自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた@創作発表板・分家

第四話

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Turo428

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ストームゲート。

アルタート太陽王国と秩序同盟の大将格であるアークノール共和国との国境線に程近く建設された城塞都市である。

その名の由来は、『例え全てが吹き飛ぶような嵐をもこの町の扉を開ける事は出来無い』という自信から来ている。

だが、その堅牢な城壁は今や祖国を阻む壁として機能している。


「本部からはまだ何も連絡は来ていないのか?」

「はい、いくら連絡を入れても死守せよとの事です。」

「頭でっかちの無能共が…。」

「派遣軍敗北から一週間。敵も準備を整え終えたでしょう。地理的にも始めに奪還を考えるのはこのストームゲートかと…」

「そんな事は言われんでも分かっている!だが、この町には1500ばかりの兵しかいないのだぞ!守りきれん!」

この町の防衛を任された秩序同盟軍の少佐は苛立った声をあげ、机を叩いた。

―糞!どうしてこんな事に!大体連中はもう虫の息だったはずだろうに!

まさか負けるとは思っていなかった同盟軍本部は、守備隊に対し『軍再編の為増援は不可能。都市を死守せよ。』と通達して以来、何度呼びかけても反応が無い。

「如何…なさいますか?」

「此処に留まるしか無いだろうが!勝手に撤退でもしてみろ我々全員処刑だぞ!」

「それでは…」

「ここで迎撃する。命令通りにな。」

「…。」

「撤退すれば犯罪者だが、戦死なら殉教者だ。家族も肩身の狭い思いをする事は無い。」

「分かりました、全員に連絡を入れます。それと、偵察隊を―」

「ほ、報告します!」

ガンッと音を立てながら一人の兵士が息を切らせながら部屋へと入ってきた―最悪の情報と共に。

「て、敵軍襲来!連合軍です!」

「…来たか。案ずるな!例え幾ら居ようが所詮烏合の衆だ、この城壁を破る事すらできぬ!長弓兵を位置に着かせよ!」

「はっ!」

来た時と同じように慌てて退室して行く兵士の後ろ姿を見ながら少佐は感じていた。

―先に逝った連中と同じ所へ逝くのか…。

少佐は目を閉じると、それ以後言葉を発する事は無かった。


「あれがストームゲートか。成程、確かに堅牢そうだな。」

チハの上に乗った山崎中佐は双眼鏡を片手に関心したように言った。

「中佐、砲兵隊の準備が整ったようです。いつでも砲撃出来ます。」

「ん?案外早かったな。まぁ、早めに終わるに越した事は無いか。」

「ヤマザキ殿、本当にドワーフ達のカタパルト無しで大丈夫なのですか?」

「カイゼル閣下、ご安心ください。我が帝國の攻城兵器ならば大丈夫です。」

「じゃが、あんな遠い所からで大丈夫なのかのう?」

「もう間もなく分かりますよ。…砲撃開始。」

「はっ!」

無線機に向け、砲撃開始を伝えるとほどなくして轟音がなり響いた。

発射された砲弾は寸分違わず城壁に着弾し続けて行く。

爆音を立てながら城壁が崩れ落ち、城壁の通路に布陣していた長弓兵達も同様に落ちていく。

「着弾確認。打ち方止め!」

中佐の命令は無線を通じ砲兵隊に届き、砲撃は止んだ。後に残ったのは無残にも破壊されたストームゲートの堅牢と思われた城壁だけである。

「なんと…」

己の常識外の威力を見せた帝國の砲撃にドワーフの将軍は顎鬚を震わせながら呟いた。

「これは…」

カイゼル将軍はドワーフのカタパルトなどよりも強力な大砲の威力に目を丸め

「凄ぇな…」

オーガの将軍は圧倒的な破壊力に喜色満面を浮かべ

「…」

エルフの将軍は言葉も無く沈黙した。


「何だ!何が起こったんだ!」

「俺が知るかよ!手前ぇで見てきやがれ!」

「誰か!助けてくれ!一人天井の下敷きになった!」

「放っておけ!どうせ死んでる!」

罵声、怒号、哀願の三重奏が奏でる中少佐は冷静だった。

―やはりこうなるか。

服に着いた埃を払いながら立ちあがった少佐は混乱する部下達に命令を発した。

「総員近接戦闘装備!奴らが雪崩れ込む前に迎撃態勢を整える!」

「は、はっ!」

混乱していた部下達を一括し、自身も剣を手に取る。

―どうせ死ぬなら一人でも多く道連れにしてくれよう。

心中で決心すると、吹き飛んでしまいもはや扉の体をなしていない穴を抜け外へと出た。

「…予想以上に酷いな。」

ぽっかりと壁その物が無くなり、町の外に布陣する連合軍が見えた。

まかり間違っても僅か1500人で勝てる数ではない。

「それでもやらねばならぬか…。」

少佐は首にかかっているネックレスを握りしめた。

「神よ、そして故郷に残してきた家族達…。私に力を…。」

しばらく目を閉じ、祈ると剣を鞘から引き抜いた。

連合軍は町に向け行軍を始めていた。


「オーク強襲隊、ゴブリン突撃隊前へ!一番槍は貴様らだ!」

「ウオオオ!!!」

唸り声を上げながら斧を持ったオーク達と槍を持ったゴブリン達が町へと突撃して行く。

