自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた@創作発表板・分家

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匿名ユーザー

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激しい戦闘によって人員不足に陥り航行不能になったガレー船40隻をアンノウンが破壊
竹島駐屯地の一部の物資を持ち去り負傷者を収容し、戦闘終了数時間後から撤退を開始。
リュウキシに守られ西へと去った。

彼らが撤退した更に数時間。防疫部隊がヘリで島に到着した。
ヘリで待機する防疫部隊の中に鈴木も混じっていた。
所謂死体の跡片付けである。
本来、ガスマスクと防護服に身を固めた仰々しい防疫部隊が
このような死体処理といった雑役に駆り出される事はない。
彼らは毒ガステロや細菌テロなどの化学戦ために仕事を期待されている。
数年前の鳥インフルエンザ日本上陸の処理や、毒ガスサリン事件のような事態に備えている。
特性上重要度の高い作戦などに投入され、今回動員が掛かったのは
それだけこの島での戦闘が注目されているからということらしい。

戦争でばら撒かれたウイルスによって発生したミュータント達は
どんな未知のウイルスを持っているか判らないための措置であった。

「何が始まるんです?」
「第三次大戦だ」

そんなジョークが陸自内で流行っている。
数日前の通信遮断テロ以降陸自では、日本は何かと戦っているらしいと噂が流れていた。
何かとは宇宙人とも未来人とも超能力者とも言われ釈然としなかった。


キーンを音を引きつつ米軍基地から飛び立ったファントムが空を飛んでいる。
遠くには飛行機雲。
鈴木は食堂で大西さんと弁当を食べていた。

「それにしても他の課は忙しそうですね」

日替わり定職をだらだらと食べる。
補給科は外から物資が入らなくなって以来、仕事が減って暇だった。

「相変わらず普通科の皆さんは食べるのが速い」
「空自はもっと速いぞ。3交代のシフト整備。飯食って整備して寝る」
「連日スクランブルだそうですけど大変ですね」
「彼らに聞いたら企業秘密だとさ」
「ふーん?」

近頃自衛隊の様子が変だ。

空自は最近妙に発進回数が増えているし、空自倉庫の出入りが活発だ。
この間何を運んでいるのかと聞いたら20mm機銃弾を運んでいた。
秘密だとニヤニヤしながら話してくれない。

「まったくだよ、チョー最悪だ。カンボジアが天国に思えるぜ」
「行ったことあんのか」
「ねぇよ」
「カバンにするぞ」

領空侵犯でも滅多に発砲しないのに
演習ぐらいでしか消費しない20mmを頻繁に使うのは怪しい。

他にも不審な点はあった。海自である。
テロ以来厳戒態勢なのも理解できるし油の消費が多いのも道理だ。
物資の積み込みなども特に変な点はない。
この前久しぶりに陸に下りてきた海自の陸曹と話したら顔が真っ青だった。

「もっと笑いなよ」
「こうか?」(怖気を誘う笑み)
「ああ、もうちょっと練習が必要だね」

他の艦の陸曹や陸士も血の気が抜けた顔をしている。

陸自の鈴木としては面白くない。
一人だけハブられた気分だ。

そこで鈴木は調べてみることにした。

まあ、ようするに彼は仕事の暇を持て余していた訳であった。

今夜も仕事が終わる。
PXで通販の商品を受け取って、食堂で飯を食べ、寝る。
夜のシフトだと何処の店も閉まっているから困る。

「ようお疲れさん」
「お疲れ~」
「お疲れ様」
「鈴木は?」
「まだ少し仕事が残っているってさ」

パラパラと書類を捲りパソコンと帳簿と合っているか確認する。

テロ以降、海外から安価な弾薬がはいってこなくなり
自衛隊の弾薬管理は一層厳重になった。
提出された帳簿全体の収支を見ると20mm弾薬の僅かづつ数字が減っている。
空自倉庫の搬出記録から出庫記録までも不自然な点はない。
減った弾薬も輸送中に紛失したとある。
あるとすれば、頻繁に弾薬が移動されているからだろう。
これについては此処数週間何故か続いている戦闘待機によって
動かされたものであると考えられる。誤差の範囲と考えられた。
各倉庫の20m弾は普段通り、一発も使われず厳密に管理されている。

