ザッザッザッ
慎重でそれでいて大胆に歩を進める人物が二人。
ブローノ・ブチャラティグイード・ミスタ
今、二人の間に会話はない。敵に気づかれる可能性があるというのもあるが、なによりこの二人の間に会話なんて必要だろうか?有能な上司と幸運な部下。彼ら二人の間には確固たる信頼があるのだ。
それにこの状況下でなにか話をしないと不安になるほど柔な精神を持っている二人ではない。

彼らが目指しているのはB-3の船。そこを目指してかれこれどのぐらい歩き続けているのか?わからない、わからないがただ着実にそこへ近づいてはいる。
船に向かう目的はブチャラティのけじめ。彼の希望によりこうして二人は歩いているのだ。
暗闇と音のない世界が彼らを包み、沈黙が辺りを支配する。
そんな沈黙はブチャラティに“それ”を考えさせる充分な空間であった。自分のこと、ミスタのこと、先ほど始末した男のこと、そしてスージーのこと。

左手に握りしめている指輪にふと目をやる。銀色に輝くシンプルな指輪だ。一ヶ所にだけ小さな宝石がついている。きっと彼女の手にさぞ美しく映えたに違いない。彼女の夫はこの指輪を苦労して見つけたことだろう。
指輪がキラリと輝いた。星の光を浴び、月の輝きを反射して。
ブチャラティは思った。空を見上げ自嘲的な笑みを浮かべ思った。
(ネアポリスじゃ星なんてめったに見なかったのにな…ギャングが星を見てセンチになるなんて笑われちまうな…)
静寂は彼を落ち着かせた。そして平静は反省への時間を与えるには十分だった。
彼の中で怒りは去った。そう、彼女を直接殺した相手には、だ。しかし“間接的”に殺した相手への怒りは収まらない。間接的に、それは誰か?
それは自分自身。ブローノ・ブチャラティへの怒り。
(…彼女はもうこの美しい夜空をみることはできない…。もう星の数を数えたり、綺麗なまん丸のお月様を見上げたり…。そして、夫と一緒に暮らし、供に歩き、子供を授かることもできない…)


『ヒョッとして恋人ですかァ~~~!? ……まさか婚約者とか! キャ~♪』
『はぁ~い、説明ですねッ!? まずJOJOは婚約者で……きゃー、恥ずかしいっ♪』


思いかえすのは彼女の笑顔。自分の過ち。
ぐっと手に力を込める。爪が手のひらに食い込み、傷をつける。
(…この俺のせいでッ…!!)
ブチャラティはうつむいた。自分のしてしまったことにうつむき、地を、泥を見つめ歩く。
満天の星空の下、一人の男は孤独だった。月も星も風も仲間でさえも今の彼には映らない。
男、ブローノ・ブチャラティは囚人なのだ。一人の女を殺したという罪を背負った囚人。

「…スージー……」
誰にともなく呟いた言葉は風にかきけされた。



二人の囚人が鉄格子の窓から外を眺めた。
一人は泥を見た。一人は星を見た。



◇  ◆  ◇



「それにしてもでけぇ船だなァ――ッ!湖にこんなもん浮かべるなんて荒木のヤツ、なに考えてんだ?」
「“なにも考えてない”んだろう。ヤツにとって面白いからだろ、強いて言うならば。力があるやつは自分の力を誇示したがるものさ。」
気が重い、ブチャラティの気持ちを表したらまさしくこの一言に尽きるだろう。
およそ十分後、彼らはついに目的地にたどり着いた。船へと。
船のデッキの上で靴音を立て、ミスタと供に歩く。人の気配はないが念のため船内を捜索することにした二人はついに問題の地下室の前に立つ。
「ここか……?」
「……ああ…」
部屋は惨劇の跡がいまだ生々しく残っている。ミスタは眉をひそめこの光景に驚きを示し、ブチャラティは顔を背けこの惨劇に嫌悪感を示した。
ゆっくりと部屋に足を踏み入れる。二人の目に部屋の大部分を占めるように置いてある棺桶が嫌でも目に入る。ブチャラティはピタリと立ち止まり、スタンド能力を発動。ジッパーにより棺桶の中に彼女の手をそっと横たえた。
その時ブチャラティを襲ったのは激しい自責の念。
彼女の変わり果てた遺体を見た時彼の中でまたもや湧き出てくる押さえきれない感情。
(……ッ!)
やり場のないこの気持ちをどうしたらいいのだろう?それは誰にもわからない。正解なんてないのだから。
(俺があの時…いや、しかし…)
彼は沈んでいく。いくつもの仮定の世界へ。彼の目が死んだ魚のように暗くなる。
(クソッ…俺は……スージーッ!)
こんな姿のブチャラティを見たらミスタはどうするのか?彼ほどの男がブチャラティをそのままにしておくのか?いや、そんなわけがない。
だが…

