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  • お客様の中にパイロットはおられますか?

児童文庫ロワ

お客様の中にパイロットはおられますか?

最終更新:2025年05月23日 02:20

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だれでも歓迎! 編集
 目を開いたら飛行機の中だった。
 ゆさゆさと誰かに膝を揺すられている感覚。それが麻倉良太郎が最初に覚えたものである。目を開けたら隣の席にモジャモジャ頭の少女がいて、座席から映画館か何かだろうと思ってあたりを見回したら、左にあった窓から飛行機の翼とエンジンが見えた。

「……え? は? え?」

 小学5年生。反社会的勢力・講談組組長の孫にして、一般人。ナメられないようにと作っている表情も忘れて、素っ頓狂な第一声が口から出た。
 仕立ての良いスーツからハンカチを取り出し、ひとまず額に浮かんだ寝汗を拭う。それが冷や汗だと認めないのは、麻倉という侠の強がりだ。眉間に皺を寄せながらひとしきりハンカチを動かし、再度左を見る。
 窓の向こうは、一面の黒い雲に飛行機の翼が見えた。

「……なるほど、まあ、あれか。」

 どれだよと思いながらとりあえず言っておく。よくわからないが、よくわからないことに巻き込まれていることはわかった。
 なにせ麻倉のクラスメイトには黒魔女に魔法使いに霊能力者がいる。麻倉は彼らの正体に詳しいわけではないが、何か普通とは違うことを起こせることはわかっている。なので今回もそういうものなのだろうと考えた。でなければいくらヤクザの跡取りといえども殺し合いに巻き込まれたりしないだろう常識的に考えて。
 それに目の前の少女が、麻倉に尋常な状況でないことをわからせる。自分をじっと見つめる異国の少女にもちろん見覚えなどない。というか、何人かもわからない。外国人ということだけはわかるが、アジアっぽくもあればアラブっぽくもあり、スラブっぽくもあればヒスパニックっぽくもある。肌は小麦色で髪は金属たわしのようで、明らかにサイズのあっていない男物の上着に、下はいくつもほつれとツギハギのあるズボンときている。靴に至っては左右でバラバラだ。いったいぜんたい、飛行機というものには似つかわしくない。
 そしてその首に嵌められている首輪。あまりに特徴的な風貌過ぎて逆に目がいかなかったそれに気づくと、麻倉は自分の首に手をやった。

「やっぱりあるか……アンタも、えーっと……なんて名前だ?」
「モモ。」
「桃?」

 アンタも殺し合いの参加者か、もとい拉致られた被害者か、そう聞こうとして名乗られた名前に、麻倉は思わず聞き返した。その名前こそ、件の魔法使いの妹の名前である。なにせ彼が片思いしている黒魔女の家の隣に越してきた怪しい美少年の妹の名前なのだ、いやがおうにも気になるというもの。
 単なる偶然か、それとも。

(今はそんなこと考えてる場合じゃねえな。)

 気になりはするが頭を切り替える。麻倉は名乗り返すと、モモは「アサクラ」と一音一音つぶやいた。外国人にしか見えないがとりあえず言葉は通じるらしい。クラスメイトのマリアのように片言だが、もしかしたら日本に住んでるのかもしれないと思った。
 今考えなくてはならないのは、この殺し合いに黒鳥千代子たち麻倉の知り合いが巻き込まれているか、だ。ヤクザの自分だから拉致した、という線はモモの存在から薄くなる。むしろ同年代──と思うのだが、なにぶんモモの年齢はピンとこない、年上なのか年下なのかの印象すら判然としなかった──の子供ばかり集めて殺し合わせようという可能性もある。麻倉の片思いしている黒鳥千代子や、妹の良子をはじめ、アクの強い知り合いは多いのだ。

「モモ、ここがどこだかわかるか?」

 モモは首を振って知らないと答えた。予想通りの返答ではあるが、不安は高まる。
 麻倉は立ち上がって辺りを見渡した。人影は見えない、いや、いた。通路を挟んだ少し前の席に、足が見える。モモの前を通って通路に出ると、麻倉は自分がそうされたように近づいて行って肩を揺すった。

「おいアンタ──」
「うわっあ!? こ、殺さないでっ!」
「うおっ!?」

 その瞬間、突然飛行機内に突風が吹き荒れた。少年が飛び起きるのと同時に、台風のような強い風が麻倉に吹きつける。それだけでない。顔に何かがぶちあたった。その奇妙な感触と勢いに思わず目を塞ぐ。柔らかく、そして生暖かい。なんか匂う。一体これはなんだ。
 息も止めて顔に貼りついたそれを慌てて引き剥がし、恐る恐る目を開けると。

「なんや騒がしい……お前かっ。人が気持ちよく寝とんの、に……」
「……カツラ?」
「はうっ!?」

 関西弁のオッサンの声が聞こえたのと、顔に飛んできたものの正体がわかるのは同時だった。カツラだ、手の中にカツラがある。そして声がした方を見ると、さっき麻倉が肩を揺すった少年の近くの椅子からものの見事な禿頭が覗いていた。何をどうしたらこんな無残にハゲ散らかせるのか、前世で何か相当な悪行を積んだのではないか、そんなふうに見るもの全てに思わせる、どこに出しても恥ずかしい禿頭が、チラチラと哀れに垣間見える。

「あ、やっべ。えっと、その。」
「え、えっと、返す。」
「いやそれあの禿げてる人の……」
「あ、わかった……あの……」
「……」

 少年に促され、関西弁のハゲに呼びかける。応答は無い。しかしかすかに頭皮が震えている。その情けない姿に、麻倉はとりあえずカツラを被せると、そそくさと少年の横に座った。

「おい、今のなんだ。」
「すごいカツラだったね。」
「そっちじゃねえよ、さっきの風なんだよ。」
「え、風? シラナイ。」
「嘘つけアンタが吹かしたんだろ。」
「シラナイ、シッテテモイワナイ。お言葉ですがそんな風なんて起こせませんよ、どうせ窓かなんかが開いてい──」

 そこで少年はキョロキョロと辺りを見渡した。周囲では今の騒ぎで起きたのか、何人かの声が聞こえてくる。どうやら想像よりも人数が多いようだが、少年はそれよりも気になることがあるようだ。

「……あれ、なんで新幹線に?」
「違う、飛行機だ。それに、その首輪。」
「……」

 少年はおそるおそる手を首に伸ばす。さっきの自分もこうだったのだろうかと思いながら見ている麻倉の前で、指先が首輪に触れると、感電したかのように引っ込めた。

「……まさかだけど、変な夢とか見なかった。」
「ああ、変なウサギに殺し合えって言われるな。」
「……なるほど、よくわかった。」

 しばし、少年は顔を手で覆って黙り込んだ。指をとんとんと己の額へと弾く。時間にして数分もないだろうか。2人の横を銀髪の男や市松模様の羽織の学ランの少年が通り過ぎたあたりで、少年は顔を上げた。

「堀内優大だ、殺し合いから脱出したいと思ってる、君は?」
「麻倉良太郎、あったりまえだろ、こんなとことっとと出てってやる。」

 堀内優大。中学1年生。割と平凡な名前に、異能力者という非凡な才を持つ少年である。


「いや参ったねぇ、こりゃ。」

 銀髪の男はしばらくの間目を閉じて手印を結んでいたが、気の抜けた声でそう言いつつ目を開いた。その左目には縦に傷が走り、瞳は赤く、不可思議な紋様がある。カラーコンタクトではない、写輪眼と呼ばれる特殊な瞳である。
 男の名前ははたけカカシ。忍である。
 彼は目覚めて早々に己が幻覚を見せられていると判断して解除に動いていた。非現実的な殺し合い、というより殺し合うにしては穴があると忍者としての経験から考えると、今現在自分は何らかの攻撃を受け、殺し合いという幻覚によって正気を失った行動をさせられようとしていると読んだ。

(で、ハズレと。解したけどまるで解ける感じがしない。音に聞こえた万華鏡写輪眼ならともかく、これは……時空間忍術もありえるね。)

 忍者の中でも上澄みであるカカシにすれば、並大抵の幻術はなんとかなる。逆に言えば、カカシがどうにもできないようなものであるならば、それは幻覚などではなく実際に起こっているということもありえる。
 幻のような現実か、現実のような幻か。考えの読めない表情で頭を悩ますカカシの判断は。

(俺以外にも何人かいるようだけど……ま、本当に殺し合いが起きてることも考えて動きますか。)

 方針を決めると、写輪眼を額当てを眼帯にして閉じて歩き出す。他の参加者との接触、それが当座のやるべきことだ。
 まずは人数から考える。一定かどうかでも幻術にかけられているかの判断材料になる。それに、これが現実だとして、自分が今何の中にいるのかぐらいは手がかりがあるだろう。カカシからするとやけに豪華な部屋の中という第一印象だったが、微細な振動や重力のかかり方から、既にここが乗り物の中という判断はついている。だが、船にしては異様に静かすぎる。他国では飛行船というものの構想も進んでいるようなので、空中ということすらありえるなと思いながら移動を始めた。

(子供ばかりだ。アカデミーを卒業した前後の年頃が多い。)

 歩き始めて、直ぐにこの場にいる人間の共通点に気がついた。まだ十人ほどしか数えていないが、半分近くは子供だ。そして彼らから、カカシたち忍者が使うチャクラのようなものは全く感じない。よほどの手練ということも考えられるが、ただ単に一般人なのだろうとカカシには見えた。
 そんなカカシだが、ふと足を止める。通り過ぎた後方からチャクラのようなものを感じた。直ぐにもと来た道を戻る。何人かチャクラと違う不思議なものを感じさせる人間はいたのでそれかと思うが、急に気配が膨れ上がった理由がわからない。

「なんや騒がしい……お前かっ。人が気持ちよく寝とんの、に……」
「……カツラ?」
「はうっ!?」
(……また幻術なのか?)

 ハゲ散らかしたオッサンが、ズレたカツラを直していた。そのオッサンの近くの少年から何かの気配を感じる。戦闘、というわけではないらしい。幻術、というわけでもないだろう。こんなくだらない内容を見せる術師にしては術の完成度が高すぎる。
 つまりは、これは現実、なのだろう。

(なるほどね、俺が最後の一人になるとは限らないぐらいの人間も集めてる……ってほどじゃないねありゃ。チャクラで言えばサクラと同じぐらいか?)

 現実と受け入れかけるが、わずかに悩んだあと否定する。カツラの騒ぎで幻術の線を消しかけたが、しかし現実だと判断するには不可解な点がいくつもある。
 最大の問題は、カカシに匹敵する相手が今のところ見つからないのだ。殺し合い、というからには参加者の戦力はおおむね同じほどのはず。そのバランスを間違えれば殺し合いなど破綻してしまう、それは忍界での過去の例から間違いない。

「すみません!」
「おっと、失礼。」

 急ぎ足で歩く少年に通路を譲って、カカシは思考を中断した。やはりまだ判断材料が足りない。ここは当初の予定通り、乗客の確認を行うべきだろう。仮に殺し合わなくてはならないという幻術の場合もあれば、何人相手にしなくてはならないかは重要だ。

(今の子、羽織の下の腰に刀を差してたね。侍か?)

 特に武装している人間も僅かだがいるようだ。先の少年からはチャクラを感じなかったが、身のこなしから体術を修めていることはわかった。それに歩きだしてわかったが、ここには大量の武器が置かれているようだ。通路には10メートルおきに刀が転がっている。それ以外にもカカシには使用方法のわからないものを含めて大量の武器がそこかしこにある。これで殺し合えというツノウサギの意志が伝わってきた。
 カカシは端まで歩くと、今来た道を反対側の通路から戻り始めた。構造は概ねわかった。細長い部屋が続き、3列のシートの間を2本の通路が通っている作りだ。そしてその大半が子供である。

(まるで霧隠れのアカデミーだねこりゃ。)
「あ、すみません。」
「おや、また会ったね。」

 もちろん中には、今またすれ違おうとしている羽織の少年のような者もいるが。
 カカシがまた道を譲ってやると、少年は一礼して早足で去っていく。あらためてまじまじと見る。やはり、その動きは素人ではない。年齢は15歳ほどか? そして同時に、自分の背中に向けられた視線を感じる。目立ったからからというわけではないようだ。殺気は感じないが、みすみす放置するよりは釘を刺しておくかと、通り過ぎる際にねめつける。
 目があったのは2人。いずれも生意気そうな、サスケと同じか少し下ほどの少年だ。視線があっても逸らさない可愛くないところがますます似ていて、思わず笑いそうになる。他の子供がだいたい不安そうにしている中で動揺を面に出していないあたり肝が据わっているというべきか図太いというべきか。
 そうこうしているうちに、行き止まりに辿り着いた。人数も数え終わった。60人だ。カカシを除いて60人の、場合によっては殺さなくてはいけない相手は60人ということになる。

(俺を入れれば61人。この狭さのフィールドで殺し合うにしては多すぎる。過密な状態で殺し合わせることに意味があるのか、それとも場所か人数に何か意味があるのか……ま、幻術にしろそうでないにしろ意味なんてないかもしれないか。それよりも、この首輪が気になるね。カメラとトランシーバーはあるだろうが、この軽さならそうそう雷遁のチャクラを貯めておけるとも思えない。もし本当に殺し合わせる気なら、短時間で決着がつくようにするはず。だがそれでもこの狭さは……)

 得られた情報から思考が堂々巡りになりそうなのを感じて、カカシは考えるのをやめた。ひとまずわかったことは、ここには顔見知りがいないということ。危惧していたナルトたち第七班をはじめ木の葉の忍は一人もいない。これは良いニュースだ。悪いニュースは、木の葉どころか火の国、というか忍界の人間とは皆雰囲気が違うことだ。どこがと言われると悩ましいのだが、チャクラを全く感じなかったり、妙な気配がしたり、単純に外見が奇抜だったりと、違和感を感じている。これが幻術の影響かそれとも実際にそうなのか、判断に困るところである。なにより、もしこれが現実であった場合、カカシの想定よりも大幅に状況は困難だ。忍界以外の世界の人間についての知識など全くと言っていいほど無い。それはこれまでのカカシの忍としての常識やノウハウがまるで通用しない可能性を意味する。加えて床に落ちる武器。拳銃程度ならまだわかるが、かなり大型の銃器やそもそも武器なのかさえ怪しい長い何かもある。更に言えばこの乗り物もだ。他の60人が当たり前に知るものでもカカシだけがわからないとなれば、そのディスアドバンテージは計り知れない。

