『さあ、おやすみなさい ―星と死のバラード―』

『その名よ、轟け』⇐第4部から

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『さあ、おやすみなさい ―星と死のバラード―』


     ◯     ◯


レミリアがどうにか地霊殿の正面口から抜け出た頃には、落盤に伴う地響きはすっかり収まっていた。
レミリアはゆっくりと地面にブチャラティを下ろした。
すると、彼の脚の辺りに何か光るものがくっついているのが目についた。
光は兎の足跡の形をしていて、温かい、魔力らしきエネルギーを感じた。
そっと光に触れようとしたレミリアだったが、光は急速に弱まり、すぐに消えてしまった。


「そういえば、ブチャラティは永遠亭のイタズラ兎と会ったらしいわね。彼女のものなのかしら」


この光と今の落盤が彼女の『人を幸運にする程度の能力』によるものだとすれば、
彼女にも礼を言わなければならないか。
だが、まずは目の前の彼だ。


「それにしても、ブチャラティ。貴方……
 ……貴方、どうして生きているのよ!?」


レミリアのその言葉は、安堵からのもの……ではない。
驚愕、あるいは――恐怖からのもの。
ブチャラティの身体はそこら中の肉が千切れ飛び、骨や筋肉や内臓が飛び出てしている。
顔も半分頭蓋骨が露出して、頬骨が砕け飛んでいる。
生きているのがおかしい程の重傷とよくいうが、
それは比喩でなく『人間なら』本当に生きているのはおかしい状態なのだ。
これでは、まるで――

と、ブチャラティの眼球がギョロリとレミリアの方を向く。
そしてうめくような声を漏らした。


「……あ、うう……苦しい……そこにいるのは……ダレ、だ……?」

「レミリアよ! レミリア・スカーレット! ブチャラティ、喋っちゃダメ!
 いえ、どうしてあなた、喋れるのよ!?」

「レミリア……? ディアボロ、ディアボロは、どこに行った……?
 寒い……苦しい……暗い……けど、奴だけは……始末……ジョルノのために……」


ブチャラティの頭蓋骨に嵌った目玉から赤い血が流れ出る。
レミリアは悟った。
ああ、この男は――自分の死を受け入れられなくなってしまったのだ。
その肉体が朽ち果てても、ディアボロを殺すまで、天へ還ることができないのだ。
彼は――いわゆる地縛霊、いや、念縛霊へと転じつつあるのだ。

失ったはずの仲間が、こうして現世に留まってくれている。
――だけど。


「ブチャラティ……もういいのよ。あなたは立派にやったのよ」


レミリアはブチャラティを胸に抱き、優しく、呼びかけた。
この男を見ていると、胸が痛むのだ。
レミリアには、耐えられないのだ。
朽ち果てた肉体を引きずりながら、それでも戦いをやめることのできないブチャラティの姿を見ているのは、
苦しそうで見ていられなかったのだ。
このまま一つの念にずっと苦しみ続ける念縛霊と化す前に、何とか彼の魂を解放してやりたかった。


「だ、誰だ? 悪魔が、囁いているのか? 『もう頑張らなくていい』だなんて……。
 ……俺は、まだやることがある……立派なんかじゃ……」

「こんなになるまで戦った貴方を、誰が立派じゃないなんて言うのよ!?」

「俺は、ジョルノに……何も残してやれていないんだ……この身体、動くうちは……」


ジョルノ。ブチャラティにとって、その少年は本当に希望であり、太陽そのものなのだろう。


「……もう残したわ。貴方の生き様は、私が責任を以ってジョルノに伝える。
 ……だから」

「……ああ……ダメな奴だ、俺は……」

「ダメなんかじゃない! ……貴方は、頑張ったじゃない」

「頑張った? ……でも、俺は……」

「そう、貴方はもう十分に頑張ったのよ。
 後の事は、ジョルノと、私に任せて。 だから……もう、休んでいいのよ」

「ああ……俺は、俺は……もう、休んでいいのか」

「そうよ、ゆっくり休みなさい、ブチャラティ……頑張ったわね」

「……うん……『ボク』は先に休むって、ジョルノに言っておいて、レミリア。おやすみ」

「お休みなさい、ブチャラティ」


レミリアの膝の上で抱かれていたブチャラティはようやくその目を閉ざし、ゆっくりと眠りについたのだった。
それは、往時の彼の様子からは考えられないほどに、安らかな表情だった。
成人済みのはずのブチャラティが、5歳ほどの少年に見える程に、無防備な姿だった。

   |     |


レミリアに『頑張った』と言われた時、ブチャラティの肩にのしかかっていた重荷がふっと軽くなるのを感じた。
ブチャラティの魂が天に登ることさえ阻むほどの大きな重圧が、その時消えてなくなったのだ。

