ペイジ、
ジョーンズ、プラント、
ボーンナム。
イギリス出身のロックバンドのメンバーのような名前をした彼らは、かつて『風の騎士の町(ウインドナイツ・ロッド)』という町で極刑となって死んだ極悪人たち―――
それが吸血鬼となったディオ・ブランドーの力で甦り、配下となった屍生人たちだ。
ディオの部下には他にも中国人の毒薬商人
ワンチェンや一般人を屍生人に変えた
アダムスのような部下もたくさんいたが、なかでも彼ら元・極悪人の屍生人たちは攻撃力も高く、より凶暴であった。
そして彼ら4人組は極刑屍生人たちの中でも特に優れている四天王なのだ。
だが、そんな彼らも波紋の達人相手では歯がたたない。
波紋の戦士
ストレイツォを取り囲んで得意の血管針攻撃を行ったが、簡単に回避されシャンデリアに潰され、4人纏めて波紋を流されてしまった。
かと思えば身体は何ともなく、いつの間にか彼ら4人は殺し合いゲームの場に召喚され、今は何故かこの異国の地の奇妙な建物の一室にいた。
ゲームの参加者は100人以上。ランダムに配置される初期位置で仲間4人が同じ場所になることなど天文学的な確率になるが、何の因果か彼らは同じ場所に飛ばされたようだ。
波紋を流され滅ぼされたはずの自分たちが、今こうして再び生を受け、殺し合いゲームを強要させられている。
夢か現かと疑ったが、もともと過去に死んで生き返えらされた身……
いまさら何が起ころうが、そこまで驚くことは無い。
いずれこの仲間たちとも戦う事になるかもしれないが、まずはチームで動いた方が得策といえる。
4人は早速、支給品のチェックを行った。
結果、ジョーンズが刃渡り20cmほどの古い短剣、プラントが拳銃1丁、ボーンナムが未来兵器のようなマシンガンと散弾銃を見つけ、他には武器になるような物は無かったようだ。
その後校舎内を散策し、高等部一階の1年C組にて茫然としている他の参加者(ポルナレフ)を発見した。
だが、ここで考えも無く飛び出していたのが昔の彼らである。
波紋の戦士(ストレイツォ)の攻撃によって一撃で倒されてしまった彼らは、纏まった行動をせず、チームワークを発揮したのだった。
リーダー格であるペイジが先鋒を打って出て正面から攻撃、拳銃を装備したプラントが建物の外に回り込み、窓側からの挟撃を行う。
そして不測の事態が発生した時に備え、牙を用いた攻撃が強力なジョーンズが天井を張って接近し劣勢状態での攻撃役となり、強力なマシンガンと散弾銃を装備したボーンナムが後方支援を行う、という無駄に完成された作戦を取ったのである。
結果としては、ペイジとプラントの2人だけでポルナレフは追い詰められてしまうのだったが、乱入してきたポルナレフの仲間(アヴドゥル)によってプラントが瞬殺、天井から襲いかかったジョーンズも返り討ちにされてしまった。
あっという間に仲間を2人倒されたペイジは焦り、炎を警戒して教室前の廊下で待機していたボーンナムの元へ戻って体勢を立て直す。
そしてボーンナムと共に教室の前後の扉からの銃撃に移ったのだ。
しかしそれでもアヴドゥル達に深手を負わすには至らず、マシンガンのリロードのタイミングを読まれ反撃を受け、2階へ逃れ再度体勢を立て直すのであった。
★ ★ ★
「DIOめ―――!! 一体何をたくらんでいる」
階段を駆け上がりながら、アヴドゥルが思いを巡らせるのはこのゲームの真相。
DIOの館に侵入したアヴドゥルたちは、まず
イギーによって幻影の空間を作り出すスタンド使い(ケニーG)を倒した。
その後、アヴドゥルは柱に書かれた落書きを発見した。
このラクガキを見て うしろをふり向いた時 お前らは
