★   ☆   ★



「ふむ……荒木は時を操るスタンド使いかもしれんのう」
「時を操る……だと?」
「さっき言ったじゃろ? DIO様の能力も時間に干渉するものじゃ。
 ならば荒木が持っている可能性だって十分ある。じゃがな……帝王の器は二人もいるべきじゃない!
 荒木! 愚かにもDIO様に楯突いた罪は重いぞ!!」

タルカスの話を聞いたエンヤが導き出した結論。
それは荒木が時を操るスタンド能力者であるということであった。
根拠は一切ない。
恐らく彼女がDIOの能力を知らなければ気付かなかったであろう仮説。
そして、その仮説はエンヤの怒りを大いに買う事となった。



ザ ワールド
『世界』




帝王であるDIOにのみ許された文字通り世界を支配するに相応しい能力。
時を止めると言う強大すぎる能力は普通を大きく逸脱したような人物であろうと使いこなせない。
世界があるからDIOが帝王になったのではない。
DIOが帝王の器であったからこそ世界を手足のように使いこなせるのだ。
なのに、あの東洋人―荒木―はその神聖な領域に土足で踏み込んできた。

タルカスとの会話の途中で気が付いた。
J・ガイルは生きていたのではない。荒木によって生き返らされた。もしくは生きていたときから連れて来られたのだと。
息子ともう一度出会うチャンスを与えてくれた荒木には少なからず感謝していた。
ついさっきまでは。
今の彼女の胸に巣食うは荒木に対するどす黒い怒り。
主を侮辱された事への怒りが彼女の心を突き破って噴出しようとする。
いや、既に噴出し始まっていた。
見るものに恐怖を与える白さを孕んだ霧となって。
彼女の体から正義が噴出する。
ギャグ漫画で怒った人の頭から湯気が出ると言う表現がよくあるがこれはその比ではない。
ドライアイスを水に入れた時の様に発生する霧のような濃さ、そして噴火した火山ガスのように多量の霧が体全体から発生しているのだ。
一メートル先すらまともに見ることが出来ない。
目の前に手を出してもその手すらぼやけて見える。完全に白一色で覆われた世界が唐突に動き出す。
半径100メートルは広がった霧が、排水溝に吸い込まれる水のように渦巻きながら一箇所に収束する。
限界まで密度を大きくしたそれはもはや霧とはいえない。
そして、球体になったそれから生まれいずる異形。
タルカスは思わず恐怖した。
自分の体躯と同じくらいの王冠を被った髑髏。
その頭を両手で抱えて毒薬を飲んだが如くのた打ち回る。
タルカスには確かに聞こえた。髑髏の、エンヤ婆の怨嗟の声が。


*  *



「ぜひぜひぜひっひゅーひゅー。
 ひ、久しぶりじゃ……ここまでスタンドを酷使したのはのう……」

一時的とはいえ制限を力ずくで突破した。
それによるエンヤの疲労は計り知れず、民家の壁にもたれかかって座り込む羽目になってしまう。
完全に肩で息をするエンヤからは先刻の迫力は全く感じられず、一見只の老婆にしか見えない。
スタンドを少し引っ込めることによって精神力の回復を計るエンヤ。
彼女がスタンドを解除したおかげで町は本来の姿を取り戻した。

マンションやアパートは殆どなく、一軒家が等間隔で並んでいる。
それは日本に置いては極々普通の光景。
アスファルトに覆われた地面も、頭上に見える電線も日常生活に完全に溶け込んでいるものであった。

「そういえば何故貴様は常にスタンドを発動しているのだ?」

現代文明に全く無縁なタルカスであったが、それらに興味を持つ事は一切ない。
出会った時から一番の疑問であった事をエンヤへとぶつける。

タルカスの質問ももっともな物である。
昼夜を問わず、霧がある一帯にだけ広がっていたらかなり目立つ。
奇襲を受ける確立だってぐんと上がるし、獲物に逃げられるかもしれない。
一見エンヤの行動は非常に不合理なものであるかのように見えた。
だが、彼女も何の考えもなく正義を常時発動させているわけではない。
たった一つ、しかし数あるデメリットを全て払拭できるメリットがあるのだ。

