強者たちの舞台裏

これは、放送前の語るまでもないほんのちょっぴりの出来事。



サンタナ


ペタリ、ペタリと廊下を歩く音が木霊する。

"サンタナ"。己の存在価値を掴みとるためにもがく一個の怪物のものである。

「......」

サンタナは考える。自分は弱い。この地にいる他の種と比べてではない。
同族のあの三人と比較して、だ。
『悔しい』―――そう、『悔しい』がそれは認めている。
このバトルロワイアルに身を晒し、幾度も闘争を重ねようやく得たモノだ。
自分の諦め以外の『感情』を自身で否定する謂れはない。

その感情に従い、彼は現状でのワムウとの模擬戦を幾度か脳内でシュミレートしたが、結果は全敗。
やはり己の『流法』を手に入れるしかないのだが、どうにも壁に阻まれる。
この壁さえ乗り越えれば辿りつけるというのに攻略法がわからない。
崖のぼりの世界記録に挑戦している最中に頂きが霧に包まれているせいで先に進む二の足を踏んでしまうロッククライマーのような心境とでも例えればいいのだろうか。

とにかく、サンタナは言いようのしれない不安を抱いていた。
劣るが故に、今まで全てを諦めてきたサンタナにとっては初めての感情だ。

一人で悶々と悩んでいても仕方ないと悟ったサンタナは、ある場所を目指していた。
それは資料室。資料に詰め込まれた知識と知恵の宝庫。

知識―――主、カーズのような知識があれば、石仮面のように更なる進化の術を生み出すことができる。
知恵―――なんてことのないモノでも、工夫し応用を加えればそれは立派な武器となる。

ジョセフ・ジョースターが抜いた髪の毛で弾丸を防ぐ盾を作ったように。レミリアやブチャラティ達が己の能力を応用しサンタナを苦しめたように。


下等生物の知識なぞに頼ってたまるものか―――そんな意固地なプライドはいまは要らない。
己の流法を得るためなら、彼らに認められるためならなんだってやってみせる。

そんな決意と共に歩み、やがて目当ての資料室に辿りつき―――先客と目が合った。

「なんだ、お前もここに用があったのか」

主、エシディシは、本棚の前で小さな冊子を読みふけっていた。

「......」

無言で片膝をつき顔を俯かせる。
認められたい気持ちはあれど、今はまだ主従にもなれていない間柄である。
待ち受ける試練を乗り越えるまでの己への戒めの意も込めて、サンタナはこれまで通りの服従のポーズをとった。

「ワムウとの戦いで参考になるものでも探しにきたか?」

チラリ、と上目遣いでエシディシを見やる。
やはりと言うべきか、こちらには顔を向けず本に釘づけだ。
この扱いに、よくもまあ一切の不満を抱かずにいられたものだと今までの自分が不思議になる。

「...ハイ」
「そうか。邪魔をしたな」

えっ、と思わず声を漏らしかける。
いま、主はなんと?
顔をあげた時には、既に主は己の横を通り過ぎた後だった。

今までの自分の扱いならば、サンタナの存在を認識することもなく、主が冊子に飽きるまで何時間でも待たされたことだろう。
そして、己の目的へと触れることなくワムウとの試合に臨むハメになったはずだ。
だが、いま主は確かに『邪魔をしたな』と意識を向けてくれたのだ。

背を向けた主の姿に呼びかけそうになる。
だが、喉から出かけた空気をグッと飲みこみ堪えた。
駄目だ。こんなものでは満足していては今までと変わらない。
主が意識してくれたとは言うが、ただの言葉の綾か気まぐれを勘違いしただけかもしれない。いや、事実そうだろう。
少なくとも、ワムウのように扱われたとは口が裂けても言えまい。
いまはまだ、傍から見れば四柱でもその実質は三柱のもとに転がる瓦礫だ。
それでも。
ほんの僅かな前進は、壁を覆う霧をほんの少しだけ晴らしてくれた気がした。



