寺の喫煙所。
空条承太郎は何時間ぶりかの煙草を吹かしながら、タブレットに視線を向けていた。
画面の中では、代わり映えのしない監視カメラの映像が流れ続けている。異変がないか気を配りながらも、承太郎は静かに物思いにふけっていた。
空条承太郎は何時間ぶりかの煙草を吹かしながら、タブレットに視線を向けていた。
画面の中では、代わり映えのしない監視カメラの映像が流れ続けている。異変がないか気を配りながらも、承太郎は静かに物思いにふけっていた。
「ニャアアアン疲れたニャアアア……」
「……」
「ニャ、なんニャ? オレっちの顔になんかついてるニャ?」
「いや……」
「……」
「ニャ、なんニャ? オレっちの顔になんかついてるニャ?」
「いや……」
そこに現れたくたびれた様子の何かに、承太郎は目を奪われてマジマジと見ていた。視線に気づいた本人から問われてごまかすが、今こうして承太郎が思い悩んでいるのは、まさしく彼についてである。
いや、本人や彼という呼び方が、はたして適切なのか。承太郎自身にもわからない。わからないから悩んでいるのだ。
あらためてもう一度見る。2頭身のフォルムにオレンジの毛並みの、二足歩行する猫。堂々と人間の言葉を話したその猫の名前を、ジバニャンと言った。
いや、本人や彼という呼び方が、はたして適切なのか。承太郎自身にもわからない。わからないから悩んでいるのだ。
あらためてもう一度見る。2頭身のフォルムにオレンジの毛並みの、二足歩行する猫。堂々と人間の言葉を話したその猫の名前を、ジバニャンと言った。
「こっちも本物だぁ!」
「やめるニャくすぐったいニャ!」
「やめるニャくすぐったいニャ!」
小一時間前に出会った天野景太がその珍獣を発現させた時、宮原葵に撫で繰り回されるのを見ながら承太郎は冷や汗をかかざるをえなかった。
どうやらジバニャンは妖怪だといい、素質のある人間でなければ見えないらしい。スタンド使いである承太郎や、鬼にさんざんに狙われた葵、そして神社の跡取り息子だという東海寺阿修羅はジバニャンをしっかりと目視したものの、一人そういった素質が無い空知うてなは困惑した様子で葵を見ていた。彼女からすれば、ケータが突然おもちゃを操作したと思ったら、自分以外の全員が一斉に何かの存在に驚き出したようなものだろう。一般人がスタンドに直面した時のような混乱が見られた。そんな彼女も触覚だけはどういうわけか感じ取れるようで、ジバニャンが握手すると「なにこれ!? モフモフしてプニプニしてる!?」と驚愕の声を上げていた。
さて、問題はケータが妖怪を召喚したことではない。元々承太郎はそういったオカルトに心得があるどころか当事者である。それに葵や東海寺からも話を聞いていたので、そういった存在に驚くことなどない。うてなの話も合わせて、自分たちがバラバラの時代から集められたということの方がよほど関心があった。
しかしながら、そうも言ってられなくなったと、承太郎はしきりにケータとジバニャンに話しかける葵を見て思う。そう、問題は彼女なのだ。
どうやらジバニャンは妖怪だといい、素質のある人間でなければ見えないらしい。スタンド使いである承太郎や、鬼にさんざんに狙われた葵、そして神社の跡取り息子だという東海寺阿修羅はジバニャンをしっかりと目視したものの、一人そういった素質が無い空知うてなは困惑した様子で葵を見ていた。彼女からすれば、ケータが突然おもちゃを操作したと思ったら、自分以外の全員が一斉に何かの存在に驚き出したようなものだろう。一般人がスタンドに直面した時のような混乱が見られた。そんな彼女も触覚だけはどういうわけか感じ取れるようで、ジバニャンが握手すると「なにこれ!? モフモフしてプニプニしてる!?」と驚愕の声を上げていた。
さて、問題はケータが妖怪を召喚したことではない。元々承太郎はそういったオカルトに心得があるどころか当事者である。それに葵や東海寺からも話を聞いていたので、そういった存在に驚くことなどない。うてなの話も合わせて、自分たちがバラバラの時代から集められたということの方がよほど関心があった。
しかしながら、そうも言ってられなくなったと、承太郎はしきりにケータとジバニャンに話しかける葵を見て思う。そう、問題は彼女なのだ。