「動くんじゃねぇぞ、ブチャラティ。少しでも動いたらよォ、どうなるかわかってんだろうな?」

ブチャラティの後頭部に手榴弾が突きつけられていた。



◇  ◆  ◇



「…なんのつもりだ?ミスタ…」後頭部に感じる冷たい感触。ピンひとつによる生への停滞。
「なんのつもりも、くそもないぜ…ブチャラティ……」流れ落ちる汗。焦り、疑問、そしてなにより驚き。
「落ち着け、ミスタ…ここで俺を殺「あまりお喋りが過ぎると舌噛んで死ぬぜ。黙って俺の言うことを聞きなッ!」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ
      ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
                    ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!

瞬間、頭に触れていたモノがなくなる。振り向くと真剣な目付きのミスタが立っていた。その右手には武器。たが今の彼には殺気がない。
あるのはまるでPKを外したサッカー選手を向かい入れる監督のような目。
厳しさ、優しさ、疑問を含んだ目であった。

「ブチャラティ…いつものあんただったらこんなこと、俺にはとてもじゃねぇが出来ねぇぜ?
いつものあんただったら俺が手榴弾を取り出そうとした瞬間、その気配に気づいて言うだろう、“どうした、敵か?”ってな。
もしくは手榴弾のピンが“抜かれるより素早く”ステッキィ・フィンガーズを俺に叩きこむ。その“後”にこう言うはずだ、“…なんのつもりだ?ミスタ…”ってな。」

ブチャラティは黙ったままミスタの話を聞いている。その顔を見たミスタは彼の胸ぐらを掴む。なぜならその顔は彼が知っているブローノ・ブチャラティの顔ではなかったからだ。ひとり、ふぬけた脱け殻のような顔をした男がそこにいたからだ。
「俺が言いたいのはたった1つのシンプルなことだぜ…ッ!俺は今まで単純に生きて来たから難しいことはわからねぇ…。でもよォ、そんな俺でもわかることがあるッ!それは、いまのあんたはいつものあんたじゃねぇってことだ!」
無反応。ブローノ・ブチャラティはこの言葉にもなんの反応を示さない。それがミスタのイライラに拍車をかける。
「ブチャラティ……いつまでも失敗をひきずってんじゃねーよ、このスカタン!てめえがフラフラしてたら俺たちチームはどうすりゃいいんだよッ!」
だから殴った。ミスタは殴った。
鈍い音と供に吹き飛ばされるブチャラティ。壁に背をつけ彼は反射的に殴られた頬を押さえる。奇しくもそれはスージーがひっぱたいた箇所と同じ。
「てめえはブローノ・ブチャラティだろッ!俺が知っているブチャラティは少なくとも現実を見る男だ!去ってしまった者たちから受け継いだものを先に進めることができる男だ!そのスージーって女の意志はなんだ?
その女の望みはなんだ?そいつはいつまでもあんたにここでうじうじ悩んで欲しいと思ってるのかッ?!答えろよ、ブチャラティッ!」