「この霧はかなり目立つの? だがそれがいいのじゃ。
 DIO様やJ・ガイルがこの霧を見たらわしの存在に気付くからのう」
「なるほどな……」

感心した声を出すタルカス。

「だが、それは俺と行動する気はないという事でいいな?」
「お主は昼間動けないからのう……
 出来るだけ日中も参加者を減らしたり、仲間をふやしたりしたいのじゃから仕方あるまい」

そう言うとエンヤは背負っていたディバッグを下に置いて、ジッパーを開ける。
彼女の“右手”がディバッグを漁る。
邪魔なペットボトルや食料を“右手”で掻き分け、目当ての物を“右手”が掴んだ。
タルカスの目の前に差し出されたもの、それは地図であった。

「タルカスよ、お主には行って貰いたい所がある」
「どこだ?」
「ここじゃ」

エンヤの“右手”の人差し指が地図のある一点を指差した。
タルカスは指先を目で追って、一つの地名を目にする。
目で確認してから、脳に達するまでの時間タルカスは硬直し、脳がその場所にある建物の主の名を理解した瞬間にタルカスは訳の分からない声を発する。

「WRYYYYYYYYY!これはディオ様の屋敷!!」
「そう。わしらの時代のDIO様の居城がここじゃ」
「俺はそこへ向かうのだな?」

興奮が収まらないタルカス。
忠誠を誓った二人目の主の居城を発見した事により彼のテンションは色々なものをブッチギッた。

「恐らくDIO様本人や、部下たちは此処を目指そうとするじゃろう。
 だからお主にはそこの門番となり、来たもの達にわし達の計画を話すのじゃ」
「承知した」
「そうそう、一つだけ言い忘れてた事があったわ」
「ん、なんだ?」
「さっき、DIO様の方角に隕石が落ちたのじゃが知っておるか?」
「いや、貴様と会うまではずっと叫びながら走っておったからな。 
 余り周りの事を気にしとらんかったわ」
「三発が近い間隔で落ちたから恐らくスタンド攻撃。
 もしかしたら参加者がそっち方面に集まるかもしれん」
「ほぅ、狩甲斐があるじゃねぇか」

タルカスが口の端から牙を覗かせてニヤリと笑う。
戦闘の気配を感じて武者震いが止まらない。

「じゃあな」

エンヤに背を向けて歩いて行こうとするタルカス。
その巨大な背をエンヤは呼び止めた。

「タルカスよ、受け取るのじゃ」

飛んでくるのは人の掌より一回りほど大きい銀色の円盤。
キャッチしたときの触感からするとある程度の堅さはあるようだ。
しかし、少し曲げようとするとゴムのようにグニャリと曲がる。

「何だこれは?」

触ってみた感想をエンヤへと率直に伝える。
だが、その返事はタルカスの期待に沿うことはない。

「分からぬ、支給品としてディバッグの中にコレだけが入っておったんじゃ。
 が、屍生人の力があれば飛び道具ぐらいにはなるじゃろ?」
「ふん、余計な事を……」

そういいながらも、鎧の中にスッと円盤をしまう。
そして巨大な指がディバッグの中を漁り、一枚の紙を取り出した。

「貰いっぱなしは性に合わん」

そう言って、エンヤに紙を手渡す。

「これは?」
「開けると支給品とやらが出てくる」
「本当にいいのかえ?」
「俺にはもうハンマーがあるからな。武器はもういらん」

そう言ってタルカスは地響きを発生させながらDIOの館へと走り去っていった。



★   ☆   ★



「さて、奴から貰った支給品は吉とでるかの?凶と出るかの?」

タルカスからのプレゼントである支給品を意気揚々と開けるエンヤ。
死体を見つけるまでの繋ぎとなるのか期待しながら、紙の端を摘んで―――

ドサッ

何か重いものが落ちる音がしたかと思うと、エンヤの体は紙から出てきた何かに潰される。
支給品の下敷きになったエンヤの最初の感想は『柔らかい』であった。
実際、受身すら取れなかったにも関わらず、エンヤの体には傷一つない。
そして手に触れる感触は布のそれ。
微妙に暖かい感じのするものの、人の体温よりは少し冷たい。

