自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた@創作発表板・分家

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西暦2021年4月14日 10:20 日本本土 防衛省 救国防衛会議 統幕長私室

「正直なところを申しますと、閣下の見られた夢をただの夢で片付けたくはありませんな」

 統幕長の告白を聞いた陸幕長は、そう回答した。
 現状と将来についての質問をされた彼らは、その質問の影にある事情を聞きたがった。
 そして、根負けした統幕長から遂に真相を聞きだしたのだ。

「この世界だと何が起きてもおかしくありませんし」

 陸幕長の言葉を空幕長が続ける。

「弾道弾程度ならばいくらでも叩き落しますが、空気を消す魔法と隕石を落とす魔法ですか。
 もしそんなものが実在すれば、とても厄介ですな」

 腕を組み、表情をゆがめた海幕長が締めくくる。
 彼らはそれぞれ防衛大学の同期生であり、気心が知れた仲だった。

「核はやはり?」

 空幕長が尋ねる。

「難しい。オプションの一つとしては大変に魅力的なのだが、国民感情を考えるとな」

 ため息をつきつつ統幕長は続けた。

「研究開発に時間がかかりすぎるという問題もあるが、第一に国民を納得させる材料がない。
 それに、我々で核兵器を持ってしまうと、在日米軍の連中がまた心の拠り所を失ってしまうしな」

 自衛戦闘用の武器弾薬を除けば、遂に基地内の糧食まで日本に依存し始めた在日米軍は、恐慌状態の一歩手前にいた。
 そんな彼らの精神的支柱は、今では原子力空母と数隻の原子力潜水艦、それらに搭載された核兵器だけだった。
 日本人たちが持っていない、あるいは日本人たちが使い方を知らない兵器。
 それらを運用できている限り、合衆国軍は消滅しない。
 彼らはそのように考えていた。

「あと最低でも十年、彼らが完全に日本へ土着するまでは、彼らの精神面について大きく気を配ってやらんとな」
「原潜や空母で独立宣言をされても困りますからな」

 海幕長が喉を鳴らして笑う。

「それはそうと、敵の戦略魔法についての対策、いかがいたしますか?」

 咳払いをしつつ、空幕長が脱線し始めた会話を元に戻す。

「事前の準備は必要だが、逆に言えば準備さえすればゾンビ軍団を呼び出せるのが魔法だ。
 あらゆる災厄を想定し、行動していく必要がある。
 もちろん、実際に存在するしないの確認もな」
「まずは情報収集からですな」

 手元の手帳に何かを書き込みつつ陸幕長が言う。
 彼の頭の中では、早くも行動計画の策定が始まっているのだろう。

「情報も大切ですが、火力が不足しておりますな。
 火力だけではなく、備蓄もまだまだ足りない」

 海幕長が鞄から書類を出しつつ呟く。
 元より海上自衛隊では、出来る限りの戦力増強が望まれている。
 それは艦隊戦力の拡張でもあり、継戦能力の向上でもある。
 七つの海を統べ、太陽の沈まぬ帝国を建設せねばならない日本国にとって、強力な海軍は必須の存在なのだ。
 その通り、と空幕長も頷き、そして彼は続ける。

「どのみち、合衆国がない世界では、我々が空の上に行かなければなりません。
 そこからもし、不躾な闖入者が現れるかも知れないというのならば、対策が必要ですね」

 携帯電話を取り出しつつ続ける。

「JAXAにも天文台にも、知り合いがいます。
 世間話レベルでそれとなく伝えておきます。あとは特に説明もなく予算を増やせば勝手に対策を取るでしょう」
「会議中にメールを打つな。
 まあ、空幕長から私的にメールが送られれば、より恐怖感を煽れるか。
 とにかく諸君、行動だ」

 統幕長はそこで言葉を切り、一同を見た。

「われらとわれらの子孫のために」

 日本国民の繁栄と絶滅回避。
 彼らはただそれだけを目的に、歩み続けている。

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