自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた@創作発表板・分家

SS 001-803

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803 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日: 2005/05/30(月) 21:45:05 [ dT.GhyLM ]
    鬱蒼と茂る森、俺はその大木の又にしゃがみ、茶のカモフラージュを付けた対人狙撃銃を構えた。
    標的はたった一人の人間、それも馬に乗っているだけの。護衛も少数…こう言えば楽な仕事に見えるかもしれない。
    だが、この仕事を困難なものにならしめているたった一つの問題、それは標的本人なのである。
    トリド王国将軍マルサス=ヴァレンスタン、将軍にして魔道士。
    別に珍しいことでもないが、この魔道士と呼ばれる人種、上級になるとそもそもの性能がこちらと根本的に違う。
    「まぁ、どんなに弱音を吐いたところでやるしかないんだがな…。」
    双眼鏡を使いもう一度獲物の場所を確認すると俺はスコープを覗いた。
    「…標的900メートル、いや905メートル…。」
    慎重に、しかし確実に「奴」のこめかみに狙いをつける。
    俺がそのまま引き金を引こうとしたその時、男がピクリ、と体を振るわせた。
    グルリ、スコープ越しに覗いていた「奴」がその眼球のみをこちらに向ける。
    「…気づかれたっ!?」
    小声でそう呟いた瞬間、幾筋もの緑黄色の光線が俺の居る場所を貫いた。
    メキッ…、光線の一つが足場にしていた木の根元に当たったらしい、鈍い音がし、幹が揺れる。
    「うっ…。」
    慌てて隣の木の枝を掴み、そのままウンテイの要領でその木の裏側に周り「奴」の視界から逃れる。
    「!」
    赤い閃光が今度は俺の真上を貫く、首を動かさずに見ると、閃光は硬い大木の幹を半分近く抉り取っていた。
    再び閃光が地面を焼く、その収束された「破壊」は今度は足元の草をきっちり一直線に焼き払っていた。
    口から心臓が飛び出そうになるような緊張が体を走る。
    「奴」の探知能力を考えれば物音一つ立てることは許されない。
    「……。」

804 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日: 2005/05/30(月) 21:45:37 [ dT.GhyLM ]
    コウッ!
    今度は隣の木の幹が吹き飛ぶ。
    約一分間、悪夢のように長いその一分間で閃光の雨は止んだ。
    もちろん、どこかに行ったわけではない。こちらの存在を探しているのだ。1キロ先から。
    「一応カモフラージュはしてあるんだがな…。」
    その距離故全く感じられないその存在感が逆に恐ろしい。一キロ程度「奴」にとってはなんでも無い距離なのだ。
    「木の上では気づかれたか。索的距離を見誤ったな…。」
    いい加減痺れてきた手を考え地面に下り、カモフラージュを付け替える。
    ピリッ…。その途中に再び現れる強烈な存在感。
    「…っ…まさか聞こえた…?」
    必要最低限の音しかさせていないはずが、その音すら随分とお気に触るらしい、再び閃光が一本の木を貫いた。
    メキメキっ…悲鳴を上げ、倒れたその木から何羽もの小鳥が飛び立つ、そして再び放たれた閃光はその小鳥のことごとくを貫いた
    「…!」
    俺は息を呑んだ。場合によっては俺は十秒後にでもああなっているのだ。
    ボトッ…ボトボトッ…。鈍い、死骸が地面に落ちる音。
    それに耳を傾けないようにして俺は地面に伏した。当然、踵まで地面につける、たとえ隊の中には居なかったとしても、基本は守る。
    完全な狙撃姿勢になり、再び俺は奴の方へと銃を向けた。
    先程の様な木の上と異なり、木、枝、葉、そのことごとくが弾の通路の邪魔をする。
    気づいた時には上空では飛竜が飛び回っていた、モチロン探しているのだ、地上の俺を。
    「木の上で意地でも勝負をつけておくべきだったか…。だがな」
    索的能力、連射性、破壊力、弾数、機動性、あらゆる面で「奴」は近代兵士を上回る、持久戦になれば不利は明らかだった。
    しかし。近代兵士の方が得意なものが一つある。
    それは「精密性」
    「とったぜ、ジェネラル。」
    完全な優位というものはどんな相手にも慢心を与える。
    たった一キロ程度の距離、奴の頭が見えるだけで十分だった。
    一瞬の油断、奴はその姿を部下の影から覗かせた。

    ダアンッ…。

    俺の銃が一発の、乾いた銃声を響かせる。
    それと同時に、「奴」はスコープ越しに砕けた頭を覗かせた。

805 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日: 2005/05/30(月) 21:46:11 [ dT.GhyLM ]
    リド国、ヴァナン国の国境の自治都市ミンノ
    仕事が終わり、俺は何時も通りその酒場に居た。
    「よぅ、リョー。仕事はどうだったんだい?」
    「失敗してたらここにはいない。」
    「ハッハッハ、そりゃそうだ!」
    店主は笑いながら安酒を…それでもこの店では一番上等な物だが、をジョッキに注ぎ、俺の前にやった。
    「ありがとよ。」
    「ハアッハッハ!いやいや、お前とお前のお客の「口止め料」のおかげで随分と助かってんだ。」
    「まあ、少なくとも儲かっている様には見えんな。」
    俺はグルリと店内を見回す、普通の店なら追い出されているようなごろつき、酔っ払い、浮浪者までがたむろしている。
    召喚されてから3ヶ月。俺がここの店主とした契約は「仲介業務をする代わりに報酬の10%を支払う。」というものだったのだが…
    こいつらがこの店に支払う金を合計して十倍したところで俺のこの店にもたらしてきた額を超えるとは思えない。
    まぁ、そういう人間しかいないからこそ、俺としても仕事に使えるのだが。

    カランカラン…。
    酒に口をつけようとした時、扉が開く、眼をやるとそこにはこんな酒場には明らかに場違いな格好の男が立っていた。
    「ここにクマガヤリョウ殿はおられるか?」
    少し緊張した面持ち、口を開くとまた場違いな訛りの無い言葉が出てくる。
    羽飾りのついた帽子の生地から見ても、貴族か何かだろう。それもトリド王国の。
    「リョー、お前のお客さんみたいだな。」
    「…やれやれ、昨日仕事をしたばかりなんだがな。」

    十分後、俺は一枚の肖像画をペラペラと目の前に揺らしていた。
    今度の標的はヴァナン王国魔術師副長シムン。
    どうせ今回の件の報復ということだろう。
    そんなことで殺されることとなるこの男に少しばかり同情しつつ、俺は安酒を飲み干した。

806 名前:名無し三等陸士@F世界 投稿日: 2005/05/30(月) 23:23:13 [ dT.GhyLM ]
    思いついたネタをちょっと投下してみました。

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