あーれ、……どこやったっけ。確かこの前ここ置いといたんだけど……。
――まいったな、出てこない。ちょっと放置しておくとすぐどっか行っちゃうんだよな。
いいやもう、とにかく進めよう。
アレがあると説明が楽ってだけでどうしても必要ってもんじゃないし。
さて今回は、まあ俺には到底理解できない二人だ。
登場人物は
カンノーロ・ムーロロに
蓮見琢馬。
彼らの情報把握能力は本当憧れるっていうかむしろ要らないっていうか。
どこから話すかな。
――ん?ムーロロサイドからの、ジョセフ見送ってから?
はいはい。じゃあそこから行くか。
「監視は続ける。が、優先度はひとつ繰り下がるな――」
って呟いたと思ったら舌打ちして溜め息。そこからはまた黙りっぱなし。
だってそうだろ、独り言なんていうのはホラ、本来必要のないものだし、それを言うってことは自分に言い聞かせる、あるいは脳内にいる何者かに対し語りかけるってことだ。
だからえー、要するに疲れてる証拠だと。ムーロロはそんな自分を戒めたか、疲労してる自分に気付いて呆れたか。
……?そういうなよ、確かに俺ぁ独り言多いけどさ。続き話すの止めちまうよ?――あーごめん冗談だって。
兎にも角にもジョセフのその後も、康一と由花子のその後もひと通り見た。
その話題に関する優先度を繰り下げよう、ってことだな。
あ、だけど後者、康一たちの戦闘は途中で監視を放棄。
「あの『警告』を聞かせておいてまだ『私に付きまとう』のか、虫よ」
なんて言われちゃあかなわない。いくら別の人間を追跡してた結果に偶然出会ったんだとしても多分ヤバい。ゆえにそこはカードを避難させたわけだ。
もう一つ俺の考えを付け加えさせてもらうなら、カーズが相当移動してるんだから今見逃しても近いうちにまた遭遇するだろう、とムーロロも考えたと思うよ。
で、そこからはまた広く浅くの監視だ。
今までチェックしてた連中の情報を更新。
えーと、
ビーティーの名推理とタンカを天井裏から聞いてたり。
あー、ナランチャ経由で玉美とかも知ったね……え、フーゴ?そりゃあアイツが戦闘の意志を口にした瞬間にサッとジョナサンのデイパックあたりに避難したんじゃない?
で、玉美の名前が出たからこっちもか。いうならば新規の関係。
例えば、リンゴォ追っかけてったら別方向で追ってた承太郎としのぶを発見して、リンゴォはそこで脱落。
仗助たちを経由してエルメェスと、
シーラE。なんでここにパッショーネの奴が?なんて思ったかもね。
それから――
「交渉……それから、調和か。
52、いや53分の2か、それは良い扱いだと解釈していいのか?
お前たちに言っているんだ。クラブの7にスペードの2」
ハッとする。まさか自分たちの存在に気付く奴がいたとは!と驚いた。一気に集中をそっちに回す。独り言は言わないけども。
しかし、カーズは――二度目の遭遇のとき、康一由花子対
J・ガイル戦をチラっと見ただけでも“タダモンじゃあない”のがわかった。
でもこっちのガキはなんだ。パッと見は路上のベンチで読書する学生にしか見えないのに『こっちの絵柄まで当ててきた』、少なくとも『虫』よりはハッキリと自分を認識してる。
「反応に困ってるようだから解説してやろうか。逃げずに聞いてくれるならな。
俺を、というより俺たちを追跡し始めたのは少なくとも五時間四十七分前から。
カフェから出て行った鳩でも見てそこに人がいるんだと推測したか?