死ぬ
炎の探知レーダーには変化は無かった。
そしてアヴドゥルが振り返った瞬間そこは――――― 見知らぬホールであった。
そして『バトル・ロワイアル』に参加させられることとなったアヴドゥル……
そう、つまり、あの落書きがスタンドの発動に関係していると考えるのが妥当である。
落書きを見た者をこのバトル・ロワイアルに強制参加させる能力なのだろう。
ポルナレフには「これが『世界(ザ・ワールド)』の正体ではないか」という推理を聞かせたが、もしかしたら「エジプト9栄神」の最後の一人の能力かもしれない。
①ゲブ神の
ンドゥール ②剣のスタンド(アヌビス神) ③脚がグンバツの女(マライア)
④ポルナレフを少年にさせた男(
アレッシー) ⑤ダービー兄 ⑥イギーが戦ったという敵(
ペット・ショップ)
⑦ダービー弟 ⑧さっきイギーが倒した幻影のスタンド使い(ケニーG)
これで8人、そしてこのゲームの司会をしていた眼鏡の老人こそがエジプト9栄神の最後の一人にして、DIOの一番の部下なのだろうか。
だとしたら恐ろしい能力だ。このアヴドゥルが噂すら聞いたことのない強力な能力…… こんなスタンド使いが存在していたとは………
(※注 ジョースター一行はオインゴボインゴ兄弟を知りません。ゆえに妙な勘違いが発生しています。)
問題なのは承太郎………
あいつがこんなにも簡単に殺されてしまうとは……
ダービー弟の仕業か? ジョースターさんと花京院は、一体どうなったのだ?
そして承太郎の両脇にいた、他の二人の正体もわからない。2人とも承太郎やジョースターさんと似た雰囲気のある男だったが、果たして………
そしてもう一つ、気になるのはポルナレフの存在だ―――
奴はなぜ年をとっていた? なぜ脚を失っている?
強制的に年をとらされたのではなく、本当に10数年も経験を積まされたような年季があった。
本当に戦士として再起不能となったような、異様な貧弱さがあった。
さらなる別の能力に陥ったのか、それとも俺の推測が間違っているのか………
なんにしても、ポルナレフには早急に話を聞く必要がある。はやくあの吸血鬼どもを仕留めなければ…………
「ムゥ? 二階より、さらに上――― どこまで逃げて行きやがったんだ? あいつら――」
2階に辿り着いたアヴドゥルだが、炎の探知レーダーはさらに上を指していた。
アヴドゥルはさらに上の階を目指し、階段を駆け上がって行った。
★ ★ ★
「なんだこりゃ?」
アヴドゥルの「中に入っているであろう武器で身を守れ」という言葉につられ、アヴドゥルのデイパックを漁ったポルナレフは、中から出てきた紙に書かれた文字に呆れた溜息を漏らす。
1枚目の紙に書いてあったのは、「サッカーボール」………
そして紙を開くと本当にただのサッカーボールが出てきたのである。
紙にアイテムを仕込んであったトリックよりも、こんな物でどう戦えというのだという、主催者側への疑問が頭に浮かぶ。
こんなもので戦えるのは、せいぜい眼鏡をかけた少年探偵くらいのものだ。
そして2枚目の紙に書いてあったのは、「飲んどる場合ではないコーヒー」だった。
「本当に飲んどる場合かァァ―――――!!!」
紙から出てきたコーヒーカップを、思わず床に叩きつける。カップは割れ、中身が教室の床にぶちまけられた。
チクショウ……なんだってんだ? フザけているのか? ゲームの主催者は―――
そこでポルナレフは、主催者陣営について、そして『バトル・ロワイアル』のゲーム自体について、改めて考えさせられる。
まず……アヴドゥルだ。奴は間違いなく、本物のアヴドゥルだ―――12年前に死んだ――――ッ!