(そのあたりも含めて、聞いてみるとしますか。)
「よっ、また会ったね。そっちの君たちもね。」

 それを知るためにも──カカシは三度会った羽織の少年とその後ろにいる先程の2人に話しかけた。


 状況は最悪というやつだ。
 ロボは窓の外から見える黒い雲と、それによって鏡と化したガラスに写る自分に嵌められた首輪を睨みながら思った。
 ロボ、という名前だが、もちろん本当にロボットの訳ではない。クイズゲームアプリ『Qube』でのユーザー名である。小学生でありながら世界ランカーである彼は、ずば抜けた数学的センスを持つ。そのせいでついこの間、命がけの謎解きデスゲームをさせられたわけだが。

(リドルズの野郎、やっぱり生きてやがったか。)

 苦虫を噛み潰したような顔とはまさに今のロボの顔だ。何が悲しくてまた命がけのゲームをやらされなくてはならないのか。しかも今度は単純に殺し合いである。せめて謎解きさせろよと愚痴りたくなるが、どうしようもないので舌打ちだけしておく。

「すみません!」
「おっと、失礼。」

 横では市松模様の羽織の少年が、銀髪の男に一礼してすれ違っている。この飛行機の中で、少なくともこの区画で動いているのは2人だけだ。注目は必然、彼らに集まる。ロボはそのタイミングでシートの隙間にあった拳銃を手に取った。引きずり出そうとして手がつっかえ焦ったが、なんとか取り出す。ほっと息吐く間もなくそれをズボンに挟み込むと、油断無く周囲に目を配った。
 これまでの数分間、場に大きな混乱は見られない。そもそもまだ眠りについているゲームの参加者もいるようだ。寝た子は起こすなとはまさにこのこと、下手に騒げばパニックになる。なにせそこらじゅうに武器があるのだ、ハイジャックを起こすためのハードルはゼロである。

(つーか、手榴弾なんて配るんじゃねえよ。飛行機ごと堕ちるじゃねえか。)

 そして困ったことに、爆発物まである。とち狂った誰かがそれを使えば、参加者全員がそれで全滅だ。わずかでも武器に意識を向けさせればどうなるかわからない。故にロボも慎重に銃を手に入れた。最悪の場合、危険人物は射殺しなくてはならないだろう。もちろんこんなものを使ったことはないので、実際に殺せる自信は全く無いが、やらなくてはいけない時が来るかもしれないも覚悟の準備だけはしておく。その行動の矛盾には気づかずに。
 ロボはよく理解している。シンプルな殺し合いでは、自分に勝ち目は無い。さっき歩いてた2人は明らかに自分より強そうだ。不意を打とうとしてもズガン!と返り討ちにされる予想がつく。ここはうかつにうごかず、まずはこの殺し合いでどう動くかの方針を検討するのかま重要だろう。

「あ、すみません。」
「おや、また会ったね。」
(あの2人、またすれ違っているな。今度は向こう側の通路でか。)
(あいつら、この飛行機を調べている、それか人数を数えてるってところか?)

 聞こえてきた声に顔を上げる、先程の市松模様の羽織の少年と銀髪の男から、彼らの行動目的を推察する。自分ならこうするだろうと思いじっと見ていると、視線に気づいたか少年が、ついで男が目を向けてきた。どうやら察しも良いようだ。視線を逸らさず見つめ返す。ふと男が別の方向に視線を逸したのを見て、ロボもそちらを向く。誰かいるようだが──

(よし、行ったな。ここはオレも動き出す──)

 ロボが立ち上がったのと同じタイミングで、先程男が見ていた方向から、こちらを見つめる少年がたちあがった。年齢は、ロボよりは年上か。だがどのみち小学生だろう。それよりもこのタイミングで、こちらを見ながら立ち上がった。これは1つの判断基準となる。
 ロボは視線を逸らさぬまま歩み寄ると、少年も歩いてきた。中間地点のシートで向かい合うと、ロボは首輪をトントンと叩き、口の前で指を立てに立てる。少年はわずかに目を見開くと頷き、持っていたタブレットに文字を打った。

『このゲームから脱出する気はあるか?』

 フン、と鼻を鳴らすと、ロボはスマホを取り出して素早くタップした。

『当たり前だ。』

 2人の視線が重なる。それだけで互いにこの狂ったゲームをぶち壊そうとしていることは十分に伝わった。

『ロボ オレのユーザーネームだ』
『ライ そう呼ばれてる』
『このゲームの主催者に思い当たるヤツがいる』
『オレもだ』

 隣のシートに座ると、ロボはライとデジタルな筆談を始めた。互いがもたらす情報に驚きながらも、その指は素早く動き続ける。

『リドルズか 箝口令があったはずだが、お前ハッカーか?』
『ハッキングはできるけど、リドルズなんてヤツは知らない ギロンパのギルティゲームの参加者じゃないのか?』
『いや 『Qube』ってアプリゲーのスペシャルステージで命がけでクイズやってた』
『小学生百人集められて 命がけのゲームやらされた』

 ロボとライは、お互いの画面を見て、その後相手の顔を見て、またお互いの画面を見た。
 もし彼らがスペシャルステージを、ギルティゲームを経験してなければ、相手の言うことを信用しなかっただろう。アプリゲーのユーザーにデスゲームさせたり小学生にデスゲームさせたり、そんなことが現実で起こるとは到底思えないのだ。そしてその到底思えないことを経験したために、相手の言うことが嘘ではないと信じられる。

『OK ならこの首輪や飛行機についてもわかるか?』
『首輪はギルティゲームで使われたのと同じだ 中に人間をカチコチにする毒が入ってる 飛行機や黒い雲についてはわからない』
『床に落ちてる武器は』
『ギロンパなら用意すると思う、でもアイツならゲームをしかけてくるから、違うかもしれない』
『そっちもゲームさせられたのか いくつかステージがあるってやつだろ』
『うん』

 どうやらデスゲームの主催者というのは考えることが同じらしい。わかってはいたが、自分たちで遊ぶ気だと実感するとやはり腹が立ってくる。
 それから話し合った末、2人は飛行機のコックピットを目指すことにした。お互いの身の上を考えると、話せば長くなる確信がある。それよりまずは、この飛行機について調べておこうと歩き出したのは、さっき通り過ぎた市松模様の羽織の少年が先頭へ向けてまた早足で向かっていたからだ。

「よっ、また会ったね。そっちの君たちもね。」

 ──そして場面は、コックピットに通じる扉の前でカカシが考えに耽っていたところへ戻る。


「──それじゃあ、皆さんは別の世界の人……ていうことですか?」

 緑と黒の市松模様の羽織の少年、竈門炭治郎は、よくわかっていないという顔つきでそう言った。顔の横にはてなマークが飛んでいるような、キョトンとした顔である。
 ロボ達4人がそれぞれ別の世界の人間だと気づくのに時間はほとんどかからなかった。きっかけはカカシと炭治郎が飛行機というものを知らなかったためである。2人とも空を飛ぶものがあるという概念自体はあるのだが、それが人を、ましてやいくつもの部屋を持つ屋敷のような物に何十人も乗せて飛ぶというのは発想の埒外にあった。加えてカカシがライの持つノートパソコンに気づいたのも大きい。忍界にノートパソコンが実用化されるのはあと15年はかかる。カカシの知るパソコンというのは、コンセントに繋いで大きな箱とモニターが必要なものだ。そして時空間忍術の知識とライを襲ったギロンパの未来から来たロボットという話で、4人が何らかの異空間にそれぞれの世界から囚われた、という結論に達した。

「いわゆるパラレルワールドってやつだな。」
「パラソル……?」
「パラレルワールドだっ、とにかく別の世界ってことだ、信じられないけどな……」

 ロボは苦々しく言うとポケットからハンカチを取り出した。この4人の中で一番その仮説を受け入れられていないのは彼だ。忍術も血鬼術も知らなければ実際にギロンパと相対したわけでもない彼からすると、10万人いる遊園地に爆弾しかけてられてデスゲームさせられた自分よりもっと非現実的な境遇など考えるだけで頭が痛くなってくる。そしてそんな時に、良くないことが追い打ちをかけるものだ。
 アラームが鳴り響く、突如として天井から何かが一斉に落ちてきて、飛行機の中に悲鳴が木霊する。

「うわああっ!」「イテッ!」

 悲鳴を上げるロボとライが、それぞれカカシと炭治郎に押し倒される。クナイを、日輪刀を振るい、落ちてきたものを迎撃する。はらりと落ちたものがライの目の前に来て。それが酸素マスクの切れ端だとわかると呟いた。

「……火事か?」


「うわあああっ!」

 突如として顔の前に何かが落ちてくる。眼鏡にどうひっかかったのか持って行かれて、菅田将暉似の少年志村新八は慌てて床に手を伸ばした。
 目覚めてから必死に現実逃避すること十数分、これは夢だと己に言い聞かせて目を閉じていたが、ついにそうも言ってられなくなった。飛行機の中にはなにかアラームが鳴り響き、眼鏡をかけてみれば酸素マスクとおもしき物が天井から伸びていた。どう見ても非常事態である。
 逃げなければ、そう思うも、どこに逃げれば? それがわからない。現実逃避をしていたためにこの飛行機について何もわからない新八にできることなど、いつの間にか生まれた後ろへと走る人の流れに着いていくことだけだった。

「みんな落ち着いて! 押さない駆けない走らない!」

 その先頭で声を上げている青年がいる。年は新八より5つか6つほど上といったところか。こんな状況でも冷静に行動しているところを見るにこの人に着いていけば大丈夫そうだと新八は後に続いた。
 なお、その男松野チョロ松が機体の後ろに誘導していることになんの根拠もない。ただなんとなく後ろに行く流れができていたから落ち着こうと呼びかけただけで、本人が後ろへと逃げているせいで皆ぞろぞろと着いて行っているだけである。
 そんなことはまるで知らない新八は、やけに子供が多いなと思いながらも、思ったより疎らな乗客のためそれほどの苦労も無く最後尾にまで直ぐに到達した。そこでチラリと見えた吉沢亮似の青年を目ざとく見つけて、新八は声を上げた。

「沖田さん!」
「ん、なんでえ、万事屋のメガネじゃねえか。こんなとこで何してんだ。」

 沖田と呼ばれた新八より少し年上の青年が、眠そうな目を開いて言う。沖田総悟。真選組一番隊隊長にして幕府でも指折りの剣客である。
 見れば、沖田の周りには人だかりができていた。さすが真選組だけあってこの場でもリーダーシップを発揮しているのだろう。新八が尋ねると「警報鳴らした犯人を捕まえたんでさぁ」との答え。この短時間にそこまでやったのかと近づくとそこにいたのは、沖田と同じ黒い制服に身を包んだ柳楽優弥似の男であった。

「いや土方さんじゃねえかっ!! アンタ何してんだあっ!!」
「コイツが煙草に火を点けたら火災報知器が鳴ってこのザマってわけだ。」

 周囲を半円に子供達に取り囲まれながら正座する男、土方十四郎(27)。真選組の鬼の副長がそこにいた。

「普段の癖で寝起きの一服しようとしたら火災報知器が鳴ってだな。」
「鳴ってだなじゃないですよどうすんですかこれ!」
「本当に申し訳無い。」

 まさか新八の知る中では数少ないまとも側の人間のやらかしである。なんか周りの子供達からの視線も痛い。あのニコ厨の知り合いかよ、ダッセェメガネしやがってという声が聞こえてきた気がした。

「ていうか沖田さん達も巻き込まれてたんですね。そうだ、姉さんや銀さんと神楽ちゃん見ませんでしたか?」
「アイツらならこんな騒ぎになったら首突っ込んでくんだろ。近藤さんもいないみてえだし、俺ら2人だけみたいだな。」
「いやナチュラルに土方さんをハブらないでくださいよ。」
「えーっと、これはどういうことかな。」
「それがあの人たちの知り合いが煙草吸ったらしくて。」
「ああ僕まで風評被害が。」

 沖田と話している間も、後ろの方で銀髪の男性とさっき呼びかけていた男性が話しているのが聞こえてくる。やはり完全に土方のお仲間だと思われているようだ。一応殺し合いの場でこの状況はなかなかに苦しいものがある。
 何事かと確認しに来たカカシと彼に説明するチョロ松を見ながら、新八は知人の無事を祈る他にできることは無かった。


「えーっと、これはどういうことかな。」
「それがあの人たちの知り合いが煙草吸ったらしくて。」
「なるほどそういうことでしたか。知世さん、カメラは回してますか?」
「バッチリですわ。」

 男たちが話しているのを小耳に挟んでようやく自体が飲み込めたと 、渡辺イオリは傍らの大道寺知世に向いて手のひらを手でポンと叩いた。問いかけてきた銀髪の方は、通路をうろついていたので印象に残っている。イオリは彼らを撮影する知世を見て一人頷いた。
 きっと良い相手と協力関係を築けたのだと思う。物怖じしないように見えるイオリだが、この殺し合いの場で最初に声をかけてきたのが知世で良かったとホッとしている。少なくとも飛行機の中でタバコを吸うことは無い。

「録画お願いします。」

 信用できる人間というのは重要だ。能力的にも人柄的にも、背中を任せられることの意義は大きい。イオリはこの殺し合いからの脱出を図るためにまず問題となる協力者がこんなにも簡単に得られるとは思いもよらなかった。
 騒ぎについては任せると、イオリは機内の前方を目指した。地球外生命体と戦うために軍に所属するイオリだが、さすがに航空機の知識など無い。基礎的な物はわかっているが、そもそも旅客機はプロのパイロットであっても機種ごとに免許が必要になるほど高度なものだ。
 だがそれゆえに、イオリには確信があった。この航空機にはパイロットないし高度な自動航行装置が存在すると。

「あ、イオリさん!」
「どうも歩美ちゃん、異常はありませんでしたか?」

 そしてもう1人の同行者、吉田歩美と機内の途中で合流すると、2人で前方へと歩く。乗客数を数えていた歩美が調べたところによると、この航空機の乗客は60名。そのうちイオリのような小学校高学年から中学生ほどの子供が多数のようだ。
 そして内部には爆発物を含む多数の武器が無造作に床に放置されている。即ち、戦闘になれば容易に墜落し全滅する状況にある。60名の中に数人でも、そしておそらく主催者がわざとそういう人選をした数人は、そのことをわからない人種がいる。
 イオリがしようとしているのは、そういった人間の暴走が起きるより早くコックピットを制圧することだ。十中八九、コックピット周辺は突入が不可能なようになっているだろうが、そこはイオリの知識を活かせば機体を墜落させることなく活路を開ける。というか開けないと死ぬのでなんとかする。そして突入後パイロットがいれば拘束、いない場合は自動航行装置を操作し機体を降ろす。最新の物ならばパイロットが何もせずに着陸までやってくれる。主催者がそんな都合の良い状態で飛ばしてくれているかはわからないが、やるしかない。

