さすがの四宮かぐや(まんが版)にもラテン語のリスニング能力は無い。古典を原文で読むために一通りのリーディングは可能であるが、それも使う語彙は何百年も前の、しかもキリスト教などに根ざしたものだ。
「アスモデウス・アリスさん……で、よろしいですか?」
数分間なんとかコミュニケーションを取ろうとした結果とりあえず互いの名前は伝え合うことができて、アリスはホッとしていた。
かぐやにとってはこの殺し合いで初めてまともに会話した相手であり、アリスにとっては初めて自分の言葉が通じた相手である。コミュニケーションに困難がつきまとってはいるが、会話できる相手を見つけられたことは2人に大きな安心感をもたらしていた。
かぐやにとってはこの殺し合いで初めてまともに会話した相手であり、アリスにとっては初めて自分の言葉が通じた相手である。コミュニケーションに困難がつきまとってはいるが、会話できる相手を見つけられたことは2人に大きな安心感をもたらしていた。
(ふぅ……誰とも言葉が通じないことも覚悟していたが、これで少しは情報を集められる……)
(イタリア語でもなく、わざわざラテン語でなければ通じませんか……それなら通じるという判断か、あるいはそれしか話せないか……)
(イタリア語でもなく、わざわざラテン語でなければ通じませんか……それなら通じるという判断か、あるいはそれしか話せないか……)
となると次に考えることは目の前の相手が利用できるかである。
両者の目的は大枠では一致している。それは生存と捜索。自身が生き残り、かつ自分にとっての重要人物も生き残らなくてはならない。
ここで2人には方針の差が生まれる。かぐやに必要なのは自分を守るボディガードと人探しの為のスカウトであり、アリスに必要なのは自分が生き残りかつ捜索の為に必要となる魔力の供給源であるエサだ。
そしてアリスにとってのそれは、人間である。
両者の目的は大枠では一致している。それは生存と捜索。自身が生き残り、かつ自分にとっての重要人物も生き残らなくてはならない。
ここで2人には方針の差が生まれる。かぐやに必要なのは自分を守るボディガードと人探しの為のスカウトであり、アリスに必要なのは自分が生き残りかつ捜索の為に必要となる魔力の供給源であるエサだ。
そしてアリスにとってのそれは、人間である。
(……今、血肉を喰らえば魔力は足りるだろうが……通訳は必要か。)
だがしかし、思い留まる。元々アリスは人間を生け捕りにして持ち帰りたいという野心でこれまで行動してきた。魔力があるに越したことはないが、しかしそれだけでただ一人の言葉が通じる相手を縊るのはあまりに浅慮だ。第一、人間にはこれまで複数遭遇している。非常食にも手土産にも、吟味できるだけの余裕があるかもしれない。
そんなことを知らないかぐやは、一方でアリスの価値を値踏みし結論づけた。早めに切る、と。
手を組むならもっと言葉が通じる人間の方が良い。ラテン語を話すコスプレイケメンに背中は任せられないのだ。だいたい、この殺し合いの場で銃の1つも持ち歩いていないことがかぐやには気に食わない。いったいこれまで何をしていたのか。あまりにのんきにすぎる。
そんなことを知らないかぐやは、一方でアリスの価値を値踏みし結論づけた。早めに切る、と。
手を組むならもっと言葉が通じる人間の方が良い。ラテン語を話すコスプレイケメンに背中は任せられないのだ。だいたい、この殺し合いの場で銃の1つも持ち歩いていないことがかぐやには気に食わない。いったいこれまで何をしていたのか。あまりにのんきにすぎる。
(……とはいえ、盾は必要。警察署の方から銃声が聞こえてくるのならここは、短い間ですが……)
だがしかし、思い留まる。かぐやにとってもアリスは貴重な肉壁だ。失うのはまだ惜しい。それに単純に複数で行動している方が危険人物にも狙われにくいだろう。
かぐやは目の前の相手が人間ではないなどとはつゆほどにも思わず、どう利用するかを思案する。なまじ中途半端に言葉が通じたことが、彼が悪魔だと気づくことを遠ざける。あるいはもしかぐやが機械に多少なりとも強ければ、スマホを見せた時の反応で違和感に気づき、そこから考察を進められただろう。だが彼女にできるのは、キーをタップすることや、音声認識でいくつかの操作すること程度。天才である彼女にも、苦手なことはある。
かぐやは目の前の相手が人間ではないなどとはつゆほどにも思わず、どう利用するかを思案する。なまじ中途半端に言葉が通じたことが、彼が悪魔だと気づくことを遠ざける。あるいはもしかぐやが機械に多少なりとも強ければ、スマホを見せた時の反応で違和感に気づき、そこから考察を進められただろう。だが彼女にできるのは、キーをタップすることや、音声認識でいくつかの操作すること程度。天才である彼女にも、苦手なことはある。
「そういえば……銃声が多くなってませんか?」
「ええ。それにこれは……足音でしょうか?」
(随分耳が良いな。)
「少しの間見てきます。ここでお待ちを。」
「ええ。それにこれは……足音でしょうか?」
(随分耳が良いな。)
「少しの間見てきます。ここでお待ちを。」
切り捨てる算段をつけつつ、会話の種として振った話にアリスは思いのほか食いついた。かくいうかぐやも先から気にはなっていたことだったので、彼が行くのに任せるとする。こういう時のための人間として早速役に立ってもらおうと思った。
(簡単な言葉しか使えないのは面倒ですね……ラテン語だと確か──)
「気をつけてくださいね。私はそこで待ってます。」
「はい。少ししたら戻ります。」
「気をつけてくださいね。私はそこで待ってます。」
「はい。少ししたら戻ります。」
英語の教科書みたいな話し方だなと思いながらかぐやはアリスを見送った。
「せや、から……お姉ちゃんとして、探しに行かんおええええ……」
「いやムリだろ! ゲロ吐きそうになってんじゃねえか!」
(……なんだ、あれは。)
「いやムリだろ! ゲロ吐きそうになってんじゃねえか!」
(……なんだ、あれは。)
足音から複数だと判断して慎重に向かう。物陰からそっと覗き込んだアリスが目にしたのは、ツインテールの少女が金髪の少年に背中を擦られているところだった。
アリスが見つけたのは宮美二鳥とうずまきナルト並びに彼の分身達である。同じ顔と服をした人間が20人近くいることに面食らうも、似たようなことをできる悪魔がいるのですぐにタネを見破る。そして同時にナルトが人間でないと結論づけた。
アリスが見つけたのは宮美二鳥とうずまきナルト並びに彼の分身達である。同じ顔と服をした人間が20人近くいることに面食らうも、似たようなことをできる悪魔がいるのですぐにタネを見破る。そして同時にナルトが人間でないと結論づけた。
(考えることは同じか。彼も人間を持ち帰る気だな。)
実際はナルトは化け狐が身体に封じられた人間だしもちろん二鳥を持ち帰る気もないのだが、言葉が通じないので自分を基準に考える。そして同時に力量も推し量る。
ナルト達は円形に分身を置いているようだが、手に持つ武器が気になる。アリスが目にしたことのないアサルトライフルは、懸念材料として彼の頭に入る。ではそれを除いて考えると、護衛するための陣形にしては穴がある。というか、本来は辺りを警戒していないといけないはずの分身たちがなぜか本体と同じように二鳥を心配してしまっている。どうやら数が多くて油断しているのか、それとも別に理由があるのか、ともかく隙だらけではある。
襲うか? アリスに欲が出る。リスクはあるが、分身というのはだいたい本体を潰せば消えるものだ。そして本体は一番襲われにくい中央にいる者だろう。そして地上にいる以上、空中からの襲撃には対処しにくい。自分なら空から一気に降下して本体を叩き、あの少女を確保できる……
ナルト達は円形に分身を置いているようだが、手に持つ武器が気になる。アリスが目にしたことのないアサルトライフルは、懸念材料として彼の頭に入る。ではそれを除いて考えると、護衛するための陣形にしては穴がある。というか、本来は辺りを警戒していないといけないはずの分身たちがなぜか本体と同じように二鳥を心配してしまっている。どうやら数が多くて油断しているのか、それとも別に理由があるのか、ともかく隙だらけではある。
襲うか? アリスに欲が出る。リスクはあるが、分身というのはだいたい本体を潰せば消えるものだ。そして本体は一番襲われにくい中央にいる者だろう。そして地上にいる以上、空中からの襲撃には対処しにくい。自分なら空から一気に降下して本体を叩き、あの少女を確保できる……
(できるが……かぐやを手に入れた今、そこまでのリスクを侵さずともよいか?)
