自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた@創作発表板・分家

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 あらすじ。
 2019年も終わりに近づいたある日、日本列島は異世界へと召喚された。
 北は北方領土、南は沖ノ鳥島、東は硫黄島、西は日本海上の自衛艦隊、上は日本上空にいた人工衛星を頂点とする全てごとであった。
 唯一の例外として、かつて日本を動かしてきた政治家たちは、元も含めて全員が行方不明となっている。
 このような異常事態に官僚機構はなすすべを知らず、結果として、統合幕僚長を代表とする救国防衛会議が結成された。
 彼らは従来の国会に相当する機関であり、絶大な権力を有している。
 しかしながら、酒池肉林の日々を彼らが味わう事はなかった。
 日本国の現状は、そのような贅沢をいつまでも続けられるほど生易しいものではなかったのだ。
 食糧問題、国内の経済状態、国民感情。
 元の世界からの孤立を起因とする、あらゆる災厄が彼らによる解決を待っていたのだ。
 それらに対し、救国防衛会議が出した回答は、武力による海外進出。
 友誼や親愛の念でどうにかなるほど、日本には時間も余裕もなかったのである。
 付近の大陸に基地を設けた彼らは、原住民である『エルフ』と交戦。
 その場は切り抜けたものの、使用されている技術からして、この大陸への本格的な武力侵攻を決意する。
 続く夜に、襲撃を受ける『ダークエルフ』を人道的見地という名目で救出、大陸最大の国家である『連合王国』に対し、積極的な平和維持活動を開始した。
 在日米軍艦隊および海兵隊まで動員しての強引な首都攻略は成功し、日本人たちは自分たちのための穀倉地帯を確保する。
 同時に、彼らは支配下に置いた地域から油田を入手し、エネルギー面での崩壊からも脱出する。
 この時点で、当面の問題は解決しつつあった。

 抵抗は、勿論あった。
 ゴルソン大陸と呼ばれる日本列島の隣の大陸には、連合王国と呼ばれる巨大な大陸国家があった。
 ダークエルフ救出作戦で一部戦力を撃破した自衛隊は、続く波状攻撃にも全力で反撃した。
 結果として敵戦力をすりつぶす事に成功した彼らは、連合王国首都を奇襲、王を始めとする首脳陣を抹殺した。
 もちろんそれ以外にもこの惑星には国家が存在したが、取り急ぎ最寄の一国は滅ぼされたのである。
 その後、原住民であるエルフの一部族『第三氏族』は日本国に対しテロ攻撃を開始する。
 それはこの世界特有の技術である魔法を用いたものだった。
 人間の生命を動力源とする爆弾のような石。
 ドラゴンをそそのかし(結果として彼の自由意志によるものだったが)襲撃を行わせる。
 どこにでもいる人間を、普通科一個小隊でも対抗できない化け物に変える呪文。
 人間をゾンビに変える邪法、それを使役する強大な存在の召喚。
 どれもが日本人たちを苦しめた、傷つけた。
 自衛隊は容赦のない反撃を実施した。
 第三氏族たちの拠点は空爆で焼き尽くした。
 魔法の石を使った自爆テロは、長距離からの攻撃で打ち倒した。
 一族を率いて飛び掛ったドラゴンたちは、前線に作り上げられた防空システムが叩き落した。
 東京で暴れまわる化け物に変えられた女子高生は、付近一帯の重火器や艦艇や航空機を呼び出して殲滅した。
 ゾンビの大群は機甲科と特科、近接航空支援により踏み潰し、そして強大なはずの存在は、勇敢な普通科隊員たちによって滅された。
 残る第三氏族たちは地下に潜り、組織的な抵抗は消えた。
 日本国は、本来の領土に加え、大陸を一つ手に入れたのだ。