「いたたたた、一体何が支給されたんじゃ?」

自分の腹の上に乗った異物を必死で手で押しのけようとする。
乗っているものは意外と重いらしく、老婆の細腕では少しづつずらしてゆくのが限界だった。
彼が悪いのではないと知りつつも内心でタルカスに毒づく。
そして、自分の体を異物の下から完全に脱出させて、手に持った懐中電灯で出てきたものを照らす。

「タルカスよ。お主の支給品は最高じゃ! わしのためにコレは支給されたんじゃないかのう?」

エンヤをここまで喜ばせる支給品、それは――――――






この殺し合いにおいて最初の犠牲者となった、空条承太郎の妻の死体であった。

バァ―――z___ン

嬉々としてジャスティスを一部だけ発動。
固いアスファルトに横たわる死体の元へと霧を集めてゆく。
頭が繋がっていたはずの真っ赤な断面に吸い込まれるように進入する霧。


ピクリ


生命の宿っていないはずの死体の指が痙攣する。
その震えは大きくなってゆき、電池が切れたように唐突に止まった。
かと思いきや死体が自分の手を使いムクリと起き上がる。
そして死体の頭のあった辺りに霧が収束し、西洋人の女性の顔が生まれた。
生前は美しく整っていたであろう顔立ちは、すっかり歪んだ醜悪なものとなり無残な容貌を晒す。


(なるほど……死体を操るスタンドってわけね。
 ミイラ取りがミイラになったら洒落にならないから気を付けなくっちゃ……)



★   ☆   ★



西へ、一刻も早く西へ。
屍生人の筋力はその巨体や重厚すぎる鎧などはものともしない速さをタルカスに与える。
道路を駆け抜ける彼の姿はまさに大型トラック。
うっかり彼の目の前に飛び出す哀れな参加者が居なかった事は本当に幸運だったのだろう。


バ バ バ バ バ バ バ バ バ バ バ バ


不意に聞きなれない音がタルカスの耳に飛び込んでくる。
急な音にも一切動揺せずに、何事もなかったかのように足を止めるタルカス。
彼の脚は今まで上げ続けたスピードと重量によってもたらさせる多大なエネルギーを悠々と受け止めた。

(この音は…?)

自分が生きてきた中でも死んだ後でも聞いたことが無いなんとも形容し難い音。
段々増して行く音量がついに騒音の域に達したとき、ついにタルカスは音源を突き止めた。

「上かぁッッ!!」

首筋を痛めそうなスピードで上空を仰ぎ、人間の言語として聞き取るのがほぼ不可能な声で咆哮する。
まずタルカスの目に映ったものは、この殺し合いの場においても温かい光を発する月。
闇に染まった空よりも更に暗い色をしたまばらに存在する雲。
そして、音の正体である空を飛ぶ箱。

「なっ!?」

鳥ではない。羽が無い上にサイズが大きすぎる。
ならばあれは何なのだろうか?
タルカスの脳内を電気信号が駆け巡り、空飛ぶ箱の正体を推理する。
だが、今まで経験した全てを思い出そうとも、自分の想像力の限界に挑戦しようともあの箱が何であるのか分からない。
落とすべきか否か。
最終的な判断を下させてくれたのは一人の男の存在であった。

謎の腕によってヘリの外に出されて、月光を浴びる男の名はダニエル・J・ダービー
遠くにいた事によりはっきりとは分からないが、顔立ち、ベスト、ネクタイとほぼ全ての特徴がエンヤから聞いていたものと一致した。
だが、探していたディオの部下を早速見つけたのにも関わらずタルカスの表情は渋い。
それもそのはず。
彼が探していたのはスタンド使いでディオの手足となるダービーを探していたのだ。
なのにタルカスの目に映るダービーの姿はどうだ。
肩や腿の先に付いている筈のものは存在せず、ただ断面から緑色の黴が姿を見せるだけ。
表情は緩みきっており、ヘラヘラ開いた口からは涎が垂れている。
だれがどう見ようとも今のダービーは完全に再起不能だ。
つまり、タルカスやディオにとっては今の彼は用済みの足手まとい。