「あの、私ファンなんですよ、ウィスパーも呼んでもらっていいですか?」
「なんでキミそんなにオレらのことに詳しいの!?」「オレっち気味が悪いニャ……」
「なんでキミそんなにオレらのことに詳しいの!?」「オレっち気味が悪いニャ……」
葵はまるで芸能人か何かのおっかけのようにケータとジバニャンについての知識があった。ケータたちからは全く面識が無いのにだ。
そのこと自体には、驚きは薄い。違う時代から集められた可能性あるからだ。葵がケータたちより後の時代の人間で、ケータたちから見れば未来で親しくなり、詳しくなったとも考えられる。
だが実際は違った、違うのだ。だから承太郎は頭を悩ませている。
葵は言った、「天野ケータとジバニャンは『妖怪ウォッチ』というゲームのキャラです」と。
そして、ジバニャンからも言われたのだ。
そのこと自体には、驚きは薄い。違う時代から集められた可能性あるからだ。葵がケータたちより後の時代の人間で、ケータたちから見れば未来で親しくなり、詳しくなったとも考えられる。
だが実際は違った、違うのだ。だから承太郎は頭を悩ませている。
葵は言った、「天野ケータとジバニャンは『妖怪ウォッチ』というゲームのキャラです」と。
そして、ジバニャンからも言われたのだ。
「空条承太郎って、ジョジョニャ?」
ジョジョ、それは承太郎の学生時代のあだ名である。と言ってももっぱら承太郎と呼ばれていた。なぜそのあだ名を、と思ったが、直ぐに違和感に気づく。葵は『妖怪ウォッチ』という作品名を出していたが、『ジョジョ』というのも作品名ではないかと。
(ゲームだけじゃない、キャラクターを現実にするスタンド……あるいは、人間をキャラクターのように何かの作品に出すスタンドか……?)
考えて見ると、ケータたちのように混乱せざるをえなかった。さしもの承太郎もポーカーフェイスが崩れる。キャラクターが現実に飛び出してくるのは受け止められても、自分自身がキャラだと言われれば驚愕も強い。なにより承太郎は、その考察が真に迫るものだと感じているからだ。
この考察には、違う時代から集められたという前提がある。今確認できている中では、承太郎の世界が一番古く、ケータの世界、葵の世界と新しくなっていく。そして葵はケータを、ケータもといジバニャンは承太郎をキャラクターとして認識している。このことから、違う世界から人間を集めた主催者は、全参加者の未来の存在ではないかと承太郎は考えていた。未来から過去にタイムスリップするためには作品である必要があるのか、作品から参加者を集めたためにタイムスリップしているように見えるのか、それとも何か別の事情があるのかまではわからないが、承太郎の知るスタンドには様々な制約を持つものもある。タイムスリップの可能性と同じぐらいには様々な作品のキャラクターが殺し合いに招かれている可能性があるだろう。
この考察には、違う時代から集められたという前提がある。今確認できている中では、承太郎の世界が一番古く、ケータの世界、葵の世界と新しくなっていく。そして葵はケータを、ケータもといジバニャンは承太郎をキャラクターとして認識している。このことから、違う世界から人間を集めた主催者は、全参加者の未来の存在ではないかと承太郎は考えていた。未来から過去にタイムスリップするためには作品である必要があるのか、作品から参加者を集めたためにタイムスリップしているように見えるのか、それとも何か別の事情があるのかまではわからないが、承太郎の知るスタンドには様々な制約を持つものもある。タイムスリップの可能性と同じぐらいには様々な作品のキャラクターが殺し合いに招かれている可能性があるだろう。
(ラオウやケンシロウと殺し合えってか? やれやれだぜ……)
腹巻からチョコのお菓子を取り出し黄昏れた感じで食べるジバニャンを見て、承太郎は物思いから我に返った。しばらく考え込んでいたらしい。タブレットの映像は、依然として変わりはなかった。
承太郎の懸念点は3つだ。