過去に『審判(ジャッジメント)』のカメオによって生み出されたアヴドゥルの土人形と戦ったとこがあったが、しかし今回は違う。
『マジシャンズ・レッド』の能力はもちろん、喋り方や仕草、行動や雰囲気は間違いなく本物のアヴドゥルのものだった……
1カ月にも満たないほどの短い付き合いだったが、俺にわからないはずがない。
――――と、なると…… 蘇らせる…または、過去と現代を繋ぐことができるスタンド――――――
そう、スタンド能力による現象だッ! それ以外考えられないッ!
スタンド能力によって俺たちはこの『バトル・ロワイアル』に集められた。
時さえも越え―――12年も前に死んだアヴドゥルさえも呼び寄せられたのだ。
そして、これほどまでに世界に影響を及ぼす大規模な能力は、通常のスタンドではあり得ない。
このスタンドは、『鎮魂歌(レクイエム)』だ――――ッ!!
多分……『キング・クリムゾン・レクイエム』――――――
俺は『チャリオッツ』をレクイエム化させ逃れるつもりが、失敗したのだ。
おそらく矢が『チャリオッツ』を貫く直前にもう一度時を飛ばされ、
ディアボロに矢を奪われてしまったのだ。
そして、矢はディアボロを選んだ…… 結果、レクイエムの能力によって『バトル・ロワイアル』が行われることになってしまったのだ。
司会をしていたメガネの老人はフェイク…… 真の主催者はディアボロだったのだ。
殺し合いの真の目的は、恐らくディアボロに立てついた者、ディアボロにとっての不安要素となる全員の排除。
承太郎とジョルノはその代表格として、そして殺し合いの促進のための見せしめとさせられた。
残る一人の若い男も、ディアボロにとって都合の悪い、俺の知らない何者かだったのだろう。
そしてあの吸血鬼たちは、殺し合いをスムーズに進めていくための潤滑油として参加させられているのだろう。
なんてことだ……。全て俺の責任じゃあないか。
俺が、ディアボロに矢を奪われてしまったために招いてしまった……。
なんとかして終わらせなければ、この殺し合いを……
事情を知らないアヴドゥルはこの殺し合いがDIOの『世界(ザ・ワールド)』だと勘違いしている。
違うんだアヴドゥル…… 『レクイエム』は、『ザ・ワールド』よりもさらに恐ろしい―――
早く伝えなければ……この殺し合いの真実を………
そこまで思考して、ポルナレフはまた現状を思い出す。
まずい。いま何者かに襲われたら、身を守る術がない。
アヴドゥルのバッグに入っていたのは使えない物ばかりだったが、あの吸血鬼どもは馬鹿みたいにでかい銃を持っていた。
おそらく、与えられる武器には当たり外れがあるのだろう。
そして、ポルナレフ自身のデイパックの中身は、まだ調べていない。
デイパックは、最初の攻撃の時から教室の前方に放置されており、今は後ろ側の壁際だ。
歩くことのできないポルナレフにとってはかなりの距離だが、這ってでも取りに行かなければならない。
ポルナレフは身体を起こし、動き始めた。
テンッ…… テン、テンテンテン……………
(ム、しまった………)
身体を起こした際、脇に置いていたアヴドゥルのサッカーボールにぶつかり、転がる音をたててしまった。
そして、この何気ない動作によってもたらされた事故が――――――
「なんだァァ――? そっちの部屋にも誰かいんのかァァ――――?」
ポルナレフの未来を終わらせる事となる。
「あん? なんだァこの穴は? 隣の部屋と繋がってるのかァァア?」
アヴドゥルが2人目の屍生人ジョーンズを殺害した際、教室前方の黒板をぶち破って開けた穴―――
その穴から、一人の少年が顔を覗きこませた。
★ ★ ★
ドガガガガガガガガッ!!!
