「どうしよう、またへんなことにまきこまれちゃった……」
そうポツリとこぼすのは金髪パッツンの10歳ほどの少女。魔法の世界は銀の城のお姫様、フウカはしきりに首輪を気にしながらトボトボと赤い町を歩いていた。
ことはつい先日、母親に没収されたゲーム機を取り返しに行ったら封印されていた闇の魔女を復活させてしまったことにある。あの時も外れない腕輪をつけられて、謎の遊園地で心と体を殺しに来る闇の魔女・メガイラに襲われた。幸運なことに、巻き込んでしまった頼りになる仲間たちが助けてくれ、数々の殺人アトラクションからメガイラの心の闇とその中にある光に気づき、フウカ自身も光の魔法に目覚めたことで事なきを得た。
しかし、今回はもっと危険な何かを感じていた。
あのツノウサギという魔物?からは怖いという感覚はなかったが、今のこの光景だけでもとても強い魔女がいるとフウカにだって察せられる。なにせ、空や霧を赤くするというのは、不気味な森や遊園地を用意したメガイラと同じやり方だからだ。
ことはつい先日、母親に没収されたゲーム機を取り返しに行ったら封印されていた闇の魔女を復活させてしまったことにある。あの時も外れない腕輪をつけられて、謎の遊園地で心と体を殺しに来る闇の魔女・メガイラに襲われた。幸運なことに、巻き込んでしまった頼りになる仲間たちが助けてくれ、数々の殺人アトラクションからメガイラの心の闇とその中にある光に気づき、フウカ自身も光の魔法に目覚めたことで事なきを得た。
しかし、今回はもっと危険な何かを感じていた。
あのツノウサギという魔物?からは怖いという感覚はなかったが、今のこの光景だけでもとても強い魔女がいるとフウカにだって察せられる。なにせ、空や霧を赤くするというのは、不気味な森や遊園地を用意したメガイラと同じやり方だからだ。
「うーん、でもなんであたしだけでなくてかんけいなさそうな人もたくさんまきこんだんだろう。あの子たちも魔女なのかな?」
メガイラの場合は自分の受けた苦痛を自らを封印した魔女たちの子孫に味合わせるというのが理由の一つにあったが、しかしツノウサギからは全くそんな感じがしなかった。本当に単純に殺し合いを楽しんでいるような感じに必然的に感じるのは、困惑。恨んでるわけでもなく人を殺そうというのはフウカにはとんとわからない感覚だった。
「とにかく、チトセやカリンもまたまきこんじゃってるかもしれないし、あたしにできることしないと!」
もともとフウカは難しいことを考えるのが苦手だ。潜在能力は凄いのだが魔力のコントロールが終わっている上に、シンプルに勉強が嫌いである。そもそも自分の母親が封印したメガイラについても、教科書を流し読みしているのでよくわかっていなかったあたり、『らくだい魔女』と言われるのもさもありなん。
それでも彼女に親友がいるのは、その真っ直ぐな心根だろう。もちろんこんな殺し合いに乗る気はゼロ。なんとかして巻き込まれた子たちと脱出しよう、そう意気込み早1時間。この間も迷子になってたなと何回目か思いはじめていたところだ。
それでも彼女に親友がいるのは、その真っ直ぐな心根だろう。もちろんこんな殺し合いに乗る気はゼロ。なんとかして巻き込まれた子たちと脱出しよう、そう意気込み早1時間。この間も迷子になってたなと何回目か思いはじめていたところだ。
「あれ? くつが落ちてる。なんでだろう?」
「うわっ、人がたおれてる! だいじょうぶ!?」
「うわっ、人がたおれてる! だいじょうぶ!?」
第一参加者発見。道の脇にかかと側を下にして直立する靴を認めて近づくと、にょっきり伸びている足に出くわした。
駆け寄って覗き込めば、黒い髪のツインテールの少女だった。年は黒の城の王子様であるキースほどだろうか、とにかく年上だ。