「将軍閣下。申し訳ありませんが、接近戦となれば同志討ちを避けるために我々は攻撃する事は出来ませぬ。」

「いやいや、ヤマザキ殿。ここまで御膳立てをしていただき感謝いたします。あとは我々でも対処できます。」

山崎中佐の言葉にカイゼル将軍は笑顔で答えた。

「第一近衛騎兵隊、行くぞ!」

カイゼル将軍を先頭とし、アルタート王国でも精強で知られる騎兵達が突撃していく。

「いやはや、ワシ等のカタパルトなんぞ話にもならんのぅ。」

「いえいえ、貴方達ドワーフの技術拝見させて頂きましたがとても素晴らしい物でした。」

「工芸品や芸術品なら誰にも負けぬよ。じゃが、あの『サンイチシキヤホウ』とやらや『サンパチ』と比べればワシ等の武具など…。」

「…貴方方は戦闘に参加されないので?」

「ワシ等は工兵じゃからなぁ…。ここからは、見学させてもらうよ。」

この頃腰が痛うてなぁとドワーフの将軍は笑い、持っていた鎚を杖代わりにした。

町からは怒号が聞こえ始めていた。


「うおおおらああ!」

オーガの将軍がドワーフ特製ミスリルの戦斧が敵兵を鎧ごと切り裂く。

町に突入してからかなりの数を倒したが、まだ司令部には辿り着いていない。

視界の隅では、一人の兵士が彼の部下のゴブリン達の槍に貫かれていた。

「ホーガン将軍!ここでしたか!」

「おう、カイゼルさんかい。どうした!」

「捕らえた兵士が、司令部の場所を白状しましたこれより向かいます。貴方達も御同行願いたい。」

「ようやくかい、よーし全員集合!これから敵の大将ん所に行くぞ!」

「「おお!」」

オークもゴブリンも人間も皆歓声を上げる。

もはや奪還は時間の問題であった。


「連合軍、市内に侵入!司令部に進撃中!」

その知らせを聞き、少佐は決断した。

「副長。」

「はっ!何でありましょう、少佐。」

「馬車を出す。重症者を連れ本部まで撤退、此度の事と停戦協定を結ぶように本部に伝えよ。」

少佐の発言に副長は仰天した。

「な…、何を仰いますか少佐!」

「お前はまだ若い、この事を肥やしとし立派な指揮官になれ。」

「拒否します!私もここで皆と共に―!」

副長が否定の言葉を述べたと共に、少佐の剣が副長の首に当てられた。

「命令だ、副長。ここで言い争うのも時間の無駄だ。行け。」

悔しそうに顔を歪めた後、ゆっくりと副長は口を開いた。

「了解…しました。」

「それで良い、さっさと行け。」

部屋を出る前に副長は敬礼をすると一度も振り向く事無く走った。

「貴様らも逃げたいなら逃げていいぞ、ただし国には戻るなよ。」

一人でも逃げてくれたらと思っての一言だったが、誰一人として部屋を出る物は居なかった。

「この馬鹿者共が…。良かろう、貴様らには俺と共に死んでもらう。」

少佐を先頭に兵士達が外へ出る、太陽が彼らを眩く照らしだす。

「ああ、来なすったようだな。」

逆光でよくは見えないが馬に乗った男を先頭に大軍がこちらへ向かってきている。

「命など惜しくは無いが…、だが家族や家の名の為には死なねばならぬ。皆、すまんな…。」

少佐の言葉に兵士達は皆顔を背けた。

だが、誰一人逃げる事無く前へ前へと歩み出す。

やがて両軍が相対した。

「アルタート太陽王国軍大将、カイゼル・F・アルタートだ。」

馬上から威厳に満ち溢れた声が響き渡る。

「秩序同盟軍少佐、アルバート・W・ウィスク。」

衰弱しながらも意思の強そうな声が通る。

「ウィスク少佐、投降したまえ。命までは取らん。」

「残念だが大将、それは出来ぬ。我々は最後の一兵まで戦う。」

その言葉を受け同盟の兵士達は各々の武器を掲げる。

「…残念だ、少佐。」

その言葉を受け、カイゼル将軍は馬を走らせた。


「報告!市内の敵勢力を排除、ストームゲートを確保しました!」

アルタート軍の伝令が汗だくになりながら後方にある帝國陣地まで走って戦勝の報告をしに来た。

「おお、取ったか。早かったな。」

カイゼル将軍以下等の部隊が突入して以来、双眼鏡を覗き続けていた山崎中佐は漸く双眼鏡を下げた。

「これでもう一つ取れば油田が手に入るな…。喜ばしい事だ。」

「中佐、その事ですが…。」

少尉が少し戸惑った顔をしながらチハへと近づいてくる。

「どうした、少尉。何かあったか?」

「は、もう一つの街ですが…。別働隊が担当するそうです。」

「何!?聞いてないぞ!そんな事!」

「無線では、ある作戦参謀からの立案だとか…。海軍から支援を受けて上陸するそうです。」

「…おおかたの想像は付いた。」

「我々は陣地を構築し、守備に当たれとの事です。それと、出来るなら連合の兵士達や将軍等にも銃器を売り込めと…。」

「何を考えとるんだかさっぱりだ…。」

「この戦争が終わったら連合に村田銃や、性能を落とした三八を売却してその代金でクラークン海洋王国経由で中央大陸から食糧を輸入するそうです。」

「確かに飯は重要だが、そう上手く行く物かねぇ…。」

ため息を吐きながら見た太陽はもう地平線からゆっくりと姿を消そうとしていた。

「異世界に来ても、こうやって夜が来てやがて朝日が昇る。何処へ行ったて変わりはせんという事か。」

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