屋上に辿り着いたアヴドゥルを襲ったのはボーンナムのマシンガンの弾幕。
階段室の陰に隠れて、様子を伺う。
「俺の名はボーンナム! プラントとジョーンズの仇ッ!!」
「なるほどな…… 屋上か――― 確かに屋上なら遮蔽物は少ない。貴様らにとっては都合がいい戦場かもしれないなあ」
マシンガンや散弾銃の弾丸の速度は、アヴドゥルのクロスファイヤーハリケーンのそれを凌駕する。
さらに屍生人の身体能力を最大限に活かせば、クロスファイヤーハリケーンが撃たれたあとからでも回避は間に合うのだ。
さらに、屍生人たちにとっては2対1。つまりまともに撃ち合えば、屍生人たちの圧倒的有利だ。
屍生人たちはそう思っていたようだ。
「C・F・H・S(クロスファイヤーハリケーンスペシャル)!!」
階段室の入口の扉から、無数の炎の十字架が屍生人どもを襲う。
「ノロいぜェェェェェ!!! いくら強力な攻撃も、当たらなければ効果は無いぜぇェ~~~!!」
縦半分に割れたような仮面をかぶった屍生人、ボーンナムが炎の隙間を縫って接近する。
攻撃を回避することができるギリギリの距離を保ち、マシンガンを撃ちまくっている。
分裂した別れた炎は空に向かって逸らされ、全て回避されてしまった。
さらに離れた位置からペイジが散弾銃でたて続けに階段室の扉を撃ちまくり破壊した。
アヴドゥルの生身はボーンナムのマシンガンの目の前に晒されてしまった。
「処刑してやる!!! ヒィィッヒッヒヒヒィィィ――――― ウガァァァァアア!!!!」
――――空中に反れた炎の十字架が踵を返し、上空からボーンナムを一斉砲火した。
攻撃を回避しきったと思い込み油断したボーンナムは回避することができず、持っていたマシンガンもろとも燃やしつかされてしまった。
「クロスファイヤーハリケーンの軌道は真っ直ぐだけじゃあ無い。私をただ炎を発生させるだけの脳の無い能力者と見くびっていたな?
炎を自在に操る事ができる。私の能力が『魔術師(マジシャン)』を名乗っている所以だ!!」
空中に反れたCFHを操作してボーンナムの頭上から叩きつけた。
精密動作の要するこの大掛かりな戦術は、室内の狭い空間では使えない。
屍生人たちは自分たちの戦場に誘い込んだつもりが、逆にアヴドゥルの独擅場へ彼を招き入れてしまっていたのだ。
「な―――――ッ!! ボ、ボーンナム―――――ッ!! バカなァァ―――」
一人残されたペイジの前に、アヴドゥルが姿を現す。
ペイジは、仲間を3人殺されてようやく気が付いたようだ。目の前の男が、自分がどうあがいても勝つ事が出来ない、格の違う相手であったことに。
「さて、残りはお前一人となったが、どうする―――?」
「ウ……ウオオオォォォォォ――――!!!!!」
ペイジがアヴドゥル目掛けて我武者羅に散弾銃の引き金を引く。
しかし散弾はアヴドゥルに届く前に高熱の炎によって一瞬で溶かされてしまった。
「そんな馬鹿なァァァァ――――ッ!!」
これがアヴドゥルの本気だ。
先ほどまではポルナレフを庇いながらだったため不覚を取ってしまったが、守る範囲が自分一人分だけであるならば迫る弾丸を溶かしつくすことなど容易い。
ましてや、獲物はマシンガンではなく単発式の散弾銃だ。
炎は、銃よりも強し。
「ヒィィィィ!! 助けてくでェェェェェ―――――!!! 許してェェェェ!!!!」
銃を投げ出し、両腕を広げて命乞いをする。
そんなペイジに対し、アヴドゥルはスタンドを出現させ高圧的に迫った。
「貴様を殺す前に聞いておきたいことがある。この殺し合いゲームはDIOのスタンド能力なのか? それともDIOの部下による物なのか…… 吸血鬼の貴様ならば何か知っているだろう……」
「ヒィ! 知らねえ! 何も知らねえよ! 俺はディオ様に蘇らされたただの囚人だよォォ!! この身体も、ディオ様に改造してもらっただけだァァァ――!!」
やれやれだ。本当にザコだな、こいつは。どうやら本当に何も知らないようだ。
アヴドゥルはペイジに背を向け、歩き始めた。
もはやこいつに用は無い。早くポルナレフの元に戻らなければ。
なんだコイツ―――? 俺を殺さないのか?