最初から疑って掛からなければ気付かない違和感。

そこで前に空自が搬出作業をしていた倉庫へ行ってみた。
弾薬倉庫の管理は他と違って多少厳しい。

「よーう!鈴木!おまえはいっつも忙しいなあ!」
倉庫番の慎吾陸曹だった。彼も夜勤明けらしい。

「ははは、抜き打ちの査察ですよ。これお土産です」
売店で買ったケーキを渡す。
「助かる。仕事の後は甘いもの食いたくなるからな。たまには手を抜けよ」
「慎さんは抜きすぎです」
「シフト変わるから早くしてくれ」
「はいはい。わかっていますって」

倉庫の弾薬箱の数を確認する。
高く積みあがるコンテナ、一区画に空きがあった。

「輸送中に紛失した弾を探してる?」
「何処の区間で紛失したかはっきりさせておかないと書類に書けません」
「それで現場を順に当たってると?夜遅くに・・・はあ明日にすればいいのに」
「思い立ったら吉日ですよ。会計を見せていただけますか」

各段階の会計を調べると、弾の紛失届けは出ていなかった。
最後の段階で、弾を紛失したと付け加えたことになる。

それが出来る権限を持った人物。
最終チェックが出来る人物。書類が上がると誰に出すか?
大抵、監査部か上司の杉谷に送られる。その上は連隊参謀、佐官達だ。
そして帳簿以外にも出庫記録や搬出記録に気を配れ自然なよう、帳簿を弄れる人物。

鈴木は杉谷を問い正した。
「海自と空自、彼らは「何か」隠していますね?」
「それは戦闘に関することです」

単刀直入に言ってやった。
外れたら赤っ恥だ。
正義感で問いただすなんて我ながら恥ずかしいことしてるなと思う。

「どうして、思うんだい」

杉谷はゆっくりと聞き返した。
良い兆候だ。電波扱いされたらどうしようかと思ったところだ。
「見てください。これは空自の機銃に使う20m砲の弾です」

胸ポケットから数枚の写真を取り出す。
「それが入っている倉庫の弾薬棚の写真です」
「これがどうかしたのか?」
「そしてこれが帳簿の記載です。
帳簿の通りなら30ケースが此処にあるはずです。箱が足りませんね」

顔色一つ変わらない。
「間違えて何処かに搬送されたのかもしれん。搬送記録は調べたのか?」
「調べるまでもありません。使ったものはないんですから」
「無いものを証明できるのか」
「はい。使ったと同じ分だけ空薬莢の数が増えています」

彼の眉がピクリと動いた。
「パイロットが間違えて引き絞ったのかもしれん。戦闘機の機銃は数秒でなくなるよ」
「10日の間に十回も間違えて引き絞るパイロットなどいません。油の消費も多い」

杉谷は両手を上げて降参のポーズをとる。
「参ったよ。タネを教えてくれ。空薬莢は書き換えたはずだが」
「不審に思ったきっかけは偵察機の燃費、消費が激しすぎたんです」
決め手は現場の空薬莢の数を書いた写しでした」

「次は杉谷さんが話す番です」

「君の話す通り、自衛隊は謎の勢力と戦っている」
「まるでB級映画ですね」
「私もそう思う。我々は正体不明の敵をそのままアンノウと呼んでいる」
杉谷は胸ポケットからタバコを取り出し火を付けた。
カチッと音がし紫煙が立ち昇る。

「ライダーにそんな名前の勢力いましたっけ」
オルフェノクはデザインが良かった。
「現実はもっと奇妙だぞ。海の向こうじゃ細菌戦争が勃発してミュータントがたくさん産まれたらしい。
通信が途切れたのもそのせいだというのが上層部の見解のようだ。
平成ライダーはどうも好かん。ライドしてない」

「どうして黙ってたんです?」
「余りに異常な事態のため、社会に混乱が起こるからだそうだ。
と言っても空自と海自の一部の現場は知ってるけどな。近い内に大々的な発表があるらしい」

知らぬは陸自ばかりなりか。

「さて、謎を解いた君に耳寄りな情報がある」
杉谷は満面の笑みを浮かべる。ある格闘家は言った、笑顔は威嚇であると。

「断ったら?」
「おめでとう、同士鈴木。シベリアバシリに栄転させたいことだ・・・が」
「生憎ウチの課は人手不足だ。代わりに倉庫の肥やしになってもらうよ」
「聞きましょう」
杉谷はフーッと胸いっぱいに吸い込んだ煙を吐き出した。