1つは単純に参加者が強いこと。同じスタンド使いだけでも厄介極まりない化物を承太郎は知っている。またアイツを殺すとなればどれだけ骨が折れるかわかったものではない。なのに、承太郎が読むジャンプキャラが参加者にいる可能性があるのだ。なんなら町一つ壊せるキャラクターも外道なことを進んでやるキャラクターもいる。そういうキャラクターは主人公に焼きを入れられると決まっているのだが、はたして主催者は悪役だけ招く真似をしていないだろうか。
それに、自分のことを一方的に知られているのも気に食わない。承太郎も丸くなったとはいえ、鬱陶しいのは嫌いである。さっきのケータたちに葵が話したことを考えるに、相当プライベートなところまで知られているらしい。それで気分がいいわけがない。
そしてなによりも厄介なのが、今こうして考えていることも主催者に筒抜けの可能性があることだ。漫画を読むようにキャラクターのプライベートまで覗けるのならば、頭の中まで覗けてもまるで不思議では無い。そうでなくてもテレパシーのような能力を持つスタンド使いがいるだけで同じことが起こる。
1つは単純に参加者が強いこと。同じスタンド使いだけでも厄介極まりない化物を承太郎は知っている。またアイツを殺すとなればどれだけ骨が折れるかわかったものではない。なのに、承太郎が読むジャンプキャラが参加者にいる可能性があるのだ。なんなら町一つ壊せるキャラクターも外道なことを進んでやるキャラクターもいる。そういうキャラクターは主人公に焼きを入れられると決まっているのだが、はたして主催者は悪役だけ招く真似をしていないだろうか。
それに、自分のことを一方的に知られているのも気に食わない。承太郎も丸くなったとはいえ、鬱陶しいのは嫌いである。さっきのケータたちに葵が話したことを考えるに、相当プライベートなところまで知られているらしい。それで気分がいいわけがない。
そしてなによりも厄介なのが、今こうして考えていることも主催者に筒抜けの可能性があることだ。漫画を読むようにキャラクターのプライベートまで覗けるのならば、頭の中まで覗けてもまるで不思議では無い。そうでなくてもテレパシーのような能力を持つスタンド使いがいるだけで同じことが起こる。
(まあ、コイツをハメてるってことは、無えとは思いたいがな。)
ただ、その可能性は承太郎は低いとも考えていた。今こうして自分が生きているからであり、そして首輪を着けられているからだ。
チェーホフの銃という言葉がある。わざわざ首輪を用意したからには、それを使う必要性があるのだろう。まさか単なるアクセサリーとして着けさせたわけではあるまい。よしんばアクセサリーであったとしても、それが活躍するのはオープニングのような参加者を殺す場合。つまりは、必要性があろうとなかろうと、首輪を着けさせた以上は、もし殺すのであればそれで殺すと、承太郎は考えた。全くの無駄な物を用意するぐらいなら、たとえそれを使う必要が無くとも、わざわざ無駄に何かの役目をもたせるだろう。必要があって用意したのでは無く、用意したから必要をこじつけた。
また、これはジャンプ読者としての意見だが、何十人もキャラクターがいて、はたしてそのすべてを追うだろうか? 承太郎も興味の無い連載は流し読みする。主催者も、興味の薄い参加者には注目しないだろう。たとえば承太郎たちはさっきまで食事していたのだがそんなシーンを殺し合いを見たい人間は読み飛ばすだろうし、もっと言えば承太郎が街を彷徨っていた時などまるで代わり映えのしないシーンが1時間以上続いたのだ。そんな退屈なものに集中する物好きが、こんな大それた殺し合いなど開くとは思えない。つまらないものは読み飛ばす、それならすべての参加者の思考などいちいち読んではいられまい。
チェーホフの銃という言葉がある。わざわざ首輪を用意したからには、それを使う必要性があるのだろう。まさか単なるアクセサリーとして着けさせたわけではあるまい。よしんばアクセサリーであったとしても、それが活躍するのはオープニングのような参加者を殺す場合。つまりは、必要性があろうとなかろうと、首輪を着けさせた以上は、もし殺すのであればそれで殺すと、承太郎は考えた。全くの無駄な物を用意するぐらいなら、たとえそれを使う必要が無くとも、わざわざ無駄に何かの役目をもたせるだろう。必要があって用意したのでは無く、用意したから必要をこじつけた。
