自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた@創作発表板・分家

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西暦2021年4月14日 10:24 城塞都市ダルコニア近郊 陸上自衛隊佐藤戦闘大隊指揮所

「最悪の事態だな」

 通信機から流れる部下たちの悲報に、佐藤はそう短く呟いた。
 戦闘車両の無力化、増強普通科小隊の全滅。
 そして、輸送ヘリコプターの撃墜。

「本土へ緊急連絡、状況ブラボー、グスタフの投入が妥当と判断する」

 表情を変えぬまま、彼はそう告げた。
 状況ブラボーとは敵軍が現有戦力だけでは対応不可能な場合の符丁。
 グスタフの投入とは、航空自衛隊および特科、迫撃砲、艦砲による攻撃を指している。
 もはや眼前の都市に住まう人々は、絶対に殺戮されなければならない存在だった。
 どこまで伝えられたかはわからないが、恐らくは多数の技術情報。
 日本国に対する知識。自衛隊についての情報。現代兵器に対する戦術。
 もっと致命的な何か、例えば本土に効果を発揮しうる目標とその弱点についても伝えられたかもしれない。

「よろしいのですね?」

 先ほどより一層慌しく動き始めた指揮所の中で、二曹は短く尋ねた。
 ここ数年、佐藤と彼女の接している時間は家族よりもよほど長く、結果として多くの言葉は必要ない。

「ああ、ここで連中を始末しなければ、我々に未来はない。
 未来のためならば、虐殺者の汚名を喜んで被るさ」

 何時になく真面目な様子で彼は答える。

「あの街に篭っている連中は、普通科を全滅させ、ヘリを打ち落とす方法を身に付けている。
 遅かれ早かれ誰かが編み出すかもしれんが、現時点でそういった戦術を使っている」
「わかっております」

 佐藤の蛇足とも言える説明に、二曹は簡潔に答える。

「佐藤一尉、本土から通達です。
 五分後に艦砲射撃を開始、敵性住民の突破に警戒されたし、以上です」
「総員戦闘準備!射程に入ったものから撃て!」

 二曹が声を張り上げ、通信士たちがそれを各部隊へと通達していく。
 既に攻撃準備を整えている各部隊は、自身の信じる何かに邪魔されない限りは攻撃を実施する。
 結果は酷い事になるだろう。

「航空支援はあるのか?」
「第一基地から二個飛行小隊が来ます。
 爆装したF-2スーパー改後期型、フル装備です」

 佐藤の質問に通信士が答える。
 F-22地上攻撃型が政治的な事情から購入できず、それでいてF-35がポシャった事から急遽蘇らされた支援戦闘機。
 その改良型の強化モデルである。

「どうせならAC-130とかB-52を連れてきてほしかったんだがな」
「米軍は別の作戦に従事しているそうです」
「そうかい。確認ご苦労。さて、仕事を始めるぞ」

 いつの間にか双眼鏡で城門跡地を覗き込んでいた佐藤は面倒そうに言った。
 彼の視界の中では、徐々に数を増していく敵部隊の姿があった。

「新井田、その他大勢。仇はとってやるから許せよ」

 小声で先に逝った部下たちに詫びを入れ、彼は発砲を命じた。

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