そこに『何枚』来たかまでは把握できなかったが、そこを俺が女とともに離れるときにはお前ら2枚が追跡してきた。
だが流石に何時間も2枚の、じゃあないな。53枚ものカードを操り続けるのは疲労したんだろう。せっかく消してた気配がポロポロ出てきているぞ」
ムーロロは聞くしかない。今背を向けたらその場でカードを切られるかもしれない。あ、カードを切られるって後に“カッコ物理”ってつけておいてね。
でも、群体型のスタンドのうち何体かが攻撃されたところでさほど問題はない。真に問題なのは、こちらの逃走を逆に尾行される可能性だ。
こんなバケモノじみた記憶力の奴が自分を見逃すとは思えないから。
とか考えている内も相手の、そう蓮見琢馬の解説が続く。明らかに目線もカードに向いている。まだ琢馬の位置から直接は見えてはないけど。
「そして先に言ったのは小アルカナにおけるカードの暗示。
1998年、民明書房刊『孫子とタロットで学ぶ現代ビジネス指南書』、話のタネに読んでおいたのがこんなところで役に立つとは。
さて、そこまでの暗示を込めて俺を追ったのか?お前は」
……あ!あったあった。机の下に放っておいたのが今更出てきたよ。これこれ。えーと、
――“第二章一節、組と兵力から見えるもの”
――『孫子曰く、大規模の戦争においては兵士たちを五十六の精鋭部隊に分けることが良とす』とあります。
――五十六という数字は、詳しく見ると、それぞれ杖・剣・聖杯・通貨を象る四つの『枢闘(スート)』、さらに枢闘の中で役割や行動を十四に分けられたことからきています。
――この部隊の総称を、勝利、つまり金星を存在させるものという意味を込め『在金(アルカナ)』と呼び、のちに西洋に伝わったこの兵法にさらに武装を足し七十八としたものを『大在金(おおアルカナ)』と呼びました。
――古来は在金の各部隊を、それぞれを模した紙に書き起こし、それを卓上で移動させて戦術を決め、あるいはランダムに捲るなどして戦場の運気として用いていました。
――これらを現代人向けに簡略化・アレンジしたものがトランプ占い、同様に大在金がタロット占い、ということは読者の皆様ならピンと来たのではないでしょうか。
――さて、この章では、現代ビジネスという巨大な戦争に勝利できるよう、まずは枢闘を理解し、社員達を分類するところから学びましょう。
――……
だって。琢馬はこのトランプ占いの事を言ったんだろうね。
因みに別冊付録には『剣の2』は『均衡・調和』、『杖の7』は『ディスカッション・勇気・交渉』とある。
え?続き?ああごめんよ。
ぶっちゃけた話、ムーロロはそこまで意識してカードを散らしていたわけじゃあない。
エースだとかジョーカーだとかは見てくれにインパクトがあるから別だけど。というか占いなんて知らないし信じるガラじゃあない。
「……」
そりゃあ返事のしようがない。こっちから情報を渡すわけにはいかない。
とは言え向こうもすぐにどうこうしようって訳でもなさそうだ、ということは推測できる。
となれば待機。向こうの意志を聞いてから対処するのがベネ。
向こうが解説を終えてドヤ顔で立ち去ればそれはそれでよし。何か言ってきても不利ならシカトしてれば良いし、有利なら……まあ聞いてやろうか、という意味だ。
「――さて、俺の考えを話そう。そうしなければここで硬直しているだけだろうからな。
まず、得意げに引用してやったが、俺はお前が“そういう意味”を込めて俺を追跡したとは思っていない」
琢馬が立ち上がって一歩二歩踏み出した。でもウォッチタワーは、ムーロロは動かない。
結果論だけど、ある種の確信があったんだろう。すぐには殺されないという確信が。
「……かつて俺はお前のような『小さいやつら』を街中で見かけたことがある。自販機やゴミ箱の下から小銭を拾って出てきたところをな。
今にして思えばなるほど、そういうのもスタンドの一つの性質なんだな。だが――そういう『連中』を従えるのは大変なんじゃあないか?たったの一人で。
そういう『スタンド使い』とは、俺が思うに“よっぽどすぐれた司令官”なのか、“多数を放し飼いにして放っておくような屑”なのか。そのどちらかだと思う。
前者はともかく、後者だとしたらお笑いだ。自分の心を自分で放っておくだなんてな」
これにはさすがのムーロロもカチンときた。
彼も後にボス・ジョルノに似たようなことを言われ、あるいはスピードワゴン財団の担当から『群体型スタンド使いの精神テンション』を聞かされ理解するだろう。
けど『今、ここで』それをただの学生風情に説かれるほど俺は落ちちゃあいない!とね。
とは言ってもその一言でブチ切れ、キタナイ言葉で怒鳴り散らすようなマンモーニな真似はしない。流石ギャングだ。沈黙を貫く。
「ん、怒ったか?まあ落ち着いて聞いてくれ。
俺は何も『お前は屑野郎だ』とは言っていない。むしろその逆だと思っている。
そこで俺はあんたを利用することにした」
この一言で状況がグンと進んだ。
琢馬は相手が口を挟む隙を作らずに続ける。
「ハッキリ言おう。俺は人探しをしている。
そこであんたにそれを手伝ってもらいたい。
一方で俺があんたに提供するのは、俺の記憶力だ。先の引用や、あんたの追跡時間。聞いていたろう?自信はある。
流石に何時間も寝ずに情報を処理するのは疲れるだろう。放送を過ぎて色々な場所で色々な状況の変化も起こるだろう。
それの把握と整理整頓を俺が担ってやろう、と。そういう意味だ」
フムフム、ナルホド。確かに『本』の能力があればそりゃあ記憶も把握も、あるいは過去にさかのぼっての整理も楽ちんだ。
『情報収集と記憶!この世にこれほど相性のいいものがあるだろうかッ!?』
『たとえるならヒロシとキーボーのデュエット!オオタケに対するミムラ!夢枕獏の原作に対する板垣恵介の「餓狼伝」!』
……って感じだろうね。え、わかりにくい?そうかなぁ……
まぁとにかく、そんな相性の良さゆえにムーロロは考える。今までもリスクは何度も何度も天秤にかけてきた。
しかし今度はその天秤の片側に“自分”が乗っかる訳だ。
この天秤は容易に傾かない。
傾かない。が……
「オイオイ、あんなこと言っちゃってるゼ?どうすんのさ?」
口を開いたのはクラブの7だ。すっかり琢馬の前に姿を現している。だけども目線は琢馬には向いていない。
「どうすんのって俺に聞くのかよ?エェ?コーショーの7さんよ?」
相手はスペードの2だ。
琢馬はそれを黙って見ている。
「ウッセ!テメェなんか2のくせに威張ってんじゃあネーヨ!」
「んだテメェ!喧嘩売ってんじゃねえぞ!」
「オイ今ドツキやがったな!やってやろうじゃあねぇか!」
「望むところだ!泣くまで殴るの止めてヤラネーからなッ!」
ついにドツキ合いを始めちゃったカード2枚。
流石の琢馬もちょっと引いた。でも喧嘩は止まらない。
そんなやり取りが30秒?1分?続いたあたりでついに決着。
最後はお互いがお互いの顔殴って――そうそうクロスカウンターみたいに。
で、二人が同時に、
「C-4……川沿い……亀……」
と言ってバタリ。
ムーロロの天秤がリスクよりもリターンを重く見てついに傾いた!