また、これはジャンプ読者としての意見だが、何十人もキャラクターがいて、はたしてそのすべてを追うだろうか? 承太郎も興味の無い連載は流し読みする。主催者も、興味の薄い参加者には注目しないだろう。たとえば承太郎たちはさっきまで食事していたのだがそんなシーンを殺し合いを見たい人間は読み飛ばすだろうし、もっと言えば承太郎が街を彷徨っていた時などまるで代わり映えのしないシーンが1時間以上続いたのだ。そんな退屈なものに集中する物好きが、こんな大それた殺し合いなど開くとは思えない。つまらないものは読み飛ばす、それならすべての参加者の思考などいちいち読んではいられまい。
(隙は用意されてる。それがわざとなのかはわからねえが、やることは変わらねえ。)
承太郎は唇に熱を感じて、すっかりチビた煙草をもみ消した。
「オレあの子怖いよ……」
「災難だったな……払っとくか?」
「ううん、遠慮しておく。」
(なんかみんな盛り上がってていいなあ。)
「災難だったな……払っとくか?」
「ううん、遠慮しておく。」
(なんかみんな盛り上がってていいなあ。)
ケータと東海寺が男子同士でダベっているのを、うてなは遠目から眺めていた。喫煙所の方では、また葵がジバニャンを撫でくりまわしているのか黄色い悲鳴が聞こえてくる。他のみんなはジバニャンの声も聞こえるんだろうなと思いながら、はあ、とため息をついた。
この寺にいる5人の参加者のうち、うてなだけがジバニャンを見ることが叶わなかった。スタンド使いである承太郎、鬼に追い掛け回されている葵、実家が神社の東海寺、そしてジバニャンを呼び出した張本人であるケータは妖怪ともコミュニケーションがとれるのだが、うてなには残念ながらそういうものへの経験が無い。いちおう生還士として訓練中に人知を超えた怪物に襲われた経験もあるのだが、それでは駄目らしい。
一人だけ見えないとなると、どうしても疎外感を感じてしまう。元々うてなたちは初対面の人間同士。その中で自分だけが話題に加われないとなると心細く感じる。
これがもっと他の話題ならば話を変えることもできたかもしれないが、目に見えない存在がいるというのはどうしても考察の対象になる。そうでなかったとしても、それまでのクールな葵が目をきらめかせてジバニャンたちに触れ合っているのを見て、思うところがある。唯一の同性で同年代なのに、すっかりほっぽられてしまっている。
もちろんうてなはプロだ。まだ入門したてといえども鍛えられているエリートだ。日本に何人もいない特別な小学生である。そのために努力もしてきた。それが努力でどうこうならないところで輪に入れないとなると、どんな顔をすればいいのかわからなくなる。
この寺にいる5人の参加者のうち、うてなだけがジバニャンを見ることが叶わなかった。スタンド使いである承太郎、鬼に追い掛け回されている葵、実家が神社の東海寺、そしてジバニャンを呼び出した張本人であるケータは妖怪ともコミュニケーションがとれるのだが、うてなには残念ながらそういうものへの経験が無い。いちおう生還士として訓練中に人知を超えた怪物に襲われた経験もあるのだが、それでは駄目らしい。
一人だけ見えないとなると、どうしても疎外感を感じてしまう。元々うてなたちは初対面の人間同士。その中で自分だけが話題に加われないとなると心細く感じる。
これがもっと他の話題ならば話を変えることもできたかもしれないが、目に見えない存在がいるというのはどうしても考察の対象になる。そうでなかったとしても、それまでのクールな葵が目をきらめかせてジバニャンたちに触れ合っているのを見て、思うところがある。唯一の同性で同年代なのに、すっかりほっぽられてしまっている。
もちろんうてなはプロだ。まだ入門したてといえども鍛えられているエリートだ。日本に何人もいない特別な小学生である。そのために努力もしてきた。それが努力でどうこうならないところで輪に入れないとなると、どんな顔をすればいいのかわからなくなる。
(みんなどうしてるかな。)
意識は幼なじみの双葉マメや、クラスメイトたちへ。