「いったね?聞いたら軍機だよ?」
「断ると営巣入り。だったら聞きます。調べた甲斐もありませんし」
「君の話したとおり数日前から領空侵犯が多発し、空自の防衛出動が出ている」
竹島で韓国軍とアンノウンとの大規模な戦闘が発生。島に居た軍は一人残らず殲滅された。
その際自衛隊は戦闘行動を開始せず、敵戦力の観測までに留めている」
「敵戦力の分析のためウチの課から一人派遣されることになっていた。
本来は分析官や情報参謀の仕事なんだが、アンノウの分析に様々な専門家が必要らしい」

「そこでだ。君に仕事を与える」

「うわっ、これは酷い」

防疫部隊のヘリから降りると胃から酸っぱいものが込み上げた。
杉谷が押し付けたのもも理解できる。
島を埋め尽くす赤とピンクと白のマーブル模様。
見渡す限り死体で埋め尽くされている。

約0.21平方キロの狭い島の中に
約300名の韓国兵と約9000名のアンノウの死体が詰め込まれているのである。
地上は隙間無く寿司詰め死体で埋まっており、比較的死体が少ない場所を選んでヘリは着陸した。
無意味な作戦で命を落としたアンノウへ心の中で手を合わせる。

最初の戦闘開始から6日後。
死体の所々に白い線が目立つ。
蝿がたかり蛆が孵化し始めているのだ。
喉まで出掛かった胃液を飲み込む。
酸っぱくて涙が出た。

鈴木は防護服を着ていた。
服は全身真っ白の密閉された雨カッパに近い。
顔のには黒いゴム製で出来た自己主張の激しいガスマスクを付けている。
防護服は完全に密閉されていて、数メートル走っただけで目の前が曇る。
汗で服の中に結露が出来るておまけに脱ぎにくい。

「うぷ」
死体の山を見た直後、隣に居た防護服がテントに向かって全力疾走を始める。
テントで吐くのだ。防護服を外で取るわけにはいけない。

「大丈夫か?一度全部吐いた方が楽になるぞ?」シュコーッシュコーッ

ベイダー卿の呼吸音を立てながら
防疫隊員が話しかけてきた。胸の名札に「金田」と書いてある。
「俺も何度か仕事してるがこんなにヤバイのは初めて見る。
サリンも酷かったがこいつらはモツが出ちまってる」

地面には剣で袈裟懸けされ腹を斬られた韓国軍や
肉切り包丁(ミニミニ)で肉を吹き飛ばされた死体が転がっている。
金田はコンコンと手元のマスクを触った。

「マスクしていて良かったな。7月の昼間だと外の臭いが酷い」
「吐きに戻った連中は死臭でまた吐くことになるだろうさ。
ゲロの臭いも死体の酢っぱさも大して変わらん」


倒れた死体達は死斑が全身を廻り赤やピンクになっている。
まるで風呂に入ったばかりの茹蛸のようでリアリティに欠けた。
倒れた死体を棒で突く。
付いた所が白くなったまま痕が付いた。

偶に黴のような緑の痣が付いた死体が居てゾンビみたいだなと思った。
ゲームのゾンビと違うところは肌が腫れぼったくて真っ白ではないところか。
腹がパンパンになった死体があった。

「中途半端に古い死体になると、失禁してるから服を脱がすのが面倒だ」

大小どちらが失禁するかは聞かないでおいた。
金田さんに聞いてみると死体のなかのガスで膨らんでいるそうだ。
48時間を過ぎた死体も多いので腐敗が始まっているものがかなり多いのだとか。

死体を見ていると年甲斐になくあんな死に方はしたくないな。
ベッドで安らかに死にたいと思ってしまった。

「うぉ」
赤を通り越して紫の網が全身に広がった死体の山。
血管が浮き出て気持ち悪い。気持ち悪すぎる。
どの死体も目が見開かれ黄色く濁り、中には目玉に卵を産みつける虫も居て嫌だもう見たくない。

キャンプに戻ると金田さんが無造作に死体を袋詰めしていた。
二人一組で並べた死体を右から左へと順に入れていく。
死体はげんなりしていて色も手伝っい蛸みたいだった。

「死体は死んだら硬くなるんじゃないんですか」
「死後硬直ね。ある程度たつと柔らかくなる」
「どうしてです?」
「体のタンパク質の結合が解けてね。柔らかくなるのさ」
「肉の熟成ですね」
「似たようなものだ」