舐めやがって――― そして馬鹿めッ! 背中を見せて油断したお前の負けだァァ!!!
ボーンナム達の仇ッ!! ブッ殺してやるッ!!!!
「ウオオオオ――!! 血管針攻撃ッ!!!!!」
ドバァァァァァ――――――ン!!!
『マジシャンズ・レッド』の炎が、ペイジの身体を消し炭に変えた。
「さぁて、ポルナレフは無事だろうか?」
地面に転がった猟銃を拾い上げ、アヴドゥルはポルナレフの元に向かった。
【プラント 死亡】
【ジョーンズ 死亡】
【ボーンナム 死亡】
【ペイジ 死亡】
★ ★ ★
ここは……どこだ?
ポルナレフはひとり、砂漠の真ん中に立ちつくしていた。
自らの脚で地面に立つ感覚など、いつ以来であろう。
そういえば、右目に付けたゴーグルもなくなっている。視力も戻っていた。
ポルナレフは今、DIOを討伐する旅をしていた、12年前と同じ姿をしていた。
エジプトでの旅で、砂漠を越えたことは何度もある。
その時の夢でも見ているのだろうか。
「おーい、ポルナレフ!!」
「ポルナレフ! そんなところで何をしているんじゃ?」
「ワン! ワン!」
「やれやれだぜ、ポルナレフ」
ポルナレフが振り返ると、そこにはかつての仲間たちがいた。
「花京院! ジョースターさん! イギー! 承太郎ッ!!」
なんだ、やはりこれは夢だ。
だって、彼らはみんな死んだはずなのだ。
いや、ジョースターさんはまだ死んでなかったか? いやでも、もうかなり歳だろうしなあ……
「ようポルナレフ、久しぶりだな」
そして今度はアヴドゥルが現れた。
アヴドゥルとは最近も会ったような気がするが、気のせいだろう。
それに、アヴドゥルが死んでしまったことは、俺が一番よく知っている。
アヴドゥルは俺を助けるために、死んでしまったんだからな。
「なんだよ、おめーら。死んじまったおめーらが夢に出てくるなんて縁起が悪ぃじゃあねえか。後のことは俺に任せて、ゆっくり休んでくれよ、お前たち………」
「いいや、そいつは違うぞポルナレフ」
え?
「死んでしまったのは僕たちじゃあない。お前のほうなんだ」
何を言っているんだ?
「後のことは俺たちに任せて、お前はもう休むんだ」
承太郎……… お前、何を―――――
『ポルナレフ!! ポルナレフッ!!!』
アヴドゥルの大きな声が聞こえる。何をそんなに焦っているんだ?
『目を覚ませェ――! ポルナレフ―――ッ!!!』
そういえば、承太郎って、何で死んだんだっけ?
たしか、首を爆弾で吹っ飛ばされて……
何故―――? 殺し合いに参加させられて――――――
殺し合い――――――?
「ポルナレフッ!!!!」
目を覚ました俺の前には、血相を変えて叫ぶアヴドゥルの姿があった。
「畜生、なんてことだッ! やはり一人にすべきではなかった! 俺の判断ミスだ!!