「それが……」
「おや? 刀を抜いて? それを?」

 ──漆ノ型、『雫波紋突き』

 コックピットへのドアが見える位置まで来て気づく。さっき話していた銀髪の男性のように、通路を往復していた帯刀した学ランの少年がいた。否、それだけではない。遠巻きに子供が囲む中で抜刀すると、目にも止まらぬ突きを放った。
 大きな破壊音が耳を圧する。横の歩美が上げた悲鳴もろくに聞こえないほどの金属音は、慣れていなければ辛いだろう。そんなふうに思いながら、イオリは少年の行動の意味を推察する。古いドアならいざ知らず、現代の航空機はセキュリュティも万全だと聞いている。たしかに凄まじい剣の腕だが、だとしても人間業でこじ開けられるものではない。イオリのその考えは、ゆっくりと開かれたドアにより否定された。

「おお。」
「あの人たちが開けようとしてて。」

 感嘆の声を思わず上げる。なるほど、常人離れした実力の持ち主のようだ。敵に回せば命は無いだろう。あるいは主催者側がわざと突入しやすいように作っていたか。その可能性を考えていると、「おっ開いてんじゃん」という少年らしき呟きが後ろから聞こえてきて、2人で振り向いた先には、こちらも二人組の少年たちがいた。
 互いに、相手の姿を素早く観察して瞳が交わる。値踏みするような態度を隠しもしない少年に、特段思うところはない。イオリも同類であるし、自分の服装が奇異なのは理解している。軍に所属するイオリの制服は見慣れないものだろう。強いて気になる点を言えば、話しかけてきた方ではないヘッドホンをした少年がやたら具合悪そうなことか。

「俺は峰岸、こっちはケイ。アンタ、その格好もしかして、デスゲームの経験者か?」
「デスゲーム?」

 無言で小首を傾げたイオリを代弁するように、歩美が疑問形の声を出す。峰岸と名乗った知世と同い年ほどに見える少年は、そんな歩美をチラリと見ると、次いでケイと呼ばれたイオリと同い年ほどに見える少年とアイコンタクトした。フラついていて片手をシートに置いてもたれかかるように立っているが、その目に光がある。

「あるいは、天才と呼ばれたり、機械に強かったりしないか?」
「そうですねぇ、否定はしませんが、そんなことをどうして聞きたいのか教えてもらいたいですね。」
「……あそこの奴ら、『パソコンに強い』奴が何人もいるんだ、それだけじゃない、天才って呼ばれる奴ばっかいる。60人ぐらいしかいないのに、学校出一番頭が良い奴が異様に多いんだ。」

 パソコンに強い、という部分を首輪を指先で叩きながら言う峰岸に、ふうむ、と呟きながらイオリは顎に指をやった。
 なるほど言いたいことはわかる。イオリも感じていたのだが、この航空機に乗っている子供はやけに落ち着いているというか大人っぽいというか、普通とは違うと感じていた。それは小学1年生とは思えないほど冷静に動いている歩美だけの話では無い。もしこれが一般的な小学生が多ければ、多かれ少なかれ機内はパニックになっていたはずだ。だがタバコの騒ぎまで皆知り合いを探したり情報交換をしたりしてはいるが、武器を持って殺し合おうという人間が一人もいない。これは殺し合いという状況下では尚の事異様である。
 ことこうなっては、隠すよりも話したほうが良いとイオリは思った。嘘やごまかしは通じない人間が多いのだろう、ならとっとと身分を明かしたほうがいい。

「それでは言いますけど、守秘義務があるので話せることだけ話します。私は地球防衛軍の者です。所属は日本支部第3師団。我々は『黒喰』と呼ばれる存在と戦うために存在しています。今回のこの事態も『黒喰』の仕業の可能性を考えていたのですが、どうやら違うかもしれませんね。」
「地球防衛、なんだって?」
「ようするに、エイリアンと戦う組織の一員です。」
「それって、公安とかFBIみたいな?」
「おお、歩美さんよくご存知ですね。」
「いや待ておかしいだろ、どう見たって俺とそんなに変わらな──」

 驚きの声を上げる歩美と、困惑の声を上げる峰岸。2人の間をスっと入り、今まで無言を貫いていた具合の悪そうな少年が前に出た。たしかケイと呼ばれていたな、とイオリが思うと、一言断ってからイオリに更に近づく。その中性的な顔が近づいてきて、イオリの制服に触れた。

「おい何してる。」
「……防弾繊維?」
「まあかなり頑丈な素材とだけ言っておきましょう。」
「は? 待て、俺も触る。」

 そう言うと、峰岸はケイと反対側で服を触る。その目が驚いたように丸くなると、「コスプレじゃない……なんだこの頑丈さ」と手を離す。代わりに触りだした歩美に譲るように後ずさると、納得したのか「疑って悪かった」と会釈した。

「軍人か、なら良かった。」
「おや?」

 今度は聞き慣れない少年の声が聞こえてきてイオリは視線を外す。いつの間にか、さっきコックピットのドアの周りに集まっていた子供達がイオリを見ていた。そのドアはというと今はしっかりと開いている。どうやら向こうは一段落したらしい、そんな風に思っていると、一団の中にいる首からヘッドホンをかけた少年がさっきの声で言った。またヘッドホンかと思うが、そんな気は知らずに少年は話を続けた。

「頼みたいことがある、ここにいる誰にもできないんだ。」

 そう言われ案内された先は、コックピット。狭い通路の先では、銀髪の男と同じように通路をうろついていた特徴的な羽織の少年が、途方に暮れたような顔で待っている。柄にも無く嫌な予感を感じつつ足を踏み入れたコックピットに、彼以外の人間はいない。ただ操縦桿が微かに自動で動くだけだった。

「飛行機操縦できないか?」
「無理ですごめんなさい。」
「無理かぁ……」

 なるほど、自動航行装置か。さあこれをイジって無事に着陸させるのは一苦労どころの騒ぎじゃないと、イオリは表情を変えずに覚悟を決めた。


 宮沢りえ似の美少女、中山ひとみは中学2年生にしては高い身長を猫背に丸めて、心配そうに仲間の堀場久美子の後ろで刀を胸に抱いていた。さしもの彼女も警察やヤクザと間接的に戦ったことはあっても、直接自分が誘拐された経験は無い。それでも冷静にこれまでの数十分を過ごしては来たのは、仲間の久美子が側にいたためである。酸素マスクが落ちてこようと、機体の前の方から謎の金属音が聞こえてこようとも、なんとか平静を保てていた。
 だが、ストレスというものは増えはしても減りはしない。次第に喉の渇きを覚えて、周りの人間も同じ様子だったので、飲食物を漁りに行った時に彼女たちは見つけたのだ。
 上半身に軽く鎧を身に着け、帯刀し、クロスボウまで持つ外人の少女を。

「動くんじゃないよ、武器捨てな。」
「■■■、■■■。」
「……ひとみ、英語得意だったよね?」
「たぶん英語じゃないと思うんだけど。」

 同じように刀を手に持ち少女と向かい合う久美子に振られるが、そもそも少女、パステル・G・キングは異世界人のため言葉が通じるはずがない。ひとみたちと同じように刃は抜かず、それでも鞘を持って鈍器として使えるようにして構える少女と、どう話せばいいのか?
 スケバン扱いされがちな久美子の腕っぷしはひとみも知るところだが、パステルの構え方は明らかに何か武術をやっている人間のそれだ。困惑した顔つきの割に、剣を持ち慣れているのが伝わってくる。その証拠に、既に疲れ始めているひとみと違って、久美子のように油断無く構え続けられている。よく見ると、肩の鎧なども単なるコスプレとは違う。様々な傷や汚れがついているようで、どことなく生活感のようなものを感じる。というかあんな鎧を着慣れている時点で普通ではない。

「どうしたんだ堀場、何があったんだ。」
「気をつけな、そいついつの間にか武器を用意してた。」

 ガラガラと音がしたと思ったら、少年の声が聞こえてくる。呼びかけた美少年、リオンに声だけで答えると、久美子は視線をパステルから外さずに刀を構え直した。
 この場で出会った少年リオンは、1つ違いということもあって、元からの知り合い以外では初の脱出への協力者だ。ひとみたちが漁りに行った時にも3人で動いていたが、行きしなで久美子がパステルを見つけたため、ひとみが気を利かして1人で向かわせたという経緯がある。その理由はもちろん、このような状況になるためである。
 少し話してわかったが、リオンは普通の──と言っても、久美子たちの普通の基準がだいぶ緩いのだが──中学生だ。荒事には、まして武器を持ってとなれば戦力として期待できない。なにより抵抗するだろう。最悪の場合、久美子がパステルを負傷させる──あるいはそれ以上のことをするのを。

「落ち着けよ、まずはどっちも武器を、おい。」
「やめとこうリオンさん、ここは待とう。」
「長嶋……」

 誰?とひとみ達は思うが、大方同じように漁りに行った時にでも知り合ったのだろうと思って、変わらずパステルを警戒し続ける。
 既にこの機内には大小合わせて多数のグループが生まれている。先頭の方ではコックピットをこじ開けようとしている集団がいるらしいしして後方ではタバコを吸ったバカとその知り合いたちがたむろしているらしい。いちいち知らない人間がその場にいたところで気に留めてなどいられない。そもそも今この空間にいる大多数は名前どころか顔すら知らない人間もいるのだ。
 リオンは悔しそうな声を上げると下がったようだ。そのことにひとみは安堵する。最悪の場合、近くにいられたら危険だと、久美子のズボンに挟まれシャツで隠されたピストルを意識する。ひとみはただ単に恐怖や通路の狭さから久美子の後ろにいるわけではない。目ざとく手に入れたそれを久美子に変わって使えるように、久美子に変わってパステルを銃撃できるようにするためだ。

「久美子、やれるよ。」

 声が震えないように気をつけながら、ひとみは後ろから久美子の背中に触れた。わずかに頷くと、久美子は1歩前進し、パステルににじり寄る。彼女の後ろは窓、わずかにも下がることはできない。状況的には地の利を得ている久美子たちだが、しかし踏み込む気は無い。パステルが武器を捨てれば、それで手打ちにする気ではある。だが相手の出方次第では血を見ざるを得ないかもしれない。
 握り直した刀の鞘が滑る。いつの間にか手汗をかいていることに気づいて、ひとみは呼吸を意識して治した。呼吸は運動の基本だ、水泳で普段からそのことをわかっているが、こと刃傷沙汰を前にすると、普段と同じ調子というわけにはいかない。
 はたして、これでいいのか。そう思わないわけではない。むしろ今も悩んではいる。だが迷って久美子が傷つけられるようなことを認める気はないのも確かだった。

「うわこれはヤバいね。」
「頼むぞ、なんとか通訳してくれ。」

 そのまま何分睨み合っていたのか、あるいはほんの数十秒のことだったのか。また見知らぬ少年の声が聞こえて、次いでリオンの声が聞こえてきた。通訳、という言葉が耳に止まり、同時に足音が聞こえてくる。「任せて」と言うと、ひとみは後ろを見た。
 そこにいたのは、モジャモジャ頭の少女だった。何をどうすればこんなにモジャモジャになれるのかと思うほどのモジャモジャっぷりの髪が最初に目に入る。というのも、その少女が明らかにひとみより小さかったからだ。首をひねって覗き込めば、その顔は人種がいまいちわからない、なんとも言えない顔立ちの、黒い瞳と目があった。

「ひとみ?」
「うん、うーん、ちょっと下がろう。」

 ひとみの言葉に、少し間をおいて「わかったよ」と返ってくる。久美子は慎重に後ずさると、そのまま少女とパステル両方を視界に収められるところまで下がった。
 少女はトコトコとひとみがいたあたりまでパステルに近づいた。そしてそのままパステルを見上げる。当のパステルはというと、困惑した顔で刀を腰に差し直して、久美子と少女を何度か見返したあと、膝を軽くおって少女と視線を合わせた。

「■■■、■■?」
「何語?」
「わからない。」
「リオンお前いつの間に。」
「睨み合ってるときにな。」

 小言を思いの外近くから返され久美子が睨む。間近で睨み返すリオンに、そういえば戻ってきてたんだっけとひとみが視線を巡らすと、さっき長嶋と呼ばれた少年が、ひとみたちと同い年ぐらいの少年と話していた。その少年も、じっと少女に視線を注いでいる。その意味はわからないが、ひとみは彼も警戒しつつ場の動きを見守った。
 それから5分たち、10分たち、15分たち。
 30分が過ぎた頃には、ひとみ達当事者以外は付近から離れていた。パステルが少女に話し、それをわかっているのかいないのか、少女はじっと聞いている。そんな光景が続き聞こえてくるのは知らない言葉となれば、関心を持ち続けるのが退屈になってくる。
 そして誰かがあくびをした頃。
 パステルは少女と握手をした。

「なんか上手くいったみたいだね。」

 確か長嶋とか言った少年が眼鏡を吹きながら言う。傍らの少女を連れてきた少年も機内食を食べながら頷いていた。

「なんか私たちだけ緊張しっぱなしだったね。」

 ため息まじりにそう言うと、久美子も苦笑する。これまで何分も真剣に臨戦態勢を取っていたぶん脱力もひとしおだ。それにしてもどうしてあの少女はこう上手く場を収められたのだろう、さっきまで一触即発だったのに。ひとみはそう思いながら、握手を交わすパステルと久美子を見ていた。
 その少女の名前がモモということを知るのは、それからすぐのことである。


「賛成21反対31棄権白票9だ。」

 かれこれ殺し合いが始まって4時間ほどだろうか。
 松野チョロ松は緊張した面持ちでそう告げた。その理由は、大勢の子供達に頼られるという普段ではまず得られない承認欲求からだけではない。やけに賢い子供が多いことも、今は重要では無い。自動航行装置で着陸する案が、否決されたからだ。