しばし考える。
そしてアリスは後退した。ここはかぐやと共に接触してみるべきだ。一人友好的な参加者を手に入れられたのだ、穏便にことを運んでも遅くはない。
そしてアリスは後退した。ここはかぐやと共に接触してみるべきだ。一人友好的な参加者を手に入れられたのだ、穏便にことを運んでも遅くはない。
(引いたか。気づかれたって感じじゃないが。)
「サスケェ! 手伝えってばよ!」
「サスケェ! 手伝えってばよ!」
そしてそのアリスを見送る視線。うちはサスケはアリスが消えるのを見届けると、なおも喚くナルトの元に嘆息しながら現れた。
ことの始まりは二鳥の知人である黒鳥千代子が、二鳥の妹らしき人影を見たという話だ。そこから妹を助けに行くと言って聞かない二鳥と、それを守るナルト達という形で警察署近くの市街地を駆け回っていた。と言っても全力疾走した二鳥の体力はものの数分で尽き、スタミナが違う少年忍者に介抱されながら今は徒歩で探している。ナルト達を囮にサスケは奇襲されても逆襲をかけられるように付近に身を潜めていたのだが、幸いにも今回は出番が無かった。
ことの始まりは二鳥の知人である黒鳥千代子が、二鳥の妹らしき人影を見たという話だ。そこから妹を助けに行くと言って聞かない二鳥と、それを守るナルト達という形で警察署近くの市街地を駆け回っていた。と言っても全力疾走した二鳥の体力はものの数分で尽き、スタミナが違う少年忍者に介抱されながら今は徒歩で探している。ナルト達を囮にサスケは奇襲されても逆襲をかけられるように付近に身を潜めていたのだが、幸いにも今回は出番が無かった。
「サスケェ!」
「うるっぜぇぞナルト、お前まで騒ぐな。」
「どこ行ってたんだってばよ! 1人で大変だったんだぞ!」
「どうせもうろくに歩けやしないだろ。そのまま付き添ってろ。」
「ハァハァ、あ、歩けるわ!」
「ウソつけ足プルプルしてるってば──あれ?」
「うるっぜぇぞナルト、お前まで騒ぐな。」
「どこ行ってたんだってばよ! 1人で大変だったんだぞ!」
「どうせもうろくに歩けやしないだろ。そのまま付き添ってろ。」
「ハァハァ、あ、歩けるわ!」
「ウソつけ足プルプルしてるってば──あれ?」
相変わらず二鳥にツっこもうとしていたナルトが突然黙る。他の分身たちも同時に黙り顔を見合わせる。
なんだとサスケが声をかけるより早く本体のナルトが耳打ちした。
なんだとサスケが声をかけるより早く本体のナルトが耳打ちした。
「警察署でさっきの銀髪がめちゃくちゃ暴れてるってばよ。分身がどんどんやられてる。」
「影分身のフィードバックか。」
「それでさ、けっこう人がいるみたいなんだ。」
「……なら、俺たちも向かうぞ。コイツの妹だかを知ってる奴がいるかもしれない。」
「影分身のフィードバックか。」
「それでさ、けっこう人がいるみたいなんだ。」
「……なら、俺たちも向かうぞ。コイツの妹だかを知ってる奴がいるかもしれない。」
少し考えて言ったサスケの言葉にナルトはわずかに驚いた。言わんとしていることはわかるが、わざわざ戦っているところに向かうのはサスケらしくない。それを言うと、「俺たちは見張られている」とさっきのアリスのことを伝えた。
「とっとと逃げるぞ。」
「えっ!? 見えてるの!?」
(見えてるけど、言い出せないよ! お願い、わかって!)
(見えてるけど、言い出せないよ! お願い、わかって!)