スージーの意志。
その大きな言葉がブチャラティを行動させた。
ヨロヨロと生まれたてのバンビかのように、だが確かに自分の足でブチャラティは立ち上がった。
「違う…いや、違うッ!」
彼の唇から言葉がつむぎだされる。その言葉は力強い。
「なら、どうするんだ?あんたは彼女にどう示すんだよ?」
ブチャラティが次にとった行動は再び棺桶に向かうこと。一瞬彼の目に影がさす。目を閉じるブチャラティ。カッとその目を開く。そして彼はじっと彼女の亡骸を見つめる。輝きを取り戻したその目で。
「…行動で示す。俺たちギャングはそれしかないだろう。“やる”と思ったときにはもうすでに“やって”しまっているんだ…。だから、彼女にもッ!!」
ブチャラティはしばらくそうした後棺桶よりなにかを取りだした。
「この俺のッ!行動で示すッ!この俺がッ!必ずやこのゲームをぶっ潰すと!」
ミスタは安堵した。なぜなら現実と向き合う彼の目はまさしくブローノ・ブチャラティの目であったからだ。
「ミスタ、外に出よう。相談したいことがある。」
扉を出て行く男の背中。やけに眩しく、頼もしく見えた。
彼が手に持っていたもの、それは銀色に輝く輪。
指輪…?いや、違う。
荒木によってつけられた呪われた結婚指輪。死が二人を分かつまで。
首輪であった。



◇  ◆  ◇



「休息?」
「ああ。理由は3つ。ひとつに身体にダメージ負っていることもあるがなによりこの特別な状況では精神が先にやられる。これから先、休息の時間など取れる機会なんて滅多にないだろ。ならば休める時に休んでおくべきだ。
ふたつに、この時間帯、視界がきかないこと。俺のスタンドや、今現在銃を持っていないお前では遠距離型スタンドに対しての対抗手段がない。昼間なら敵の居場所がわかれば二人いるこっちのほうが有利だ。だがこの暗闇じゃ敵の居場所を戦闘中に突き止めるの厳しいだろ。
そしてみっつめ、現在地にも問題がある。がむしゃらに動いてもこの地図の端であるここで大した情報が手に入るとは思えない。しかもお前はより中心部に近い南よりやってきたにもかかわらず俺以外には会ってないんだろ?今ここらに、参加者が多く集まってるとは思えないな…。
よって朝、日が昇るまで、つまり第一回放送が流れるまでここで休息をとることを提案する。納得か?」
「まぁ、確かに筋は通ってるぜ…。でもよォ、ブチャラティ、ひとつだけだ。ひとつだけ言わせてくれ。」
「なんだ?」
「もしかしたらたった今この近くで俺たちチームの誰かが危機に陥ってるかもしれねぇ…。殺戮者によってあんたが救えなかったスージーと同じようなただの女が殺されてるかもしれねぇ…。トリッシュが面倒なことに巻き込まれてるかもしれねぇ…。」
「……………」
「仮にそんな出来事が起き、あいつらが死んでもあんたはこの行動が正しかったと言えるのか?ここで休息をとっていたことを誇れるのか?あとで“やっぱりこうしておけば…”なんて後悔しないのか?」
「………言えないだろうな。後悔するだろうな…」
「!?」
「後悔するだろうし、落ち込むし、自分自身を責めるだろう。だが俺はやつらを信じてる。トリッシュも信じてる。正しい行動をとる俺たちに未来があろうことを信じてる。
「…………」
「そして覚悟した。誰一人犠牲になることなくこのゲームを終わらせるのは難しい。だけどな、この俺の目の前で誰か犠牲になりそうになったら俺が守るッ!無謀かもしれない、難しいかもしれない。けどそれがスージーを殺してしまった俺の決意だッ!」
「…やっぱりブチャラティ、あんたは俺たちのリーダーだぜ…。それほどの覚悟があるなら、俺はやっぱりあんたに付いていこうって思うぜ!」
「納得か?」
「ああ、納得だ。」
「なら先に寝ろ、ミスタ。見張りは俺がやろう。考えたいこともあるしな。」
「ならお言葉に甘えてよォ、おねんねさせてもらいますか―――ッ!おやすみ、ブチャラティ!」



◇  ◆  ◇



随分と強烈に殴ってくれたようだな…。この様じゃ青アザでもできてるんじゃないか?…だが有難い一撃だった。この痛みがなかったら今でも俺は過去に囚われ、悩んでいたことだろう。
俺も良い部下に恵まれたもんだ……。ありがとう、ミスタ。

さて、それよりこのゲームについて考えなければならないな。そのためにも荒木のことを知らなくては…。
孫子の一説にもあるな、“敵を知り、己を知れば百戦百勝”ってな。
とりあえずデイバッグに入っている中で重要そうなものを取り出してみる。名簿、首輪、地図そして紙と鉛筆。
メモしとけば後々ほかのやつらに俺の考えを伝える上で楽になるだろう。
まず考えなければならないことを大まかにわけて3つ書いてみよう。