 だが、ここに来て国内の膿が噴き出した。
 広域指定暴力団である極道会は、この世界の麻薬などを入手するために、対価として書籍の密輸を試みた。
 それは地球の歴史であったり、日本に関する資料であったり、基礎的な工業技術に関する入門書であった。
 全ては、地球人類が2000年以上の年月をかけて作り上げた、この世界の人間にとっては人命よりも黄金よりも価値のある物である。
 日本海上の不審船撃沈によりその情報を入手した救国防衛会議は、直ちに本土中の自衛隊と警察に、極道会の強制捜査と殲滅を指示した。
 誰も阻止し得ない武力を持つ彼らは、全国で一斉に検挙作戦を実施、少なからぬ犠牲は出たが、それにも成功した。


「この物語は、そんな世界で活躍し続ける、現代の生み出した英雄佐藤一等陸佐(予定)の物語である」
「佐藤一尉殿、あなたは一体何やってるんですか?」

 最後の一節を呟きながら書き込んだ佐藤に、いつの間にか隣に現れた二曹が声を掛けた。
 もちろん、その声音は厭きれ返っている。

「二曹、誰にでも、他人を踏み込ませたくない領域があるのだ。わかるな?」
「はい、わかります。それで、何をやっていたのですか?」

 二曹はわかってくれなかった。
 つまり、後半部分からは自分で自分を英雄と表記したノートについて、説明しなければならない。
 どうしても回答しなければならない、言い訳のしようがない沈黙が続き、そのうち佐藤は考えるのをやめた。

「この世界に来てからのダイジェストをまとめておこうと思ってな」

 彼は往生際が悪かった。
 それは今までの連戦の中で彼と彼の部下たちを救ってきたが、この場ではみっともないだけだった。

「ようするに、勤務時間中に自伝を書いていたわけですね」

 二曹の言葉に容赦はない。
 確かに勤務時間中に勤しむ事ではないのだから無理もない。

「いや、ほら、今までとは違う世界に来るなんていう異常事態を経験したわけだから、経緯を詳しく記録する必要があるじゃないか。
 つまりこれは、特別職国家公務員である私が勤務中にやっていたとしてもおかしくはないわけだな、うん」

 もちろん、彼のいい訳には正統性の欠片もない。
 確かにこの世界に来てからの佐藤は、常に最前線で戦ってきた歴史の生き証人である。
 ゴルソン大陸の土を最初に踏んだ部隊の一員であり、初めてのエルフとの交戦を指揮した。
 ダークエルフ救出作戦に従事し、連合王国との戦闘も経験している。
 グレザール帝國という、この世界でもっとも強大な帝國の軍隊とも交戦した事があり、ドラゴンやゾンビや悪霊、その他化け物とも交戦している。
 本土での休養中には東京事件と呼ばれる化け物との死闘に巻き込まれ、大きな事件ではないが礼文島にて上級精霊とでも呼ぶべき存在と接触した。
 大陸に戻ってからはゾンビの大群を掻き分けて進む部隊の先陣を切り、古代遺跡の地下では瀕死の重傷を負いつつも、強大で邪悪な存在を滅した。
 
「俺たちの関わってきた事を考えれば、英雄といっても問題ないよな?」
「そうですね、確かに一尉と自分たちが経験してきた事を思えば、我々は英雄と称されても過大評価にはならないでしょう」

 二曹は、その点だけは素直に同意する。
 外見は見麗しい美人で巨乳で性同一性障害の二等陸曹だが、彼らが戦い続け、勝利し続けたおかげで日本が残っているといっても過言ではない。
 しかし、それと勤務時間中に自伝を書く事には何の関係もない。

「勤務時間外に存分にお書きください」
「そうだな、君の言うとおりだ。二曹、進言を受け入れよう」

 将校としての威厳を持った声で佐藤は答えた。

「しかしまあ、ご自身の事を自分自身で英雄と書いたり一等陸佐(予定)と書く事には感心しませんね。
 何かの間違えで出版されたとしても、全国規模で失笑をされるのがオチですよ」

 二曹の指摘は佐藤の心に突き刺さり、それを粉砕した。
 それから12時間の間、佐藤は首を傾け、うつろな目で口を開いたまま書類仕事を続けた。

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