『頑張ったね』と、ただその言葉の為だけに、ブチャラティは今まで生きてきたのかもしれない。
街の裏の社会を統治するギャングの一員として、仕事の『結果』を感謝されることは何度もあった。
だが、結果を出せずとも頑張ったと『過程』を褒められることは、今まで無かったことだった。

『正しく』生きること。
ブチャラティはそれしかできない不器用な人間だった。
自分の組織が麻薬を売っていることを知って、『心が死んでいく』と感じるほど善良すぎる男だ。
ギャングとして出世し、一つのシマを任される立場になっても、私腹を肥やそうとは考えもしない男だった。
そんな生き方は幼少の頃からの習慣だった。
ブチャラティは人の悲しみに人一倍敏感だったから、
自分の行いが『正しく』ないせいで誰かが悲しむのには耐えられなかった。

両親が離婚し、父か母、どちらかに付いていくことを選ばなければならない時も、そうだった。
父と別れてもすぐに立ち直りそうな母ではなく、多くを語らずともより深い悲しみを抱えていた父を選んだ。
それが正しい行いだと感じた。それだけの理由だった。
いつだって、自分の事は後回しだった。
誰かが悲しまなければならない目に遭うのを防ぐためなら、自分の犠牲は厭わない。
ブチャラティ自身は何一つ手に入れようとしなかった。

あの地下礼拝堂でディアボロと戦うと決意した時から、どれだけ身体が傷ついても、どれだけ苦しくとも、
それこそ骨の一本になるまで戦う覚悟をブチャラティは背負っていた。
ブチャラティは、ディアボロがもたらした多くの悲しみをどうしても払わずにはいられない性分だったからだ。
その強い覚悟が、ジョルノに与えられたかりそめの生命で動き続ける原動力となっていた。
かりそめの命の器である肉体が朽ちてなお、
念縛霊としてこの世に留まろうとするほどに歪なほど強い覚悟だった。

それほどの覚悟を背負っていたブチャラティは、どうしてこの世の未練をから解放されたのだろう。

与えられてしまったのだ。
何も求めないブチャラティの生き方に対する対価が。
「頑張った」と結果ではない、過程、生き方に対して。
与えられてしまったから、ブチャラティは生死の理を歪めるほどの未練から解放され、
天に帰ることができたのだった。

こうして未練から解放され、すっかり軽くなったブチャラティの魂が天に昇ってゆく。
スカーレットに輝くレミリアの魂を後にして。
ブチャラティはディアボロを討つという望みを果たすことはできなかったが、もはや彼が思い残すことはない。
クリムゾンレッドのあの魂と、無色のあの魂を滅ぼすことは叶わなかったが、
それはきっと仲間たちが叶えてくれることだろう。
もう俺は十分に頑張ったと、認めてくれた仲間が、きっと。

ブチャラティは自分の行く先、天を仰いだ。
すると暗黒の夜空にはいくつもの星々が輝いていた。
ここは地の底。あの星々は、地上でいまも戦いを繰り広げている魂なのだ。

赤、青、金色、紫、銀色、緑色、様々な色の魂が、輝きを放っている。
真っ先に目に付いたのが、朝焼けのような黄金の輝き。
間違いない、ジョルノ・ジョバァーナの魂だ。
傍にはディアボロと同じクリムゾンレッドの輝きが。トリッシュ・ウナは、ジョルノと合流を果たしたらしい。
そして、彼らの周囲にはさらに三つの魂が輝いている。
鮮やかな紅(くれない)色の魂と、大洋を思わせるマリンブルーの魂、燃えるようなローズ・レッドの魂。
速度から考えて、自動車か何かで移動しているらしい。

そんなジョルノたちを追いかけるように、いくつもの魂が移動している。
目の覚めるような紫色の魂と、サファイアブルーの魂。
そして、黄金色――否、黄金と似て非なる、真鍮色の輝き。
三つの魂がジョルノたちを追っている。