乗用車の中、後部座席にあるのは死体だ。
死体を挟んで関織子(映画版)と白銀御行(映画版)は、警察署近くに路駐した車の中にいた。
空から落ちてきた黒鳥千代子が白銀の顔面に股間からダイブした後安らかに気絶し、白銀もむち打ちを起こしてろくに動けなくなったあと、おっこ達は遭遇した若者2人組の松野おそ松と弱井トト子の車に便乗させてもらえることとなった。墜落してきたヘリコプターに潰されかければ会話も仕切り直しになり、少し話せば2人はマーダーに襲われて逃げてきたとのことで、とりあえず警察署に向かっていたおっこ達とは目的地が一致していた。
死体を挟んで関織子(映画版)と白銀御行(映画版)は、警察署近くに路駐した車の中にいた。
空から落ちてきた黒鳥千代子が白銀の顔面に股間からダイブした後安らかに気絶し、白銀もむち打ちを起こしてろくに動けなくなったあと、おっこ達は遭遇した若者2人組の松野おそ松と弱井トト子の車に便乗させてもらえることとなった。墜落してきたヘリコプターに潰されかければ会話も仕切り直しになり、少し話せば2人はマーダーに襲われて逃げてきたとのことで、とりあえず警察署に向かっていたおっこ達とは目的地が一致していた。
「おっこちゃん……」
一致していたのだが、問題は後部座席に松野十四松の死体があったことだ。白銀も何か言いかけたが運転席で膝にサブマシンガンを乗せてハンドルを握っているトト子と、助手席でずっと拳銃を手にしているおそ松を見て結局口を噤んだ。
ドアを開けたら寝ている人間がいると思ったらどう見てもおそ松の兄弟と思わしき死体で、驚きと何があったかを察しておっこも白銀も何も言えなかった。というか言えなかった。おそ松の雰囲気は少しでも失言すれば即座に銃を抜いてきそうな凄みを感じさせるもの。それに気絶したチョコも運ばなくてはならない。怪我をした白銀では担ぎようもない以上、トト子達に乗せてもらうしかない。そしてまだ生きているチョコを安静に運ぼうとすれば、彼女をトランクルームに寝かせることになり、結果的に2人の間に十四松の死体を座らせることになった。
ドアを開けたら寝ている人間がいると思ったらどう見てもおそ松の兄弟と思わしき死体で、驚きと何があったかを察しておっこも白銀も何も言えなかった。というか言えなかった。おそ松の雰囲気は少しでも失言すれば即座に銃を抜いてきそうな凄みを感じさせるもの。それに気絶したチョコも運ばなくてはならない。怪我をした白銀では担ぎようもない以上、トト子達に乗せてもらうしかない。そしてまだ生きているチョコを安静に運ぼうとすれば、彼女をトランクルームに寝かせることになり、結果的に2人の間に十四松の死体を座らせることになった。
(なんかごめんね、死体で。)
(あ、謝られても……)
(あ、謝られても……)
しかも十四松の幽霊が十四松の死体の膝の上に座っている。
霊感のあるおっこにしかわからないのだが、十四松もそれをわかっているのかおっこにだけ話しかけてくる。もちろん返事などできない。「十四松さんのユーレイとお話してました!」などと言えば次の瞬間にはおっこの身体に風穴を開けられているだろう。
申し訳なさそうな顔で謝ってくる十四松に、声をかけれないが無視もできないので小さく会釈を返す。自分の死に傷つく兄弟や幼なじみに話しかけない辛さは、これまでユーレイ含めて様々な人と若おかみとして接してきたおっこにはよく理解できる。なによりおっこ自身も今年両親を喪った身だ。なので無下にはできないのだが、それはそれこれはこれ、ユーレイと話せるなどと言って信じてもらえないこともよくわかっている。そして今それを言ったら殺されても文句を言えない状況であることも。
霊感のあるおっこにしかわからないのだが、十四松もそれをわかっているのかおっこにだけ話しかけてくる。もちろん返事などできない。「十四松さんのユーレイとお話してました!」などと言えば次の瞬間にはおっこの身体に風穴を開けられているだろう。
申し訳なさそうな顔で謝ってくる十四松に、声をかけれないが無視もできないので小さく会釈を返す。自分の死に傷つく兄弟や幼なじみに話しかけない辛さは、これまでユーレイ含めて様々な人と若おかみとして接してきたおっこにはよく理解できる。なによりおっこ自身も今年両親を喪った身だ。なので無下にはできないのだが、それはそれこれはこれ、ユーレイと話せるなどと言って信じてもらえないこともよくわかっている。そして今それを言ったら殺されても文句を言えない状況であることも。
「音がしなくなったな。」
座った目で拳銃をいじりながら警察署を見ていたおそ松が呟いた。思わずおっこは身を硬くする。死体越しに白銀が身動ぎする気配を感じた。視線を動かすこともまばたきをすることもはばかられるほどの緊張感。
兄弟を、幼なじみを亡くした見知らぬ男女。そして横にはその死んだ当人の死体。そしてユーレイ。
いったいどうすればいいのかとおっこも冷や汗をかくしかない。
兄弟を、幼なじみを亡くした見知らぬ男女。そして横にはその死んだ当人の死体。そしてユーレイ。
いったいどうすればいいのかとおっこも冷や汗をかくしかない。
「行こうか。」
「ええ。」
「ええ。」
言葉少なく会話して、トト子はゆっくりと車を出した。近づくにつれて同じ格好をしたオレンジジャージの少年達が見えだす。というか同じ顔だ。手には全員ライフルを持ちこちらに気づいたようだが、撃ってはこない。
「! し──」
突然白銀が声を上げ、直後に首を抑えて顔を苦痛に歪める。
おっこが彼を見ていた方を見ると、黒髪の少女と目が合った。
おっこが彼を見ていた方を見ると、黒髪の少女と目が合った。
また人が増えた。
警察署内のエントランスの一画で、山田奈緒子はどんだけ殺し合いに巻き込まれてるんだと愚痴ろうとして腕の傷の痛みに呻き声に変わった。
警察署内のエントランスの一画で、山田奈緒子はどんだけ殺し合いに巻き込まれてるんだと愚痴ろうとして腕の傷の痛みに呻き声に変わった。
「イテェ……み……水……」
「残念だけど、応急手当じゃどうにも……」
「なんとかなんないカ! 必要なものがあるなら探してくるヨ!」
「……医者でなければ、どうにもならん。」
「残念だけど、応急手当じゃどうにも……」
「なんとかなんないカ! 必要なものがあるなら探してくるヨ!」
「……医者でなければ、どうにもならん。」
左横では吉永双葉──という名前を聞くタイミングなど無かったオーバーオールの少女──が、天地神明に手当てされていた。左腕はへし折れ、頭からは包帯を巻いた今も血が流れ続けている。その横では神楽が石川五エ門の肩を掴んで揺さぶっていた。彼らが銀髪の侍をしばき上げたらしいが、詳しい事情はわからない。五エ門が天地を手伝った際の手際から明らかに専門的なノウハウがあるようだが、それでもプロを連れてこないと双葉の体調はまずいらしい。腕を撃たれている山田を手当てしたのも五エ門達だが、こっちも死にかけているのにほっとかれているのはそれだけ傷が深いということか。
「……Zzz……ンゴッ。」
「大丈夫かしら……すごい汗。」
「どういうことだってばよ……俺を踏み台にしたり落っこちたり……こいつなにがしたかったんだ?」
「大丈夫かしら……すごい汗。」
「どういうことだってばよ……俺を踏み台にしたり落っこちたり……こいつなにがしたかったんだ?」
一方で右横に寝かせられているのは黒鳥千代子だ。名前は知らないものの彼女については印象に残っている。自分を銃で撃ったかもしれない相手なのだ、忘れようがない。その黒いゴスロリも、いつもの胡散臭いインチキ霊能力者を思い起こさせるものなので、一目見たときからあの時の子供だと焦った。まさかとは思うが、自分にトドメを刺しに来たかと。
彼女を看ている関織子やうずまきナルトも、その服装から同様にいつものインチキ霊能力者っぽさを感じていて警戒する。現代日本で和服の女子小学生や金髪碧眼のジャージ少年などそうそう見るはずがない。あれカラコンなのかななどと考えていると、そのナルトに話しかけてきた子供たちへと視線は移った。
