自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた@創作発表板・分家

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小国の苦悩13話
「ギギー!」
「キー!キー!」
ゴブリン達が咆えながら、街道を進軍していくのが見える。
「中隊規模だな・・・」
帝國製双眼鏡を覗きながら年配の兵士が呟いた。
「騎士団長に報告。敵来襲」
「はっ!」

リンドマン渓谷
ゴンザレス近郊にある渓谷とは名ばかりの小さな崖に挟まれた防衛上の要衝である。
かつてロドニー騎士団を相手に、ゴンザレス騎士団が激しく争った古戦場は再び戦場となろうとしていた。

「報告ぅ! 敵来襲! 中隊規模!」
走りこんできた兵が帝國式の敬礼をしながら報告した。
「騎士団長! 予定通り攻撃を開始しましょう!」
「よし、ゴンザレス騎士団久々の実戦である!気を抜くな!」
「はっ!」
ピエール男爵は声を張り上げ、兵達の士気を上げる。
兵士達は38式帝國銃のボルトを動かし、初弾を装填する。
ゴンザレス騎士団は崖上の森に潜んでいた。
「敵一群接近」
旧来型の単眼鏡を覗いていた兵が声を上げる。
「構えぃ!」
ガシャガシャシャ!
「敵が予定地点に差し掛かり次第攻撃を開始する! 号令前に発砲するなよ!」
肉眼では500mほど先の曲がり角を曲がり、何かの集団が現れるのが見えた。
「まだ撃つなよ・・・引きつけよ!」
先頭集団が300mに接近した所で顔を挙げ、こちらの様子を窺う兵士達を宥める。
最後尾が曲がり角を抜け、先頭集団は更に接近しつつあった。

「目標! 200米! てぇ!」

パパパパパン!

騎士団長の号令と共に一斉射撃が始まる。
「グゲェ!」
「アギゥイ!!」
6.5mm弾の集中砲火を浴びた前衛のゴブリンが血反吐を撒き散らしながら倒れる。
突然の攻撃に驚き動きを止めた後のゴブリンの胸に弾が直撃し倒れこんだ。
ゴブリンの粗末な皮鎧はライフル弾に対して殆ど効果なく貫通していく。
一個小隊21人による最初の一斉射撃だけで10匹のゴブリンが倒れる。
残ったゴブリンは慌てて逃げようとする者、状況が把握できないものに分かれて大混乱に陥る。
「アギァ!」
パパパパパン!
そこに再装填を終えた38式帝國銃から放たれた第二射が襲い掛かり、新たに10匹程度が倒れる。
何匹かのゴブリンが当てずっぽうにクロスボウを放つが、全く検討外れの場所に飛んでいった。
クロスボウを再装填しようとしていたゴブリンに第三射が襲い掛かり脳髄をぶち抜く。
「・・・!  ・・・!」
400m程先で指揮官らしいダークエルフが何事かを叫んで、ゴブリン達を前進させようとするが、大混乱に陥ったゴブリン達の統制を取ることは最早不可能だった。
「ギャギー!」

「あのダークエルフを狙撃できるか?」
ピエールが最も年配の兵にたずねる。
「無理ですね・・・狙撃鏡でもあれば別ですが・・・」
「あれは高い。本体だけで精一杯だ」
帝國が同盟国・属国向けに販売している帝國銃はクロスボウよりも精度も威力も連射性も高い一方で、非常に高価であった。
狙撃鏡に到っては本体よりも高い値と購入制限が付けられており、ゴンザレス王国の予算で買う事は困難だった。
専用狙撃モデルである97式はそもそも販売すらされていない。

パパパン!

第五射と共に兵士達は装弾子を叩き込みリロードを行う。
200匹以上居たゴブリンは密集隊形を取っていたのが災いし、1/5程度が倒れ、すでに壊走状態に入って居た。

パパパパ!

背中を見せて逃げようとしていたゴブリンの大腿骨を6.5mm弾が破砕する。
崩れる様に倒れたゴブリンは助けを求め喚くが、当然の様に誰も助けようとはせず、我先にと逃げ出していく。

「撃ち方やめぇ!」
「撃ち方やめ!」
ピエールの号令を副騎士団長が繰り返し、兵達は手を止める。
「事後処理に入る! 全員白兵戦装備で前進!」
兵達は銃を地面に置いていた槍に持ち替え、崖を駆け降り始める。

「やれ!」
死体と地面に這い蹲り、もしくはヨタヨタと逃げようとするゴブリン達を槍を構えた兵士達が突いていく。

タタタターンタターン・・・

遠くから銃声が聞こえる。
複数の近隣領主の騎士団が待ち構えている「デッドエンド」に予定通り逃げ込んだのだろう。
「終わったな」
「そのようですな」
兵の取りまとめ役である兵長が話しかけてくる。
「どうした」
「武装がやけに新しいので気になって調べてみたのですが・・・」
兵長はクロスボウを差し出した。
「連合製か」
「はい、形式からみて間違いなく大陸王国連合のものです」
「ゴブリンにまでばら撒くか・・・見境なしだな」
粗悪な作りだが、間違いなく大陸中央で作られる形式である。
「金が掛かる割りに有効とは言えませんな」
「貧してゴブリンとまで手を組む悪辣な連合・・・か」
「は?」
「帝國が喜びそうだ。いい流言になる」
「政治ですか。私には分かりかねます」
ピエール男爵は手振りで兵長を下がらせた。
「死体は路肩に集めて、火葬にしろ!」
遠くで副騎士団長が事前の予定通りに指示を出していた。

田舎の伝統的社会問題であったゴブリンをはじめとした害獣たちは、帝國大陸上陸以降、急速にその数を減少させて行った。
地域丸ごと帝國傘下に入った事で、近隣諸国との小競り合いや警戒に軍を裂く必要のなくなった各国が害獣や山賊討伐に本腰を入れた事で、地方の治安は急速に改善されて行ったのである。
これには帝國から各国に輸出された帝國銃が各国の火力を大きく向上させ、それ以外の種族、もしくは組織とのパワーバランスを塗り替えた事も関連している。
地域紛争の消滅、害獣・山賊・海賊討伐による治安の改善、帝國指導による行政改革、そしてそれらによる商業の発展は、帝國陣営の強化と、帝國への求心力強化に繋がった。
これ等の帝國統治による成果は、プロパガンダとして世界中に喧伝され、遂には反帝國陣営内に親帝國に傾く国家、人々が頻発した。
その手際は、まるで帝國のかつての宿敵がやったそれの様に鮮やかであった。
これら「帝國主義者」に対する弾圧に気を取られた反帝國陣営は帝國の行動に対応する貴重な時間を失ったのである。





くろべえ氏の作品の様にダークエルフは一枚板でもなんでもないです。
忍者とエルフと山賊と蛮族を足して2で割った様な連中ですので
部族ごとに山賊やってたり引篭ってたり、単独で研究やったり邪神に生贄捧げたり
そらもーなんでもありの汎用的悪役です。

今回の奴は反政府ゲリラみたいなもんで、単独で近隣のゴブリンを支配して、深い森を拠点に山賊行為を繰り返した挙句
調子に乗って近隣の村を襲撃しようとしたところを察知され包囲殲滅という流れです。

帝國の陰謀に関しては「今回は」違いますね。
似たような事はやってるでしょう。陰謀大好きな連中が多いですから。
危険人物扱いで本土から追い出された参謀殿がみんなで好き勝手・・・

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