聞いたことがある。
殺した直後の牛の肉は死後硬直で硬くて食べられない。
寝かすことで肉の緊張が解け中のタンパク質が分解され旨みが増す。
自分達が食べている肉はそうやって熟成されたものなのだと。
だから厳密な意味で新鮮な肉というものは食べてないのだ。
現地で狩をして食べた肉と加工された肉は味が違うとも。

「敵の死体を袋詰めするんですか?」
「まあな。状態の良いものだけだ。あとは身なりの良い者偉そうな者と兵士のサンプルを複数。
残りは集めて焼却処分だ。指と遺品を取った後で韓国兵もまとめて焼却する。
HMDとモニタカメラは回収だな。戦闘ログを確認するんだそうだ」
「帰りのヘリは死体で一杯ですね」
あの死体の山を見た後ではげんなりする。
本当は死体の一つまで回収するのが通例だが、多過ぎる。
6300名の死体を運ぶ必要が出る。それも疫病持ちかもしれないものをだ。
許可は下りなかった。

「お偉いさんが解剖したいんだとよ。検死でもするんだろ」
「まるでエイリアンですね」
ホルマリン漬けにでもするんじゃなかろうか。
「俺は袋詰めしてるから見学してきたらどうだ。見てて楽しいものじゃないが」

おおっと死体を検分する仕事を忘れていた。後で報告書に響くな。
「ケースに入れた死体見てもいいですか?」
「いいけどずらすなよ」

袋のジッパーを開けて中を見る。
比較的綺麗な死体を集めたとあって、見て吐きたくなるような物は入っていない。
ライフルで胸を撃たれ射殺又は失血死したものが中心で、服を着たまま入っていた。

「綺麗だろ?コレ死んでるんだぜ」
「エルフみたいですね」
アンノウの姿は人間に近い、と言うか人間そのものでヨーロッパ系の顔立ちに近い。
ヨーロッパの何処の国かは判らない。
欧米人が日本人と中国人を見た目で判断できないのと同じだ。

姿も中世ヨーロッパ風に近い、軽鎧が中心で具足も付けている。
剣や鎧は緻密な造型と刻印が刻み込まれていて美しい。
鎧の型は幾種類かに揃っていて、何種類かの人種?に判れている。
耳の長いエルフっぽいもの、人間っぽいもの、小さな人間っぽいものだ。
武具は長弓と短弓が中心で他は護身用のナイフや長剣、水袋や携帯食といったものがある。
階級に従ってランク付けがあるようで武具や装飾品に差がある。

「黄色くて歯がボロボロ、髪質も良くない、肌も垢が溜まってます。
干し肉と魚が中心では体調も崩しますね。歯ブラシが出回ってないのでしょうか」
人間っぽいものと小さな人間は全体的に健康状態が余りよくなかったようである。
大雑把に言えば中世ファンタジーの住人をそのまま持ってきた姿であった。

兵士の他に高級仕官達の死体があった。
刺繍の入ったローブを着た魔道士風の男女達。エルフ風の者が多い。

「なんでこいつ等は美形ぞろいなんだ」
「さあ?エルフだからでしょ」
一般兵に限っては男性ばかりなのだが高級仕官?に限っては多くの女性も居る。
細かい紋様の入った杖を携帯し、護身武器は短剣のみ。
鎧も質の良いものが揃っている。
生存性を考慮してか手足も覆う鎧を着けていた。

アンノウを迎え討った韓国軍の装備はそれなりに充足したものであるようだ。
スターライトにノクトビジョン完備、脇や股間を守る新型ボディアーマに
小銃の照準も良いものが割り当てられている。
無線機内蔵型イヤホン、ミニミニ5台に他固定銃座数台(爆撃されて原形を留めていない)
対戦車装備は少ない。これは島の特性上仕方のないことだろう。

死体には長剣で付けられた裂傷、自決、重度の火傷、上から槍で貫かれた貫通傷のどれかが付いていた。
弾薬備蓄は底を付いており、緒戦でリュウキシ相手に派手に弾を使ったと考えられる。
アンノウの死体にはミンチになったものは少ない。殆どが原型を保ったまま射殺されているからだ。
他には携帯型の迫撃砲が2台見つかっている(隣の弾薬に誘爆したため2台とも破壊)
近年海空に力を入れていた軍にしては恵まれた部隊といえた。
装備は一線級、政治的プロパガンダ用に配置された部隊としては適当といえるだろう。
自衛隊も同程度の装備であり、同じ状況になったら敗走する可能性があると考えられた。