さらにジョルノたちを追う者たちとは逆方向に去ってゆくのは、二つの魂。
追手の一つと全く同じ色の紫の魂と、それに比較してやや淡い色の、すみれ色の魂。
二つの魂が向かっていると思しき所に――『奴』がいた。
『奴』の操るスタンドビジョンの色と同じ、純金の重厚な輝き。
ブチャラティがここに来て最初に遭遇した、ディアボロをも上回る巨悪・DIO。
恐らくだが、ジョルノ達はDIOの一味と交戦するも、敗北して――逃走中なのだ。

だが、心配はいらなさそうだ。
DIOがけしかけたと思しき三つの追手の行く手を塞ぐように、三つの魂が待ち構えている。
雨上がりの空のような、スカイブルー。澄んだ遠浅の海を思わせる、シーグリーン。
そして、他と一線を画すひときわ大きな存在感を放つのは、
生物の血肉を思わせる、おどろおどろしいダークレッド。
彼らはきっと、ジョルノや、その仲間を守るために追手を食い止めようとしているのだ。

しかしそれにしても、ジョルノたちに大変な状況に巻き込まれているようだ。
こんな状況で彼らに全てを託すのをブチャラティは心苦しく感じたが、それでも逝かなければならない。
それが生きる理(ことわり)だから。
意志の強さ一つで、ずっとこの世にしがみつくことができるなら、意志を『受け継ぐ』ことに意味がなくなってしまうから。
レミリアが賞賛した人間の強さを、ダメにしてしまうから。

ブチャラティは、天へと昇ってゆく。
ジョルノたちの魂は、今や見下ろす形になってしまった。
地上で輝く魂からは、焚き火から舞い上がる火の粉のような、小さな光が昇っている。
それらは、ブチャラティの逝く先と同じ所に向かっているようだ。
そしてその小さな光は、それぞれに幽かな声を放っている。

ある光は、『取り戻したい』、
ある光は、『殺したい』、
ある光は、『護りたい』、
ある光は、『かきたい』、
ある光は、『欲しい』、
ある光は、『なりたい』、
ある光は、『生きたい』、
そして、ある光は――『天国へ行きたい』――と。

高度を上げてゆくにつれ、ブチャラティと声を乗せた小さな光は一箇所に集まってゆく。
そして光が集まってゆくと共に、その輝きは強さを増し、
最後には恒星のようなまばゆい輝きと化し、そして――。


     ◆     ◆


怪物、いや、『サンタナ』が地霊殿の奥へと去ってゆき、後にはドッピオだけが残された。
傷を治された瞬間にサンタナを始末してやりたかったが、既にドッピオの体力・精神力は限界にきており、
スタンドを出現させることさえままならない有様だった。
故にサンタナとやらの気まぐれを甘んじて受け取り、
おとなしく見逃されておくことがドッピオにできた唯一のことだった。


「……どうやら、命拾いしたらしい……情けねえことだが……ボス、あなたさえ守れれば……」


重い体を引きずるようにして、ドッピオは戦闘の余波を受けていない地霊殿の一角へ向かう。
どこかの部屋にこもり、休息を取る必要がある。
サンタナがいつ心変わりして襲ってこないとも限らないが、それでも、
外に出てあの兎女やコウモリ女に追い回されるよりマシとドッピオは判断した。

地霊殿で休むとすれば、大きな正面の出入り口が落盤で塞がったのは幸運といえる。
落盤で外からの侵入は難しくなり、逆にこちらは壁抜けののみを使えば出入りは自由自在だ。
もっとも、これだけ広い宮殿が正面からしか出入りできないのは考えにくい。
正面からは目立たないところに裏口のようなものがあるのだろうが。


「……チッ……この家には、少女趣味の連中しかいねえのか……」


ドッピオが倒れこむようにして入った一室は、
サンタナを最初に床下に放り出してやってから休息を取った時の部屋と同じ様な、
フリルやリボンの飾られたファンシーな装飾の部屋だった。
壁のハンガーには先程も見たフリルがふんだんにあしらわれた、ピンク色の上着が掛けられている。
先ほど休んだ部屋で見た服は緑色。つまり、


「チッ……こっちが『古明地さとり』の部屋ってことか……。
 じゃあ、さっき居たあの部屋は……『古明地』って姓の参加者がもう一人いたな。
 クソッ……今はそんなことどうでもいい」