彼女を看ている関織子やうずまきナルトも、その服装から同様にいつものインチキ霊能力者っぽさを感じていて警戒する。現代日本で和服の女子小学生や金髪碧眼のジャージ少年などそうそう見るはずがない。あれカラコンなのかななどと考えていると、そのナルトに話しかけてきた子供たちへと視線は移った。
「チョコちゃん! ナルト、なにがあったの!? なんでこんな、汗だくなって気絶してんねん!」
(うわっ、やっぱいたよ。)
(うわっ、やっぱいたよ。)
バレないように山田は寝返りをうとうとするも傷の痛みでそれどころではないので、なんとかさり気なく(と本人は思っている)毛布を頭まで被る。
一番か二番目ぐらいに会いたくない相手、宮美二鳥だ。山田を撃った疑惑のある3人の中ではもっとも正気じゃなくなっていると山田は見ている。本人の元からの気質なのか事情があるのかはわからないが、今も取り乱した様子でナルトに捲し立てているのを見ると、この銃創もそもそも二鳥がパニくって発砲したからだった気もしてくる。
先からヤバい人間が集まりつつあると思っていたが、これはかなりマズイことになりそうだと、危機感が募っていく。なんとか情報を探ろうと思って耳をすませば、今度はナルトが黒髪の少年に声をかけているのを発見した。
一番か二番目ぐらいに会いたくない相手、宮美二鳥だ。山田を撃った疑惑のある3人の中ではもっとも正気じゃなくなっていると山田は見ている。本人の元からの気質なのか事情があるのかはわからないが、今も取り乱した様子でナルトに捲し立てているのを見ると、この銃創もそもそも二鳥がパニくって発砲したからだった気もしてくる。
先からヤバい人間が集まりつつあると思っていたが、これはかなりマズイことになりそうだと、危機感が募っていく。なんとか情報を探ろうと思って耳をすませば、今度はナルトが黒髪の少年に声をかけているのを発見した。
「──いや、全員と話したが誰も見ていない。後はアイツらだけだが……」
「……」
「……」
(言葉が通じるのは、結局彼女しかいないのか……考えを改める必要があるかもしれないな。)
「……」
「……」
(言葉が通じるのは、結局彼女しかいないのか……考えを改める必要があるかもしれないな。)
あちらの方では少年が顎で美男美女達を指していた。高校生の2人がなにやら微妙な距離感で見つめ合っている、もとい睨み合っている。
うちはサスケは警察署に集まった人間たちに、二鳥の探す妹、三風について聞きこんでいた。そのサスケ含めて白銀御行と四宮かぐやという名前は知らないが、彼らが近くを通りがかった時に見えた制服の特徴から、同じ学校の生徒だと察する。まさかノベライズと実写化の微妙な差異に違和感を感じているなどとはわかるはずもなく、なにか複雑な事情があるのだろうと見当外れな推理をする。そしてその横に佇むボロボロの服を着たメッシュの入った髪のイケメン、アスモデウス・アリス。彼はかぐや以外に話せる相手がいないので必然彼女の近くから離れることは無かった。それに必要性も無い。多数の人間が1か所に集まっているのだ、わざわざなにかしなくても確保できているのと同然である。
うちはサスケは警察署に集まった人間たちに、二鳥の探す妹、三風について聞きこんでいた。そのサスケ含めて白銀御行と四宮かぐやという名前は知らないが、彼らが近くを通りがかった時に見えた制服の特徴から、同じ学校の生徒だと察する。まさかノベライズと実写化の微妙な差異に違和感を感じているなどとはわかるはずもなく、なにか複雑な事情があるのだろうと見当外れな推理をする。そしてその横に佇むボロボロの服を着たメッシュの入った髪のイケメン、アスモデウス・アリス。彼はかぐや以外に話せる相手がいないので必然彼女の近くから離れることは無かった。それに必要性も無い。多数の人間が1か所に集まっているのだ、わざわざなにかしなくても確保できているのと同然である。
「十四松……しばらくここにいてくれよ……」
「グスッ……」
「泣くなよトト子ちゃん……アイツ、湿っぽいのは嫌いだかさ……」
「グスッ……」
「泣くなよトト子ちゃん……アイツ、湿っぽいのは嫌いだかさ……」
そして彼らから離れた警察署地下、松野おそ松と弱井トト子は死体袋の中に松野十四松を寝かせていた。
ヘリの墜落に、戦場と化した警察署、そして多数の参加者は、2人をいくらか冷静にさせた。冷静に十四松をこのままにしておくわけには行かないと思い、探索の結果見つけた袋へと詰めていく。密閉され血の臭いがしなくなった十四松は、2人に在りし日の、ほんの数十分前までの十四松を想い出させた。
ヘリの墜落に、戦場と化した警察署、そして多数の参加者は、2人をいくらか冷静にさせた。冷静に十四松をこのままにしておくわけには行かないと思い、探索の結果見つけた袋へと詰めていく。密閉され血の臭いがしなくなった十四松は、2人に在りし日の、ほんの数十分前までの十四松を想い出させた。
今現在、警察署には都合15人もの参加者が集まっていた。
四宮かぐやは自身が生き残るための盾を手に入れたが、想い人に感じる違和感に言葉を無くしていた。
アスモデウス・アリスは大量の人間を発見するも言葉が通じないことから、今後の方針について考えていた。
宮美二鳥は殺し合いに巻き込まれた妹を探そうとして、手がかりの乏しさに臍を噛む思いをしていた。
うずまきナルトは戦闘が終わったことに一安心するも、依然として山積する問題に頭を悩ませた。
うちはサスケは己が追いかけていた少女の負傷を知り、そしてまた別の少女の捜索のために奔走していた。
関織子は自身が遭遇した異常事態に呆然とし、そして負傷者達に戦慄した。
白銀御行はひとまずの目的地としていた警察署の惨事に慄然とし、想い人に感じる違和感に閉口していた。
松野おそ松は弟の死体を安置し、それから先何も考えることは無かった。
弱井トト子は自らが惨劇の引鉄を引いたことなどつゆほども知らず、幼なじみの死を降り掛かった不幸として受け取っていた。
山田奈緒子は不運にも凶弾を受け、幸運にも保護してくれる人間を見つけた。
吉永双葉は探し求めていた自分以外の人間を見つけ、そして瀕死の重傷を負った。
天地神明は潜り込める善良な集団を見つけ、いかに自分に襲い来るリスクを最小限のものにするか腐心していた。
神楽はこれ以上目の前で死者を出さぬようにと奮闘して、今また看取ろうとしていた。
石川五エ門は柄に無いと自嘲する人助けに奮闘し、侍ではどうしようもない限界に直面していた。
黒鳥千代子は死者を出さぬようにとループを繰り返し、もはやできることは何もない。
四宮かぐやは自身が生き残るための盾を手に入れたが、想い人に感じる違和感に言葉を無くしていた。
アスモデウス・アリスは大量の人間を発見するも言葉が通じないことから、今後の方針について考えていた。
宮美二鳥は殺し合いに巻き込まれた妹を探そうとして、手がかりの乏しさに臍を噛む思いをしていた。
うずまきナルトは戦闘が終わったことに一安心するも、依然として山積する問題に頭を悩ませた。
うちはサスケは己が追いかけていた少女の負傷を知り、そしてまた別の少女の捜索のために奔走していた。
関織子は自身が遭遇した異常事態に呆然とし、そして負傷者達に戦慄した。
白銀御行はひとまずの目的地としていた警察署の惨事に慄然とし、想い人に感じる違和感に閉口していた。
松野おそ松は弟の死体を安置し、それから先何も考えることは無かった。
弱井トト子は自らが惨劇の引鉄を引いたことなどつゆほども知らず、幼なじみの死を降り掛かった不幸として受け取っていた。
山田奈緒子は不運にも凶弾を受け、幸運にも保護してくれる人間を見つけた。
吉永双葉は探し求めていた自分以外の人間を見つけ、そして瀕死の重傷を負った。
天地神明は潜り込める善良な集団を見つけ、いかに自分に襲い来るリスクを最小限のものにするか腐心していた。
神楽はこれ以上目の前で死者を出さぬようにと奮闘して、今また看取ろうとしていた。
石川五エ門は柄に無いと自嘲する人助けに奮闘し、侍ではどうしようもない限界に直面していた。
黒鳥千代子は死者を出さぬようにとループを繰り返し、もはやできることは何もない。
(──ちょっと待て、こんだけいるのに。)
そして山田は気づいた。
(前原と園崎どこ行った……?)
