日比野明は初期位置の中華料理屋で一心不乱に中華鍋を振るっていた。
家が洋食屋というのもあるが、そもそも日比野は食べることが好きである。クラスで一番のデブであることからもそれは明らかだ。
だがいくら日比野がくいしんぼうでもただ単に料理をしようというわけはない。自分の得意なことを無心でやって冷静になろうとしていた。しかもその結果美味しいものまで食べられる、一石二鳥の妙案である。
というわけで出来上がったのは、炒飯。せっかくなので中華にしたが、これがイケる。八角の効いた角切りチャーシューが食えば食うほど食欲を増させる。
家が洋食屋というのもあるが、そもそも日比野は食べることが好きである。クラスで一番のデブであることからもそれは明らかだ。
だがいくら日比野がくいしんぼうでもただ単に料理をしようというわけはない。自分の得意なことを無心でやって冷静になろうとしていた。しかもその結果美味しいものまで食べられる、一石二鳥の妙案である。
というわけで出来上がったのは、炒飯。せっかくなので中華にしたが、これがイケる。八角の効いた角切りチャーシューが食えば食うほど食欲を増させる。
「ふぅー……ごちそうさまでした。」
ものの数分で完食。付け合せのザーサイとたまごスープもきれいに平らげ、満足げな顔で水へと手を伸ばす。水さしの奥には、ライフルが鎮座していた。
「……マジで殺し合いかよ。」
そして日比野はようやく現実を受け入れ、テーブルにつっぷした。
日比野はつい先日、殺人鬼と対峙した。仲間の弟を狙った犯行をなんとか食い止めたが、あの時には何人もの仲間と協力して、たった一人の殺人鬼を撃退したのだ。
だから日比野は、この殺し合いの参加者の中で誰よりも事態を重く受け止めている人間の一人である。目の前の銃に、床に落ちている銃、銃、銃。これだけ落ちていれば撃ち放題殺し放題だろう。それに、どうしても殺人鬼が参加者にいるんじゃないかという気がしてならない。それはこの間の事件がそう思わせていると日比野本人も思っているが、実際は殺人鬼はもちろん本物の鬼などの化物がゴロゴロいる。彼の危機感は全く杞憂ではない。
で、日比野は困っていた。自分が得意なことは料理ぐらいで、喧嘩はそこそこできるがスタミナが無い。頭の良さもアイデアのひらめきも、自慢できるってほどじゃあない。もちろん銃は使ったことがない。生き残れる未来が見えない。
だから日比野は、この殺し合いの参加者の中で誰よりも事態を重く受け止めている人間の一人である。目の前の銃に、床に落ちている銃、銃、銃。これだけ落ちていれば撃ち放題殺し放題だろう。それに、どうしても殺人鬼が参加者にいるんじゃないかという気がしてならない。それはこの間の事件がそう思わせていると日比野本人も思っているが、実際は殺人鬼はもちろん本物の鬼などの化物がゴロゴロいる。彼の危機感は全く杞憂ではない。
で、日比野は困っていた。自分が得意なことは料理ぐらいで、喧嘩はそこそこできるがスタミナが無い。頭の良さもアイデアのひらめきも、自慢できるってほどじゃあない。もちろん銃は使ったことがない。生き残れる未来が見えない。
「こんなのおれ一人じゃムリだぜ。誰か仲間がいねえと。いてほしくないけど。」
思い浮かべるのは仲間の顔だ。あいつらに殺し合いの参加者になどなってほしくはないが、頼りになるのはやっぱり仲間だ。
「菊地ならまたなんかすごいこと考えついてそうだな。でもあいつ一人だと抜けてっからなあ。相原とか宇野とかならなんかいつもどおりにやりそうだ。うん? てことはまず菊地と合流したほうが良さそうだな、いるかわかんねえけど。」
しょうがねえなあ、と言いながら立ち上がる。方針は決まった。まずは仲間を探す。とっとと合流しないとまずい仲間もいるし、家族が巻き込まれてないかも心配だ。この変な霧の中を歩くことすら嫌だが、急いで動かないともっと嫌なことが起こりそうだと思った。
日比野は店にあった袋に缶詰などの保存食を入れると、一番上に拳銃をのせて店を出た。ライフルは持ってみて一発で持ち歩けない重さだと判断した。このあたり散々いろいろやってきた経験が活きている。持てることと持って動き回れることは全くの別だと日比野は理解していたデブなので余計に。
日比野は店にあった袋に缶詰などの保存食を入れると、一番上に拳銃をのせて店を出た。ライフルは持ってみて一発で持ち歩けない重さだと判断した。このあたり散々いろいろやってきた経験が活きている。持てることと持って動き回れることは全くの別だと日比野は理解していたデブなので余計に。
「しっかし変な町だぜ。見たことない漢字ばっか使われてる。ここ日本じゃねえのか?」
町の看板や缶詰の表記も、全て漢字っぽいなにかだ。歩いていて気味が悪い。そして、どこに何があるのかがわからない。