だからタルカスはダービーと共にヘリを落とすことを決定した。
万が一にもヘリの中に居る人間が味方である可能性は無い。
理由はシンプル。
もし仲間であるのなら重症のダービーを外に吊るすわけが無いからだ。
それにエンヤから聞いた情報にはカビを使うスタンド使いはいない。
ならば、ダービーは飛ぶ箱の中に居る敵に敗れた後、目的は分からないが晒し者になったと考えるのが自然。
スレッジ・ハンマーを地面へと落として、懐からDISCを取り出す。
その際にスレッジ・ハンマーがアスファルトにひびを入れるがタルカスにとってはそんな事知ったこっちゃない。

「貴様ら血袋は俺の夜食にしてくれるわ!」

右手を後ろに持って行き力を溜める。
メキメキという音が聞こえるのは決して幻聴などではないだろう。
張り詰めたそれは細かく振動して、今にも限界を迎えてしまいそうだ。
そのまま、左足で地面を力いっぱい踏みしめる。
鈍い音を立ててアスファルトが陥没して小規模なクレーターができた。
右腕を楕円の軌道を辿りながら思いっきり振り切って――――――



「WRRRRRRRYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY」


*  *



いきなり風を切りながら飛来した何かに対して、エシディシはとっさに手元にある物を使って防御を図ってしまった。

(やっちまったぜ……)

手元を見ると先ほどまでの笑みが完全に消え、体をよじらすことすらしなくなったダービーの姿があった。
―――死んだ。
エシディシは当然そう判断する。
だが頭の奥底で何かが引っかかっている。
そういうものは喉に絡まった痰の様に、吐き出さないと絶対にスッキリしない。
エシディシは何かが飛んできた時の状況を脳内でリプレイしてみた。
確かに飛んできたものは恐ろしいまでのスピードを持っていたが柱の男の動体視力なら十分視認可能である。
一瞬見えたそれの特徴は銀色で、中心に穴が開いていて、円形で、薄っぺらくて……。

「!?」

気が付いた。
プッチもエシディシのおかしい様子を見て声をかけてくる。

「どうしたんだエシディシ?」
「いや、さっき見たお前のDISCらしき物が飛んできてコイツに突き刺さったんだ」
「ふむ……確かに心当たりはある。
 大方、何も知らない奴が飛び道具と思って投げたんだろうな」
「む…? 何かあったのかプッチ?」
「いや、別になんでもないさ」

明らかに何でもないわけがない。
その位は表情を見れば一発で分かる。
だが、あえて深いところまでは追求しようとしない。
話したくなれば自然に話してくれるだろう。エシディシは既にプッチを心底信用するようになっていた。

「とりあえず下から襲撃してきた奴を何とかしなくてはな」
「どうする?俺が下に行って直接始末してくるか?」
「いや、その必要はない。相手は遠距離攻撃の手段を持ってないはずだから、投げるものがなくなったら諦めるさ」
「ふむ。じゃあ俺はこっち側からの攻撃に備えておくから、そっちもスタンドを展開しておけ」
「やれやれ……敵が多いからあまりホワイトスネイクを目立たせたくはないのだがな……まぁ仕方ない」

近距離パワー型並みの力を持つスタンドに、柱の男。
この二つの壁を突き破るためには生半可な能力や力ではどうしようもないだろう。


*  *



地上でタルカスは心底不思議そうな表情でダービーに熱い視線を送っていた。

(奴は死んだ。それだけは間違いない。
 だが……あの固さを俺の力で投げたなら頭をトマトのように爆散させた後にあの箱を破壊する位なら出来たのではないか?)

普通の屍生人ですら、救命用の浮き輪で容易く人の命を奪う事ができる。
ならば、屍生人の中でもナンバーワンのパワーを誇るタルカスの筋力なら?
だからタルカスは投擲の結果には非常に不満を持っていた。
しかし、そんな細かい事に何時までもウジウジとこだわる性格ではない。
地面に落としたハンマーを再び片手で拾い上げて、肩の上部へと持って行き正確な狙いをつける。
そして、DISCに次いでハンマーをヘリに向かって投げつけた。