①荒木飛呂彦について
②首輪について
③参加者について

このゲームの大元となる①はとりあえず後で考えよう。思うに、②と③について考えれば①については自ずととわかってくるだろう。よってまず②からだ。

…首輪を持ち上げ様々な角度から見てみるが、この首輪、ものすごい技術で出来てるな…。繋ぎ目がなく、ツルツルしている表面。銀色に輝き、重さは信じられないくらい軽い。まるで指輪のようだ…。
隣に寝ているミスタのものと比べてみたところ、唯一気づいた違いは首輪の正面についている電球の点滅があるか、ないかだ。
スージーの首輪は今現在この点滅がない。よってこの首輪が活動停止状態にあると考えて良いだろう。
だが活動停止と言っても中に火薬は入っているはずだ。それにヤツがパフォーマンスで見せたように手動起爆装置があるだろう。

スティッキィ・フィンガーズを発動し、中を覗こうとする行為はリスクが高いな…。何らかの手段、それこそヤツのスタンド能力でこちらの状況を把握してる可能性がある今、首輪を二つにした瞬間首輪が爆発、なんてこともあるだろうからな…。
とりあえずまとめるとこんな感じか?

  • 繋ぎ目がない→分解を恐れている?=分解できる技術をもった人物がこの参加者の中にいる?
  • 首輪に生死を区別するなんらかのものがある→荒木のスタンド能力?
  • スティッキィ・フィンガーズの発動は保留 だか時期を見計らって必ず行う

続いて③についてだ。名簿を取り出し、今一度上からざっと目を通す。
…やはり気になるのが“ジョースター”が四人、“空条”が二人、“ ツェペリ”も二人いることだ…。親子か、兄弟か、あるいは従兄弟か。それはわからないが彼らが少なくとも血縁上の関係を持っていることは間違いないだろう。
やつから見たら家族が互いを案じ、苦渋の決断をし、そして死を知って絶望することは“楽しみ”なんだろうな…。
その歪んだ思考、家族の運命を狂わすこのゲーム、吐き気がする…ッ!!

荒木はこの三つの一族に何らかの恨み、こだわりをもっているのではないか?いや、もしかしたらこのうちどれかひとつだけで、ほかの二つはそのひとつの一族に巻き込まれただけという可能性も…?
わからないが、ジョセフ・ジョースター、エリザベス・ジョースター、シーザー・アントニオ・ツェペリ、信頼の置ける彼らに会ったら聞いてみよう。荒木と一族について。
もうひとつ、気になるのが“ジョースター”“空条”“ツェペリ”供にバラバラに乗っている点。一番上にジョナサン、近くにジョージ、少し間をおいてエリザベス、すぐ下にジョセフ。
続いて空条承太郎。名簿の終わりには空条徐倫。ツェペリは上のほうにふたつ別々に並んでいる。

…この名簿はなにを基準で並べられているんだ?スージーの話と俺自身の仲間たちの名前から知り合いが固まっていることはわかった。だがそれ以外にはなにか法則があるのか?
…強いていうなら国別か?英国、米国、日本、イタリアの四カ国の人間がそれぞれ分けられているのか?しかし“カーズ”“ワムウ”“サンドマン”…。いったい何人だ?まぁ、これはこじつけか?
…待てよ、知り合い同士を固めているのならば家族はなぜ固めない?それこそこれほどたくさん血縁関係をもっているであろう人物がたくさんいるのに。
やはりなにか法則性が…?
…まぁそこまでこだわらないでいいだろう。ともかく“ジョースター”“ツェペリ”“空条”この三つの一族については注意せねばならない。

次に名簿を見ていて俺が思い出したのは先ほどの男のこと。そう、スージーを殺したあの男だ。
動機などはないに等しいだろう。この状況、あの殺害方法、残虐性。荒木の立場から言ってあの男には積極的にこのゲームを促進する“良い”参加者なのだろう。やつもそれを買って参加者にしたんだろうな。

…だが腑に落ちないことがある。やつは武器を持っていなかった。そしてどちらかといったら小柄な体格。そして特別身体を鍛えたようにも見えなかった。
おれが腑に落ちないこと、それは

やつがどうやってスージーをあのように“バラバラ”にできたのか?
俺との戦闘での異常な耐久力とスピードはいったいなんだ?