うてなが生還士を目指しているのも、共に被災したマメが彼女を助け、そして生還士を目指したからだ。彼女を含めうてなの知り合いは、こういった場所でもきっと適切に行動できているだろう。うてなは応急処置などを得意とするが、教わった知識から寺を避難所として利用できるように、物資を集積し、避難経路を確認し、調理しと様々なことをこれまでしてきた。ジバニャンという妖怪が現れるまでは、承太郎という大人が現れるまでは、うてながここの中心だったのだ。
仲間のことを考えても、けっきょく愚痴っぽくなってしまう。うてなはトイレに行くと、自分にできることは残ってないかと考えることにした。まずは監視カメラから見る。相変わらず代わり映えしない、静止画のような映像だ。すぐにつまらなくなり、とりあえず銃でも集めておくかと考える。最低限のことは既にやっているので、それなら後回しにしていた武器をどうこうしようというわけだ。
うてなの指示で銃を持ってはいたが、彼女自身銃の知識など無い。聞きかじったものから安全装置をなんとかしたり、人を襲うというよりかは野生動物に襲われないための知識から陣形を組んだりしたが、実際に銃撃戦になったら戦えるわけがない。そもそもの話、誰も銃を撃ったことなどなかったのだ。うてなが発砲したのも威嚇射撃のみ、それも近くの地面に撃つだけで、撃ってみた感覚からこれを人に向けて撃つのは無理だと理解した。止まっている数メートル先の目標にも当たらないのだ、何発撃っても当たる気がしない。なにより、重い。普通の小学生より運動ができるうてなでも、こんなものを持ち歩くのは気が滅入る。よく軍隊とかはこんなの持って丸一日歩けるなと思った。
うてなが生還士を目指しているのも、共に被災したマメが彼女を助け、そして生還士を目指したからだ。彼女を含めうてなの知り合いは、こういった場所でもきっと適切に行動できているだろう。うてなは応急処置などを得意とするが、教わった知識から寺を避難所として利用できるように、物資を集積し、避難経路を確認し、調理しと様々なことをこれまでしてきた。ジバニャンという妖怪が現れるまでは、承太郎という大人が現れるまでは、うてながここの中心だったのだ。
仲間のことを考えても、けっきょく愚痴っぽくなってしまう。うてなはトイレに行くと、自分にできることは残ってないかと考えることにした。まずは監視カメラから見る。相変わらず代わり映えしない、静止画のような映像だ。すぐにつまらなくなり、とりあえず銃でも集めておくかと考える。最低限のことは既にやっているので、それなら後回しにしていた武器をどうこうしようというわけだ。
うてなの指示で銃を持ってはいたが、彼女自身銃の知識など無い。聞きかじったものから安全装置をなんとかしたり、人を襲うというよりかは野生動物に襲われないための知識から陣形を組んだりしたが、実際に銃撃戦になったら戦えるわけがない。そもそもの話、誰も銃を撃ったことなどなかったのだ。うてなが発砲したのも威嚇射撃のみ、それも近くの地面に撃つだけで、撃ってみた感覚からこれを人に向けて撃つのは無理だと理解した。止まっている数メートル先の目標にも当たらないのだ、何発撃っても当たる気がしない。なにより、重い。普通の小学生より運動ができるうてなでも、こんなものを持ち歩くのは気が滅入る。よく軍隊とかはこんなの持って丸一日歩けるなと思った。
(はぁ……)
一人で考えていると気分が落ち込んでくる。寺を一回りして手榴弾を回収し、併設された駐車場の、監視カメラからよく見える場所に段ボール箱を持っていてその中にしまう。一仕事終えてさあ次はもっと気の晴れることをしようと思うが、特に何も思いつかず、とりあえずまた監視カメラを確認する。あいもかわらない退屈な映像にまたため息がでる。しかし、沈黙したうてなに代わって人の声が聞こえた。
うてなは耳を澄ませた。男女の声だ。少なくとも女の方は、葵とは声が違う。もっとよく耳を傾ける。この声は、寺の人間の声ではない。
うてなは耳を澄ませた。男女の声だ。少なくとも女の方は、葵とは声が違う。もっとよく耳を傾ける。この声は、寺の人間の声ではない。
(他の参加者の子だ。)