だがフウカの目を引いたのは、少女の肌だ。太陽に照らされた夏の川のような、複雑な色合いの透明さがところどころにあった。少し見て肌だけでなく体そのものが透けているのだとわかった。
駆け寄って覗き込めば、黒い髪のツインテールの少女だった。年は黒の城の王子様であるキースほどだろうか、とにかく年上だ。
だがフウカの目を引いたのは、少女の肌だ。太陽に照らされた夏の川のような、複雑な色合いの透明さがところどころにあった。少し見て肌だけでなく体そのものが透けているのだとわかった。
「きれい……こんな魔法もあるんだ。はっ!」
思わず感心してしまったが、それどころではないと少女を起こそうとする。怪我人相手なら0点の対応である肩を掴んで頭をガクガク揺らすという無茶が、少女を容赦なく起こした。
眉間にしわを寄せてゆっくりと目を開く少女を見て、フウカは安堵の息をつく。良かった、生きてたと。呼吸を確かめれば一発で気づいたというのは言わない話。よしじゃあまずは話を聞こう、そう思い口を開いて。
眉間にしわを寄せてゆっくりと目を開く少女を見て、フウカは安堵の息をつく。良かった、生きてたと。呼吸を確かめれば一発で気づいたというのは言わない話。よしじゃあまずは話を聞こう、そう思い口を開いて。
コツン。コツン。
二人の耳に、足音が聞こえてきた。
安土流星は武市変平太の着物を彼が持っていた刀で裂き、変平太と木本麻耶にきつく抑え付けていた。救急救命としてはオーソドックスな圧迫止血であり、高校生警察官の有能さを示すような手際の良いものであった。この場に救急隊員がいれば、その技術に100点をくれたであろう。
だがそもそも応急手当をしている段階で0点だというのは流星本人がわかっていた。変平太は頭部からの出血、麻耶は肋骨の開放骨折。そしてこの場に救急車も医療機関も期待できない。ならば手の施し用などない。トリアージなら限りなく黒に近い赤だろう。
実際、二人は直ぐに死ぬ。変平太は頭部挫傷により脳内出血、くも膜下出血、その他名前にすれば数々の症状を負い、心臓が止まるのは時間の問題だ。麻耶も同様である。折れた肋骨の破片が心臓に突き刺さり、鼓動の度に出血する。こちらは今すぐに心臓移植をすれば助かるかもしれないが、もちろんそんなことはできない。
目の前で人が死んでいく。何もできずに二人も死んでいく。流星の明晰な頭脳はそれを理解していても、体は手当てをやめない。やっている自分が一番無駄だとわかっているが、それでも何もしないというのはできない。
だがそもそも応急手当をしている段階で0点だというのは流星本人がわかっていた。変平太は頭部からの出血、麻耶は肋骨の開放骨折。そしてこの場に救急車も医療機関も期待できない。ならば手の施し用などない。トリアージなら限りなく黒に近い赤だろう。
実際、二人は直ぐに死ぬ。変平太は頭部挫傷により脳内出血、くも膜下出血、その他名前にすれば数々の症状を負い、心臓が止まるのは時間の問題だ。麻耶も同様である。折れた肋骨の破片が心臓に突き刺さり、鼓動の度に出血する。こちらは今すぐに心臓移植をすれば助かるかもしれないが、もちろんそんなことはできない。
目の前で人が死んでいく。何もできずに二人も死んでいく。流星の明晰な頭脳はそれを理解していても、体は手当てをやめない。やっている自分が一番無駄だとわかっているが、それでも何もしないというのはできない。
(あの時動いていれば、そう後悔してるんだろうな。)
必死で圧迫しながら、それと裏腹にどこか頭の冷静な部分で考える。
つい2、3分前。流星の目の前で人知を超えた戦闘があった。目で追えぬほどの速さで移動する超人たちによる銃撃戦・格闘戦・斬撃戦。まばたきを忘れた10秒ほどの間だろうか、短い間に戦いが起こり、決着した。
その結果がこれ。目の前で2人死んでいく。全く見ず知らずだとか、そもそもこの2人があの現場にいなかったとか、そんなことは関係ない。あの時、流星があの男児を撃てていれば、彼が名を知らぬタイを射殺していれば、彼が名を知らぬ変平太と麻耶は死ぬことにはならなかっただろう。
