自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた@創作発表板・分家

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西暦2021年4月14日 10:21 ゴルソン大陸 グレザール帝国 城塞都市ダルコニア路上

「こちら第一分隊。車両部隊は完全に足を止められた。
 現在我々は徒歩で移動中、損害なし、敵の抵抗は軽微。
 当初の作戦目標へ移動を続ける、オワリ」

 無線機に向けて報告し、新井田一曹は前進を継続させた。
 現在彼らは狭い道の両側に並んで進んでいる。

「頭上に注意、発砲は自由」

 短く警告と命令を行い、先を進む陸士たちを見る。
 誰もが適度に緊張し、それでいて素早く道を進んでいく。

「あと十分って所でしょうか?」

 彼の小隊陸曹を勤める皆山三曹が小声で話しかける。

「そうだろうな、これ以上抵抗がなければだが」

 縁起でもない事を言い放つ彼の目の前、正確には視界上方で、雨戸が突然開かれた。

「左上!」

 突然の命令に、陸士たちは当然のように従った。
 豊富な実戦経験は、一人の日本国民を勇敢な戦闘要員へと変える。
 新井田一等陸曹が率いていた自衛隊員たちは、最も経験が浅い者でも二十八回の戦闘を経験していた。

「AAAAaaAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!」

 日本語ではないイントネーションでの絶叫が聞こえる。

「手榴弾!」

 数名の隊員が窓に向かって手榴弾を投擲する。
 咄嗟の出来事ではあるが、狙いに間違いはない。
 数秒の後に屋内で爆発が発生し、窓から爆風が吹き出る。

「本部へ連絡、敵と交戦を開始」
「了解、報告します」

 中隊本部へ通じる無線を持つ隊員に命じ、新井田は自動小銃を構えた。
 彼らの前方およそ200mほどの建物から、無数の敵兵たちが現れだしたのだ。

「撃て!」

 彼が命じるまでもなく、隊員たちは発砲を開始した。
 敵は刀剣を中心とする近接戦闘のみを頼みとする時代遅れの剣士たち。
 自衛隊員たちにとって、それは射撃目標以上の何者でもなかった。
 はずだった。

「効いてません!」

 最前列の陸士が叫ぶ。
 彼の目の前では、信じがたい光景が広がっていた。
 殺到する5.56mmNATO弾。
 分厚くなければ鉄板ですら撃ち抜くそれを、彼の眼前の剣士たちは鎧兜で弾いていた。
 どれほど鎧を厚くしても、人間が身動きを取れる重量に抑えている限りライフル弾は防げない。
 地球人類が歴史上の幾多の戦場で多大な犠牲を払って理解した常識を、目の前の敵兵たちは覆した。

「しゅ手榴弾!離れろ!」

 新井田がうろたえつつも命令し、そして統制を若干失いつつも隊員たちはそれに従った。
 未だに距離がある敵兵たちの足元へ手榴弾がいくつも投擲され、そして最前列の陸士たちは駆け足で後方へと退避する。
 複数の爆発。
 鎧を着込もうとも絶対に存在する露出部分を砕かれた敵兵たちが地面に転がる。
 いかに頑丈な鎧を用意したとしても、全身を均一な強度で覆う事はできない。
 古来の甲冑から最新型の主力戦車まで、それは基本原則である。
 その理由は重量であったり、機動性であったり、その他仕様を満たすためであるが、工業製品とはそういうものである。
 どうやら魔法で何か対策を施しているらしい目の前の剣士たちも、その原則からは逃れられなかったらしい。

「鎧がない所を狙え!下がりつつ射撃!本部へ連絡!受話器貸せ!」
「どうぞ!」

 後退する新井田から離れないように絶妙な距離を保ちつつ、通信士が受話器を渡す。

「本部!本部!敵は魔法で強化した鎧を装備!銃弾が効かない!
 隙間を狙うか手榴弾でふっとばすしかありません!
 我々はこれより交代します!以上!」

 後方の安全を確保させようと後ろを向いた彼は絶句した。
 盾を構え、その後ろに弓を持っているらしい集団が、半透明の姿から徐々にその輪郭を現し始めていたのだ。
 彼らは歴戦の自衛官であったが、魔法というインチキを相手に本格的な市街戦をした経験は持っていなかった。

「後ろ」

 後ろに敵、そう言おうとした彼を影が覆った。
 何事かと空を見る。
 視界一杯のレンガ。
 歩兵部隊で囲い込んで建物で押しつぶす。

「俺たちゃ戦車扱いかよ」

 目の前まで接近したレンガに対し、彼はそう呟いた。
 そして、衝撃がやってきた。

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