うてなは気づくと、すぐさまタブレットを操作した。内線にかけると承太郎が出る。うてなは嬉々として駐車場の辺りで2人の知らない人間の声がしたと伝えた。これで自分も輪に入れると。
「あっ、ほんとだ、妖怪ウォッチの、えっと……」
「あ、天野景太です。」
「あ、どうも、伊藤孝司です。」
「あの、もしかして君もオレのことをゲームで知ってる?」
「ごめん、そんな妖怪ウォッチ詳しくなくて……」
「あ、そうなんだ……」
「あ、なんかごめん……」
「いや、別に……」
「あ、うん……」
「……」
「……」
「あ、天野景太です。」
「あ、どうも、伊藤孝司です。」
「あの、もしかして君もオレのことをゲームで知ってる?」
「ごめん、そんな妖怪ウォッチ詳しくなくて……」
「あ、そうなんだ……」
「あ、なんかごめん……」
「いや、別に……」
「あ、うん……」
「……」
「……」
気まずい空気がケータと孝治の間に流れているが、もっと気まずいのはうてなの方だった。
彼女が見つけた孝治と関織子(原作版)の2人は、うてなと同じように拠点を作ってから数時間何も起こらないのを確認して、大通り沿いに偵察に来たらしい。
だいたいこの時間ともなれば他の参加者もする行動は同じということはわかったが、そんなことはうてなにとってどうでもいいことだ。
問題は、2人がジバニャンを見える側の人間であることだ。しかも孝治に至っては葵と同じ学校で同じように鬼に追いかけられたという、元からの知り合いだった。
彼女が見つけた孝治と関織子(原作版)の2人は、うてなと同じように拠点を作ってから数時間何も起こらないのを確認して、大通り沿いに偵察に来たらしい。
だいたいこの時間ともなれば他の参加者もする行動は同じということはわかったが、そんなことはうてなにとってどうでもいいことだ。
問題は、2人がジバニャンを見える側の人間であることだ。しかも孝治に至っては葵と同じ学校で同じように鬼に追いかけられたという、元からの知り合いだった。
(葵ちゃん、孝治くんに妖怪ウォッチについて語り始めちゃったなあ……)
唯一の女子仲間だった葵は孝治とケータを引き合わせて、微妙な空気感の2人の仲を取り持とうとしている。新しく仲間に加わった女子であるおっこは、こちらは和服つながりなのかなんなのか、「関! キミのその白い霊力……間違いない! オレと同じ霊能力者だな!」などとわけわかんないこと言った東海寺にどこかに連れて行かれてしまっている。そんな2人はしっかりとジバニャンと挨拶も交わしていた。7人もいるグループで、ジバニャンとコミュニケーションをとってないのはうてな1人だけだ。
(うじうじしてるなぁ……)
自分で自分が嫌になる。今のこの状況も、それに悩む自分も。
本当はもっと色々と考えなくてはならないことがある。しかしこういう危機的な状況で大切なのは、コミュニケーションだ。それができないと、孤立する恐れがある。そんなのは生還士失格だ。
だが打開策が見つからない。見えない物を見ようとしても、タブレットは何も写さない。
うてなは、ただただ葵が何かを撫でている仕草をしている空間を睨むように見ていた。
本当はもっと色々と考えなくてはならないことがある。しかしこういう危機的な状況で大切なのは、コミュニケーションだ。それができないと、孤立する恐れがある。そんなのは生還士失格だ。
だが打開策が見つからない。見えない物を見ようとしても、タブレットは何も写さない。
うてなは、ただただ葵が何かを撫でている仕草をしている空間を睨むように見ていた。
(─助けてくれニャ〜。)
そしてそのジバニャン。と彼とアイコンタクトするケータは、なんとかうてなに助けてもらいたかった。
まず自分たちがゲームだかなんだかのキャラクターと言われて驚いているのに、そこから同年代のかわいい女の子が自分のプライベートも知っていることに戦慄し、しかもやたら好感度が高いことに恐怖していた。特にケータからすると、突然自分のことをなんでも知ってる美少女が自分に好意を向けているというシチュエーションで、こんな場所でなければときめくかもしれないが、こんな場所ならバチクソヤバいストーカーに凸られているようなものである。