「ちょっと待って棄権多くないか。」
「しょうがないじゃん外人とか犬とかいるんだし。」
「い、犬?」
「ちなみに犬は賛成だったよ。」
「犬でも投票してんのに他の9人なにしてんだよ。」

 峰岸のツッコミに答えるものはいない。通路の先から見える無人のコックピットで、静かに揺れる操縦桿を誰ともなく皆眺めていた。
 三人寄れば文殊の知恵、やけにハッカーなどが多かったために、この航空機の掌握は早く終わるかと思いきや、言語の壁でこれまでの時間がかかっていた。操縦マニュアルに計器、プログラミングまで未知の記号もとい言語で書かれているのだ。ライはじめ何人かのハッキンググループは、この段階でお手上げになった。深刻な飛行機酔いでハッキンググループから外れていたケイがキーボードの配置から文字の類似性に気づき、ロボとカカシで解読表を作り、そこから使われやすいとおもしき漢字を一つ一つ解読するのに100分、そこからハッキングし直して機体を掌握し、自動航行装置で着陸が理論上可能だとわかり、さてこのまま着陸していいかを乗客に問うたらこれだけ時間がかかった挙句否決である。

「だってあと10時間ぐらい飛び続けられるんでしょ? これまでちゃんと飛んでるんから焦らなくてもいいんじゃないかな。」
「賛成です。燃料が多いということはそれだけ着陸が難しくなりますし火災が起きる可能性も高まります。」

 この数時間の間様々なグループに顔を出している長嶋にイオリは同意する。ちなみに長嶋の下の名前がケンイチロウだということも、彼が願いのために命がけのゲームに参加していたことも知る人間はほとんどいない。60名という数は赤の他人と親交を深めるにはあまりにも膨大で、加えて長嶋本人が名前など気にせずフランクに話すが専門的な知識があるわけではないため、「俺は知らないけど誰かが詳しく知ってる知り合いだろう」と皆が流していた。
 このようなことは長嶋に限った話では無い。チョロ松に突っ込んだ峰岸も、彼の名前が遼太だと知っているのはカカシはじめただの数人のみだ。頭が良いとはいえ、やはりこの場で役立つような専門的な知識があるわけでもない彼に関心を払う人間はほとんどいない。
 元々あまり他人に興味がないか、あるいはそれどころではないか、理由は様々だが、この機内の数十名の人間の交友関係はほとんどの場合10名を超えることはない。その問題がこの投票結果にも反映されていた。
 極めて簡単なことだ──顔どころか名前も知らない上に会ったこともない子供に飛行機を操縦させたくないのだ。

「おーい、機内食持ってきたよ。アンタたち食べてないでしょ。」
「あ、どうも中山、じゃなかった、堀場さん?」
「堀場久美子、覚えといて。」

 長嶋が呼び間違えたが、この場にいる大多数は、中山だろうと堀場だろうとよくわかっていない。根本的に、知らない人間が多すぎる。知らない人間が何かしていても、自分に迷惑をかけないのなら関心は持たない。その人の心が事態を難しくしている。飛行機を軟着陸させたいのに50人を超える顔と名前など数時間で覚えていられないのだ。

(これは思ったより厄介だね……できるなら顔合わせしときたいが……)

 元は勝手に着陸させたとなればパニックに陥るだろうし、少ないがこの天才児たちの中にも反対派がいたので乗客全員で多数決を取ることにしたが、失敗だったかもしれない。カカシは食べながら言い争い、あるいはキーボードを叩く子供達を見ながらどうしたものかと悩む。
 彼の悩みはそれから2時間後、第一回放送が始まるまで続いた。


「上田先生が、死んだ?」

 首輪から、そしてシートのモニターから、その放送は始まった。
 ツノウサギ、最初の場面で殺し合えと告げたマスコットのようなその声が、機内にくまなく響く。脱落者の名前が読み上げられてすぐに、警視庁の警部補、矢部謙三は口にビールの泡つけたまま大声で呟いた。

「そんなわけあるか、飛行機ん中におらんかったわ。そもそもどんだけ名前呼ばれんねん。」
「矢部さん酔ってます?」
「そらお前酔うぐらい飲まなやってられんわこっち非番やのにあんな働いたんやぞ!」

 飛行機の中ということもあり酔が回りやすいのだろう。既に2杯目のビールを口にしつつ、酒臭い息で堀内にくだを巻く。それを異能力で跳ね返され「酒臭いわっ!」というと、ツマミにしている乾きものを頬張った。
 これまでの間矢部は警察ということもあり、機内の武器を1か所に集める陣頭指揮をとっていた。殺人の手段が無ければ殺し合いは起きないということだが、何かの拍子に誘爆や誤爆がする恐れもあった。問題はどこに置くかだが、機内全ての武器を1か所に集めるのも大爆発のリスクがありそうなので、数ヶ所に分けて纏めている。なお、真選組やパステルの刀剣も公平に没収され、それぞれの近くの武器の山の一番上に置かれていた。
 そのパステルはと言うと、放送を頭から要約してメモにとっていた。パステルのクラスはマッパー兼詩人、ゲームのようなオートマッピングがない冒険では彼女がダンジョンのルートを記録し、また金銭管理なども行い果ては冒険譚を出版して小銭を稼いでいる都合、物事を記録することの重要さは理解している。家計簿ですらその日暮しの冒険者にとっては重要な情報源なのだ。慣れないボールペンで速記などできるはずもないが、重要そうな部分は素早くメモに残す。

「小島……? エロエースが……」

 その横で、同じように読み上げられた名前のメモを必死にとっていた麻倉は、聞こえてきたクラスメイトの名前にボールペンを止めた。これまでに20人を超える名前が呼ばれている。死者どころか戦闘すらほぼ起きていない機内ではありえないその情報に違和感を抱きながらも動かしていた手は、自分の知る名前が出てきたことに対応できなかった。
 死者の名前は更に読み上げられていく。その中には戦国武将の名前や、果てはチョロ松の名前もあった。自分の名前を呼ばれた本人は、麻倉から前の方のシートで「え、僕ぅ!?」と騒いでいる。続けてノルという名前が呼ばれた時、同じようにメモをとっていたパステルの手が一瞬止まった。
 最終的に呼ばれた名前は81名。中には人の名前とは思えないものも含むどころかヒグマというシンプルな動物の名前まであるが、それだけの人数が亡くなったという情報は、その真贋がわからずとも機内に暗い影を落とした。

「ノルが死んだ……? そんなどうして……」

 矢部たち男性陣が話している脇で、パステルは放送が終わってなお手を止めずにメモを書き続ける。彼女もまた理解できないのだ、突然仲間の死を告げられたことが。ましてやその言葉が通じる者はこの機内には1人もいない。ようやく自分の知る言語が聞こえたと思ったら、このデスゲームのゲームマスターの言葉とは。
 頭を手で覆いたくなる思いだが、書き続けなければとなんとな腕を動かす。悩むのは後だ、後でできる、今はできることを精一杯やる。そう思っても視界が滲む。
 どうしてノルが死ぬのか。パステルのパーティーの中でも一際大きく力持ちで、しかし誰よりも心優しいあの巨人のハーフに、パステルの思いは尽きない。涙が溢れて落ちそうになったとき、その視界の端に黒いたわしのようなものが見えた。

「モモ……」

 パステルを見つめる黒い瞳に、パステルの泣き顔が映る。瞳の中の自分と目があって、パステルはモモを抱きしめていた。
 モモとは言葉は通じないながらこの機内で最初に心を通じあえた。ただ落ち着いて話を聞いてくれているだけなのに、互いの言葉もわからないのに、それがどけだけ幸運なことか。
 くしゃりと頭を撫でると、鳥の巣のようなそれが指に絡まる。その感触に、ルーミィと出会った時のことを思い出す。思えば、パステルが両親を失い、途方に暮れていた時に出会ったのが、同じようにひとりぼっちだったルーミィだ。それからトラップが、クレイが、キットンが、そしてノルが数奇な運命に導かれるように出会い、皆で冒険者になった。パステルだけ一度筆記で落ちてる? なんのこったよ。
 そんな昔のことを思い出していると、自然とパステルの心に勇気が戻ってきた。そうだ、ノルだけでない、パーティーのメンバーもどこかで殺し合いをさせられているかもしれない。特にルーミィは心配だ。というか幼児にまで殺し合いをさせようとはどういった了見なのか。
 そしてパステルが思いを新たにしている頃、麻倉もまた一つの決意をしていた。この機内には麻倉の知人は一人もいない。だからその点は安堵していた。油断していたとも言っていい。だがエロエースの死を告げられて考えを変えた。もし、あんな見え透いた嘘が本当なのだとしたら。もし、本当にどこかで殺し合わされ、そして命を落としたのだとしたら。

「だいたい80人も名前呼ばれるっておかしいやろここにおんの60人やろ。」
「いや……そいつはズレた考えかもしれない。」
「ズレ!?」

 咄嗟にカツラを抑えてしゃがみこむ矢部は無視して麻倉は続ける。

「もしかして、この飛行機以外にも殺し合いしてるんじゃないか?」
「同じ飛行機が他にも飛んでるってこと?」
「ああ、それならあんなに死んでるのも、飛行機ごと落ちたからで説明できる。」

 このグループでは唯一知った名前が呼ばれなかった堀内は、うーんと腕を組んで考え込む。彼としては戦国武将の名前や同一人物の名前が呼ばれてるのでガセだと疑ってかかったのだが、麻倉にそう言われるとなんとなく否定しがたいものを感じた。無論それでさっきの放送を信じるようなことはないが、飛行機が1機だけとは限らないことは納得するところである。
 それに、機内に響き出した泣き声が心に迫るものがある。

「……妹がいるんだ。ちょうどあのぐらいのな。」

 たしか大道寺だったか。カメラを持つ少女と一緒にいた1年生ぐらいの少女が泣きそうになっているのが、前の方のシートで見える。それを見て苦々しく呟いた麻倉の顔には、怒りだけではない険しさを堀内は感じた。

「さっきはみんなで反対に入れようって言った……でも、やっぱりコイツは着陸させるべきなんじゃないか。ここでこうしてたって、そりゃどこに他に巻き込まれたやつがいるのかわからないけど、でも探しにいけないだろ。」
「それは……そうだけど。」
「アホぬかせそんなん上手くいくと思ってんのか着陸させようとしてんの小学生やぞ。これじゃ自動操縦やなくて児童操縦やがな。」
「堀内さん、頼む。」

 頭を下げる麻倉と頭を見えないようにしている矢部。2人を見比べて堀内は逡巡する。
 再び自動航行装置による着陸の是非を問う投票が始まったのは、そんな時だった。


「賛成20、反対19、白紙と棄権は22……よって、着陸することになりました。」

 炭治郎が読み上げた後皆が見せた投票結果へのリアクションはハッキリと二分されていた。コックピット周辺のハッキングや文字の解読、首輪の解除に取り掛かっていたメンバーの大半が歓迎の声や安堵のため息を、そしてそのメンバーの一部から異議の声が上がった。

「いやいや待ってよ、着陸に賛成してるの3分の1もいないんだけど、それに票数も減ってるし。こんなのアリ?」
「賛成が反対上回ったんだから着陸すんのは当たり前だろ。」
「それに一番多いの棄権とかなんだけど。」

 反対派の長嶋と賛成派の峰岸の人から名前覚えられてない2人が口論になる。同じような議論はこのグループ内だけでも何ヶ所も発生していた。

(参ったね、こりゃ。)

 多数決は失敗だったか、カカシはそう思わざるを得ない。パニックを避けるために着陸を納得させようとしてのものだったが、最悪の結果になるかもしれなかった。このような票の割れ方をするとはさすがのカカシも予想だにできなかったのだ。カカシ本人は反対から賛成に転じた口なのだが、参加者の多くは賛成反対問わず白票などを投じて様子を見たり考える時間を求めたりしていた。
 とはいえ、なら勝手に着陸させていればパニックになっていたことは想像に難くない。妙案なき問題に頭を悩ませるが、カカシの耳はそれより厄介な問題を捉えていた。

「炭治郎くん、ここ頼めるかな。」
「はい、でもどちらに?」
「他の子供達を抑えてくる。」

 そう言い後方へと向かうカカシ、足早く往くと客室の奥のドアの所で人垣ができていた。

「お前こんな投票無効やろ! ノーカン! ノーカン!」
「でも多数決で決まったんだし……」

 矢部とチョロ松が、それぞれ数名の子供を引き連れて口論している。着陸賛成派と反対派の小競り合いがさっそく起きていた。どうやら結果を伝えに行ったチョロ松が矢面に立つことになったようで、今のところ武器こそ手に持っていないが威勢の良い矢部に勢いづいたのか反対派がどんどんヒートアップしつつあるようだ。カカシはすぐに割って入ろうとした。予想よりも遥かに早く混乱が対立という形に変わっている。今この場で収めなければ騒動に収拾をつけられなくなる──そう思い足を一歩踏み出して、機体が今までと違う動きをした。

「おおなんや、揺れたぞ。」
(これはまさか。)

 体への重力のかかり方が変わる。感じた浮遊感は焦燥感へと変わってカカシの足を取って返させた。コックピット近辺では口論が激化していて、その理由は話を聞くまでもなくわかった。
 自動航行装置が着陸を行うように設定されたのだ。

「ライ! お前か勝手に設定イジったの!」
「待てってそもそも多数決で決まっだろ。」
「そうだよ。」

 ここでも2つのグループに分かれ押し問答になりかけ、ハッキングできる子供はそれぞれの目的に沿うように設定の変更合戦を始めた。タイプ音を背景に声を荒らげていくその姿は、つい先程までの落ち着いた様子とはうって変わっている。
 状況は悪化の一途を辿っている。このままではまずい、幸いカカシにはできることはあるが──

(手荒いやり方だがやむを得ない。)
「『はいそこまで。みんな落ち着いて、着陸するんなら用意しないとまずいんじゃないの?』」

 できればこれは避けたかった。魔幻・奈落見の術は対象に凄惨な幻を見せる術。カカシは一同を幻術にはめ、このまま言い争った場合の死を印象づけた。
 子供達が息を呑む。天才ばかりのようだが、さすがに人の死には慣れていないのだろう。ほとんどの子供が露骨に顔色を変えた。ゆえに使いたくなかった。このような脅す形になるのなら、最初から多数決などとらないほうがマシであった。それにこれから着陸するのに着陸の際の怪我を印象づけるのはパニックの下準備をしたようなものだ。

(嫌な予感がする。)