縦方向に回転しながらヘリの元へ向かうハンマー。
タルカスはヘリが完全に破壊される事を予測してほくそ笑む。
彼は知らなかった、ヘリの中に居るのが自分以上の怪物である事を。
彼は知らなかった、ヘリの中の柱の男と自分の関係は捕食者と非捕食者との関係ですらない事を。
彼は知らなかった、ヘリの中に居る二人は自分のことを歯牙に掛けてすらいなかった事を。


念押しにもう一度言っておこう、現実は非情だ。



★   ☆   ★



立ち直れる気がしない。
屍生人になるまでも、なってからも変わらない自分のポリシー『弱肉強食』。
自分は強いからこそディオ様に二度目の生を与えられたのだ。
そして、自分を蘇らせたディオ様こそが最強の存在であると信じていた。
だが現実はどうだ?
あの箱の中にいる男は片手で、虫を払うかのごとく俺の投げたハンマーをあっさりと弾き飛ばした。
パワーだけはディオ様にも勝ると自負していた俺が投げたハンマーをだ。

とぼとぼと地面に落ちたハンマーを拾いに行く俺の姿はとても惨めで、情けなくて。
俺が人間だったら涙を流していたのだろうか?
全身が引き裂かれるかのように痛む。
痛みを忘れたはずのこの体がだ。

考えるのはもうやめよう。
とにかく今はディオ様の館を目指して歩くんだ……。

絶対の力という唯一のアイデンティティが崩壊した彼に以前の覇気は無い。
強さ。騎士としてのプライドを既に失った彼が依り代としたそれは今や何の意味も為さない物となってしまった。
流れ星が二つ彼の頭上を流れる。
しかし、今の彼が眺めているものは只の泥であった。



★   ☆   ★



「大丈夫かエシディシ?」
「あぁ、治りが何時もより遅いのが気になるが順調に回復中だぜ」
「しかし……あの襲撃してきた奴の正体は一体なんだったんだろうな?」
「それなら分かるぞ」

弾き返した際に砕け散った右手の甲を左手でさすりながらエシディシが答える。

「奴は屍生人、吸血鬼の僕だ。
 しかし、あそこまで強い固体をお目にかかったのは初めてかもしれんな。
 餌の下僕のごときに俺の体に傷を付けられるとは夢にも思わなかったぞ」

豪快に笑うエシディシとは対照的に、プッチは急に黙り込んでしまった。
よくよく見ると、ホワイトスネイクをこちらに向けて今にも戦闘を開始しそうな剣呑な雰囲気を醸し出す。

「どうしたプッチ? まさか俺とやるとは言わないよなぁ~~?」
「あぁ、これからの君の態度によってはな」
「MM? 俺になんか不服でもあるのか?」
「君は吸血鬼を餌と呼んだ。言っただろ? 私の親友は吸血鬼だって。つまり君は私の友人を侮辱したのだよ」

プッチからは今までの穏やかなオーラは既に消えて、代わりに殺気が噴出している。
まさに一触即発。
エシディシの一言、一挙動でヘリの中は血みどろの地獄絵図に変わりかねない。
極限まで張り詰めた空気の中でエシディシがとった行動は。

「すまんな。軽はずみな発現でお前の友を侮辱した事を謝罪しよう。
 しかし、お前は本当に面白い。友を侮辱されただけで俺にココまで突っかかってきた人間は初めて見たぞ」

エシディシの発言は心の底から本心であった。
この人間の事をもっと知りたい。あわよくば友となりたい。
自覚の無い感情が彼の心の内を支配しようとジワジワと侵食を開始する。

「友を侮辱されただけか……。私は人の出会いとは引力だと思っている。
 出会うべくして出会う。私が君とであったのも一種の引力なのじゃないのかい?」

少しため息を吐きながら、プッチは自らの持論をエシディシへと語る。
エシディシは深く考えているようで、顎に手を当てたまま返事をしようとしない。

「まぁ、その事は後で考えればいいさ。まずは優先してやらなくてはいけない事がある」
「優先する事?」
「この男の頭の中に入っている記憶DISCを回収する事だ。
 コイツを鉄塔に落としたら回収が不可能になってしまうからな」
「確かにそうだが……このカビはスタンドなのだろ? 
 だったらお前のスタンドにもカビが感染する可能性だって十分あるんじゃないか?」
「大丈夫。他人の記憶DISCは頭に衝撃を与えれば簡単にでてくるからね。だからエシディシ……」