つい2、3分前。流星の目の前で人知を超えた戦闘があった。目で追えぬほどの速さで移動する超人たちによる銃撃戦・格闘戦・斬撃戦。まばたきを忘れた10秒ほどの間だろうか、短い間に戦いが起こり、決着した。
その結果がこれ。目の前で2人死んでいく。全く見ず知らずだとか、そもそもこの2人があの現場にいなかったとか、そんなことは関係ない。あの時、流星があの男児を撃てていれば、彼が名を知らぬタイを射殺していれば、彼が名を知らぬ変平太と麻耶は死ぬことにはならなかっただろう。
「おいオッサン、何してるネ。」
意外と近くから聞こえた声にも流星は振り返らない。この声はチャイナ服の少女だなとぼんやり考えながら、自分の知識を総動員して応急手当を考える。
その集中の糸を切ったのは、視界の端に見えた、刀。
その集中の糸を切ったのは、視界の端に見えた、刀。
「なにを、してる?」
「見りゃわかるだろ、介錯だ。」
「見りゃわかるだろ、介錯だ。」
「……たとえこの状況でも、それは、殺人だ。」
「お寒いねぇ、法律ってのは。侍に介錯もくれず生き地獄とは。」
「お寒いねぇ、法律ってのは。侍に介錯もくれず生き地獄とは。」
顔を見ずとも、似蔵がどんな顔をしているかはわかる。
たぶんチャイナ服の少女も、神楽も自分のような顔をしているのだろう。そう思い、流星はこの場の誰の名も知らぬことに気づいた。
たぶんチャイナ服の少女も、神楽も自分のような顔をしているのだろう。そう思い、流星はこの場の誰の名も知らぬことに気づいた。
「気にすることないネ、たしかこいつヤバいテロリストの仲間ヨ。」
「ひでぇこと言ってくれるなぁ。それじゃあそのテロリストの仲間を必死にって助けようとしてる坊っちゃんがかわいそうじゃねぇか。」
「ひでぇこと言ってくれるなぁ。それじゃあそのテロリストの仲間を必死にって助けようとしてる坊っちゃんがかわいそうじゃねぇか。」
似蔵が変平太の横に立ち、その後ろに神楽が立つ。いつでも切りかかれる態勢といつでもそれを止めれる態勢だと、流星は気配で感じた。だがそんな察しは鬱陶しいだけだ。今もこうして死んでいっている人を前にしてそんなことをしないでくれ、状況を考えろ、そう言いたいが。
「やめだ。」
「……なんでバトル・ロワイアルの会場に幼女ばっかいるんだ? はぁ……手向けだ。今回だけは見逃すか。」
「■■……■■■■?」
「こっちの話だ……天人の言葉か?」
「■■……■■■■?」
「こっちの話だ……天人の言葉か?」
気づいたら自分が消えていて。
気づいたら空の上にいて。
気づいたら殺し合いに巻き込まれていて。
気づいたら赤い空の下にいた。
陽菜の体感した現象を言葉にするとそうなる。
大雨を晴らす晴れ女となって1年、晴れ女ビジネスで東京に晴れ間を作り、その代償として身も心も持って行かれそうにって、空に落ちたと思ったら謎の殺し合いに巻き込まれた。話が飛躍しすぎていて理解が追いつかない。
今現在もそうだ。陽菜を手荒く起こした少女は外国人のようで言葉が通じず、次に現れたのは奇抜なファッションセンスの盲目のオジサンだった。
気づいたら空の上にいて。
気づいたら殺し合いに巻き込まれていて。
気づいたら赤い空の下にいた。
陽菜の体感した現象を言葉にするとそうなる。
大雨を晴らす晴れ女となって1年、晴れ女ビジネスで東京に晴れ間を作り、その代償として身も心も持って行かれそうにって、空に落ちたと思ったら謎の殺し合いに巻き込まれた。話が飛躍しすぎていて理解が追いつかない。
今現在もそうだ。陽菜を手荒く起こした少女は外国人のようで言葉が通じず、次に現れたのは奇抜なファッションセンスの盲目のオジサンだった。