 だが止まるわけにはいかない、賽は投げられた。カカシの手によって着陸を止め飛び続ける道は無くなった。
 各々シートベルトを着けだし着陸へと備える子供達の間を抜けて、カカシは他の反対派へ幻術をかけに向かった。


「飛行機は初めてですか?」

 わけがわからないといった顔で周囲を見渡し、つけたことのないシートベルトを見様見真似でつけようとして上手くいかないパステルに、知世は自分のシートベルトを外すと歩み寄って代わりにつけた。近くのモモにも同様につけると、体にかかるGがまた変わる。
 高度はかなり落ちてきているようだった。はじめに出会ったイオリと話したら、僅差で賛成が反対を上回ってすぐにオートパイロットは着陸に向けて設定を変えられたらしい。イオリも知世も反対に票を入れたので思うところが無いわけでもないが、彼女達に飛行機を操縦することはできない。設定を変えることもできないので、できることと言えば何事もなく着陸できることを祈ることと、何かあった時のために覚悟の準備をしておくことぐらいだ。
 飛行機は怖いぐらいにスムーズに飛び続けている。そこに人の手がどれだけ入っているのかなどわかりようもない。知世は自分が最初に目覚めた席に戻ると、隣に移ってきた歩美のシートベルトがしまっていることを確認して腰を下ろした。

「知世さん……怒ってない?」
「投票のことですか?」
「うん……わたしが賛成に入れなかったら、着陸することにならなかったもん。」

 膝の上で手を握り暗い顔で言う歩美に、知世は手を重ねる。

「それは違いますわ。この飛行機だってずっとは飛び続けられませんもの。いつかは着陸するのに変わりはありません。」
「でも、今着陸しなくても良かったかもしれないよ?」
「たしかにそうですわ、でも、今着陸したほうが良かったかもしれないでしょう?」

 窓ガラスから見える黒い雲から稲光が見え、何度目かわからない雷が機体を襲う、その音と光に歩美の手が強ばるのを感じて、知世は手を握りこんだ。
 着陸まであと10分もないという。雷雲の中を飛び続け幾度も稲妻を受けたこの機体が、無事に着陸できるかなどわからない。オートパイロットを小学生がハッキングして着陸させるという不安しかないやり方なら尚の事だが、しかし飛んでいるだけでも機体が壊れるのではないかと心配になるほど電流が走っていたのもまた事実だ。時間が経てば経つほど不具合が起こる可能性が高まるというのはイオリから聞いた話である。それでも知世が反対に票を入れたのは、イオリから着陸するには燃料が多すぎると聞いていたからだが、本当のところは、知り合いの名前が呼ばれなかったから、かもしれない。歩美のように、同じクラスの友人が死者として呼ばれていれば知世も反対にはせずに白票か、あるいは賛成に入れていただろうと自分でも思う。そしてもし、さくらが呼ばれていたらと思うと……

「知世さん、苦しい。」
「あ……ごめんなさい歩美ちゃん。」
「ううん、大丈夫。」

 歩美に言われてハッと手を離す。自分でも知らないうちに力が入っていたようだ。それに震えている。指が上手く閉じも開きもしてくれない。にっちもさっちも行かずに痙攣したかのようにわななくそれを、今度は歩美の手が包んだ。知世のものより、小さく、暖かいそれは、知世より震えている。
 2人は互いの手を強く、しかし優しく組み合った。そして祈った。どうか、どうか無事に着陸できますようにと。
 そうして機体は雲を抜け、ついに地表が見える高度まで下がる。地面の代わりに見えるのは赤い霧。まるで地獄のようなその光景に、窓際に座る子供からは恐怖の声が上がる。ここはいったいどこなのか、どこに降りられるのか。そんな声に知世と歩美はまた強く手を握り合う。そしてかかるG。体が浮き上がるようなその感覚が一際強くなった。その時。
 一際強い風が吹いた。熱と光、そして音を感じた。知世が見開いた目に、異様な格好の少年が映る。シートにシートベルトで縛り付けられた少年が、中空に浮遊している。そしてゆっくりと、機体に開いた穴から、外へ落ちていく。少年と目が合う。たしか彼の名前は長嶋だったか。投票の結果にイオリと一緒に抗議していたらしい。そんな彼は目があったまま、飛行機から外へと消えていった。

「「キャアアアアアアッ!!」」

 悲鳴が響き渡る。
 着陸寸前、左の翼が捥げた飛行機はバランスを失うかと思われたが、それは意外なことにもそうはならない。その直後、同じように右の翼も捥げたからだ。
 左右両方のエンジンが数秒の間隔もなくほぼ同時に吹き飛んだのだ。両翼を失ったことで完全にバランスを喪失する前に墜落が始まる。それと同時に、機内に次々と穴が開いていった。知世から見て後方左、折れた翼から知世よりはまだ離れている所で、堀内は異能力を全開する。彼の能力はいわゆるサイコキネシスに属す。それで機内を飛び交う金属片などをやり過ごせた。

「うおっなんか当たったぞ!?」
「矢部さん!?」

 一人大きい矢部は頭部に食らったが、何故か謎の金属音を発して破片は弾かれた。不幸中の幸いである。だがそうはいかなかった者もいた。

「ぐあっ! クッソ……!」

 コックピットでの口論から自分が最初にいた座席に戻った峰岸。対ショック姿勢をとっていた彼の背中に猛烈な力と痛みと熱が走った。悪態と共に嘔吐感が生じる。耐えきれず吐いたものは、大量の血液だった。

(ヤバい、ショック症状……)

 前屈みになっていたのが、シートベルトの張力に耐えられずに座席にもたれかかる。なんとか首だけ下を向こうとしたが、動かすだけで目がかすんだ。それどころか急速に色彩が無くなり音も消えていく。それでもなんとか視線を下に向ける。
 太腿に大穴が開いていた。内股が両方の大腿骨が見えるまで大穴が開き、下半身を赤く染めている。流れた血は既に小池を作っていた。
 全身から力が抜けた。ショック症状からだけではない。今の自分の状況を察してだ。背中の痛みは感じたのにこちらは全く感じなかった。つまり、脊椎をやられたのだろう。背中から腹に抜け、太腿を通り過ぎていったのだろう。

(遺書……書いとく……)

 峰岸はそのまま動く事はなかった。

「うわあああやっぱ反対反対反対!!」

 峰岸や他の子供から飛び散った内臓などの体の一部が飛んできてチョロ松は悲鳴を上げながら周囲をあたふたと見渡す。
 その間に飛行機は揚力を失い地面へと叩きつけるように着地した。機体がバウンドし、車輪がパンクする。滑走路を切りつけつつ斜行していくが、それでもなんとか進んでいく。
 次第に減速していく機体だが、それは凄まじい振動となって参加者を襲う。そんな中、一人動く影があった。否、一人ではない。一匹だ。なぜならそれは犬の姿をしているのだから。

「あ、賛成に入れた──」

 犬。とチョロ松が言おうとして、その首が90度上を向く。犬の凄まじい前足の一撃で一発で首を圧し折られたのだ。

「ぐあっ! お前、誰──」

 なおも飛行機は滑走路を征く。更に減速が進み振動も収まっていく中、いち早く動く者たちがいた。
 その一人は拳銃を取りだし、前のシートに座るロボに向かって、シートごと銃撃する。9mm弾といえどほぼ接射による銃撃はシートを貫きロボの背中の皮膚を突破、脾臓・腎臓・大腸・小腸を貫通して腹から飛び出す。突然の凶行に、シートベルトで体を固定しているロボに成すすべはない。首だけなんとか向けるが、その瞳のすぐ前にあったのは銃口だった。
 パアン。
 騒音も落ち着き出す機内にまた銃声が響くと、ロボは脳漿をぶちまけた。

「カカシさん! 大丈夫で、なっ!? 銃声!?」
「ぐっ……俺はいい。行ってくれ。」

 そしてコックピット。
 何かの破片により右目から血を流すカカシを看ようとした炭治郎は、機内から聞こえてきた音を捉えた。慌てて客室へと向かうと、そこは大きく様子が変わっていた。
 左右に穴が開いていた。近くのシートのいくつかは消滅している。中央の列のシートに座っていた人間の多くが負傷していた。一部には頭が吹き飛んでいる人間もいる。そして一番は、犬が猛スピードで壁を蹴って炭治郎に迫ってきていた。
 それは単純な理由だった。殺し合いなのだ、殺しに肯定的な存在も参加者になっている。そんな彼らでも、自分が乗っている飛行機を破壊しかねないとなれば着陸には協力するだろう。そして着陸が何はともあれできそうになったというのであれば、猫を被り続ける道理は無い。むしろ着陸の際の負傷や混乱に乗じればキルスコアを容易に伸ばせる。
 中でも妖怪でその気になれば低空の飛行機を破壊して自分だけ脱出することもできたカザンは──猫を被るならぬ犬を被る必要などもう無い。

「なにっ、一の──」

 迫るカザンに炭治郎は日輪刀を抜き放とうとして、手が空を切る。視界の奥、積まれた武器の山、その上に置かれた日輪刀、殺し合う気はないと率先して置いたそれとの距離は数メートル。
 その数メートルが遠く、カザンの牙が炭治郎の左手を喰いちぎった。距離を取ろうと後退して、1メートルも行かぬうちに機内の壁に背中が当たる。追撃の一発をしゃがんでかわすも、四つ足の相手にそれは悪手。連撃が襲い右目を切り裂かれ、そして。

「グオオオオッ!」
「ダメェッ!」

 そこを金色の犬が、ティンカーベルのような少女が割って入る。睨み合う2匹の犬の間を抜けて炭治郎は日輪刀に走ると、口で鞘を噛み鯉口を切った。
 そしてカザンに斬りかかろうとして、そこに犬と少女が割って入る。

「ダメッ、殺さないで!」

 炭治郎を助けたと思ったら今度はカザンを助け出す少女と犬に僅かに反応が遅れる。彼らを突破し、距離をとったもとい獲物を切り替えたカザンに迫るなか、再び、銃声。

「あの犬だよっ、殺っちゃえ!」
「なにっ!」

 通り過ぎた後ろでは、少女が銃を持って先程の金色の犬を銃撃していた。と同時に、同じように何人かの子供が銃撃する。
 なぜ銃を──隠し持っていた?
 なぜあの犬を──あっちの犬と間違えてる?
 待て、こう考えている間に──奴が襲う!

「うわあっなんで襲ってくるんだあっ!」

 カザンを見る。眼鏡の少年、たしか志村新八だったかに襲いかかっている。肩口に噛みつき、いつ殺されてもおかしくない。
 後ろのもう一匹の方の犬を見る。何人かの子供に連射を受け次々と血飛沫が上がる。「やめてぇ!」と妖精のような少女が悲痛な悲鳴を上げる。
 動けるのは炭治郎だけ、助けられるのはどちらかだけ。

「すみませんっ!」

 炭治郎が選んだのは、人間を助けることだった。
 カザンの元へと駆けると、肩を喰いちぎった彼に刀を振るう。カザンはそれをシートや壁を蹴った立体的な動きでかわすと、ターゲットを別の子供に変える。牙を向き飛びかかるそこに炭治郎が割って入る。その視界の先では、さっきの少女が犬の頭に向かって発砲していた。

(これで2人!)

 その少女、蛇野杏奈は極度の興奮状態で妖精の少女へと銃口を向ける。目立たぬようこの6時間猫を被ってきたが、予想通り着陸できたタイミングで仕掛ける奴がいた。
 杏奈はトモダチデスゲームという他のデスゲームからのリピーターだ。前はギリギリで敗れたが今度は最高のタイミングで出し抜けた、そう思う。これまでは専門知識がなかったのでモブに甘んじていたが、本来は集団の中心にいるのが彼女のあるべき場所だ。主流派でハッキングの協力者らしいロボを始末し、彼が解読したという文字のメモも手に入った。これで杏奈は他の文字が読めない参加者より圧倒的にアドバンテージを得たことになる。
 更に変なデカい犬?も殺した。実は犬を撃つときはトドメ以外ろくに発砲していない。自分以外に銃を隠し持っていた参加者を割り出して、そいつらの弾を使い切らせるためだ。あとは杏奈がどさくさ紛れに殺していけばキルスコアトップで殺し合いから抜け出せる。そうすれば生きて帰れる。
 勝てる、勝てるんだ、そう今度こそ思った杏奈の銃口の先から妖精が消える。え、と思った頃には首に衝撃が走った。キャッと上げた悲鳴は、首輪から響く警告音に遮られる。

「そんな……杏奈は、今度こそ生き残って! 待って! 助けて! お願いします! いやあああああ!」
「辺見さん! ちがう、恵美濃さん!」

 名前を知る者すらろくにいないまま、蛇野杏奈はすぐ様全身が硬直した。

「ソラウ! しっかり! 起きて!」
「止めないと……あの、妖力は……」

 そして杏奈の首輪を破壊して殺した妖精のような少女、フウリは、瀕死の金色の獣を必死に助けようとしていた。
 その獣の名前はソラウ。彼とフウリは共にそれぞれの兄を探している中で殺し合いに巻き込まれたのだが、ここにその兄かもしれない存在がいた。
 それこそ先程炭治郎を食いちぎったカザンである。と言っても、カザンが妖怪であるように2人も妖怪。おまけにデカいソラウと明らかに妖精っぽいフウリは目立ち過ぎ、彼らを先に察知したカザンは己の妖力を操作し首輪を作動させない範囲で変化し、外見も妖力もごまかしていたため断定はできなかった。
 また飛行機という文明の利器も理解していなかったのが初動を遅らせた。怪しんではいたが、着陸寸前というタイミングでカザンがしかけるとは思わなかった。
 それでもカザンの凶行を前に動く2人だが、そこに高速でボールペンが迫った。正確に、容赦無く首輪を貫いた。何が起こった、そうわかる間もなく首輪が作動する。
 雷遁を纏わせたボールペンの投擲で2人を殺害したカカシは、額当てを普段とは逆にあみだに被り、ようやく停止した機内をふらつきながコックピットから這い出た。

「だらしない判断ですまない……」

 助けられなかった杏奈にそう言うと、ロボの死体を、そして妖怪たちの死体を見つめる。
 よもや、自分が最低限の止血を終えている合間にここまで状況が悪化するとは思いもしなかった。着陸寸前から停止までに確認できただけで2人、今自分が殺して合計4人だ。機体に穴が開いていることからこれだけではすまないとも予想できる。そしてこれから更に増えると。

「影分身の術!」

 右眼から一筋血が流れる。使えるのは写輪眼の左眼のみ。それは視力を維持できるのが短い間ということだ。本来はうちは一族のみがもつそれをカカシが使うのは身体に大きく負担をかける。そして60体の影分身。数分持てば良いと思ってチャクラを少量しか分けていないが、それでも写輪眼と併用して使えば、カカシがまともに動けるのは1時間も無い。
 そして鼻の良いカカシは既に察知している。今度は本当に火災が発生していることを。

「みんな! 近くの俺に掴まれ!」

 急増したカカシに悲鳴が上がるが無視して担ぎ上げると穴から飛び降りて行く。それを60回煙が回る前にやらなくてはならない。
 そして問題はそれだけでは無い。炎上を始めた飛行機から離れようとする影分身のカカシ達に向かって、黒いスーツにサングラスの男が駆け寄ってくる。その異常さに気づけたのは、影分身のカカシも写輪眼を持つからだ。
 人間ではない。鋭い忍の洞察力で瞬時に見抜いた。最寄りの1体が子供を地面に置くと、迎撃に向かう。敵か味方か判断がつかない。傀儡のような物なのだろう、殺気も何も感じないので目的が読めない。ひとまず取り押さえたところ、影分身のカカシの首輪から光が生じた。

(触れただけで首輪が作動するだと!?)