プッチが言い終わる前に、ヘリの外に吊るしてあるダービーの側頭部を死なない程度の力で叩くエシディシ。
叩いた方とは逆の向きから飛び出すそれを柱の男の身体能力で悠々キャッチ。
『怪焔王の流法』で殺菌した後に、プッチの所へと投げた。

キャッチしたホワイトスネイクの視界から見えるDISCの模様。
それは予想したものと寸分違わぬ物であった。
神妙な表情になりだんまりとするエンリコ・プッチ

「なぁプッチ。人と人の出会いが引力なら、人と物の出会いだってもしかしたら引力かもしれんな」

ニヤリとニヒルな笑い方をしながら独り言のように言ったエシディシ。
一瞬ポカンとした表情を浮かべるプッチであったが、顔に微笑を浮かべてエシディシに頷く。
目的地まであと少しとなったヘリの前を二つの隕石が過ぎた――――――。



【C-5/1日目 黎明】

【追う恋人、追われる正義】

【エンヤ婆】
[時間軸]:聖痕で全身に穴が開いた直後
[状態]:全身穴だらけ、上機嫌
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、承太郎の妻の死体
[思考・状況]
1.DIO様と部下と一緒に荒木をぶっ殺す
2. DIO様は守る、J・ガイルに会う、両方やらなくちゃならないのが老婆のつらい所じゃな
3.ポルナレフとホル・ホースを地獄の苦しみの末に殺す
4.ジョースターの奴ら(ジョセフ・ジョースターモハメド・アヴドゥル花京院典明、空条承太郎)も殺す
5.なんで“正義”が広がらないんじゃ?
[備考]
※スタンド“正義”が制限されていることに気づきました。主な制限は次のふたつです。

射程距離が50メートルほどに制限されています。
原作より操る力が弱体化しています。人間はともかく、吸血鬼や柱の男たちにはエンヤ婆の精神が相当高ぶってないと操れない程度に制限されています。
前者はわかっていますが後者は気づいていません。
※頭部に由花子の髪の毛が埋め込まれています。
※南に向かっています。

山岸由花子
[時間軸]:4部終了後
[状態]:健康、強い覚悟
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明支給品1~3
[思考・状況]基本行動方針:広瀬康一を優勝させる。
1.この老婆の後をつけ、利用する。
2. 康一のために参加者をすべて殺す。
3. 康一と自分だけになったら自殺して康一を優勝させる
4. 康一には絶対に会わない
5.エンヤがたくさん人を殺すことに期待
6.正直知り合いにはなるべくあいたくない。けど会ったら容赦しない。


[備考]
※エンヤの頭部に髪の毛を植えつけました。
※エンヤの後を30メートルほど離れて尾行しています。また、彼女がエンヤを殺さないのはエンヤが“危険人物”であろうだからです。エンヤの行動しだいではいつでも始末する気です。
※エンヤの能力が死体操作であることを知りました。生きた人間も操れると言う事はまだ知りません

【C-5/一日目 黎明】

【タルカス】
【時間軸】:ジョナサン達と戦う直前
【状態】:健康 、挫折感
【装備】:大型スレッジ・ハンマー
【道具】:基本支給品
【思考・状況】
1.自分の強さに疑問
2.ディオ様と部下と一緒に荒木をぶっ殺す
3.それ以外の奴らは皆殺し
4.出来れば鎖が欲しい