しかもあの短時間で。…武器を隠し持っていた?いや、俺との交戦中、武器は使わなかった。自分の力で?いや、不可能だ。そんな力、人間では不可能…。
服の下に何らかの防御服?だがあの敏捷性はどう説明する?
…もしやヤツはスタンド使い?そう思えば納得できる点はある。スピードと耐久力はスタンド能力なのだろう。そういえば身にまとうタイプのスタンドがあるとなにかで聞いたことがあるな…。
しかし逆に疑問が出てくるのも事実。俺のスティッキィ・フィンガーズに対して何らかの反応を示さなかった、それがおかしい。
ならば…やつの正体は?
今更ながらやつを尋問しとけばよかったな…。痛みつければなにか吐いただろう。もっとも後悔はしてないがな…。
そういえばスージーもスタンドが見えていたな…。そのとき思った空間自体に、スタンド能力がという推測は案外当たっているのかもしれない。
とにかくやつから学んだこと、それはこのゲームは簡単にはいかないこと。一般人から見たら未知の能力であるスタンド能力のように、なにか未知の能力がある、ということだろう。
ではまとめよう。

  • 知り合いが固められている→ある程度関係のある人間を集めている。なぜなら敵対・裏切りなどが発生しやすいから
  • 荒木は“ジョースター”“空条”“ツェペリ”家に恨みを持った人物?→用確認
  • なんらかの法則で並べられた名前→国別? “なんらか”の法則があるのは間違いない
  • 未知の能力がある→スタンド能力を過信してはならない
  • 参加者はスタンド使いまたは、未知の能力者たち?
  • 空間自体にスタンド能力?→一般人もスタンドが見えることから

名簿についてはこれぐらいかな…。ほかに、気になる点としては…。
……ちょっと待て。少し引っかかるものがある。ほんの少しだが、なにかひっかかる。俺がこの名簿をはじめて見たときからの違和感。それは、
“ナランチャの名前がないこと”
これだ。俺が感じた違和感はこれだ。
俺たちチームはナランチャを除き全員いる。新入りのジョルノも、ボスから命じられ守るよう指示されたトリッシュの名前もある。ではなぜナランチャがいないんだ?これにはなにか理由があるのか?荒木にとって不都合になることでも…?
仮にナランチャが参加した場合、荒木にとって結構な利点があるのだと思うが…。
あいつのスタンド、エアロスミスはこのゲームにおいて―――-―――-

                         !!


そうだ、エアロスミスだッ!ナランチャが参加しなかった理由、いや参加できなかった理由ッ!それはやつのスタンド、エアロスミスの能力ッ!
もしかしたら俺の考えすぎかもしれない…。荒木の気まぐれでべつに理由などないのかもしれない…。ただの偶然かもしれない…。
だが俺の仮定、それはこのゲームにおいて一筋の希望に見える!俺の推測、それは


『荒木飛呂彦がナランチャを参加させなかった理由、それはやつがエアロスミスの射程距離内にいるから』


エアロスミス、その能力は二酸化炭素を察知する能力。きっとそれによって自分の位置がばれてしまうからではないか?
取り出した地図を手元に引き寄せじっくりと観察する。この巨大なゲーム、主催者にとって不都合なことが起きる可能性は非常に高いだろう。誰かが首輪をはずす、荒木を倒すほどの力をつける、参加者が一致団結して荒木に立ち向かう。どのことも起こりうるだろう。
そういったことが起きた場合、どうするか?やつが直接“ケリ”をつけるしかあるまい。ならばやつは自ずとこの舞台に参加できるようになっているはず……!!
北・西・南は陸、禁止エリアで封じられている。東は海、その向こうはどうなっているかわからない。
ならば俺がやるべきことは…。
地図の向こう側、その謎のエリアを見にいくしかあるまい!!そこに荒木がいるかもしれないのだからなッ!!
幸いここは地図の端。北と西の禁止エリアで区切られた箇所を見に行くとしよう。それでも何も見つからなければ海の向こうへ…。

荒木、待ってろよ…。貴様はただそこで高みの見物を決め込むつもりだろう…。しかし俺がさせないッ!!
かならずこのゲームをぶっ潰すッ!!貴様を引きずり出すッ!!俺の誇り、覚悟、そして命さえ賭けてッ!!
そしてなによりスージーのためにッ!!俺はこのゲームを潰すッ!!



