自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた@創作発表板・分家

皇国召喚 ~壬午の大転移~1

最終更新:

Turo428

- view
だれでも歓迎! 編集
    モリゲスの地では、イルフェス王国と反イルフェス同盟の戦いが行われようとしていた。

    イルフェス軍の総指揮官を任された王女エレーナは、純白の
    ユニコーンに跨り、白銀の鎧に身を包み戦乙女と見紛う美しさ。
    側には、軍旗を持った美少年や、美しい装飾の施された純白のマスケットを持った美少年が付き従う。
    銀色の鎧は見た目と動きやすさを重視した作りで、鎧としての防御効果はあまり無い。
    しかし、イルフェス王家の"二本足で立つ銀獅子"の紋章を刻まれた鎧と軍旗は、
    王家の将軍であるエレーナの所在を、全ての将兵に見せ付けるようであった。

    「部隊の展開は問題ないな?」
    「はい、この分だと予想よりも早く仕掛けられそうです」
    馬上から指図する王女の威厳に満ちた様子は、彼女が女王であるかのようだ。

    イルフェス軍は歩兵28000、騎兵3400、砲兵1900、戦竜兵200、飛竜兵100の合計33600。
    対する反イルフェス同盟軍はライランス王国軍が24000、フェルリア王国軍18200、
    ソクト王国が6600、シュンザ公国が1100、ソヴァ公国が900、スキード公国が500の合計51300である。
    常備兵力の殆ど無いリッカ侯国とナガン侯国は、兵力の供出はせずに資金の提供のみに留まった。

    数的には同盟軍有利だが、敵からは影になって見えない丘の裏に総司令部と予備兵力を、
    丘の上にローハン中将の前線司令部を置き、その前に主力を並べるイルフェス軍に対し、
    同盟軍は丘の下側であり、この点は先に戦場に到着したイルフェス軍有利の態勢と言えた。

    戦いの火蓋を切ったのは、イルフェス軍の砲兵隊である。
    72門の大砲が、同盟軍の中央に向かって砲弾を浴びせる。

    数分後、同盟軍も砲兵隊を投入し、負けじと撃ち返し始める。
    砲丸に絡め取られた兵士が、後ろに居た数人の兵士と共に吹き飛び、少しずつ戦列を崩していく。

    だが高所の有利さ。イルフェス軍の大砲は同盟軍を射抜くが、同盟軍の大砲はイルフェス陣の手前で失速してしまう。
    勿論、失速した弾丸でも残存する運動エネルギーは相当なものであるから、イルフェス軍にも被害は出る。
    だが、被害の度合いを比べると、明らかにイルフェス有利と言えた。

    「頃合だな。飛竜隊に伝令、爆弾で敵中央を攻撃させろ」
    丘の上から戦場を見渡していたエレーナが、次の命令を発する。
    数十分後、近隣の基地に待機していた32騎の飛竜隊が離陸していく。
    ついに、虎の子の飛竜が戦場に到着する時が来たのだ。

    その間も砲兵隊による射撃は行われ、根競べの砲撃戦が続いていた。

    飛竜の任務はといえば、まず偵察、次に敵部隊への襲撃である。空飛ぶ軽騎兵なのだ。
    弓やマスケットの届かない高度から擲弾を落としたり、混乱する敵に対しては上空からマスケットによる狙撃を行ったりする。
    騎兵であれば、密集方陣を作る歩兵部隊を襲撃するのは骨が折れるが、飛竜であればそれは比較的容易に行える。
    砲兵と飛竜兵によって敵陣を崩し、歩兵や重騎兵、戦竜兵によって止めを刺すというのがこの世界での一般的な戦術だ。

    イルフェスの飛竜が接近してくることを知った同盟軍の兵士たちは、銃に弾丸を装填して射撃の準備をする。
    マスケットは決して対空射撃に使うための銃ではないが、それによって弾幕を張ることで飛竜の行動を阻害したり、
    上手く行けば飛竜に怪我を負わせたり、騎竜兵を撃ち落すことも可能なのである。
    イルフェスの砲兵隊が同盟軍のそのような行動を阻害するために、同盟軍の戦列に弾丸を撃ち込む。

    飛竜兵が野戦で使う爆弾は、擲弾兵が使う擲弾と同じものか、それを少し大きくしたものである。
    時限信管で爆発するため、落とす時の速度と高度が非常に重要である。投下速度は時速50km以上、高度は120m程度。
    十数個の擲弾を装備する騎竜兵が、次々と導火線に火を付けて投げ落としていく。
    同盟の歩兵隊はマスケットを空に向け、砲兵隊は対空砲に散弾を装填して追い払おうとする。
    飛竜用の対空射撃といっても、基本的には散弾銃で鳥を撃ち落すのと同じで、それをより大規模にしただけだ。
    だが、砲の追従性の問題もあり、高度100m以上を時速50km以上で飛ぶ飛竜にはなかなか当たるものではない。
    運良く命中しても、体格が大きく皮膚も分厚い飛竜には、1発の命中程度では掠り傷程度にしかならない。
    数発は命中させないと、戦闘力を奪う事はできないのだ。

    「エレーナ殿下、飛竜による攻撃は成功のようです。歩兵隊を前に出してはいかがでしょう?」
    「いや、敵の飛竜が来る恐れが高い。歩兵隊はこのまま横隊で待機させる。
     敵中央への攻撃は、引き続いて砲兵隊で行う。弾薬の準備を欠かさぬように」
    「御意。砲兵の弾薬はまだまだありますゆえ、心配はございません」

    今度は同盟軍の飛竜36騎がイルフェス軍に襲い掛かる。
    最初は苦戦していたイルフェス軍だが、イルフェスの飛竜が上空援護に入ると同盟軍の飛竜を追い散らし始める。
    西大陸で随一の飛竜の産地であるイルフェスは、質の良い飛竜を多く生産している。
    飛竜自身の戦闘力の差で同盟軍に勝っているのだ。
    同盟軍側が全騎爆撃任務なのに対し、イルフェス側は既に爆撃を終えて身軽に
    なった飛竜と、待機させていた飛竜を制空任務にしていた事も、イルフェス有利に働いていた。

    反イルフェス同盟側は急造の連合軍ゆえ、意思疎通が上手く行かず作戦が後手後手なのだ。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
ウィキ募集バナー