(この体を見られないのは、良かったかも……)
「ここから10分ほど歩いたところにあるお寺さん、そこに殺し合いを潰そうって連中が集まってる。行くかどうかは好きにしな。」
「岡田さんは。」
「性に合わないんでね。首輪をどうにかできる人間を探しにほっつき歩くとするさ。天野さん、アンタはフウカさんと一緒にいてやんな。天人ならガキでも首輪を外せるかもしれない。」
「岡田さんは。」
「性に合わないんでね。首輪をどうにかできる人間を探しにほっつき歩くとするさ。天野さん、アンタはフウカさんと一緒にいてやんな。天人ならガキでも首輪を外せるかもしれない。」
微かに血の付いた服でそう言うと、似蔵は振り返りもせずに去っていく。あとに残されたのは言葉の通じぬ少女、フウカと2人きり。
これも晴れ女の役割とかそういうのだろうか。途方に暮れて陽菜は思う。あの流れで殺し合いに巻き込まれたのだ、きっとこれもそうなのだろう。空赤いし霧赤いし。だが、はいそうですかと殺し合いに乗れるわけがない。
だが初めて会った少女・フウカとは言葉が通じず、次に会った似蔵からは不穏な空気を感じる。何を信じればいいのかがわからなくて、どうすればいいかがわからない。
これも晴れ女の役割とかそういうのだろうか。途方に暮れて陽菜は思う。あの流れで殺し合いに巻き込まれたのだ、きっとこれもそうなのだろう。空赤いし霧赤いし。だが、はいそうですかと殺し合いに乗れるわけがない。
だが初めて会った少女・フウカとは言葉が通じず、次に会った似蔵からは不穏な空気を感じる。何を信じればいいのかがわからなくて、どうすればいいかがわからない。
「どうしよう、あたしだけ言葉がつうじないのかな。」
「……ごめん、フウカ。どうしたの?」
「え、なに? ヒナ、どうしたの?」
「……わかんないや。英語じゃないみたいだし、どうしよう……」
「うう、やっぱりつうじないよ……」
「……ごめん、フウカ。どうしたの?」
「え、なに? ヒナ、どうしたの?」
「……わかんないや。英語じゃないみたいだし、どうしよう……」
「うう、やっぱりつうじないよ……」
言葉が通じないながらもフウカは気にかけてくれているが、やはりコミュニケーションがとれない。思わず2人から出るのはため息だ。お互い困っているということはわかったが、だからなんだというのだ。
寺で起こった戦闘は2名の死者を出した。
危険人物は皆離れ、新しく向かうのは殺し合いに乗っていない参加者。
しかし状況の好転の兆しは無く。
依然として霧は深いままだった。
危険人物は皆離れ、新しく向かうのは殺し合いに乗っていない参加者。
しかし状況の好転の兆しは無く。
依然として霧は深いままだった。
【0127 寺近辺の住宅地】
【フウカ@らくだい魔女と闇の魔女(らくだい魔女シリーズ)@ポプラポケット文庫】
【目標】
●大目標
チトセやカリンやまきこまれてる子たちといっしょににげる。
●小目標
どうしよう、言葉がつうじないよ……
【目標】
●大目標
チトセやカリンやまきこまれてる子たちといっしょににげる。
●小目標
どうしよう、言葉がつうじないよ……
【神楽@銀魂 映画ノベライズ みらい文庫版(銀魂シリーズ)@集英社みらい文庫】
【目標】
●大目標
バトルロワイヤルとその主催者を潰す。
●中目標
首輪を外せる人間を探す。
●小目標
助けた女の子(ナツメ)と手当してた男(流星)と話す。
【目標】
●大目標
バトルロワイヤルとその主催者を潰す。
●中目標
首輪を外せる人間を探す。
●小目標
助けた女の子(ナツメ)と手当してた男(流星)と話す。
【脱落】
【武市変平太@銀魂映画ノベライズ みらい文庫版(集英社みらい文庫)】
【木本麻耶@ギルティゲーム(ギルティゲームシリーズ)@小学館ジュニア文庫】
【木本麻耶@ギルティゲーム(ギルティゲームシリーズ)@小学館ジュニア文庫】