カードのやり取りから、どうやらそこに行けば?って意味のようだと解釈して琢馬は歩き出す。
数秒遅れて倒れた2枚のカードもひょこっと起き上って追いかける。拍手がないことにちょっと不機嫌そうにしながら。
これが琢馬とムーロロのファースト・コンタクトってところかな。
どうだろう、まだもうちょっと話すかい?
――いや、やめておくならそれでいいよ。じゃあまた別の話を持ってくるとしようか。
【C-3 南部/ 1日目 昼】
【蓮見琢馬】
[スタンド]:『記憶を本に記録するスタンド能力』
[時間軸]:千帆の書いた小説を図書館で読んでいた途中。
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:
基本支給品×2(食料1、水ボトル半分消費)、双葉家の包丁、承太郎のタバコ(17/20)&ライター、SPWの杖、不明支給品2~3(
リサリサ1/照彦1or2:確認済み)
[思考・状況]
基本行動方針:他人に頼ることなく生き残る。千帆に会って、『決着』をつける。
0.
双葉千帆を探す。
1.『カードの能力』を利用するために指示のあったC-4の亀とやらを探す
2.千帆に対する感情は複雑だが、誰かに殺されることは望まない。 どのように決着付けるかは、千帆に会ってから考える。
[参考]
※参戦時期の関係上、琢馬のスタンドには未だ名前がありません。
※琢馬はホール内で
岸辺露伴、
トニオ・トラサルディー、虹村形兆、
ウィルソン・フィリップスの顔を確認しました。
※また、その他の名前を知らない周囲の人物の顔も全て記憶しているため、出会ったら思い出すと思われます。
※また杜王町に滞在したことがある者や著名人ならば、直接接触したことが無くとも琢馬が知っている可能性はあります。
※蓮見琢馬の支給品は スピードワゴンの杖@二部 だけでした。
※琢馬の後を『ウォッチタワーのクラブ7とスペード2』が追いかけています。
【C-4 川沿い『亀』の中 /1日目 昼】
【カンノーロ・ムーロロ】
[スタンド]:『オール・アロング・ウォッチタワー』
[時間軸]:『恥知らずのパープルヘイズ』開始以前、第5部終了以降。
[状態]:健康
[装備]:トランプセット
[道具]:基本支給品、ココ・ジャンボ、無数の紙、図画工作セット、『ジョースター家とそのルーツ』、川尻家のコーヒーメーカーセット、地下地図、不明支給品(5~15)
[思考・状況]
基本行動方針:状況を見極め、自分が有利になるよう動く。
0.情報収集を続ける。
1.このガキ(琢馬)の記憶力を利用する?とりあえず自分のところに誘導させる。
2.『ジョースター家の血統』、『イレギュラー』、『DIOという男』、『波紋戦士』、『柱の男』、『パッショーネ』……。さて、どう、『利用する』べきか……?
[備考]
※〈オール・アロング・ウォッチタワー〉の情報収集続行中。
※現在は特に琢馬を監視している『クラブ7とスペード2』に注意を払っているようですが、もちろんその他の参加者の動向もチェック中です。
今回、少なくとも新しく『
マリオ・ズッケェロ、空条承太郎、川尻しのぶ、小林玉美、トリッシュ・ウナ、
エルメェス・コステロ、シーラE』を発見しました。
※回収した不明支給品は、
A-2 ジュゼッペ・マッジーニ通りの遊歩道から、
アンジェリカ・アッタナシオ(1~2)、マーチン(1~2)、
大女ローパー(1~2)
C-3 サンタンジェロ橋の近くから、
ペット・ショップ(1~2)
E-7 杜王町住宅街北西部、コンテナ付近から、
エシディシ、ペッシ、
ホルマジオ(3~6)
F-2 エンヤ・ガイル(1~2)
F-5 南東部路上、
サンタナ(1~2)、
ドゥービー(1~2)
の、合計、10~20。
そのうち5つは既に開封しており、『川尻家のコーヒーメーカーセット』、『地下地図』、『図画工作セット』、『サンジェルマンのサンドイッチ』、『かじりかけではない鎌倉カスター』が入っていました。
その中のサンドイッチと鎌倉カスターは消費したようです。
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最終更新:2014年02月24日 23:40