とにかく、今は休息をとらなければならない。
例え、そこがボスの消せないトラウマを呼び起こした敵のねぐらだとしても。

ドッピオは天蓋に覆われた、一人用にしてはいささか大きすぎるベッドに頭からダイブした。
このバトル・ロワイアルでマトモな睡眠を取れそうな機会は、
もう来ないかも知れないとドッピオは判断したのだ。
そしてドッピオは、これまた一人用には大きすぎる羽毛入りの枕に顔をうずめた。
眠りにつくためドッピオが深く息をつくと、鼻腔に入り込んでくるのは甘ったるい香り。
ローズ系の、香水かシャンプーの香りである。嗅いでいると、不思議と落ち着いた気持ちになってくる。
だがドッピオが顔を上げて枕をよく見ると、カバーには30cmほどの長さの紫色のくせっ毛が張り付いていた。



「……クソがッ!!」


当然である、ここが古明地さとりの部屋であるなら、この枕に染み付いた香りは古明地さとりのもの。
ドッピオは軽い自己嫌悪に陥り、悪態をつきながら枕を勢い良く床にはたき落とした。
そして、今度こそ泥のような眠りについた。
それこそ、身体か溶けてシーツに染みこむと錯覚する程の、深い眠りに。



【D-2 猫の隠れ里の地下 地霊殿・古明地さとりの部屋/午前】
【ドッピオ@ジョジョの奇妙な冒険 第5部 黄金の風】
[状態]:熟睡中(放っておいたら6時間は起きない)、体力消費(極大)、精神力消費(極大)、
  ドッピオの人格で行動中、ディアボロの人格が気絶中、酷い頭痛と平衡感覚の不調
[装備]:壁抜けののみ(原作でローマに到着した際のドッピオの服装)
[道具]:メリーさんの電話@東方深秘録
[思考・状況]
基本行動方針:参加者を皆殺しにして優勝し、帝王の座に返り咲く。
1:(熟睡中)
2:『ボス』が帰ってくるまで、何としても生き残る。それまで無理はしない。
3:二度と愚かな失敗をしない。そのためにも慎重に行動する。
4:『兎耳の女』は、必ず始末する。
5:サンタナを何とかしたい。
6:新手と共に逃げた古明地さとりを探し出し、この手で殺す。でも無理はしない。

[備考]
※第5部終了時点からの参加。ただし、ゴールド・エクスペリエンス・レクイエムの能力の影響は取り除かれています。
※能力制限:『キング・クリムゾン』で時間を吹き飛ばす時、原作より多く体力を消耗します。
※ルナティックレッドアイズのダメージにより、ディアボロの人格が気絶しました。
ドッピオの人格で行動中も、酷い頭痛と平衡感覚の不調があります。時間により徐々に回復します。
回復の速度は後の書き手さんにお任せします。


     ☆     ☆


地霊殿の奥へと向かったサンタナが辿り着いた先は、死体置き場。
地霊殿からさらに地底深くへ下る階段の降り口の、すぐそばにある部屋である。
最初にドッピオに落とされてから地霊殿まで上がってくるときに、サンタナはこの部屋を発見していたのだった。
この部屋にはその名の通り、人間の死体が山のように積み上げられている。
この地獄で本来働いている火車猫が灼熱地獄にくべるための、『燃料』が貯蔵されている部屋なのである。

死臭が充満する死体置き場に入ったサンタナは、山と積まれた赤黒い死肉の中に潜り込んだ。
そして全身の皮膚で周囲の肉の消化を開始した。
サンタナは、念願叶ってようやく久々の食事にありついたのである。

ところで、闇の一族にとって死肉を吸収するという行為は、
生きている肉体をそのまま同化・吸収するのに比べると、時間的にも量的にも段違いに非効率である。
一旦タンパク質を分解して、その成分を吸収し、自分の肉体に再構築し直す、という、
他の下等な生物と同様の手順を踏む必要があるためである。
何時間も掛けて『食事』を行わなければ、失われた腕が再生することはないだろう。
量だけは豊富なのが幸いである。効率が悪くとも、これだけあればいくら消化してもなくなりはしないだろう。