自分が撃たれる元凶の少年と、その友人の姿が揃って見えないことに。
よくよく考えれば、前原に殺意を向けていた二鳥が無警戒に人を探しているのは、彼がここにいるのならありえない。そして自分のように負傷して身動きが取れなくなっているから見逃されているということも、またありえない。今ここに集められている負傷者の中にいないことはわかりきっている。そしてこれまでの戦いで死んだ人間はおらず、唯一の死体は戦い終わった後に現れたおそ松たちが持ってきたもので──
よくよく考えれば、前原に殺意を向けていた二鳥が無警戒に人を探しているのは、彼がここにいるのならありえない。そして自分のように負傷して身動きが取れなくなっているから見逃されているということも、またありえない。今ここに集められている負傷者の中にいないことはわかりきっている。そしてこれまでの戦いで死んだ人間はおらず、唯一の死体は戦い終わった後に現れたおそ松たちが持ってきたもので──
(あ、あいつら……私を置いて2人で逃げ出しやがったな!!)
今日はなんて日だ! そう叫びたくなる。前原が挙動不審に発砲したせいでこんな目に合っているというのに張本人が逃げ出した。しかもすぐ横には、自分を撃った少女もいるのだ。バレれば殺される、ということはこれだけ人がいれば無いだろうが気が気ではない。
そして往々にして、山田の懸念は当たるのだ。
そして往々にして、山田の懸念は当たるのだ。
「怪我してる人らはなんか見てないかな……あのー、すみま──お前は!」
「ゲエッ!? バレたっ!?」
「ゲエッ!? バレたっ!?」
ガッツリ覗き込んできた二鳥と目が合う。言わんこっちゃないと吐き捨てたくなったが、そんな間もなく掴みかかってくる。おいおい正気かよ、と慌てふためく寸前で。
「イッタ……痛いって!」
「騒ぐな。これから情報交換だ。」
「騒ぐな。これから情報交換だ。」
イケメンな子供が山田に伸ばされた腕を捻り上げる。
うちはサスケという名を知るのは、それからすぐのことだった。
うちはサスケという名を知るのは、それからすぐのことだった。
「だから、その人らが撃ってきて──」
「いやいやいやその子とゴスロリの子とあともう一人が──」
「いやいやいやその子とゴスロリの子とあともう一人が──」
山田と二鳥・チョコは銃撃戦をした仲である。そのうえ山田は負傷している。当然穏便に話が進むわけがない。
「そんなことよりとっとと病院とか探しに行くネ! ここ警察なんダロ、手がかりぐらいあるダロ!」
「そうだってばよ、怪我してるやつを助けるのがさきだろ。」
「そうだってばよ、怪我してるやつを助けるのがさきだろ。」
そして負傷者は山田だけではない。二鳥と一緒に山田を銃撃したチョコは、五エ門の見立てでも原因不明の失神をしている。まさかループに気疲れと魔力の消費による過労とはわからず、なぜ最後に会ったときは健康そうに見えたのに気絶しているのか見当がつかない。双葉に至っては更に重傷だ。何を聞いても「ああ」とか「うん」としか言わなくなってきた。おそらくナルトの分身から落とされた時に頭部を挫傷している。患部を触ったら頭蓋骨のはずなのに柔らかな感触がした。くも膜下出血の恐れもある。さすがにこれを治療するのは五エ門の領分を超えている。直ぐに治療が必要だ。
「病院? あるわけないだろそんなの。殺し合えって言われてるのに。てかどうやってそこまで行くわけ? 銃持ったやつがうろついてんのにさ。」
「これまでにそれらしきものは見なかった。ここがゲームの主催者によって用意された街なら、そもそも病院なんてないってこともありえる。」
「これまでにそれらしきものは見なかった。ここがゲームの主催者によって用意された街なら、そもそも病院なんてないってこともありえる。」
だがおそ松とサスケの言葉通り、その宛がない。あったとしてもそこまで安全に運べる保証もない。そして問題はおそ松の纏う雰囲気だ。弟を殺されたと人伝に聞いたがなるほどそうもなろう。元の快活さや適当さは影を潜めて、ふざけたことを言おうものなら即座に射殺する危うさがある。自然と五エ門も彼を警戒するが、考えなくてはならないことは他にもあるのだ。
(この首輪をどう外すか……主催者はどこにいるのか……そして……)
「病院なら検討はついています。一番近いのはここです。」
「白銀さんすごいです! どうやって調べたんですか?」
「ここにあったスマホで検索したんだ。文字は読めなくても音声認識で地図を表示できた。」
「病院なら検討はついています。一番近いのはここです。」
「白銀さんすごいです! どうやって調べたんですか?」
「ここにあったスマホで検索したんだ。文字は読めなくても音声認識で地図を表示できた。」
この殺し合いそのものの打破。最も重要な考察が行えるような状況ではとてもないと、五エ門は認めざるを得なかった。
不幸にも殺し合った参加者たちに、家族や幼なじみを喪った参加者たち、そして今にも死にそうな参加者たち。優先順位はどうしても変わってくる。
これだけの人数がいれば手分けしてできることもある。少なくとも五エ門が単独行動できれば調べられることも多いのだが、今離れれば次会う時は内紛で全員死んだ後、などということもあり得る。そうでなくとも、いつ縁がまた襲いかかるか予想がつかない。
不幸にも殺し合った参加者たちに、家族や幼なじみを喪った参加者たち、そして今にも死にそうな参加者たち。優先順位はどうしても変わってくる。
これだけの人数がいれば手分けしてできることもある。少なくとも五エ門が単独行動できれば調べられることも多いのだが、今離れれば次会う時は内紛で全員死んだ後、などということもあり得る。そうでなくとも、いつ縁がまた襲いかかるか予想がつかない。
「■■■、■■■■■?」
「ええ。これに話しかければ──」
「ええ。これに話しかければ──」
そして五エ門はアリスにも視線を向けた。彼といいナルトたちといい妖怪変化の類に近いものを感じていた。ただでさえ人間たちで殺し合いに発展しそうな状況で魔法や超能力まで考慮に入れて動かなければならないのは困難を超えた困難だ。その上五エ門自身も重くは無いが負傷している。この場を穏便に済ませるのは骨が折れると言わざるを得ない。
しばらく考える。自分一人では、どうしようもない。もともとルパンのように口が上手い質でもないのだ。
しばらく考える。自分一人では、どうしようもない。もともとルパンのように口が上手い質でもないのだ。
