自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた@創作発表板・分家

短編『1週間の休暇』

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Turo428

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    皇国ほどではないが火山の多いイルフェス王国では、温泉が湧き出る土地が何箇所かある。
    その中で、首都のシュフから北西に30km程行ったアールヴィスには、イルフェス王国の王立温泉がある。
    元は王家のために設立されたものだが、今では一般にも開放されているため、休みの日などは特に賑わう。
    そんな王立温泉に、いつもとは違う団体客がいた。

    「まさか、こんな異世界の地で温泉に入れるとは思わなかった」
    「ああ、驚きだな。今日1日だけとはいえ、こんな立派な建物で温泉三昧なんて最高だ」
    客の正体は皇国陸軍の西大陸派遣軍の兵士である。
    今日1日は某連隊の貸切であり、士官や下士官は既に風呂を済ませている。

    平日だというのに軍人がのんびりと温泉に入っている理由は、
    イルフェス駐留の派遣軍に、1週間の休暇が与えられたためだ。
    1週間といっても、連隊ごとに交代で休みを取るので1人あたりの休みは1日。
    しかしそれだけでも、激務に疲労した将兵にとってはありがたいものだった。
    何せ、ここ1ヶ月ほどはずっと働き詰めだったのだから。

    強敵と戦うという事こそ無かったが、何しろ派遣軍は数が少ないため、後方支援部隊が少なく、
    基地の設営から防御陣地の構築、警備任務、補給任務など、全部持ち回りで一般歩兵がやらねばならなかった。

    海上の巡洋艦には全権大使が乗ってはいたが、小さな交渉事であれば
    上級将校が外交官として立ち回らねばならないことも多かった。
    海軍に比べて海外での活動機会のない陸軍であるから、外国で外国人との交渉というのは
    体力以上に気力を消耗し、連隊長級の将校は皆戦闘よりこちらの方が疲れると愚痴っていた。

    であるから、温泉宿での休養は派遣軍の将軍さえも大喜びで、子供のようにはしゃいだという。

    「温泉に酒にメシに、いいのかな……こんな贅沢して」
    「いいんだよ。連隊長も言ってただろ、今日だけは羽目を外していいって」
    「まあ、俺達はそれだけの仕事をしたってことだ」
    「そうそう、何せ敵軍の主力を一網打尽だからな」

    短いながらも休暇を楽しんだ皇国軍将兵達の夜は更けていった。

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