『神賜島』という島がある。
いや、最近皇国に『神賜島』と名付けられた。それまではこの世界に存在しない島。
対馬の北北西、丁度元世界の朝鮮半島のあった場所に皇国の出現と同時に出現した、満州程の大きさの島だ。
現在は皇国が(転移以降に接触した各国に対して)領有を宣言し、実効支配している。
転移以来、皇国はこの島の調査を行っていたが、そこで驚愕の事実が判明した。
埋蔵されている石油は測定不能な程多量。
石炭や天然ガス等の埋蔵も確認されており、森林資源も豊富。
加えて、島にはそれ以外にもダイヤモンドや鉄鉱石、ボーキサイト、タングステン等の他
金銀銅は言うに及ばず、亜鉛から錫から天然ゴムまで、皇国の欲する資源が山ほど眠る。
人の気配も無いようで、まったく手付かずの島らしい。
皇国の首相はこの報告に、これは何の冗談かね? と聞き返したという。
だが、東大(東京皇国大学)の高名な地質学者が現地調査しても、答えは同じだった。
結局、首相自らが現地入りして大量のゴムの木を見るまで、政府ではこれは夢か幻と思われていた。
だが、これが現実のものとして受け入れられると、政府の方針は大転換を要求される。
日に日に減っていく備蓄資源と戦いながら逼塞するのではなく、
明治より続く経済成長を持続させ、さらに発展させるという方針に。
本国の目と鼻の先にある巨大な資源地帯の獲得。
資源開発が軌道に乗るまではさらに2~5年程度の時間が必要との見積もりであったが、
誰もが思ったのは「これで皇国は救われた」という事だった。
『新都』
神賜島の南部にある天然の良港に面した“村”に付けられた名である。
現在は、まだ木造の出張所程度の建物しかないが、便宜上ここが神賜島の『首都』となっている。
というより、神賜島でこの村以外の場所は皇国の調査隊などを除けば無人である(と、今のところ考えられている)。
「対馬が見えるのですね」
「ええ。天気が良ければ、ですが」
村はずれの小高い丘に登っているのは、皇国政府が派遣した武官と文官。
武官は海軍の少佐、最初に(公式に)神賜島を発見した人物で、文官は内務省官僚である。
「しかし、議会もよく決断しましたね。
一般会計、特別会計合わせて100億円規模の投資とは」
「それだけの“価値”が、この島にはあるのですから」
「自噴する油田を見てからここに立っていても、未だに信じられませんよ」
「私も同じですよ、少佐。あの森の遥か向こうに、巨大油田があるなんて」
「アメリカやイギリスと連絡が取れなくなったと聞いた時、
私は不覚にも皇国はもう終わりだと考えてしまいました。
しかし、世界は皇国を見捨てなかったのですね。
毎月ちゃんと神社にお参りしていたからでしょうか?」
「そうかもしれませんね。
神社といえば、本国はこの丘に神社を建てる予定らしいですよ」
「ほう、早速ですか」
「……繁栄すると良いですね」
「ええ、きっと繁栄します。いえ、我々の手で繁栄させていくのです」
いや、最近皇国に『神賜島』と名付けられた。それまではこの世界に存在しない島。
対馬の北北西、丁度元世界の朝鮮半島のあった場所に皇国の出現と同時に出現した、満州程の大きさの島だ。
現在は皇国が(転移以降に接触した各国に対して)領有を宣言し、実効支配している。
転移以来、皇国はこの島の調査を行っていたが、そこで驚愕の事実が判明した。
埋蔵されている石油は測定不能な程多量。
石炭や天然ガス等の埋蔵も確認されており、森林資源も豊富。
加えて、島にはそれ以外にもダイヤモンドや鉄鉱石、ボーキサイト、タングステン等の他
金銀銅は言うに及ばず、亜鉛から錫から天然ゴムまで、皇国の欲する資源が山ほど眠る。
人の気配も無いようで、まったく手付かずの島らしい。
皇国の首相はこの報告に、これは何の冗談かね? と聞き返したという。
だが、東大(東京皇国大学)の高名な地質学者が現地調査しても、答えは同じだった。
結局、首相自らが現地入りして大量のゴムの木を見るまで、政府ではこれは夢か幻と思われていた。
だが、これが現実のものとして受け入れられると、政府の方針は大転換を要求される。
日に日に減っていく備蓄資源と戦いながら逼塞するのではなく、
明治より続く経済成長を持続させ、さらに発展させるという方針に。
本国の目と鼻の先にある巨大な資源地帯の獲得。
資源開発が軌道に乗るまではさらに2~5年程度の時間が必要との見積もりであったが、
誰もが思ったのは「これで皇国は救われた」という事だった。
『新都』
神賜島の南部にある天然の良港に面した“村”に付けられた名である。
現在は、まだ木造の出張所程度の建物しかないが、便宜上ここが神賜島の『首都』となっている。
というより、神賜島でこの村以外の場所は皇国の調査隊などを除けば無人である(と、今のところ考えられている)。
「対馬が見えるのですね」
「ええ。天気が良ければ、ですが」
村はずれの小高い丘に登っているのは、皇国政府が派遣した武官と文官。
武官は海軍の少佐、最初に(公式に)神賜島を発見した人物で、文官は内務省官僚である。
「しかし、議会もよく決断しましたね。
一般会計、特別会計合わせて100億円規模の投資とは」
「それだけの“価値”が、この島にはあるのですから」
「自噴する油田を見てからここに立っていても、未だに信じられませんよ」
「私も同じですよ、少佐。あの森の遥か向こうに、巨大油田があるなんて」
「アメリカやイギリスと連絡が取れなくなったと聞いた時、
私は不覚にも皇国はもう終わりだと考えてしまいました。
しかし、世界は皇国を見捨てなかったのですね。
毎月ちゃんと神社にお参りしていたからでしょうか?」
「そうかもしれませんね。
神社といえば、本国はこの丘に神社を建てる予定らしいですよ」
「ほう、早速ですか」
「……繁栄すると良いですね」
「ええ、きっと繁栄します。いえ、我々の手で繁栄させていくのです」