「白銀、その病院はどの辺りだ。」
「ここからなら、車で10分ほどの距離です。場所はこの大通り沿いに道なりに進めば──ここです。」
「わかった──拙者が病院に向かう。医者がいるとは思えんがここよりはましだろう。危険で無いとわかれば怪我人たちを連れて行く。」
「ここからなら、車で10分ほどの距離です。場所はこの大通り沿いに道なりに進めば──ここです。」
「わかった──拙者が病院に向かう。医者がいるとは思えんがここよりはましだろう。危険で無いとわかれば怪我人たちを連れて行く。」
選んだのは自分が動くことだった。警察署で諍いが起こらないように目を光らせ続けても状況を好転させることはできない。それよりは自分がやって見せて巻き込んだ方がまだマシだ。もちろん、その間に殺し合いに発展する可能性は高いのだが。
だが、少なくとも五エ門がこう言えば、火種になりそうな人間を少しは遠ざけることができる。
だが、少なくとも五エ門がこう言えば、火種になりそうな人間を少しは遠ざけることができる。
「なら私が行くネ。怪我してるオッサンよりも足速いよ。」
「オレも行くってばよ。二鳥の妹も探さなきゃなんねーし、一石二鳥だ。オッチャンはサスケとここを守っててくれ。」
「お前はチャクラが切れてるだろ。オレも行く。アンタはここに残ってくれ。」
「オレも行くってばよ。二鳥の妹も探さなきゃなんねーし、一石二鳥だ。オッチャンはサスケとここを守っててくれ。」
「お前はチャクラが切れてるだろ。オレも行く。アンタはここに残ってくれ。」
率先して言った神楽に続いててナルトが、そしてサスケも名乗りを上げる。余裕の無さそうな神楽を遠ざけられるのはプラスだ。本人の強さもよくわかっているので、このメンバーの中なら任せやすい。ナルトとサスケも実力は未知数な部分があるが、一般人とは隔絶した身体能力はある。
五エ門は再び考える。最初は病院を探したがっている神楽と共に行くことで彼女を守りつつ、ナルト達に警察署の守りを任せることを考えたが、これならばサスケの言うとおり自分が残って縁などのマーダーに備えた方が良いかもしれない。同年代のナルトなら二鳥も抑えやすいという考えだったが、その分を自分が受け持ったほうが良いか改めて考え直す。
五エ門は再び考える。最初は病院を探したがっている神楽と共に行くことで彼女を守りつつ、ナルト達に警察署の守りを任せることを考えたが、これならばサスケの言うとおり自分が残って縁などのマーダーに備えた方が良いかもしれない。同年代のナルトなら二鳥も抑えやすいという考えだったが、その分を自分が受け持ったほうが良いか改めて考え直す。
「──それ、見せてみろよ。」
言うが早いか、おそ松が白銀からスマホを奪い取った。そのまま画面を拡げる。五エ門がそれを諌めるより早く、「他にも近くに病院あんだろ、そっちを見てくる」とスマホを突き返した。
「おそ松──」
「ここでダラダラしてるより、手分けしたほうがいいだろ。」
「なら、私も。」
「ここでダラダラしてるより、手分けしたほうがいいだろ。」
「なら、私も。」
普段の彼からは絶対に出ないような言葉に、咄嗟にトト子も続いた。そこには、今のおそ松を一人にできないという判断と、一人にされたくないという打算があった。
神楽グループ3名を手近な病院に、おそ松グループ2名をやや遠い病院に向かわせる。これならば空振りになることは無いだろう。おそ松たちに戦う力が無いのが気がかりではあるが、警察署からも距離がある場所ならば、少なくとも縁に襲われる危険性は少ない。土台、五エ門1人で守り切ることも守り切る義理も無い。無いのだが、これで良いかと逡巡してしまう。
神楽グループ3名を手近な病院に、おそ松グループ2名をやや遠い病院に向かわせる。これならば空振りになることは無いだろう。おそ松たちに戦う力が無いのが気がかりではあるが、警察署からも距離がある場所ならば、少なくとも縁に襲われる危険性は少ない。土台、五エ門1人で守り切ることも守り切る義理も無い。無いのだが、これで良いかと逡巡してしまう。
警察署グループ
天地神明、アスモデウス・アリス、四宮かぐや、白銀御行、関織子、宮美二鳥、石川五エ門、黒鳥千代子、山田奈緒子、吉永双葉
近場の病院グループ
神楽、うずまきナルト、うちはサスケ
遠い病院グループ
松野おそ松、弱井トト子
天地神明、アスモデウス・アリス、四宮かぐや、白銀御行、関織子、宮美二鳥、石川五エ門、黒鳥千代子、山田奈緒子、吉永双葉
近場の病院グループ
神楽、うずまきナルト、うちはサスケ
遠い病院グループ
松野おそ松、弱井トト子
この陣容になった場合、警察署には五エ門を除いて3名の重傷者が残ることになる。縁が再度攻撃してきた場合、あるいは同レベルの手練の攻撃があった場合、彼女らを健康な6名(そのうち白銀はむち打ちで二鳥は疲労困憊なのだが)に任せれば、五エ門1人でもなんとか守り切ることはできる。
最も心配なのは遠い病院を目指すおそ松達だが、神楽達と行かせても、移動の面でも戦力の面でも足並みを揃えにくい。
酷な話だが、五エ門はそもそも病院を捜索することは無駄だと考えている。双葉は確実に1日も持たず死に、山田も数日で失血並びに感染症により斃れ、チョコもいつ亡くなってもおかしくないと見立てている。それでもわざわざ行こうとさせているのは、そうでなければこの場の収まりがつかないからだ。
五エ門1人では銃を持った10人もの人間を無傷で黙らせることはできない。彼が斬り落とせる弾丸は彼に向かうものだけであり、離れた場所にいる人間が離れた場所にいる人間を撃った弾丸は処理しきれない。あるいは手負でなければやりようもあったのだが、縁に負わされたそれは無視できると強がるのが難しい深さだ。
最も心配なのは遠い病院を目指すおそ松達だが、神楽達と行かせても、移動の面でも戦力の面でも足並みを揃えにくい。
酷な話だが、五エ門はそもそも病院を捜索することは無駄だと考えている。双葉は確実に1日も持たず死に、山田も数日で失血並びに感染症により斃れ、チョコもいつ亡くなってもおかしくないと見立てている。それでもわざわざ行こうとさせているのは、そうでなければこの場の収まりがつかないからだ。
五エ門1人では銃を持った10人もの人間を無傷で黙らせることはできない。彼が斬り落とせる弾丸は彼に向かうものだけであり、離れた場所にいる人間が離れた場所にいる人間を撃った弾丸は処理しきれない。あるいは手負でなければやりようもあったのだが、縁に負わされたそれは無視できると強がるのが難しい深さだ。