「おーい!そこ!地雷が埋まっているから戻って来い!」

勝手に地雷埋めんな。
処理が大変だろうが。


「おおおおおっ!」シュコーッ
「でけぇぇぇぇっ!」シュウ、シコーッ
「UMAだ!」シュコーッ
ガスマスク越しでくぐもった歓声が上がる。
駐車しているヘリの近く、
ブルーシートが掛かった巨大な膨らみの周囲に人だかりが出来ている。
背中に鞍と鐙が取り付けられた体長6mの竜・・・としか形容できない死骸。
畳んだ翼を広げると10mは下らない。
体の傷には小銃によるものとミニミニによって粉砕されたものがあり
小銃は何発も傷を受けている所を見ると火力不足であったようだ。
牙は鋭く尖っていて肉食を伺わせる。

詳しく調べようとするとものものしい装備を持った防護服がやって来た。
防疫部隊と所属が違うらしい。
私達は蜘蛛の子を散らすように追い払われてしまった。

しばらく経ってアンノウが乗って来た船を調べる許可が出た。
彼らの撤退時破壊しきれれなかった船でかつ損傷が少ないものである。
ハンディカメラを持って中へ入る。

「ベン・ハーかよ」
「カリブの海賊だろ」
「ワンピース…」
「「それはない」」
信じられないことに木で出来たガレー船(オールの付いた巨大な帆船)である。
彼らの武具と同じく船体にも美しい紋様が彫られており
船首には鉄帯で補強された衝角が装備されていて3つの大きな帆が張られている。
見た目は海王丸のような帆が張られた船と呼ぶべきだろうか。
映画で見る海賊船のイメージ、17世紀のフリゲート艦に近い。

「こいつ等貴族なのか」
「別に珍しいことでもない。昔、兵役は貴族のものだっただろ」
「19世紀までは高価なものを扱う海軍は特にその傾向が強かった」
「そういや漫画でも海軍が良いもの着てたりするな。司令も偉そうなのが多いわ」
甲板で目に付いたのは異彩な装飾がされたロープと石弓だ。
使い捨ての物にまで意匠を凝らすとは洒落ている。
長弓が主力のようで、多数の弓と矢が置いてある。
火薬技術は進んでいないようであり大砲らしいものはない。
大きなバリスタと紋様が彫られた弓があるだけである。

「ファンタジーっぽいよな。装飾とか凝ってるよ」
「専門の彫金士が居るんだろ。映画のセットで何億円するんだろうな」
「お前等、外の死体の山忘れてるだろ」
紋様は船内にまで及んでおり主要な柱などに装飾されていた。
それにしてもこの紋様、宗教やまじない的な意味でもあるのだろうか。
現代の視点から見ると無駄が多い。

「この紋様で火を付けるのか?」
「火打石?」
「魔法の石じゃね?」
「「「まさかあ!」」」」
「「「は?」」」」
船の台所では注目するものが多かった。
まず、薪に類するものがない。食料は干し魚や肉が中心で野菜は少なく調味料も余りない。
水は瓶の中に入っていて、食器も陶器で出来ている。
特筆すべきは船の中になんと氷庫!があって野菜などが入っていた。
野菜を保存する適切な温度が守られていないようでリンゴやジャガイモの一部は傷んでいた。

「漫画のファンタジーじゃ、きれいな生活してるよな」
「俺達ですら一週間に数回しか海水風呂入れないのに」
「中世ヨーロッパなんて汚かいものの筆頭だったのになあ。江戸の方がマシだったそうだ」
船の駆動部、櫂で漕ぐ船員が居る部屋は意外と清潔である。
拘束具や類するものは見られず、ベン・ハーのような奴隷が船員ではないのだろう。
槍や剣が立て掛けられている。
登場員数は座席数からすると200~250人、排出量とトン数を計るには知識が足りなかった。

「生きてるな?撤退するぞ」
「しっかりしろ。肩を貸してやるから」
「目がめがぁぁぁっ。見えるけどプルトニウム直視しちまった!」
船底には青緑の光、チェレンコフ光に類似したものを発する石が置いてあり
詳しい調査は危険と判断。後続の調査団に任せることとした。

後に出された報告書によると
直視した彼は幸い、放射線反応は見られないということであった。
第一次戦場調査団は無事に終了した。

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