 ボン!と音を立てて影分身が消える。そのことがフィードバックでカカシ達に共有されるのと、脱出したカカシ達にカザンが襲いかかるのは同時だった。

「カカシ先生!」

 穴から脱出した直後の1体に担がれているイオリが叫ぶ。咄嗟に影分身は右後方から襲ってきたカザンをかわすが、その直後上から降ってきた堀内が直撃した。

「待て! 飛び降りるな!」

 やられた、更にフィードバックされて全カカシが感じる。飛び降りて脱出するカカシの姿を見て、子供達は自分も飛び降りれると思いだしていた。殺戮と煙が正常な判断能力を奪ったところで飛び降りて行くカカシ達の姿は、判断を誤らせるには充分なものだった。とはいえ、飛び降りた堀内は着地の際に異能力で衝撃を抑える気だったのだが、そこをカザンが狩りに行く。

「足があ……やっべ!」

 イオリを下敷きにした堀内にカザンが迫る。ギリギリで異能力で弾くが、それは影分身のカカシが投げたクナイまで弾く。そしてその隙をカザンは逃しはしない。
 素早いステップで堀内の前から消えると後ろに回り込む。カカシが叫ぶ間もなく、即座に首が噛み砕かれた。咄嗟に投げたクナイは、咥えたままの堀内を振り回すことで防がれる。戦い慣れている。少なくとも60体にまで分身したカカシよりもスペックで上回られている。
 急いで駆け寄りイオリまで殺させないとするのは3体の影分身。そのうちの1体は、堀内と同じように飛び降りてきた矢部を受け止めるために足を止め、もう一体は投げつけられた堀内を受け止めようとするも叶わず消滅する。
 そのことにカカシの焦りが増す。脆すぎる。いくら60体とはいえ子供一人受け止めきれないなどありえない。その異常事態の理由は、写輪眼。影分身達も写輪眼のために、チャクラを浪費し続けている。それはただでさえ少ないチャクラを使い続け、影分身が維持できる時間を残り数十秒にまで縮めていた。
 間に合わない。まだ半分以上の子供は機内だ。穴と言ってもそこまで大きくはないのだ、1人出すのに数秒はかかる。両方から出たとしても出し切れない。
 そしてそれに向き合う時間もない。カザンは一度距離を取り、飛行機から離れて他の影分身から援護しにくい者を狙いだした。それを止めるために更に影分身が割かれ、その隙にさっきの黒スーツの傀儡が手を伸ばしてくる。カウンター気味に腹にクナイを突き入れるが、止まらない。人ではないのなら急所ではないのだろう、そのまま黒スーツは影分身に触れると、影分身は音を立てて消滅した。
 状況は更に悪化の一途を辿る。既に影分身は10体消滅している。チャクラの配分が不均等だったにしても異様に早く影分身が消滅していく。今も遠くでカザンを抑えるために影分身達が秒殺されていっている。悩み数秒足を止めたカカシに迫るのは黒スーツの傀儡こと──ハンター。

(しまった、死角から──)

 触れられる寸前、気配を感じて身をよじったのはやはり天才か。だがその反応に体がついてこない。膝から力が抜けて態勢が崩れる。いかに写輪眼で見えていようとも、動けなければ意味が無い。
 ハンターのサングラスに、尻もちをつく自分の姿が映る。それがハンターの伸ばした手によって消えていく。
 結局カカシはまたも守れなかった。最適と信じた判断は誤りだった。カカシが死ねば影分身も消滅する。そうなれば子供達を助ける手立てはない。

(だらしない先生ですまない。)

 思えば、放送で春野サクラの名前が告げられてから冷静さを失っていたのだろう。6時間もの無為に過ごした時間がなければと何度も思った。最後の気がかりは、サクラと同じように巻き込まれているかもしれないうちはサスケとうずまきナルトのこと。彼らに詫びる時間もなくハンターの手がカカシに触れた。
 だが、首輪は作動しない。その寸前、ハンターの腕は断ち切られていた。

「ボサッとしてねえで立ちな。アンタはまだ動けるだろ。」

 そう言う少年の一太刀で、ハンターの首が斜めに跳んだ。


「総悟!!」

 着陸が始まり、機体が跳ね終わった時、後方のシートにいた土方は顔の右半分にお湯をかけられたような感触がした。息と共に鼻を通った臭いでそれが血だと気づくのは即座、だがそれを現実と受け止めるにはわずかに時間がかかった。
 真選組として刀を振るう中で返り血を浴びることもある。血飛沫が顔に降りかかる感触も知っている。だからこそその違和感が拭えない。顔にコップ一杯の血をぶちまけられたかのような水飛沫感覚を感じ、右眼が上手く見えなくなるほどの血が、すぐ隣に沖田が座っているのに掛かるはずがない。

「なんでえ……土方──」

 言い切れず沖田の首が前に落ちる。頭の重量を支えきれず、肩の皮膚が裂けた。
 沖田の右半身は、千切れていた。
 肩から腰まで一直線に、座ったまま斬られたかのように、2つに分かたれていた。倒れるのを土方が支えようとして、掴んだ肩からブチリという感触がした。呆然とする土方の手には、千切れた沖田の右肩から先が残された。

「土方さん! 土方さん!!」

 我に返る。どれだけそうしていたのだろうか、土方はライターで沖田の傷口を炙っていた。血が吹き出るところを焼き続け、火傷で肉をくっつけて止血する。そんなことをしても助からないことはわかっているのに、体が2つに分かれた人間が助かるはずないとわかりきっているのに、知り合いの声を聞くまでやり続けていた。

「メガネ。」
「土方さん、しっかりしてくれ! アンタじゃなかったらどうにもできないんだ!」

 顔を上げる。新八は肩を手で抑え、少年に支えられていた。肉はごっそりと削られ、骨まで見えている。沖田に比べれば明らかに軽傷だった。新八を支える少年によって、顔の前に刀が差し出される。土方の物だ。沖田の刀も、新八の木刀もある。持ってきたのだろう。少女の悲鳴が聞こえた。「押さないで!」という声が悲鳴に変わり、「ひとみ!」と叫ぶ声もそれに続く。ふと目の痛みを覚えた。薄っすらと、煙が機内に回りだしていた。腕を掴まれる感触がした。力強いものだ。視線を落とすと見えたのは真選組の隊服。沖田の残った左手が、土方の腕を握りしめていた。

「とっとと脱出するぞ。」

 刀を取る。己の物と沖田の物を。
 土方は沖田を抱きかかえると、新八を先導して壁へと向かった。まさかコイツをお姫様だっこすることになるとはなと、腕にかかるゾッとするほどの軽さを無視して歩く。窓ガラスから下を見る。人はいない。

「おおおおおっ!!」

 裂帛の気合いと共に片手一本で、土方の刀が壁を切り裂いた。斬鉄、その域に至った斬撃は、分厚いアルミ合金すら切り裂く。
 悲鳴も無視して土方は飛び降りる。他の子供のように転落死したりなどしない。両の足で大地を踏みしめる。そっと沖田を横たえると、刀を滑走路に突き立て叫んだ。

「飛び降りろ! 俺がゼッテー受け止める! 新八手本を見せろ!」
(やっぱそうでねえと。)

 新八が飛び、彼を支えてい少年、リオンが飛び、次第に子供達も覚悟を決めて飛び降り始める。
 それを見届けた沖田は、愛刀を杖代わりに片足一本で立ち上がる。体には欠片も力が入らない。だが今そんなことはどうだっていいんだ、重要じゃない。肝心なのは何もできずにただわけのわからないまま死ぬようなことは、沖田自身が沖田を許せないということ。
 一際大きく息を吸い込み、奥歯を噛みしめる。左足一本で突っ込み、息を吐きつつ歯で鞘を噛み抜刀する。狙いは、この場で最も失ってはまずい男に迫る魔手。

「ボサッとしてねえで立ちな。アンタはまだ動けるだろ。」

 それが沖田総悟の最期の言葉だった。


「久美子……起きてよ……ねえ。」

 大根おろしの上にトマトを転がしたらこんな感じになるのだろうか。ひとみが割れそうな頭を抑えながら目を開けると、見えたのは頭から血と何かをはみ出させてピクリともしない久美子の姿だった。
 あの時、穴からカカシが子供達を抱えて降りていた時、穴に向かって素早く移動していたひとみと久美子は、自分たちも脱出させてもらおうとしていた。
 風向きが変わったのは、機内に煙が立ち込めてからだ。満足に呼吸ができなくなった子供達は酸欠気味の頭で本能的に外に出ようとする。その人の群れに影分身が身動きしにくくなり、脱出の効率が落ちる。結果穴の周りには加速度的に人が滞留した。そして最後は、後ろから押される形で転落というわけである。
 それでも即死しなかったのは、下で影分身が1体クッションになったのと、久美子が庇ったからだ。あの落ちる寸前、なぜ自分は手を伸ばしたのか、なぜ久美子はひとみの手を掴んだのか。落下の際のわずかな間に久美子はひとみを抱き締め、くるりと空中で入れ替わった。自分の景色が反転したのを覚えている。久美子をクッションにしなければ即死していたかもしれない。
 だがそれはひとみが無事であることを意味しない。

(立てない、足に力が入らない。)

 神経をやったかぎっくり腰のようなものか、ひとみが動くのは上半身のみだった。これが一時的なものなのか永続的なものなのかなどわかるはずもないが、なんとか久美子にのしかかるのは止めようとしても満足に体が動いてくれない。悪戦苦闘しても体の痛みがどこか鈍い。おまけに雨まで降ってきたと、一瞬そう思った。
 水たまりに強い雨が降りつけた時のように、滑走路の表面が爆ぜるのが見えたのだ。そんな光景など雨ぐらいでしかありえない。しかし飛行機から上がる炎で照らされるにつれてそのおかしさに気づく。雨など降っていない、それは感覚のおかしくなったひとみにも見ればわかる。そしてその雨が降ると、増殖したカカシたちが煙と音を上げて消える。ぴしりと、小石のようなものまで飛んできた。
 ようやくゴロリと久美子の上を転がることでひとみはのしかかるのを止められた。仰向けになってはじめてこの地の異常さに気づく。赤い霧だ。空も赤く、そこに黒い雲が雷鳴と共に蠢いている。そこに一点、雷とは異なる光点を見つけた。断続的に、素早く明滅を繰り返している。そしてそれと同時に雨が降る。

「上になんか飛んでる!」

 ひとみは叫んだ。同時に久美子の手に握られていた拳銃を手に取った。赤い霧と赤い空で見えにくいが、黒い雲が背景になったことでそれに気づけた。赤い長方形のなにかが飛んでいる、あるいは浮いている。その長方形が光ると同時に雨が、銃弾の雨が降り注いでいると!
 ひとみは満足に動かない腕を動かし、銃口を向けた。引鉄を引き、弾が出ないことを不思議に思い、そういえば安全装置とかあるんだっけと、映画で見たような操作をする。再び銃口を天に向ける。手が震え全く狙いは定まらない、それでも引鉄を引いた。
 ダン、ダダン。
 銃声が響く。当たった、とは思えない。それでも長方形は今まで動かなかったにも関わらず急速に移動を始めた。確か向こうは空港だったか。なにはともかく、これでもう銃撃はされない。
 バタンと手が落ちる。もう指1本動かせなかった。全ての力を出し切ったと言う感じだ。体は倦怠感に覆われ、炎で炙られているのに冷えていくのを感じる。

(ごめん久美子、助けてもらったのに。あー、もう一度みんなで──)

 次の瞬間、爆発。ひとみと久美子は爆炎の中に消えて行った。



「これは……絹ではないな。装飾も豪華とは言い難いが……しかし、質は良い。」

 時は数時間前に遡る。
 会場にある24時間営業のホームセンターで、場違いなアラビアンな格好をした男が真剣な面持ちで大量生産されたカーペットを手に取っていた。
 その美男子の名は、サウード。数時間後には10名以上の死のきっかけとなる魔法使いは、陳腐な柄の赤いカーペットに、そしてこの店の品揃えに恐怖すら抱いていた。
 男は異世界の出だ。砂漠の国々を超えて権謀術数を巡らせた彼はここでもそれを基本方針としていたが大きな問題に悩まされていた。
 言葉が通じないのだ。

「この……なんだこれは? なんに使うものなのだ……な、なにもわからない……」

 それどころか文字も読めない。そのことで受けたショックは計り知れなかった。
 修めてきた教養、研鑽した魔道、磨いたカリスマ、それら一切を覆す圧倒的な文明格差。1000年近い差のある日本の文明の発達度。そしてそれを学ぶことすら許さぬ言語の壁。これでいったいどうやって勝てばいいのか、というかどう生き抜けばいいのかと、絶望的な笑いさえ出てくる。なにせサウードは水の一杯も飲むことができずにさまよっているのだから。
 サウードは呆然と猫の肉球拭きを棚に戻した。薄々、薄々勘づいてはいたのだ。ここが異国であることは。だがそれだけならなんとかなる。彼が見つけた他の参加者も、この会場の様子には困惑していたようなのだから。それならばフェアだ。
 問題は、どうやら他の参加者同士ではコミュニケーションが取れるということだ。さっき宇野達を襲撃したのもそれが理由である。話術を得意とする者から話術を取り上げるなど片手落ちで戦えと言っているようなものだ。無論、それだけで負けるようなヤワな人生は歩んでいないが。