「──わかった。」
即断即決、侍としても怪盗としてもそうあるべきだが。五エ門は迷いに迷ってそう言った。
(あの人、けっこう甘いなぁ。強いだけのバカの方が動かしやすいけれどね。)
「おい、まだアルか。」
「ごめんね神楽ちゃん、これでおしまいだよ。」
(この子もめんどくさいんだよね。ま、せいぜい死なないように頑張ってきてよ。)
「おい、まだアルか。」
「ごめんね神楽ちゃん、これでおしまいだよ。」
(この子もめんどくさいんだよね。ま、せいぜい死なないように頑張ってきてよ。)
存在感を消していた少年、神明は神楽の生傷に包帯や絆創膏を貼り付けつつ、心中で嗤う。
これだけの大所帯に紛れ込むことになるとは思わなかったが、狙い通りの展開にはなっていた。自分を守る盾を手に入れ、怪我人を治療する善良な対主催のポジションも手中にし、おそ松や神楽のような胡乱な人間は出て行ってくれる。それだけ考えれば上手く行き過ぎて怖いぐらいだ。
ただ大きな問題もある。ナルトにしろ他の人間にしろ、平然と魔法らしき力を使っていることだ。本人は忍術だと言っていたが、神明からすれば知ったこっちゃない。マガジンに載ってるような漫画じみた異能を何人も使われればたまったものではない。
これだけの大所帯に紛れ込むことになるとは思わなかったが、狙い通りの展開にはなっていた。自分を守る盾を手に入れ、怪我人を治療する善良な対主催のポジションも手中にし、おそ松や神楽のような胡乱な人間は出て行ってくれる。それだけ考えれば上手く行き過ぎて怖いぐらいだ。
ただ大きな問題もある。ナルトにしろ他の人間にしろ、平然と魔法らしき力を使っていることだ。本人は忍術だと言っていたが、神明からすれば知ったこっちゃない。マガジンに載ってるような漫画じみた異能を何人も使われればたまったものではない。
(……そういえば、主人公がタイムリープするマンガがあったな。まさかとは思うけど、時間止めたり心を読めたりする参加者も、いたりする?)
心の中で苦笑しようとしたが、何十人と分身していたナルトや銃弾も斬って捨てたという五エ門の話を聞くと、一笑には伏せない。あってほしくはない、ほしくはないのだが、否定するための材料が何もない。
もし本当にそんな能力者がいるのなら、全ての前提が覆る。裏切りも駆け引きもあったものではない。ミステリードラマで主人公が超能力でトリックを見破ったらそれはもうミステリーではないのだ。それと同じ無法がここでは起こり得る。
もっと踏み込んで考えれば、このゲームの主催者がそういった能力を持っている可能性も考えられる。今こうして神明が考察していることすらも筒抜けなのなら、手の打ちようがない。
もし本当にそんな能力者がいるのなら、全ての前提が覆る。裏切りも駆け引きもあったものではない。ミステリードラマで主人公が超能力でトリックを見破ったらそれはもうミステリーではないのだ。それと同じ無法がここでは起こり得る。
もっと踏み込んで考えれば、このゲームの主催者がそういった能力を持っている可能性も考えられる。今こうして神明が考察していることすらも筒抜けなのなら、手の打ちようがない。
(思考を盗聴するなんて、そんな陰謀論が……いやそもそもこうして殺し合わされてる事自体が陰謀か……)
想定しなくてはならないことが多すぎる。神明としては自身が先日参加したトモダチデスゲームのようなデスゲームを想定していたのだが、これではまるで不条理すぎる。つくづく自分のカリスマ性や文武両道さを挫いてこられてため息の1つも出そうになる。
イケメンで頭の良い自分が対主催集団を動かして有象無象を各個撃破し、最後に後ろから刺して自分一人立っている。そんな勝利の方程式を漠然と描いていた自分が嘲笑われているようにすら感じた。
イケメンで頭の良い自分が対主催集団を動かして有象無象を各個撃破し、最後に後ろから刺して自分一人立っている。そんな勝利の方程式を漠然と描いていた自分が嘲笑われているようにすら感じた。
(……とりあえず、あの白銀さんは厄介だな。キャラが被る。四宮さんも消えてもらいたい……他にも何人か消えて欲しいけれど、あの2人はちょっと優秀すぎるね。)
神明は改めて考える。
状況は自分にまるで容赦がないが、幸い自分はそのことに気がついている。これは他の参加者に対して大きなアドバンテージだ。
より慎重に、前回のように油断せず、最後の最後まで、勝ちを99%確実にしてもまだ容姿端麗で品行方正な美少年として振る舞い続ける。優勝して家に帰るまで、真人間としての仮面を被り続ける。それが勝利への最短ルートだと肝に銘じる。
状況は自分にまるで容赦がないが、幸い自分はそのことに気がついている。これは他の参加者に対して大きなアドバンテージだ。
より慎重に、前回のように油断せず、最後の最後まで、勝ちを99%確実にしてもまだ容姿端麗で品行方正な美少年として振る舞い続ける。優勝して家に帰るまで、真人間としての仮面を被り続ける。それが勝利への最短ルートだと肝に銘じる。
(それができたら苦労は無いけど、やるしかないよね。)
ルールも環境も違えど、一度はデスゲームで優勝に大手をかけたのだ。その経験も活かして、ラスト・スタンディング・マンとなる。
伏魔殿を自分のステージと化すべく、天地神明はどう空気キャラとして自身を装うかキャラメイクを考える。
多くの疑念と懸念を抱える警察署に、火種は燻り続ける。
伏魔殿を自分のステージと化すべく、天地神明はどう空気キャラとして自身を装うかキャラメイクを考える。
多くの疑念と懸念を抱える警察署に、火種は燻り続ける。
【0258 『南部』警察署】
【四宮かぐや@かぐや様は告らせたい―天才たちの恋愛頭脳戦― まんがノベライズ 恋のバトルのはじまり編@集英社みらい文庫】
【目標】
●大目標
何が起こっているか調べて、脱出する。
●中目標
白銀御行?が本人か確かめる。
●小目標
アスモデウス・アリスさんとコミュニケーションをとりたい。
【目標】
●大目標
何が起こっているか調べて、脱出する。
●中目標
白銀御行?が本人か確かめる。
●小目標
アスモデウス・アリスさんとコミュニケーションをとりたい。
【アスモデウス・アリス@魔入りました!入間くん(1) 悪魔のお友達(入間くんシリーズ)@ポプラキミノベル】
【目標】
●大目標
会場を探索し、入間がいれば合流。
●中目標
シノミヤ・カグヤたちを入間に献上する。
●小目標
この機械は……?