【D-3orD-4/一日目 黎明】

【純白の大蛇と炎の策士とカビ爆弾 in スカイ・ハイ】

【エンリコ・プッチ】
[時間軸]:JC6(69)巻、ヤドクガエルに“破裂する命令”をした直後
[状態]:健康 腕の辺りの服がちょっと燃えてる
[装備]:ヘリコプターで運転中 ※燃料には限りがあるが、C-10からD-2、D-3あたりまで飛ぶ量は充分にある。
[道具]:支給品一式、ヘリコの鍵(ヘリコプターはコミックス60巻でチョコラータが乗ってたもの)、ウェザーの記憶DISC
    不明支給品0~2(確認はしてます)
[思考・状況]
基本行動方針:ディオ&ジョルノのもとへ、天国へ
1.ゲームへの参加方針という意味で無理に出歩くつもりはない。
  が、面白そうなのでカビ爆弾(ダービー)を鉄塔付近(D-2、D-3あたり)に落としてみよう。
2.こいつ(エシディシ)は良い奴のようだ。しばらく一緒にいてみよう。もっと情報交換をしたい。
3.ディオとジョルノに会いたいが、時代が違いそうで不安。
4.ジョースター一族はチャンスがあれば抹殺(無理はしない)。

【エシディシ】
[時間軸]:JC9巻、ジョセフの“糸の結界”を切断した瞬間
[状態]:右手の手の甲が粉砕骨折(回復中)、ちょっとハイな気分。ヘリコプターの窓から手を出してる(ダービーを持ってる)
[装備]:ヘリコプターに搭乗中
[道具]:支給品一式、『ジョースター家とそのルーツ』リスト(JOJO3部~6部コミックスの最初に載ってるあれ)
    不明支給品0~2(確認はしてます)
[思考・状況]
基本行動方針:生き残る(乗る乗らないは現段階では不明)
1.太陽に弱いという意味で無理に出歩く必要はない。
  が、カビはウザイので移動しよう。燃やせばどうにかなるんだけど。
2.こいつ(プッチ)はなかなか面白い。しばらく一緒にいてみよう。もっと情報交換をしたい
3.鉄塔付近(D-2、D-3あたり)にカビ爆弾(ダービー)を落としてやろう。

備考
※二人ともお互い「気が合う、面白い」といった理由で手を組んでいるので利用する等の発想は現段階ではありません。
※時代を越えて参加者が集められていると考えています。
※ダービーさえ鉄塔付近で捨てさえすればそれでいいと考えてます。
 日光から逃れれるのなら付近に建物、及びアヴドゥルの隠れ家に戻ってもいいと考えてます。
※C-10、特に隠れ家の周りはダービーの手足と周りの植物を基に繁殖したカビが広がってます(大体はエシディシに焼かれました)。
※どの程度情報交換したのかは、わかりません。空のどの地点で隕石を目撃したのかはわかりません。
※ヘリコプターの進行ルートのゴールは決まってますが、途中のルートは次の書き手さんにお任せします。
※スタンドが誰にでも見えると言う制限に気付きました
 彼らはその制限の秘密が首輪か会場そのものにあると推測しています
※柱の男の回復力に制限が掛かっています

【ダニエル・J・ダービー】
[時間軸]:本編初登場前
[状態]:満身創痍。手足が無い。カビ侵食中。ヘリコプターの窓の外に出たエシディシの手にぶら下がってる。
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]
基本行動方針:これは夢なんだッ!バンザーイッ!
1.イヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ
2.痛みでまともな思考ができない
3.ホワイトスネイクの命令DISCにより喋れない

※ダービーの傷は後6時間程放置されたら死ぬ程度のものです
※自分以外の参加者はみんな死ねばいいのに、と考えてます。
※どうせ死ぬんだから誰かが死ぬためならなんだっていいと考えています。
※他の参加者がヘリコプターの通ったルートの真下を歩いてもカビに感染するとは限りません。
 これはグリーン・ディのカビと地面の距離が充分離れている、つまりカビの媒介物であるダービーが空にいるからです。
 逆に言うとダービーが地面に落とされた地点の周辺に誰かが近づいたらそいつは(ry



投下順で読む


時系列順で読む


キャラを追って読む

70:過去への遺産、暗黒の遺産 ① タルカス 89::What makes you differrent
70:過去への遺産、暗黒の遺産 ① エシディシ 80:Let`s have a party
70:過去への遺産、暗黒の遺産 ① エンヤ婆 92:I still...
70:過去への遺産、暗黒の遺産 ① ダニエル・J・ダービー 80:Let`s have a party
70:過去への遺産、暗黒の遺産 ① 山岸由花子 92:I still...
70:過去への遺産、暗黒の遺産 ① プッチ 80:Let`s have a party

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最終更新:2009年01月24日 20:23