サンタナはしばらくの間、この死肉の山の中でゆっくりと傷を癒やすことにした。
ドッピオが襲ってくるかも知れないが、あの消耗ぶりではしばらくは動けないことだろう。
間違いなくこちらの回復の方が早い。

サンタナは傷を癒やしてからのことについて思いを巡らせた。

オレは、これからも戦い続けるのだろう。
オレが、『サンタナ』という唯一無二の存在であることを誇ることができるようになるために。
あのレミリアのような、強い相手と。
――そうだ。レミリアは、強かった。
奴の心に、オレの存在は刻むことができただろうか。
奴のような存在にオレの存在を刻むことができていたとすれば――それはとても誇らしいことだ。
例えオレが奴に負けて死んだとしても、悔いはなかっただろう。
奴を、レミリアを殺さずに済んで、本当に良かった。

――これでは、まるで戦闘マニアのワムウだな。
だが、戦いでしか自分を表現できないのは、捕食者である『闇の一族』の共通のサガ、なのかも知れん。
それにしてもおかしな話だ。
戦いでしか自分自身を表現できないのに、戦った相手を殺さずに済んでホッとしているなどと。
命のやり取りをしなくて済む戦いなど、あるはずもなかろうに。

骸の山の中で、サンタナは次の戦いに備えしばしの休息をとる。
戦って、戦い抜いて、戦いの果てに、
サンタナが、唯一無二のサンタナである証を誇ることができる時が来ることを信じて。



【D-2 猫の隠れ里の地下 地霊殿・奥(旧地獄跡地に降りる所) 死体置き場/午前】
【サンタナ@第2部 戦闘潮流】
[状態]:疲労(大)、全身ダメージ(大)、足と右腕を億泰のものと交換(もう馴染んだ)、
 左腕欠損、死体の山の中で再生中
[装備]:緋想の剣@東方緋想天、鎖@現実
[道具]:基本支給品×2、パチンコ玉(19/20箱)@現実
[思考・状況]
基本行動方針:自分が唯一無二の『サンタナ』である誇りを勝ち取るため、戦う。
1:戦って、自分の名と力と恐怖を相手の心に刻みつける。
2:自分と名の力を知る参加者(ドッピオとレミリア)は積極的には襲わない。向こうから襲ってくるなら応戦する。
3:カーズエシディシと合流し、指示を仰ぐ。
4:ジョセフ、シーザーに加え、守護霊(スタンド)使いに警戒。

[備考]
※参戦時期はジョセフと井戸に落下し、日光に晒されて石化した直後です。
※波紋の存在について明確に知りました。
※キング・クリムゾンのスタンド能力のうち、未来予知について知りました。
※緋想の剣は「気質を操る能力」によって弱点となる気質を突くことでスタンドに干渉することが可能です。
※身体の皮膚を広げて、空中を滑空できるようになりました。練習次第で、羽ばたいて飛行できるようになるかも知れません。
※自分の意志で、肉体を人間とはかけ離れた形に組み替えることができるようになりました。


     ◯     ◯


ブチャラティは、迷わずに逝くことができただろうか。
レミリアは、洞窟の天井を漠然と見つめながら思った。
見つめる先にはきっと、死した魂のゆくべき場所がある。
――何故だかはわからないが、ブチャラティはそこへ逝った、とレミリアは確信していた。
幽かだが、何かが、いや、他ならぬブチャラティの魂がそこを昇ってゆく気配を感じたのだ。

幻視の中でブチャラティの魂が上ってゆくのを見送ったレミリアは、ゆっくりと立ち上がり、
ブチャラティの亡骸を隻腕で慎重に抱え挙げ、洞穴の端の岩陰に隠した。
本当は彼の信頼するジョルノの元に連れていってやりたかったが、それはできない、とレミリアは判断した。
レミリアの体力の問題ではない。
彼女とて痩せても枯れても吸血鬼、片腕で人一人運んで動き回ってもどうということはない。
だが、ブチャラティの遺体の損傷が激しすぎる。
抱え上げて動き回るうちにどんどんと彼の肉体は生前の姿から遠ざかっていってしまうことだろう。

故に、彼の亡骸はここに置いてゆく。すべてが終わった後、迎えに行くために。
このときレミリアは、彼の死体をエニグマの紙に入れて持ち歩くという発想を至ることができなかった。
紙に入っていたのは支給品――モノだ。
亡骸とはいえ、ブチャラティをモノ扱いする考えを、彼女は持てなかったのだ。