【目標】
●大目標
会場を探索し、入間がいれば合流。
●中目標
シノミヤ・カグヤたちを入間に献上する。
●小目標
この機械は……?
【宮美二鳥@四つ子ぐらし(1) ひみつの姉妹生活、スタート!(四つ子ぐらしシリーズ)@角川つばさ文庫】
【目標】
●大目標
生き残る。
●中目標
家族に会う/あの男子(圭一)を殺す。
●小目標
三風……!
【目標】
●大目標
生き残る。
●中目標
家族に会う/あの男子(圭一)を殺す。
●小目標
三風……!
【うずまきナルト@NARUTO-ナルト-白の童子、血風の鬼人(NARUTOシリーズ)@集英社みらい文庫】
【目標】
●大目標
殺し合いとかよくわかんねーけどとにかくあのウサギぶっ飛ばせばいいんだろ?
●中目標
サクラちゃんとかが巻き込まれてたら合流する。
●小目標
サスケたちと病院を探しに行く。
【目標】
●大目標
殺し合いとかよくわかんねーけどとにかくあのウサギぶっ飛ばせばいいんだろ?
●中目標
サクラちゃんとかが巻き込まれてたら合流する。
●小目標
サスケたちと病院を探しに行く。
【うちはサスケ@NARUTO-ナルト-白の童子、血風の鬼人(NARUTOシリーズ)@集英社みらい文庫】
【目標】
●大目標
殺し合いから脱出する。
●中目標
サクラや木の葉の忍を捜索する。
●小目標
ナルトたちと病院を探しに行く。
【目標】
●大目標
殺し合いから脱出する。
●中目標
サクラや木の葉の忍を捜索する。
●小目標
ナルトたちと病院を探しに行く。
【関織子@若おかみは小学生! 映画ノベライズ(若おかみシリーズ)@講談社青い鳥文庫】
【目標】
●大目標
白銀さんたちといっしょに殺し合いから脱出する。
●中目標
怪我してる人たちを看病する。
●小目標
十四松のユーレイと話す。
【目標】
●大目標
白銀さんたちといっしょに殺し合いから脱出する。
●中目標
怪我してる人たちを看病する。
●小目標
十四松のユーレイと話す。
【白銀御行@かぐや様は告らせたい―天才たちの恋愛頭脳戦― 映画ノベライズ みらい文庫版@集英社みらい文庫】
【目標】
●大目標
情報を集めて脱出する。
●中目標
四宮かぐや?が本人か確かめる。
●小目標
首痛い……
【目標】
●大目標
情報を集めて脱出する。
●中目標
四宮かぐや?が本人か確かめる。
●小目標
首痛い……
【松野おそ松@小説おそ松さん 6つ子とエジプトとセミ@小学館ジュニア文庫】
【目標】
●大目標
死にたくない。帰りたい。
●中目標
トト子と病院を探しに行く。
●小目標
???
【目標】
●大目標
死にたくない。帰りたい。
●中目標
トト子と病院を探しに行く。
●小目標
???
【弱井トト子@小説おそ松さん 6つ子とエジプトとセミ@小学館ジュニア文庫】
【目標】
●大目標
主催者をぶっ殺す。
●中目標
おそ松と病院を探しに行く。
●小目標
十四松くん……
【目標】
●大目標
主催者をぶっ殺す。
●中目標
おそ松と病院を探しに行く。
●小目標
十四松くん……
【山田奈緒子@劇場版トリック 霊能力者バトルロイヤル 角川つばさ文庫版@角川つばさ文庫】
【目標】
●大目標
生き残る。
●中目標
前原の野郎……逃げやがったな……!
●小目標
二鳥に殺されないようにしたいし腕痛いしいやもうマジで無理っす。
【目標】
●大目標
生き残る。
●中目標
前原の野郎……逃げやがったな……!
●小目標
二鳥に殺されないようにしたいし腕痛いしいやもうマジで無理っす。
【吉永双葉@吉永さん家のガーゴイル@角川つばさ文庫】
【目標】
●大目標
こんなことしでかした奴をぶっ飛ばす!
●小目標
???
【目標】
●大目標
こんなことしでかした奴をぶっ飛ばす!
●小目標
???
【天地神明@トモダチデスゲーム(トモダチデスゲームシリーズ)@講談社青い鳥文庫】
【目標】
●大目標
生き残る。
●中目標
信頼されるように努めて、超人的な参加者から身を守れる立ち回りをする。
●小目標
チート参加者を丸め込んでグループを立ち上げる。まずは邪魔な白銀とかぐやを処理する。
【目標】
●大目標
生き残る。
●中目標
信頼されるように努めて、超人的な参加者から身を守れる立ち回りをする。
●小目標
チート参加者を丸め込んでグループを立ち上げる。まずは邪魔な白銀とかぐやを処理する。
【神楽@銀魂 映画ノベライズ みらい文庫版(銀魂シリーズ)@集英社みらい文庫】
【目標】
●大目標
バトルロワイヤルとその主催者を潰す。
●中目標
病院と首輪を外せる人間を探す。
●小目標
ナルト達と病院を探しに行く。
【目標】
●大目標
バトルロワイヤルとその主催者を潰す。
●中目標
病院と首輪を外せる人間を探す。
●小目標
ナルト達と病院を探しに行く。
【石川五エ門@ルパン三世VS名探偵コナン THE MOVIE(名探偵コナンシリーズ)@小学館ジュニア文庫】
【目標】
●大目標
殺し合いからの脱出。
●中目標
二鳥やナルトなどの巻き込まれた子供は守る。
●小目標
襲撃に備える。
【目標】
●大目標
殺し合いからの脱出。
●中目標
二鳥やナルトなどの巻き込まれた子供は守る。
●小目標
襲撃に備える。
【黒鳥千代子@黒魔女さんと最後の戦い 6年1組 黒魔女さんが通る!!(20)(黒魔女さんが通る!!シリーズ)@講談社青い鳥文庫】
【目標】
●大目標
殺し合いを止める。
●中目標
ギュービッド様と古手梨花さんを探す。
●小目標
???
【目標】
●大目標
殺し合いを止める。
●中目標
ギュービッド様と古手梨花さんを探す。
●小目標
???