森の中を、不釣り合いな二人組が歩いている。
片方は黒いスーツと帽子を身につけた、ひげ面の中年男。
もう片方はひらひらのかわいらしい衣服を身にまとった、金髪の美少女だ。
片方は黒いスーツと帽子を身につけた、ひげ面の中年男。
もう片方はひらひらのかわいらしい衣服を身にまとった、金髪の美少女だ。
(まったく、ついてねえぜ……)
顔を相棒から背けながら、ひげ面の男……次元大介はひっそりとため息をつく。
彼に、殺し合いに乗る意志はない。
あんな得体の知れない化物に従う義理はないし、命惜しさに服従するなど彼のプライドが許さない。
裏社会に長年身を置いてきたのだ。死ぬ覚悟など、とうの昔にできている。
……とまあ、ここまではハードボイルドに決めていたのだが、よりによって子供に出会ってしまったのが彼にとって不本意な展開だった。
殺すなど論外。かといって、無法地帯で放置するのも目覚めが悪い。
そうなれば、連れて行くしかない。
子供のお守りなど、もうこりごりだというのに。
おまけにこのマリナという少女、将来は探偵になりたいらしい。
ますます、どこぞのメガネのガキを思い出して気が滅入る。
彼に、殺し合いに乗る意志はない。
あんな得体の知れない化物に従う義理はないし、命惜しさに服従するなど彼のプライドが許さない。
裏社会に長年身を置いてきたのだ。死ぬ覚悟など、とうの昔にできている。
……とまあ、ここまではハードボイルドに決めていたのだが、よりによって子供に出会ってしまったのが彼にとって不本意な展開だった。
殺すなど論外。かといって、無法地帯で放置するのも目覚めが悪い。
そうなれば、連れて行くしかない。
子供のお守りなど、もうこりごりだというのに。
おまけにこのマリナという少女、将来は探偵になりたいらしい。
ますます、どこぞのメガネのガキを思い出して気が滅入る。
「あっ、あそこにも銃が!」
ふいに、マリナが大声を上げる。彼女の指さす先には、無造作に拳銃が放置されていた。
「これで三つ目ですね。私も一つくらい持っておいた方がいいですかね?」
「やめとけ。素人が銃なんぞ撃ったってそうそう当たらねえよ。
石ころ投げた方がまだましだ」
「やめとけ。素人が銃なんぞ撃ったってそうそう当たらねえよ。
石ころ投げた方がまだましだ」
そう告げながら、次元はマリナが拾った拳銃をすぐに取り上げる。
できれば使い慣れたいつもの銃でこの窮地を切り抜けたいところだが、銃弾は無限ではない。
故障などのトラブルが起こる可能性も、決して低くはない。
スペアがあるに超したことはないのだ。
もっとも、だからといって動きが阻害されるほど拾っていては本末転倒だが。
ちなみに、マリナに対しては海外でボディーガードなどをしているため銃に詳しいと言ってある。
嘘はついていない。本業が別にあるだけだ。
できれば使い慣れたいつもの銃でこの窮地を切り抜けたいところだが、銃弾は無限ではない。
故障などのトラブルが起こる可能性も、決して低くはない。
スペアがあるに超したことはないのだ。
もっとも、だからといって動きが阻害されるほど拾っていては本末転倒だが。
ちなみに、マリナに対しては海外でボディーガードなどをしているため銃に詳しいと言ってある。
嘘はついていない。本業が別にあるだけだ。
(しかしこの頻度で拾えるってことは、会場内にはとんでもない数の銃がばらまかれてるってことか?
あのウサギ、軍事企業の社長か何かかよ)
あのウサギ、軍事企業の社長か何かかよ)
そんなことを考えながら歩を進めていた次元の足が、不意に止まる。
風が、とあるにおいを運んできたからだ。
あまりに嗅ぎ慣れた、されど永遠に好きになるなることはないであろうにおい。
血のにおいだ。
風が、とあるにおいを運んできたからだ。
あまりに嗅ぎ慣れた、されど永遠に好きになるなることはないであろうにおい。
血のにおいだ。
「次元さん……」
マリナも、においに気づいたのだろう。不安そうな表情を見せる。
「俺の後ろに隠れてろ」
ぶっきらぼうに言い放つと、次元は警戒しつつゆっくりと歩を進めていく。
やがて、においの原因が見えてきた。
それは学生服のような服装の、金髪の青年だった。
あるいは少年といっていい年齢かもしれないが、その辺はこの際どうでもいい。
胸を銃弾で貫かれた跡が、遠目にも確認できる。
顔からも完全に血の気が失せており、すでに死んでいるのは明らかだ。
やがて、においの原因が見えてきた。
それは学生服のような服装の、金髪の青年だった。
あるいは少年といっていい年齢かもしれないが、その辺はこの際どうでもいい。
胸を銃弾で貫かれた跡が、遠目にも確認できる。
顔からも完全に血の気が失せており、すでに死んでいるのは明らかだ。
(だが……)
次元は警戒を強める。
理由は、死体の血だ。
服はべったりと血に染まっているというのに、周囲の地面にはほとんど血が見られない。
それはつまり、誰かが別の場所で死んだ人間をあそこまで運んで放置したということだ。
殺し合いの場で、そんなことをする理由は一つ。
死体で通りかかった人間の注意を引き付け、その隙に奇襲をかけるためだ。
理由は、死体の血だ。
服はべったりと血に染まっているというのに、周囲の地面にはほとんど血が見られない。
それはつまり、誰かが別の場所で死んだ人間をあそこまで運んで放置したということだ。
殺し合いの場で、そんなことをする理由は一つ。
死体で通りかかった人間の注意を引き付け、その隙に奇襲をかけるためだ。
「おい、逃げるぞ!」
マリナに声をかけ、次元はきびすを返そうとする。
だがその瞬間、信じがたいことが起きた。
明らかに死んでいるはずの青年が、立ち上がったのだ。
だがその瞬間、信じがたいことが起きた。
明らかに死んでいるはずの青年が、立ち上がったのだ。
「ひぃっ!」
「マリナ! 俺がいいと言うまで、目をつぶってろ!」
「マリナ! 俺がいいと言うまで、目をつぶってろ!」
おびえる少女に向かって叫ぶと、次元は迷うことなく青年に向かって発砲する。
銃弾は見事、青年の額に命中する。
だがそれでも、青年は止まらない。
刀を手にし、俊敏な動きで突っ込んでくる。
銃弾は見事、青年の額に命中する。
だがそれでも、青年は止まらない。
刀を手にし、俊敏な動きで突っ込んでくる。
「ゾンビは頭撃ったら死ねよ、ちくしょう!