なんとか地図らしきものを見つけたが、書いてある文字が読めないのでどうしようもなかった。いきなり計画がいきづまった、と天を仰いだ日比野の耳に一つの音が聞こえた。ゴーン、ゴーン、と鐘の音が聞こえた。
なんとか地図らしきものを見つけたが、書いてある文字が読めないのでどうしようもなかった。いきなり計画がいきづまった、と天を仰いだ日比野の耳に一つの音が聞こえた。ゴーン、ゴーン、と鐘の音が聞こえた。
「寺の鐘の音だよな? 誰かいるのか? 菊地が人を集めたくて鳴らしてるとか、ねーよな。いや、ありそうだわ。あいつ、ああいうことやるわ。」
割と菊地に失礼なことを言いながら、日比野はあらためて地図を見た。地図の南の方は建物が少なく、その中に一つ大きな建物がある。そして音の方には小山が見え。かすかに石段も見える。
「たぶんここが寺だな。おれもけっこう閃くぜ。」
自分で自分をほめて、日比野は音のした方へと向かった。とりあえず音がしたってことは誰かいるってことだろう。もちろん殺し合う気のある人間が鳴らしていたり、音を聞いて集まってくるかもしれないが、ビビっててもしょうがない。それに、そんなにみんな殺し合わないだろうという楽観がある。
だがその楽観は、寺の石段の麓まで来たときに裏切られた。思ったより石段が長くてげんなりして見上げていると、上の方に人影が見えた。3人ぐらいだろうか、みんなで登っている。
だがその楽観は、寺の石段の麓まで来たときに裏切られた。思ったより石段が長くてげんなりして見上げていると、上の方に人影が見えた。3人ぐらいだろうか、みんなで登っている。
「やったぜ。チームなら殺し合う気はないだろ。」
自分の勘にニンマリしながら日比野は元気よく石段を登る。見上げたときにはうんざりしたが、誰かと出会えるとなったら俄然やる気が出る。こうなれば柄にも無く速いペースで登るものだが、その矢先突然、銃声が響いた。
「マジかよ」という言葉とともに慌てて石段の脇のちょっとした崖にある木の陰に隠れた。ちょっとあてが外れた、なんて思っている目の前を悲鳴とともに何かが転げ落ちていった。子供だ。子供がすごいスピードで石段を転がり落ちていったのだ。しかもすぐ立ち上がって飛んでいった。
「マジかよ」という言葉とともに慌てて石段の脇のちょっとした崖にある木の陰に隠れた。ちょっとあてが外れた、なんて思っている目の前を悲鳴とともに何かが転げ落ちていった。子供だ。子供がすごいスピードで石段を転がり落ちていったのだ。しかもすぐ立ち上がって飛んでいった。
「お、立った。うわ早っ!?」
思わず実況してしまう。そのぐらい目の前の光景は衝撃的だった。テレビの『世界の衝撃映像』みたいだった。そしてすぐに、それよりすごい光景を目にすることになる。
「大丈夫かっ!」
叫び声を聞いて石段の上を見ると、イケメンが駆け下りて来ていた。そして日比野は視線を少し戻す。通り過ぎたときには見逃したが、石段の途中で何かがいる。
人だ。さっきまで日比野の前を歩いていた人だ。それがゴロゴロ石段を転げ落ちたのか、赤い血の帯を地面に伸ばして倒れている。
何があったのかわからない。日比野がほんの数秒視線を外していたら、たぶんいつの間にかああなっていた。きっと、さっきの子供にぶつかったんだろう。というのはなんとなく想像できた。想像できたが、それが限界だった。
人だ。さっきまで日比野の前を歩いていた人だ。それがゴロゴロ石段を転げ落ちたのか、赤い血の帯を地面に伸ばして倒れている。
何があったのかわからない。日比野がほんの数秒視線を外していたら、たぶんいつの間にかああなっていた。きっと、さっきの子供にぶつかったんだろう。というのはなんとなく想像できた。想像できたが、それが限界だった。
「おええっ……」
日比野は吐いた。
人が死んだ。超あっけなく。
今までなんども死にそうな状況は見聞きしたが、目の前で、殺し合いに乗ってない、良い人達が、簡単に死んだ。
何か大切なものが体から出ていく感じを覚えながら、日比野は吐き続けた。
人が死んだ。超あっけなく。
今までなんども死にそうな状況は見聞きしたが、目の前で、殺し合いに乗ってない、良い人達が、簡単に死んだ。
何か大切なものが体から出ていく感じを覚えながら、日比野は吐き続けた。
【0120ぐらい 住宅地と森の境の寺近辺】
【日比野明@ぼくらのデスゲーム(ぼくらシリーズ)@角川つばさ文庫】
【目標】
●大目標
このクソッタレなゲームをブッ壊す
●中目標
仲間を探す
●小目標
???
【目標】
●大目標
このクソッタレなゲームをブッ壊す
●中目標
仲間を探す
●小目標
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