こうなったら唯一ジバニャンを見れないうてなに入ってもらって、妖怪まわりの話題から変えてもらうしかない。同じ男子の孝治は興味が無いようだが葵の元からの知人なので話しに付き合ってしまうし、東海寺はむしろグイグイ来るし、承太郎はシンプルに怖い上に何かを真剣に考えているようでとても声をかけられない。
まず自分たちがゲームだかなんだかのキャラクターと言われて驚いているのに、そこから同年代のかわいい女の子が自分のプライベートも知っていることに戦慄し、しかもやたら好感度が高いことに恐怖していた。特にケータからすると、突然自分のことをなんでも知ってる美少女が自分に好意を向けているというシチュエーションで、こんな場所でなければときめくかもしれないが、こんな場所ならバチクソヤバいストーカーに凸られているようなものである。
こうなったら唯一ジバニャンを見れないうてなに入ってもらって、妖怪まわりの話題から変えてもらうしかない。同じ男子の孝治は興味が無いようだが葵の元からの知人なので話しに付き合ってしまうし、東海寺はむしろグイグイ来るし、承太郎はシンプルに怖い上に何かを真剣に考えているようでとても声をかけられない。
じわじわと進むディスコミュニケーション。そのことには当事者のうてなすら気づかず。
5時57分。まもなく第一回目の放送が始まろうとしていた。
5時57分。まもなく第一回目の放送が始まろうとしていた。
【0557 寺院】
【空条承太郎@ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章 映画ノベライズ みらい文庫版@集英社みらい文庫】
【目標】
●大目標
殺し合いを破綻させる。
●中目標
寺院に人を集める。
●小目標
考察を進める。
【目標】
●大目標
殺し合いを破綻させる。
●中目標
寺院に人を集める。
●小目標
考察を進める。
【空知うてな@サバイバー!!(1) いじわるエースと初ミッション!(サバイバー!!シリーズ)@角川つばさ文庫】
【目標】
●大目標
生き残り、生きて帰る。
●中目標
寺院に人を集める。
●小目標
はぁ……
【目標】
●大目標
生き残り、生きて帰る。
●中目標
寺院に人を集める。
●小目標
はぁ……
【天野景太@映画 妖怪ウォッチ 空飛ぶクジラとダブル世界の大冒険だニャン!(小学館ジュニア文庫)】
【目標】
●大目標
殺し合いを止める。
●中目標
トモダチと合流したいんだよね。
●小目標
あの……プライバシーを尊重してほしいんスよ……うてなさん助けてもらっていいスか?
【目標】
●大目標
殺し合いを止める。
●中目標
トモダチと合流したいんだよね。
●小目標
あの……プライバシーを尊重してほしいんスよ……うてなさん助けてもらっていいスか?
【東海寺阿修羅@黒魔女さんのクリスマス 黒魔女さんが通る!! PART 10(黒魔女さんが通る!!シリーズ)@講談社青い鳥文庫】
【目標】
●大目標
黒鳥を探す。
●中目標
寺院に人を集める。
●小目標
妖怪ウォッチわかんないんだよなあ……
【目標】
●大目標
黒鳥を探す。
●中目標
寺院に人を集める。
●小目標
妖怪ウォッチわかんないんだよなあ……
【伊藤孝司@絶望鬼ごっこ くらやみの地獄ショッピングモール(絶望鬼ごっこシリーズ)@集英社みらい文庫】
【目標】
●大目標
とりあえず鬼ごっこだったら逃げるよね。
●中目標
仲間と合流したいんだけどね、もうそもそも人と出会わないの。
●小目標
宮原ってこんなキャラだったか?
【目標】
●大目標
とりあえず鬼ごっこだったら逃げるよね。
●中目標
仲間と合流したいんだけどね、もうそもそも人と出会わないの。
●小目標
宮原ってこんなキャラだったか?
【関織子@若おかみは小学生! PART13 花の湯温泉ストーリー (若おかみは小学生!シリーズ)@講談社青い鳥文庫】
【目標】
●大目標
よくわからないけど家に帰りたい。
●中目標
家族を探す。
●小目標
承太郎さんたちに協力する。
【目標】
●大目標
よくわからないけど家に帰りたい。
●中目標
家族を探す。
●小目標
承太郎さんたちに協力する。