◇  ◆  ◇



ブローノ・ブチャラティが立てたひとつの仮説。
それははたして真実にたどり着く正しい意志なのか?それとも全て荒木によって計算された遊戯なのか?
はたしてブローノ・ブチャラティがなるのはどっちだ?英雄か、ピエロか?
ただひとつかれはこのゲームにおいて希望を持ち始めた。それだけは収穫といえるだろう。

空を見上げる彼の目には光り輝く星が映った…。彼は笑みを浮かべた。彼女に届くように。
そして彼女にはブローノ・ブチャラティが輝く星に見えただろう。このゲームを希望という名で照らし出す大きな星に。

二人の囚人が鉄格子の窓から外を眺めた。
一人は泥を見た。一人は星を見た。





【B-3/船の上/1日目 早朝】
【ブローノ・ブチャラティ】
[時間軸]:護衛指令と共にトリッシュを受け取った直後
[状態]:肩に切傷(血は止まりました) 左頬がはれている
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、荒縄、シャーロットちゃん、スージーの指輪
[思考・状況]基本行動方針:打倒主催、ゲーム脱出
1.ミスタが起きたら自分の仮説について意見をもらう。その後 第一回放送まで休息をとる。
2.とりあえず北・西の地図の端を見に行く。南・東は機を伺い見に行く。
3.絶対にジョセフと会い、指輪を渡す。彼にはどう詫びればいいのか…
4.チームの仲間に合流する。極力多くの人物と接触して、情報を集めたい。
5.ボスの娘、トリッシュを護衛する。その為にも早くトリッシュに会わなくては。
6.“ジョースター”“ツェペリ”“空条”の一族に出会ったら荒木について聞く。特にジョセフ・ジョースター、エリザベス・ジョースター、シーザー・アントニオ・ツェペリには信頼を置いている。
[備考]
※パッショーネのボスに対して、複雑な心境を抱いています。
※ブチャラティの投げた手榴弾の音は、周囲一マスに響きわたりました。
※ブチャラティが持っている紙には以下のことが書いてあります。
①荒木飛呂彦について    
  • ナランチャのエアロスミスの射程距離内いる可能性あり
②首輪について
  • 繋ぎ目がない→分解を恐れている?=分解できる技術をもった人物がこの参加者の中にいる?
  • 首輪に生死を区別するなんらかのものがある→荒木のスタンド能力?
  • スティッキィ・フィンガーズの発動は保留 だか時期を見計らって必ず行う
③参加者について
  • 知り合いが固められている→ある程度関係のある人間を集めている。なぜなら敵対・裏切りなどが発生しやすいから
  • 荒木は“ジョースター”“空条”“ツェペリ”家に恨みを持った人物?→用確認
  • なんらかの法則で並べられた名前→国別? “なんらか”の法則があるのは間違いない
  • 未知の能力がある→スタンド能力を過信してはならない
  • 参加者はスタンド使いまたは、未知の能力者たち?
  • 空間自体にスタンド能力?→一般人もスタンドが見えることから


【グイード・ミスタ】
[時間軸]:とりあえずイルーゾォ戦の後。どれくらい後なのかは不明
[状態]:健康
[装備]:ナランチャのナイフ、手榴弾4個
[道具]:不明支給品残り0~1(あるとしたら武器ではないようです)
[思考・状況]基本行動方針:ブチャラティと共に行動する。ブチャラティの命令なら何だってきく。
1.おやすみ………
2.エリナの誤解を解きたいな
3.アレッシーうざい
4.あれこれ考えずシンプルに行動するつもり。ゲームには乗らない
備考:二人がした情報交換について
※ブチャラティのこれまでの経緯(スージーとの出会い~ワンチェン撃破まで)
※ミスタのこれまでの経緯(アレッシー、エリナとの出会い~ブチャラティと合流まで)



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46:Shout at the Zombie ブローノ・ブチャラティ 105:蛇足
46:Shout at the Zombie グイード・ミスタ 105:蛇足

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最終更新:2009年11月03日 20:58