『バトル・ロワイアル』――― 甘く見ていたッ! 誰がどこから襲ってくるかわからない。吸血鬼どものことなど放っておくべきだったッ!!」
ああ、そうだ。殺し合いだ。
俺たちは『バトル・ロワイアル』というゲームに巻き込まれたのだ。
そして吸血鬼どもに襲われ、再会したアヴドゥルに助けられた。
しかし、この教室で一人で待っている間に、別の襲撃者に襲われた。
襲撃者は西洋風の短剣を携えた、15~16歳ほどの少年だった。
錯乱しているのか目が虚ろで、短剣を構えながら俺の方に向かってきた。
相手は子供だが、俺も殺されるわけにはいかない。
やむを得ず、反撃に出る。『チャリオッツ』を出現させて、肩口を狙った。
殺さずに、剣を使えないようにして倒すために、細心の注意を払った。
しかし、少年の肩口に『チャリオッツ』の剣が達した瞬間、自分の肩に激痛が走る。
『自分へのダメージを相手に反射する』ことができるスタンド使い……
それに気が付いた時はもう遅かった。
怯まされた俺の脳天に、短剣が振り下ろされた。
そして俺の持っていたデイパックを回収し、少年はそのままどこかに去ってしまったのだ。
(首筋まで血が流れている。頭を割られたようだ…… もう助からないな………
なんてことだ……俺のせいで招いた殺し合いゲームの中で、俺は何も出来ぬまま死んでしまうのか………)
いや、違う。俺の目の前にはアヴドゥルがいる。
伝えるのだ……アヴドゥルに………
「 ――――――ッ! ァ……ヴドゥル――――――!」
「なんだ? ポルナレフ!? 何か俺に言いたいことがあるのかッ!?」
声が……まともに出ない。 恐らく、俺が話すことができるのはあと一言二言が限界だ。
選択を間違えてはいけない――― 俺が最期に話すべき事は何だ?
俺を殺した少年のことか?
ダメージを反射するスタンド使い…… 前情報が無い状態で出会った場合、敗北は必至…… だが………
俺が伝えるべきは、少年の能力のことじゃあない。
伝えるべきは、俺の辿り着いた『バトル・ロワイアル』の正体……
アヴドゥルは勘違いをしている。真実を、伝えなければ………
「ディ……アボロだ…… 奴を、倒せ…… レクイエムを止めるには、矢を取り戻すしかない………
矢を手に入れろ―――― ブチャラ……ティ……に、会え………」
承太郎とジョルノが死んだ今、最も頼りになるのはジョルノの上司であるブチャラティだ。
ディアボロに立ち向かっている彼に会って、矢を手に入れるのだ。
そして、矢を支配し、レクイエムを止めるのだ――――
その後もアヴドゥルから質問が投げかけられるが、もうポルナレフには聞こえていない。
喋る事も出来ない。
アヴドゥルの腕の中で、ポルナレフは静かに息を引き取った。
深夜の教室に、アヴドゥルの悲しみの咆哮が響き渡った。
【J・P・ポルナレフ 死亡】
【残り 131人】
【C-7 ぶどうが丘高校 一階1年C組教室/1日目 深夜】
【
モハメド・アヴドゥル】
[スタンド]:『魔術師の赤(マジシャンズ・レッド)』
[時間軸]:JC26巻
ヴァニラ・アイスの落書きを見て振り返った直後
[状態]:健康、肩に一発だけ弾丸を受けた傷(かすり傷)、ポルナレフを死なせたことへの後悔
[装備]:六助じいさんの猟銃(弾薬残り数発) (ボーンナムの支給品)
[道具]:無し
[思考・状況]
基本行動方針:ゲームの破壊、脱出。DIOを倒す。
1.ポルナレフを置き去りにしてしまった。俺はバカだ。
2.ディアボロとは誰だ?レクイエムとはなんだ? DIOの仕業ではないのか?