「いや……この精巧な猫の絵……おそらくは猫に使う何かだろう。他の棚の物も多くに猫の絵がある。さっきの場所には絨毯が、あちらには金物……店なのだろうから、何か共通点はあるはずだ。」

 喉の渇きを覚えながらも、思考を巡らす。この程度のピンチ、太陽が照りつける砂漠で野垂れ死にかけたことに比べればどうということはない。一面の砂と違い物自体はあるのだ、そうサウードは己の勇気を奮い立たせる。こんなところで死ねはしない、その一心で血まなこになって商品を見ていく。
 見つけたカートにカーペットを入れ、途中で見つけたレインコートも積み込む。確認していく間に使えそうなものを手に入れることも怠らない。時間はある。今の己の体調なら今日明日は死にはしない。数時間なら万全に動ける。ならなこの建物1つ捜索することなど造作も無い。

「やった! あったぞ!」

 試練は乗り越えられぬ者に訪れはしない。サウード行った見つけたのは併殺されたドラッグストアだった。深夜ということもあり閉店しているがそんなことは当然忖度するはずもない。いそいそと入店すると、水の入った容器へと近づいた。
 ペットボトルなど当然知らないので開け方はわからない。だがとりあえず飲める物を見つけられたと、サウードは安堵した。棚のポップに描かれた美味そうにジュースを飲む子供の絵すら、写真という未知のものに驚いていた身からすると安らぎすら感じられる。更に近くには食料と思しきものもあった。軽く一月分はあると見えるそれに、生きる活力も湧いてくる。これだけの食料が手に入るということは相当な長期戦になるかもしれないが、餓死の心配が無ければ採れる手も増えるというものだ。

「しかし、どう開ければ良いものか……うん? そうか。」

 とりあえず手に取った駄菓子に頭をひねる。食べ物が見つかったとなると、悩みまで程度の低いもので済む。それもすぐにさっき手に入れたハサミを思い出して、サウードはスパイシーなそれを頬張った。

「……先に水を飲むべきだったな。」

 パッサパサなタイプだった。口の中の水分が持っていかれる。味は、まあそこそこだが、これはまず水を飲もうとサウードが歩くと、やけにヒヤリとする棚に出くわした。
 氷室か。そう思うが、どうにも小さすぎる。アイスのケースなどもちろん知らない彼は、しばしの洞察の末に無事に蓋をスライドさせると、アイスを手に取った。
 砂漠でもアイスというものはごちそうである。冬の頃にできた氷を砂漠の下の洞窟などに置いておき、そこに乳と果汁を混ぜたものなどだが、とにもかくにも概念自体は知っているものだ。ご禁制の酒を「トッピング」として楽しむ口実に使われもするが、サウードはまた推察の果てに蓋を開けると一口口に入れた。

(これは!)

 驚くほど甘い。そして冷たい。いや、美味い。臭みが無い。非自然的な風味を感じる。旨いのだが、何か不安になる。
 サウードはなんとも言えぬ顔でミネラルウォーターのペットボトルを手に入れると、逆に回したりして混乱しつつも水を飲んだ。今度は信頼できる味だ。ほっと息が漏れる。
 そして1時間ほどして、サウードはホームセンターを後にした。休憩はとれた、拠点になりそうな場所も見つかった。ひとまず水があれば生きていけるので、ミネラルウォーターの入った段ボールをはじめ旅支度も整えた。なら後はサウードの知恵次第である。

「ふうむ……やはり、言葉がわからないことはまずいな。図書館を探すか。」

 サウードは赤いカーペットを広げる。それは地面に落ちる寸前で止まると、ホームセンターで集めた物資が積み込まれていった。まさしく魔法の絨毯である。あまり魔力を使うのも考えものだが、それを押しても早く言葉を学びたい。そしてその手がかりになりそうなものも見つけている。
 サウードは水道橋だと思い線路の高架へと近づいた。水は見えないがレールが敷かれていることから意味あっての建造物だとはわかる。そしてその両端に何か造る必要性があろうとも。
 サウードはカーペットを空高く飛ばすと一路霧の果てまで向かうこととした。地上から見つけにくいことも考えて赤い物を選んだが、万が一ということもあるので手出しし難い高空(と言っても100mほどだが)を飛ぶ。それに霧の果てと言えど視界が悪いのだ、すぐに果てまで行けて何かしらあるだろうと飛ぶ。が、そうはいかない。

「またこの建物か。宿場にしては距離が近すぎるな。城や要塞にしても、あけすけだ。」

 電車の高架なのだから当然駅があるのだが、そんなことなどわかるはずもないサウードは首を傾げる。わざわざ降りるのも危険なのでそのまま飛ぶが、このまま見えなければ他のアプローチも考えなくてはならないか。そんな風に考えつつしばらく飛ぶと、視界が開けた。空港だ。

「神殿か?」

 滑走路や駐機場の広大さに目を見開いたサウードはそう呟くと中庭に降り立った。重要そうな拠点とみて、見張られている可能性を考えたからだが、あいにく無人である。もっと早く来ていれば安西こころと遭遇した可能性もあったが、サウードに知る由もなく。それでもこれだけ広大ならば言葉を学ぶ手がかりとなる巻物なり書物なりが手に入ると動き出す。
 もちろん見つかることはなかった。売店に本は売られていたが、それが文字を理解する手がかりになどなりはしない。せいぜい、館内の案内地図で建物の内部に詳しくなった程度である。代わりに大量に見つかったのは。

「またこれか。これほどまでの武器がこうも必要になるのか? 魔神のたぐいでも出るのだろうか。」

 地対空ミサイルだった。



「ちいっ! 欲張りすぎたかっ!」

 そして現在へと時間は戻る。
 何発もの地対空ミサイルを手に入れたサウードが、自分の上空に旋回する航空機に気づいたのは、彼もまた空を征く者だったからだろう。悪魔は彼に微笑んだ。鷲や鷹の如く旋回するそれをやり過ごすのではなく仕留めにいく。
 翼で空を飛ぶのならその動きは鳥と同じだろう。つまり、着陸の際に頭を上げる。その減速するタイミングを狙うのだ、鷲や鷹を狩るときのように。
 どこに降りるかも予想はできた。滑走路は線上なのだから、中央に陣取っていればどちらから降りてきても狙えるだろうと。そして着陸のためにオートパイロットが減速をかけた瞬間、サウードは担いでいたミサイルを撃ち下ろした。撃ち終わったものを投げ捨てるように手を離し、即座にもう一発撃ち込む。似たようなものは前にも撃った。飛行機の巨体を見て一発では不安に思ってだが、それはかえって飛行機の墜落を避けたことを彼は知らない。反撃される可能性も考え、機関銃を乱射した。それが鉛の雨となり、機体中央部を縦に撃ち抜き、弾丸とそれによって生まれた破片が内部の参加者を殺傷していく。
 そして脱出と炎上が始まった時、サウードは己の天佑を感じた。あの飛行機は、マーダーにとってはボーナスステージだった。故にひとみが気づき発砲された際には、その驚きはひときわ強いものであった。

「だが10人は殺せただろう。」
「そうかい、じゃあアンタが生きてたら次の放送で首輪が外れちまうのか。」

 咄嗟に抜刀したサウードの剣ごと斬られて首が宙を舞う。もうさんざん殺したのだから選手交代だと言わんばかりに現れたのは、ずっとスタンバっていた攘夷志士・岡田似蔵。

(なにぃ…!! 迅速やすぎる……!)
「どいてなモブキャラ。こっからがハイライトだ。」

 ここからが本当の殺陣の始まりだ。
 盲目の似蔵に視界を奪う霧など関係無い。獲物を求めさまよう間に放送も迎えてしまい、その間殺せたのはゼロというのは人斬りの名折れ。そんな中で聞こえてきた奇妙な音に釣られて向かったのがこの空港である。飛行機の騒音は常人でも気になるものだ、超感覚を持つ似蔵からすれば気づかないはずがない。
 とはいえ、ようやく見つけた鉄火場も空中という手も足も出ないところから銃撃をするサウードの存在でみすみす黙って見ているだけだった。そんな厄介者が自分から地面に降りてきてくれたのだ、斬らないわけがない。

(彼奴にだいぶ殺されちまったならなあ、急がねえと。)

 似蔵が狙うのは、放送で追加されたキルスコアレースによる首輪解除だ。参謀役の武市変兵太も放送で名前が呼ばれ死亡は確実となった今、誰かに義理立てる必要も無くなった。ようやくいつもどおりに動けると、遠路遥々歩いてきた甲斐というものを楽しむために燃え上がる航空機へと向かう。

「大変そうだねえ、何があったんだい?」

 他にもマーダーがいるのか、それとも火事で銃が暴発しているのか、銃声が悲鳴に混じって聞こえてくる。似蔵は点鼻薬を使いながら、逃げ出したらしい一人の子供に声をかけた。

「飛行機に乗っていたんですが、墜落して──」

 その声色は本当に心配しているようで、声をかけられた少年、ライは警戒はしつつも事情を説明した。実際似蔵の狙いは、飛行機の人間を1人でも多く助けることにある。そうして全員で1か所に集まりリラックスしたところで皆殺しにする。今のように散らばられていれば余計な鬼ごっこをすることになる。
 後で殺すために真剣に助ける、それが似蔵の目的だったが。が。

「あっ……こりゃダメだ、はあ、めんどくさいが、しゃあなしか……」

 抜刀、ライの首を刎ねる。
 そして返す刀で土方の一太刀をいなした。

「てめえは岡田ァ!」
「まいったまいった、真選組がいちゃ潜り込めねえわ。」

 軽口を叩きつつ、踏み込んでくる土方の刃を弾く。生まれた隙に突き込むが、体を深く沈みこまれかわされる。そのまま切り上げられた斬撃を後方へ飛んでかわすと、燃え盛る飛行機へと向かった。
 作戦は変更だ、ステルスしようにも正体が知られている以上やりようがない。だったらせめて、火事で死にそうになっている奴を殺してキルスコアを上げるとしよう。

「ソイツから離れろぉ!」

 追おうとする土方だが、近くの子供にカザンが襲いかかろうと駆けてくるのを見てそちらへと駆ける。手が足りない、ただでさえマーダーがいるところに追加でマーダーが現れたことは彼のキャパシティを超える。土方の叫びも悲鳴と火災の音にまぎれて届かない。機体左側の穴の下、反対側で起こった爆発から逃げた子供と脱出した子供が多くいるそこに、影分身を切り捨てて迫る。それを遮る者はただ一人。

「はあっ!」
「お、生きのいいのがいるねえ。」

 堀内の落下によって死亡したイオリを片手で心肺蘇生しようとしていた志村新八が、木刀を一閃させる。それを難無くかわした似蔵は素直に賞賛した。動きのぎこちなさと血の匂い、相手が手負いであることはわかる。それでもその太刀筋は幕末の猛者に近い凄みを感じさせるものだ。まあそんな猛者でも斬り捨てるのが似蔵なのだが。

「じゃあ、死のうか。」
「グウ!?」

 背後をとり耳元でささやく。斬ってから言わないのはその強さへの敬意である。嘘だ、煽りだ。背中を蹴り飛ばして四つん這いにさせ、斬りおろしやすくなった項に向けて刃を向ける。

「みんな! この人敵だよ!」
(なんて?)

 そこに割って入るのは、クロスボウの矢。音が聞き辛いそれを既のところで切り落とす。そして先に何語かで呼びかけた射手を斬らんと間合いを詰めたところに、銃弾が撃ち込まれた。これも斬り落とすが、追撃をかわすために方向転換を余儀なくされる。

「なんやアイツヤクザか!」

 撃ったのはパステルと矢部だ。冒険者としての経験と貧乏性からとっとと武器を取り戻したパステルは、実は一番最初にカカシが抱えおろした相手である。彼女はその後カザンを射ろうとしていたのだが、カカシの影分身が翻弄される相手に通じるはずもなく、どんどん減らされていく彼らをやきもきしながら見ているしかなかった。その後矢部たちが降りてきたのを見て善後策を話しているところでモモが聞きつけた土方の叫びで新八のピンチに気づけたというわけである。

「いいね、燃えてくるぁ。」

 似蔵は舌なめずりしながら言う。この6時間で斬ったのはガキ1人だったが、ここでもあれより弱いガキばかり殺すことになると思っていた。だが思いも他楽しめそうだ。
 似蔵は駆ける。真選組も殺したいが、あっちは何か獣とやり合っているらしい。寄らば切るが、先に此奴らを斬ってからでも充分だ。

「消えたっ!?」

 パステルや矢部の声が聞こえた位置から少年の声が聞こえる。矢部と同じように銃を構える麻倉の声だが、それは似蔵にとってガイドビーコンの如く働く。似蔵もこの状況では沈黙してじっとしている相手にはなかなか気づけないが、だからこそパステル達は位置がはっきりしているので狙いやすい。懸念事項は周囲の手応えのない奴らだが、攻撃手段はほぼ近接のみのため対処はしやすい。

「はいもう1つ!」
(まずい……もう半分も残っちゃいない。)

 その理由は、クナイや手裏剣を投擲すると似蔵が弾いてそれが近くの子供に当たりかねないからだ。もしそうなった場合火花から引火して爆発しかねない。カカシに航空燃料の知識は無いが可燃性のガスの存在ぐらいは知っている。故に先ほど矢部が発砲した時は肝が冷えたものだ。つい今ほど爆発したのに酔のせいか単に気づいていないのか。そしてカカシから見た似蔵は、投擲を容易に弾く侍だと見なされていた。
 加えて、チャクラ切れの面が大きい。影分身といえども術は使えるのだが、そんなことをすればただでさえ少ないチャクラを使い切ってしまう。そうなれば最悪、術が不発に終わり影分身が消えるだけとなる。これは忍術だけでなく体術にしても同じである。忍者の体術はチャクラをコントロールすることにより身体を活性化している。つまりチャクラが切れるということは超人的な身体能力を失うのと同義だ。
 残りの影分身は30体を割っている。外にいるのは数体で、大半は内部で同じ数の人間の脱出に従事している。カカシは緊張して、しかし冷静に周囲を見渡すと、彼我の戦力を分析した。敵は化け犬(カザン)と岡田と呼ばれた侍。どちらも同じ程度と見る。一方こちらはほぼ土方1人だ。2対1ではないが、劣勢なのは否めない。今は土方がカザンを抑えているが、岡田の方は動けば影分身が消えそうなカカシ本体と、そのカカシの影分身数体、手負いで片手で木刀を振るう新八、クロスボウを持っているパステル、拳銃を持っている矢部と麻倉だ。新八はともかく、パステル達のグループは明らかに荒事の経験が無いとカカシは判断する。事実上戦力は影分身達と新八のみだ。
 やむを得ず、外で子供の避難誘導と護衛に当たっていた影分身まで全て使って似蔵に向かわせる。そうしなければ拮抗状態を維持できない。こうしている合間にも、飛行機は業火に包まれだした。まだ少なく見積もっても20人以上内部にいるはずだ。彼らが脱出するまでの数分間持たせるにはこれしかない。

