・・・。」
    通信機を通しても狩野が奥歯を噛みしめたのが分かった。それだけの意味があるのだ、この自衛隊が始めて人を殺した、と言うことは。
    「・・・よくやった。その場でヘリの確保、敵軽傷者の治療を行ってくれ。」
    「了解しました。」
    通信機を切って村田は自分の手を見た。血で汚れた、人を殺めた手。
    「もうこの手じゃお前は抱けないな、真由美?」
    村田は一人苦笑して、未だ呆然とした敵の応急処置に向かった。

    佐藤には彼が泣いているように見えた。佐藤も沢村も実は銃を撃っていない。
    二人が呆然としている間に村田が一人でこの血溜りを作ったのだった。
    まだ若い二人に人殺しを経験させたくない、という村田の配慮だったのだろう。
    佐藤は漠然とそう思っていた。

188 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/07/29(木) 08:33 [ qUq6iUEM ]
    「たいしたものだな・・・。」
    狩野は目の前に倒れ、呻いている男達の姿を見ていった。
    これらは皆青島の先読みによって奇襲することすら許されなかった人間達であった。
    「いえ・・・、無駄弾もいくらか使いましたし。それより早く行かないと、天野が危ない。」
    「ああ。」
    甲板への扉を抜けるとそこには血溜りが広がっていた。
    「うっ・・・。」
    セフェティナと福地が同時に呻く。二人とも戦いには慣れていないのだ。

    「ご無事で何よりです、狩野司令、福地様。」
    「ああ、ありがとう。ヘリの用意は出来ているか?重傷者が一名居る。」
    「重傷者・・・『天野さん!?』」
    村田の言葉を遮り佐藤が飛び出る。
    「なぜ?天野さんが!?」
    「やめろ佐藤。」
    村田が佐藤をぐいと引き戻す。
    「とにかくすぐこんごうに戻りましょう。ここは危険です。」
    「ああ。・・・このままだと海戦になるか?」
    「おそらく。ただ海戦になればこちらが圧倒的有利です。」
    「わかった。」
    ヘリコプターが浮き上がる。
    「おお・・・、鉄が、飛ぶ・・・。」
    甲板の怪我をした敵兵は呆然とその様子を見つめていた。

    「くそっ!くそっ!」
    何故こうも思い通りに行かない。
    「・・・待てよ?もともとは野蛮人どもの恫喝用に持ってきたが・・・あれなら・・・。」
    ジファンは隠し扉から甲板のすぐ下にある大きな隠し部屋に入った。
    そしてそこに存在するのは赤い瞳、大きな翼、鋭い牙、真っ赤な鱗。
    この世界最強の生物、ドラゴンであった。

189 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/07/29(木) 08:34 [ qUq6iUEM ]
    ドラゴンと一口に言っても様々な種類が存在する。
    地方伝承では神などと言われている程の力を持ち、その長い寿命で人間の歴史の傍観者となってきた「竜」。

    基本的に山高くに少数で住みある程度の知能を有するため人間と対立したり手を組んだりしてきたブラックドラゴン、ゴールドドラゴンなどの正統ドラゴン族。

    その他様々な種類があるのだが、ジファンが目の前にしているのは知能は高くないが集団で群れる性質があり、それを利用して人間に軍事目的で飼育されている、高い飛行能力を持つ種族。ワイバーンであった。
    ドラゴンの中では低級と言われるがその力は人間に対して圧倒的なものがあり、このワイバーンによる竜騎士団はアジェントの軍部の一角を担っていた。

    「ええい、アジェント王国の力を、元・王下竜騎士であった私の力を見せてくれる!」
    自分の周りにマナの壁を張り巡らし風除けをする、といってもジファンの、と言うより普通の人間の魔力では多少の風は来るのだが。しかしそのマナの壁ゆえに竜騎士は高速移動による一撃離脱の戦法を可能としていた。

    ワイバーンのブレスにより甲板をぶち抜きワイバーンは空高く飛び上がった。
    目の前に自分に背を(といってもどちらが前か良く分からないが)向けて自らの船へと逃げていく巨大な空を飛ぶ鉄の塊が見えた。
    ジファンはニヤリ、と笑みを浮かべた。

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