自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた@創作発表板・分家

第八話

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Turo428

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会議場から出るとすぐにブラスト少将は竜舎へと向かった。

一番奥に陣取る様に座る愛竜は主人の匂いを感じ取ったか、今まで閉ざしていた眼を開き嘶いた。

「直ぐに飛ぶぞ。お前も引き籠りは辛いだろう?」

少将の言葉に竜はフシューと鼻息で答えた。

「少将閣下!我々も御供致します!」

いつの間に来たのだろうか、数名の竜騎士が装備を整え整列していた。

「いや、必要ない。戦いに行く訳では無いからね。相手を刺激したく無いのだよ。」

「しかし、危険です!せめて我々の誰か一人でも!」

竜騎士たちは引き下がらず、護衛を申し立てる。

その勢いに折れたかブラスト少将は「では、君。付いて来たまえ。」と一人の竜騎士を指差した。

「は!光栄であります!」

選ばれた竜騎士は敬礼をすると自分の飛竜の元へと駆け寄る。

選ばれなかった他の竜騎士達が悔しそうに顔を歪めた。


二人は飛竜を竜舎から出し、鞍へと跨る。

「カーター!しっかりお守りするんだぞ!」

「閣下!彼の腕は保障いたします。どうかお気をつけて!」

竜騎士達の声援を受け、ブラスト少将の飛竜は50メートル程走ると翼を広げ、羽ばたく。

グイっと地面に引っ張られるような感覚の後、フワリとした解放感が身を包む。

ここ数年感じていなかった懐かしい感覚に目を細めると、カーターと呼ばれた竜騎士の飛竜も上がってきた。

「ようやく上がったか!もう少し高度を上げるぞ!」

「了解しました!」

手綱を引き、高度を上げる。

先程までいた大地がグングンと遠ざかっていく。

「良し!このままで行こう!」

自分よりも遅れて上がってきたカーターに支持を出す。

本当はもう少し高度を上げて迎撃に備えたいのだが、カーターと己の飛竜では到達可能高度も航続距離もが違い、上昇するにつれその違いが顕著になる。

というのも、飛竜の種類が違うからである。少将の飛竜は性能が高レベルで纏まっているいわゆる『ワイバーンロード』と呼ばれる種類の飛竜で、カーター竜騎士の飛竜は『ワイバーン』の中では性能は並といった飛竜である。

有り体に言えば、『パワーが違う』のである。

この状況のように共に行動する場合スペックが上の少将の飛竜がカーター竜騎士の飛竜に合わせなければならないのだ。

―このペースなら3日程で行けるか

少将はこれから自分が行う行動がどうなるか考えながら飛竜を飛ばす。


穏やかな波をかき分けるように帆船の船団が航海していく。

その殆どはガレオン船で物資を満載しているのか速度はそれほど出ていない。

ガレオン船団を囲う様に護衛船が六隻進んでいる。

その先頭の護衛船の甲板では一人の壮年の男性が海を眺めていた。

「いつもと変わらぬ海だ。だが、何か妙だな。」

「提督、こちらでしたか。」

髭面の大男が提督と呼ばれた男性に声をかけながら近づいてきた。

「艦長か。何か変わったことが起きたか?」

「いえ、先程全艦から異常無しと報告が来ました。何もありませんよ。」

「そうかね。まぁ、これが続けば良いんだがな。」

提督は眼を瞑ると、深呼吸をした。

「ああ、やはり艦は良い。陸にいたら体が腐る。」

「そうですね、しかし今回の任務についてこられなくても良かったのでは?ただの輸送護衛ですよ?」

艦長の問いに提督は体を伸ばしながら答えた。

「これほど大量の食糧を欲する相手がどんな相手か気になってな。それと、直感だな。」

「直感ですか?」

「ああ、そうだ。船乗りとしての自分が呼んだ気がしたんだよ。『ここで行かなければ後悔するぞ』とな。」

そういうと提督は再び海を見つめた。

「事実海を見て感じた。何かいる。我々とは違う船だ。」

「向こうさんも船を出して物資を受け取るそうですからね、わざわざそんなまどろっこしい事せずとも我々が届けるというのに…。」

艦長は首を振ると船内へと戻って行った。

「どうも引っかかる。何か異物のような物を感じる…。」

そう言うと提督は口を三日月のように歪めるとクツクツと笑った。

「ああ、早く港に付かんものかな。」


「では、これが目録となります。」

「確かに受け取りました。」

港へ入港してしばらくしてから、取引相手国―大なんとか帝國だったか?―の船長に艦長は目録を渡す。

「では、ご苦労様でした。旅の幸運を祈ります。」

「ありがとうございます。そちらもお気をつけて…」

そういうと、艦長は艦へと戻る。帝國側の船長も物資を船へと移す準備を始めた。

「提督、引き渡し完了しました。このまま帰還しますか?」

「出航はするが、その前に寄る所がある。艦長、向こうの島の避難港に入港。向こうの船を見させてもらおうじゃないか。」

艦長は提督の言葉に頷くと、出航の号令を鳴らした。

数十分後艦隊が指示された避難港へと入港すると提督は、先程までいた港を甲板から見つめる。

まるで提督が来るのを待っていたかのように一隻の船が港から出航する。

まず提督が驚いたのは、その船が木製の帆船ではないということだった。

その船は帆も無しに、海を進んでいるのである。

また、マストと思われる所からは黒煙が上がっている。

だが、火事という訳でもなさそうだ。

そして次に、速度が速い。

この護衛艦の最大船速でも追いつけないのではないだろうか?

「提督!あの船は…」

「ああ、艦長。これは思った以上に当たりのようだ。」

茫然といった表情でその船を見つめる艦長と笑みを浮かべる提督の前から船は早くも消えていく。

―ああ、やはり直感を信じてよかった。

提督は、深き海に眠る古き神に感謝をするとまだこちらに戻ってきていない艦長を叩く。

「艦長、しっかりしろ。本国に戻るぞ。」

この事は連中にも伝えねばならんな…。

水平線を見つめ、これからの事を思い浮かべる提督のその顔はとても生き生きとしていた。

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