ラジコンでも埋め込んであるのかよ!」
ラジコンでも埋め込んであるのかよ!」
悪態をつきながら、次元はマリナを抱えて突進を回避する。
その時、次元は見た。
青年の体から、何本もの糸が伸びているのを。
その時、次元は見た。
青年の体から、何本もの糸が伸びているのを。
「人間マリオネットってわけか。思ってたよりアナログだな。
しかし……!」
しかし……!」
次元は歯がみする。
トリックがわかっても、それに対抗できるかはまた別問題だ。
いかに次元が射撃の名手といっても、目視が困難なほど細い糸に銃弾を当てるのは至難の業だ。
この場面では、銃より刃物がほしいところである。
トリックがわかっても、それに対抗できるかはまた別問題だ。
いかに次元が射撃の名手といっても、目視が困難なほど細い糸に銃弾を当てるのは至難の業だ。
この場面では、銃より刃物がほしいところである。
「ああ、もう! なんでこんな時にいねえんだよ、五ェ門!」
自分でも理不尽だと思いつつ、次元はこの場にいない仲間へ批難を飛ばした。
◆ ◆ ◆
「からくりには気づいたみたいだけど……。だからといって打ち破れるかしら?」
少し離れた木の上で、白い髪に白い肌の女がほくそ笑む。
彼女は十二鬼月・累から、力と母の役割を与えられた鬼だ。
彼女は十二鬼月・累から、力と母の役割を与えられた鬼だ。
母蜘蛛は、是が非でもこの殺し合いを勝ち残る気でいた。
理由は単純に死にたくない、それだけだ。
悲しいことに、恐怖で服従を強いられることに彼女は慣れてしまっていた。
理由は単純に死にたくない、それだけだ。
悲しいことに、恐怖で服従を強いられることに彼女は慣れてしまっていた。
数十分前、銃声を聞きつけ廃村までやってきた母蜘蛛は、そこで憎き鬼殺隊士の死体を見つけた。
さらに村の中を探索し、隠されていた日本刀も発見した。
入っていた箱によれば三日月なんとかという名刀らしいが、彼女にとって刀の名前などどうでもいいので覚えていない。
ともかく、母蜘蛛はこの二つを使った策を考えつく。
すなわち死体に刀を持たせ、自分の能力で操って戦わせるという策略である。
考えついたといっても、要はいつもの戦闘スタイルと同じだ。
十分に慣れたこの戦い方なら、人間ごときに後れを取ることはないと彼女は確信していた。
さらに村の中を探索し、隠されていた日本刀も発見した。
入っていた箱によれば三日月なんとかという名刀らしいが、彼女にとって刀の名前などどうでもいいので覚えていない。
ともかく、母蜘蛛はこの二つを使った策を考えつく。
すなわち死体に刀を持たせ、自分の能力で操って戦わせるという策略である。
考えついたといっても、要はいつもの戦闘スタイルと同じだ。
十分に慣れたこの戦い方なら、人間ごときに後れを取ることはないと彼女は確信していた。
「無駄な抵抗はやめて、さっさと死んでくれると助かるのだけど……」
そう呟く母蜘蛛の顔には、今も笑みが浮かんでいる。
だがその笑みは、どこかいびつだった。
だがその笑みは、どこかいびつだった。
【0130 森】
【蜘蛛の鬼(母)@鬼滅の刃 ノベライズ~きょうだいの絆と鬼殺隊編~(鬼滅の刃シリーズ)@集英社みらい文庫】
【目標】
●大目標
生き延びる
●小目標
二人組を殺す
【目標】
●大目標
生き延びる
●小目標
二人組を殺す
【備考】
※蜘蛛の鬼(母)が見つけた刀は、「三日月宗近@劇場版刀剣乱舞」です
※蜘蛛の鬼(母)が見つけた刀は、「三日月宗近@劇場版刀剣乱舞」です