ブチャラティの死体を運ぶ際、レミリアは手に着いた彼の血を舐めてみた。
古くなりすぎていて、ほとんど栄養の足しにはならなさそうだった。
栄養になりそうなら、無礼を覚悟の上で彼の血を失敬して回復の足しにしようと思ったのだが――。

さて、とレミリアは今後の方針を思案する。
サンタナ、と名乗ったあの筋肉妖怪はまだ生きていることだろう。
ディアボロの方は、あの傷で生きているとは思えないが、あの執念だ、万一ということがある。
では今すぐとどめを刺しにゆくべきか。
これだけ広い建物なら、
たった今ふさがってしまった正面以外にも出入口の一つや二つ備わっているだろうが――。

しかし、隻腕の今一人で奴らを倒しに向かったとして、勝利できる可能性は低い。
かのサンタナの方はまだ余力がありそうだ。
そこに先ほどのように(戦えるかどうかは不明だが)ディアボロと組まれたら、さすがに相手が悪い。
おとなしく退くのが、最善の道なのだろう。


「ここは、私たちの……いえ、私の負けというわけね」


ブチャラティとディアボロは殆ど相討ちに近い形だった。
あの無敵のスタンド相手に、ブチャラティは互角の戦いを演じたのだろう。
とすれば、レミリアがサンタナに負けたのが直接の敗因だといっていい。



「……サンタナ」


空っぽの存在だと思っていた。
実際、一度私に敗れた時の奴は信念も背負うものもない、空白の存在だった。

だが、奴は再び立ち上がり、名乗りを挙げて私に挑んできた。
力をもって『サンタナ』という存在を刻むために。
妖怪が、生きるために、忘れられない為にそうするように。

まさしく奴は、名を残し、語り継がれるために戦う、一個の妖怪としての生き方に目覚めたのだろう。
――このような殺し合いの場でなければ、きっとそれは喜ばしいことなのだろう。
ただ命を食らうだけだった、獣と妖怪の境界に立つ存在が、同じ闇に生きる妖怪として誕生したのだから。

だけど、どういう理由であれ、サンタナが億泰を喰らった事実は覆らない。
――だとすればやはり、奴は、殺さなければならない。
億泰はいつもの幻想郷で妖怪の食料として配給される人間ではないのだから。

レミリアは立ち上がり、地霊殿を後にする。
振り返って地霊殿を一瞥し、隣人になり得たかもしれない仇敵に雪辱を誓ってから。


【ブローノ・ブチャラティ@第5部 黄金の風】 死亡
【残り 63/90】

【レミリア・スカーレット@東方紅魔郷】
[状態]:疲労(大)、妖力消費(大)、右腕欠損、両翼欠損、再生中
[装備]:なし
[道具]:「ピンクダークの少年」1部~3部全巻@ジョジョ第4部、ウォークマン@現実、
    鉄筋(残量90%)、マカロフ(4/8)@現実、予備弾倉×3、妖怪『からかさ小僧』風の傘@現地調達、
    聖人の遺体(両目、心臓)@スティールボールラン、鉄パイプ@現実、
    香霖堂や命蓮寺で回収した食糧品や物資(ブチャラティのものも回収)、基本支給品×4
[思考・状況]
基本行動方針:誇り高き吸血鬼としてこの殺し合いを打破する。
1:咲夜と美鈴の敵を絶対にとる。
2:ジョナサンと再会の約束。
3:サンタナを倒す。
4:ジョルノに会い、ブチャラティの死を伝える。
5:自分の部下や霊夢たち、及びジョナサンの仲間を捜す。
6:殺し合いに乗った参加者は倒す。危険と判断すれば完全に再起不能にする。
7:億泰との誓いを果たす。
8:ジョナサン、ディオ、ジョルノに興味。
9:ウォークマンの曲に興味、暇があれば聞いてみるかも。

125:賢者の意志 投下順 126:デュプリシティ
125:賢者の意志 時系列順 126:デュプリシティ
119:Bloody Tears ブローノ・ブチャラティ 死亡
119:Bloody Tears レミリア・スカーレット 127:四柱、死中にて
100:嘆きの森 ディアボロ 155:この子に流れる血の色も
100:嘆きの森 サンタナ 127:四柱、死中にて

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最終更新:2017年03月16日 20:29