「斬り応えがない。」

 そんなカカシの事情など知ったことなく似蔵は影分身を斬り進む。実のところ似蔵も焦りだしてはいる。自分が斬っているこの人間のような何か、無視できないほどの強さを持っているくせに斬っても血の一滴流すことなく消えている。どういうトリックかは知らないが、これをいくら斬ろうとも点にはならないのだろう。斬るのは楽しいとはいえこのままではとんだ骨折りだ。
 だがそれもここまで、近場はあらかた片付けた。ついにノーガードになった新八達と、そこに降りてくる人間を殺しに向かう。それを見た土方が割って入ろうとするも、同時にカザンも突貫した。彼からしても最高のタイミングで牙を向いたはずが思いの外キルスコアを上げられていない。これまでは自分が土方の相手をすることで似蔵がめんどくさい影分身の処分をしていってくれていたが、このまま奴を見過ごせばみすみすポイント稼ぎのアシストをすることになる。それではダメだ、奴に自分のアシストをさせなければ。
 2方向から同時に似蔵とカザンが迫る。それに対応できるような人間はパステル達のグループにはいない。ただ1人新八だけが両者を素早く見て、カザンの迎撃に動いた。それを見たカカシは素早く印を結ぶ。ここで勝負をかける。ボフンと全ての影分身が消滅した。
 その瞬間、カカシの姿が消えた。その場にいる誰よりも素早くカカシは動いた。チャクラによる肉体活性の基本形にして極致、瞬身の術だ。
 そして──『已・未・午・卯・未・午・卯・在』──手が残像を残して動き印がまたたく間に結ばれた。

「ありえねぇ……!」

 似蔵の顔が驚愕に染まる。謎の音に咄嗟に足を捌くが、その足に奇妙な感覚がして飛び退く。だがその背中もまた何かにぶつかり、振るう刀も阻まれ、異様に体が重く感じる。一体何が起こったのかまるで音からはわからない。
 なぜ突然、自分は水の中にいるのか。

「カカシさん! 任せるぞ!」
「ああ!」

 追いついた土方は似蔵を追うのは止めて、新八の元へと駆ける。そんな2人の声すら濁って聞こえる。そしてこの臭い、この戦場に乱入してからずっと感じていたこれは。

(ガソリンか!)

 正確には航空燃料に囚われていることに似蔵は気づいた。
 似蔵を囚えたカカシの忍術、その名は水牢の術という。水を操り相手を球形の水塊に沈めるという、高い拘束性能を持った技である。先日カカシがこれを鬼人・桃地再不斬に喰らった際には、ほぼ完全に無力化されたほどだ。しかし本来この技は水の無いところではまず使えないというデメリットもある。
 だがこの場にはおあつらえ向きの液体があった。翼から流れ出て今も気化しつづけている航空燃料が。

「お前はここで沈んでいけ。」

 そう呟くと、カカシは膝からストンと落ちた。震える手で額当てに指をかけるとなんとか左眼を覆う。これ以上写輪眼を使い続ければ命は無い。まして水牢の術を維持するのが困難だ。本来であればこんな無様な戦いなどしないが、今は1秒でも長く術を維持して似蔵を沈殺するためになりふり構っていられない。
 後は土方に託すしかない。
 この場に残るマーダーは、カザンのみ。

「撃つな! 燃える!」

 猛然と駆ける土方の先で、麻倉が発砲している。なんとか木刀で凌いでいる新八をかわして、カザンは後ろのパステル達に迫る。パステルのクロスボウもかわすと、狙ったのは、矢部。

「おおアカン誰か弾──」

 言い終わる間もなくそのまま加速したカザンは矢部を跳ねた。サイズからは考えられない、まるで大型トラックにでもぶつかったように矢部が宙を舞う。それを呆然と見送る麻倉達に同じように突っ込もうとする寸前に、彼らの前に立ち塞がるものがいた。モモだ。
 これまで1人武器を持たなかったモモがカザンに向かっていく。そこになんの勝機も生存の算段もない。ただ体が動いたのだ。だがカザンはそう判断しなかった。きっとこいつも何か技なりあるのだろうと、これまでの戦いの経験から迂回を選ぶ。その隙が土方を間に合わせた。
 カザンの口が歪む。実のところ、カザンもこれまでの戦闘で息が上がっている。外見が犬なのでわかりにくいが、着陸寸前から暴れ出し、フウリとソラウには苦戦し、カカシの影分身と土方と渡り合っていた。目立ったダメージこそないが、動きのキレが落ちだしている。
 あの分身が無ければ、そう思うも後の祭りだ。後悔するよりもより獲物を狙いに行く。なに、土方に邪魔されない場所にたくさん残っているのだから。

「まずい、炭治郎上行った!」

 今土方と戦っても良くて相打ちだ。それよりは狙いやすい子供を狙う。今までの戦闘で安全に飛行機から脱出できなかったため、機内にはまだかなりの人間が残っているとカザンは見ていた。影分身に邪魔されている時にほとんど子供を殺せなかったどころかそもそもの人数が少なかったからだ。
 「離れて」と中の炭治郎が言う間も無い。人混みに邪魔され、その場から跳躍し壁を蹴って穴の間近にゆく頃には、カザンは前脚をかけていた。そして乗り込むと一番近くにいた少年へと襲いかかる。炭治郎は彼がケイという名前だとはわからない。コックピット周りの作業では何人もの子供が作業や討論をしていたので顔と名前が一致しきっていない。ただ彼がこんなところで死んで良い人間ではない、それしかわからなかった。
 炭治郎の口から独特な呼吸音が一際大きく鳴る。迷っている間は無かった。残った片手一本で、片目で距離感の掴めない相手に向かって、日輪刀をぶん投げる。鬼相手であれば唯一の武装を捨てる愚考でも、この場はこうするしかない。

「グガァ!?」

 そしてそれが吉と出た。カザンが内部に銃があるのを6時間の間に見ていなければ、今頃少年は齧り殺されていただろう。だが警戒して周囲に気を配ったがために、わずかに勢いが落ちた。それゆえに投擲が間に合い、それゆえに回避する間が生まれる。
 無理やり勢いを止めて逆方向に飛び出る。日輪刀の方が早くカザンの胸に突き刺さり、体の内側から一気に温度を持っていかれた。まるで心臓に氷柱を打ち込まれたような感覚。
 だが、カザンは依然として動けた。出血覚悟で日輪刀を引き抜く。そしてよくよく理解した。ここまでだ。
 傷の感じから急所は奇跡的に外れている。といっても妖怪基準なので普通の犬なら死んでいたのだが、そんなものはカザンには当てはまらない。だがそう強がったところで、深手を負ったのは間違いなかった。まだ仕掛けられる余裕があるというのは過信だったと言わざるを得ない。

「今だ、降りろ!」

 後ろから叫ぶ土方の声がする。せっかくのチャンスではある。だがもうダメだ、カザンも限界である。それに仮に土方をどうにかして、さっき刀を投げてきた炭治郎をどうにかしても、あの飛行機はもう無理だ。爆発すると臭いでわかる。
 後ろから物音が聞こえて最後に振り返った。なにか滑り台のようなものが飛行機から生えていた。あんなものがあるとは思わなかった。もっと早く出していてくれれば皆殺しにできたのに。
 一方土方はそんなの使えるならとっとと出しとけよと思ったが、そうも言っていられないので似蔵を斬りに向かう。「そいつは置いてけ、もう死んでる」と、矢部やイオリの蘇生や移動を試みている麻倉たちに言って逃げさせると、穴の間近にはカカシと似蔵と3人で残った。
 マーダーは撃退した。機体から安全に脱出する方法もできた。あとはコイツにとどめを刺して逃げるだけだ。

「待たせたな、後は俺がやる。」
「いや……こいつはまだ息がある。せめて失神するまでは。」
「火が回ってきたんだ、とっとと行け。それにコイツは俺らの山だ。」

 刀を平突きに構える土方の瞳を、額当てで目隠ししたカカシは見ることができない。カカシは小さく頷くと水牢の術を解いた。
 その途端、それまで力無く囚われていた似蔵が勢い良く土方へと飛びかかる。全身を燃料に塗れながら、言葉にならない絶叫を上げる、その喉に土方の刀が突き刺さった。その刀を掴み、似蔵は己の刀を叩きつける。
 その瞬間生じた火花が似蔵と土方を焼き、飛行機は中程から爆発した。



【脱落】
【長嶋ケンイチロウ@生き残りゲーム ラストサバイバル でてはいけないサバイバル教室(ラストサバイバルシリーズ)@集英社みらい文庫】
【峰岸遼太@そんなに仲良くない小学生4人は無人島から脱出できるのか!?@小学館ジュニア文庫】
【松野チョロ松@小説おそ松さん 6つ子とエジプトとセミ@小学館ジュニア文庫】
【ロボ@天才謎解きバトラーズQ vs.大脱出! 超巨大遊園地(天才謎解きバトラーズQシリーズ)@講談社青い鳥文庫】
【ソラウ@新妖界ナビ・ルナ(5)刻まれた記憶(妖界ナビ・ルナシリーズ)@講談社青い鳥文庫】
【フウリ@新妖界ナビ・ルナ(5)刻まれた記憶(妖界ナビ・ルナシリーズ)@講談社青い鳥文庫】
【蛇野杏奈@トモダチデスゲーム@講談社青い鳥文庫】
【渡辺イオリ@絶滅世界 ブラックイートモンスターズ 喰いちぎられる世界で生き残るために@集英社みらい文庫】
【堀内優大@異能力フレンズ(1) スパーク・ガールあらわる! (異能力フレンズシリーズ)@講談社青い鳥文庫】
【ハンター@(逃走中シリーズ)@集英社みらい文庫】
【沖田総悟@銀魂 映画ノベライズ みらい文庫版(銀魂シリーズ)@集英社みらい文庫】
【堀場久美子@ぼくらのデスゲーム(ぼくらシリーズ)@角川つばさ文庫】
【中山ひとみ@ぼくらのデスゲーム(ぼくらシリーズ)@角川つばさ文庫】
【サウード@シェーラひめのぼうけん 魔神の指輪(シェーラひめシリーズ)@フォア文庫】
【大井雷太@ギルティゲーム(ギルティゲームシリーズ)@小学館ジュニア文庫】
【矢部謙三@劇場版トリック 霊能力者バトルロイヤル 角川つばさ文庫版@角川つばさ文庫】
【土方十四郎@銀魂 映画ノベライズ みらい文庫版(銀魂シリーズ)@集英社みらい文庫】
【岡田似蔵@銀魂 映画ノベライズ みらい文庫版(銀魂シリーズ)@集英社みらい文庫】
【はたけカカシ@NARUTO-ナルト-白の童子、血風の鬼人(NARUTOシリーズ)@集英社みらい文庫】



【0714 『中部』空港】


【麻倉良太郎@黒魔女さんのクリスマス 黒魔女さんが通る!! PART 10(黒魔女さんが通る!!シリーズ)@講談社青い鳥文庫】
【目標】
●大目標
 みんなで脱出する。主催者には落とし前をつける。
●中目標
 飛行機から離れる。
●小目標
 ???

【モモ@モモ@岩波少年文庫】
【目標】
●大目標
 みんなで脱出する。
●中目標
 飛行機から離れる。
●小目標
 ???

【竈門炭治郎@鬼滅の刃ノベライズ ~遊郭潜入大作戦編~(鬼滅の刃シリーズ)@集英社みらい文庫】
【目標】
●大目標
 巻き込まれた人を殺し合いから脱出させる。
●中目標
 飛行機から残っている人を離れさせる。
●小目標
 また爆発!?

【志村新八@銀魂 映画ノベライズ みらい文庫版(銀魂シリーズ)@集英社みらい文庫】
【目標】
●大目標
 みんなで脱出する。
●中目標
 飛行機から離れる。
●小目標
 ???

【大道寺知世@小説 アニメ カードキャプターさくら さくらカード編 下(カードキャプターさくらシリーズ)@講談社KK文庫】
【目標】
●大目標
 さくらちゃんを探してみんなで脱出する。
●中目標
 みんなで空港の建物に避難する。
●小目標
 ついに爆発してしまいました……土方さん達は無事でしょうか……

【吉田歩美@名探偵コナン 紺青の拳(名探偵コナンシリーズ)@小学館ジュニア文庫】
【目標】
●大目標
 死んだ光彦のためにも事件を解決して脱出する。
●中目標
 知世さんに着いていって空港の建物に避難する。
●小目標
 早く逃げないと。

【紅月圭@怪盗レッド(1) 2代目怪盗、デビューする☆の巻(怪盗レッドシリーズ)@角川つばさ文庫】
【目標】
●大目標
 殺し合いから脱出し、主催者を討つ。
●中目標
 飛行機から離れる。
●小目標
 ライやロボたち首輪解除要員と合流したい。

【パステル・G・キング@フォーチュン・クエスト1 世にも幸せな冒険者たち(フォーチュン・クエストシリーズ)@ポプラポケット文庫】
【目標】
●大目標
 ノルの生死を確かめて殺し合いから脱出する。
●中目標
 飛行機から離れる。
●小目標
 ???

【水守理音@かがみの孤城@ポプラキミノベル】
【目標】
●大目標
 生きてここから脱出する。
●中目標
 飛行機から離れる。
●小目標
 志村さんを連れて逃げる。

【カザン@妖界ナビ・ルナ(10) 光と影の戦い(妖界ナビ・ルナシリーズ)@フォア文庫】
●大目標
 タイと合流する。
●中目標
 竜堂ルナを殺す。
●小目標
 キルスコアを稼ぐが、まずは傷を治す。

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