3.ポルナレフは何故年を取っていたのか? ポルナレフともっと情報交換しておくべきだった。
4.ブチャラティという男に会う。ポルナレフのことを何か知っているかもしれない。
5.ポルナレフを殺した人物を突き止め、報いを受けさせなければならない。
6.承太郎……何故……
[参考]
アヴドゥルの支給品はサッカーボール(Parte5 エメラルド海岸で遊んでいた少年たちが使っていた物)と飲んどる場合ではないコーヒー(Part2 ナチスの科学者が飲んでいた物)でした。
サッカーボールはぶどうが丘高校 一階1年C組教室に転がっています。
コーヒーカップは割れて同じ場所に放置されています。
J・P・ポルナレフの参戦時期はParte5、JC61巻 チャリオッツが矢に貫かれる直前でした。
ペイジ、ジョーンズ、プラント、ボーンナムの参戦時期はストレイツォに波紋を流された瞬間でした。
ペイジの支給品は不明のまま、アヴドゥルの炎に焼かれました。武器ではなかったようです。
プラントの支給品はアレッシーの自動拳銃でした。アヴドゥルの炎に焼かれました。
ボーンナムの支給品はナチス兵のマシンガン(Part2
サンタナが解体した物)と六助じいさんの猟銃(バオー来訪者に登場)でした。
マシンガンはアヴドゥルの炎に焼かれ、猟銃はアヴドゥルが所持しています。
★ ★ ★
「いっでェェェェ――― 何だったんだあのホウキ頭ぁぁぁ――!!」
ポルナレフを殺害した少年、
ビットリオ・カタルディはすでに学校の敷地の外まで来ていた。
肩の傷を押さえながら、ビットリオは今までのことを思い返す。
意味もわからず殺し合いに参加させられたビットリオは、どこかの学校に放り出された。
校舎内をフラフラとさ迷ったビットリオは、何となく1年B組と書かれた教室へ忍び込む。
そこには、人間とは思えない異形な化け物の焼死体が転がっていた。
俺と同じで、麻薬で狂って身体までイカれちまった奴なのか?なんて暢気に考えながら死骸を漁ると、その化け物の腰にナポレオン時代の骨董品を思わせる古い短剣が刺されてあった。
ビットリオもよく知る、馴染みのある短剣だった。
「オオォォォ―――! オレの『ドリー・ダガー』じゃねえかッ!!
よかったァ! どこに行ったのかと思って不安だったんだァ! こんな所にあったのかッ!」
『ドリー・ダガー』は一体化スタンドだ。スタンド能力は実物の短剣を介して発動するが、逆にその短剣が手元になければ能力を使う事は出来ない。
ゲーム開始時に短剣を没収されてしまったビットリオであったが、偶然にも開始数分で自分の愛剣を取り戻すことができたのだ。
そしてしばらくして、隣の部屋からボールが転がるような物音が聞こえてきた。
壁に開けられた穴から隣の部屋を覗きこむと、箒のような頭をしたオッサンと目があった。
そして、これが「殺し合いゲーム」である事を思い出し、さっそく自分も一人目を殺そうかと思い、襲いかかったのだ。
「くそォォォ! 弱そうなオヤジだと思ったのに、スタンド使いだったのかァァァ!!!
肩が痛えよォォ――! でもまあ、痛みという実感があるってことは、絶滅する心配はねえかァ―――」
今度は、突然笑い出した。
ビットリオは深く考えない。「殺し合いゲーム」……なんて楽しそうなんだ。
ポルナレフの頭を砕き割った『ドリー・ダガー』を振り回しながら、「あと何人殺せるかなァァ―」なんてことを考えているビットリオであった。
【C-7 ぶどうが丘中学 高校 正門前/1日目 深夜】
【ビットリオ・カタルディ】
[スタンド]:『ドリー・ダガー』
[時間軸]:恥知らずのパープルヘイズ 少なくともコカキが殺される前
[状態]:肩にポルナレフに刺された傷(3割)、他は健康、気分がいい
[装備]:ドリー・ダガー(ジョーンズの支給品)
[道具]:
基本支給品×3(自分、ポルナレフ、アヴドゥル)、不明支給品1~2(未確認)、ポルナレフの不明支給品1~2(未確認)
[思考・状況]
基本行動方針:とにかく殺し合いゲームを楽しむ。
1.とりあえず殺し合いに乗る。
2.刺された肩の傷が痛い。でも、この感覚がたまらないんだよなァー
[参考]
ビットリオは殺し合いについて深く考えていません。
マッシモ・ヴォルペが参戦している可能性も考えていません。
ビットリオはジョルノの顔を知りませんでした。ゆえに組織のボスが目の前で死んだという事も気が付いていませんでした。
ジョーンズの支給品はドリー・ダガーの短剣でした。他の基本支給品はアヴドゥルによって燃やされたようです。
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最終更新:2012年12月09日 02:05