『ワムウ』

彼は目を瞑り―――盲目状態の彼にそう言うのもおかしな話かもしれないが―――精神を集中させていた。
これから行うは同族との試合だ。戦士たる彼が滾らぬはずもない。
とはいえ、相手は"サンタナ"。実力は主はおろか自分にすら劣る者だが。

(...邪念だ。闘いにおける筋力の優劣や能力の差など、手段と状況においていくらでも覆る)

ジョセフ・ジョースターは、翼の生えた娘は、ジョリーンは、マリサはどうだった。
彼ら達は皆、己より弱い種族でありながら見事な戦いぶりをこの身に刻んでくれたではないか。

ならばあの"サンタナ"も、明確にではないにせよ見下していたあいつも、彼らのように強敵となるやもしれぬ。

このゲームで培ってきたものを見せつけ、またはこいしのようにやり取りの最中で成長して。

『怖かったの……これ以上、流され続けるのが。悪い人たちに、みんなが……わたしが……傷付けられちゃうのが、怖かったの。 だから、がんばった、の』

「......」

やはり邪念が拭いきれていない。
目蓋の裏に浮かび上がる少女を意識の底に沈めるように、彼の精神は暗い、暗い闇へと沈んでいく。

行うのは精神統一のための瞑想。
怒りも悲しみも喜びも、いまは全てを忘れ去る。

第三者がこの場面を見れば、こう感じとるだろう。
いまのワムウは"無"の境地に達していると。

「FUOHH―――」

突如吐かれる息。間を置かずに放たれるは、前傾姿勢からの後方への右足による蹴りあげ。
それはまさに反射的なもの。視覚を封じようとも尚健在の戦士の勘。
だが手応えはない。代わりに、面積にして人差し指ほどの感触を右足に感じている。

「なるほど。反応は鈍っていないようだな」
「―――ハッ!」

攻撃してしまった対象、主エシディシの声に、ワムウは我に返った。
ワムウが慌てて右足を地に下ろすと、蹴りあげられた右足を支点に人差し指で逆立ちしていたエシディシもふわりと着地した。

「失礼を!エシディシ様」

ワムウはすぐに両ひざをつき謝罪の体勢に入る。

「主人に対する無礼を働きました...なんなりと罰をお与えください」
「謝るのは俺のほうだ。お前のコンディションを測りたかったのだが余計な世話だったようだ。許してくれ」

ワムウには、己の影の中に入られるのを極端に嫌い、反射的に攻撃してしまうという癖がある。
戦士としての勘といえば聞こえはいいが、主人に対しても反応してしまう辺りは悪癖ともいえよう。
エシディシは、それを知りながらわざと影に足を踏み入れたのだ。

「この眼のことでしょうか」
「そっちじゃない。お前のことだ。それにはとうにモノにしているだろう」
「おそれながら」
「俺が気にかかったのはあのこいしとかいう小娘のことだ。侵入者の狩りでお前が一番時間がかかったのは奴が影響しているのかと思っていた...が、少なくとも戦闘に支障はないな。邪魔して悪かった。...それとついでにだが」

意味ありげに言葉を区切るエシディシに、ワムウは疑問符を浮かべる。

「ヤツとの試合は全力で相手をしてやれ。いまの奴は手強いぞ」

顎に手をやりながらくつくつと笑みを零すエシディシに、ワムウは思わず問い返す。

「手強い、とは」
「奴は俺たちの誰よりも"飢え"ている。才能が無い故に、俺たちにはできぬことができるやもしれん」
「我らにできぬこと...」
「いまのアイツには全力で応えてやるのが闘いの礼節ってモンだ。まあ、誰よりも正しき闘争を重んじるお前のことだから心配はいらんと思うが」
「ハッ」

そのやり取りを終えると、ワムウの邪魔をしたことを詫び、エシディシは去っていく。

「......」

手加減はするつもりなどない。それは"サンタナ"にも告げたことだ。
しかし、奴が自分を打ち破る姿を想像できないのも事実だ。
人間たちと"サンタナ"。同じくワムウに劣る者達の違いはなにか。
それは初見であるかどうかが大きいだろう。
あの人間たちとは関わった機会が少なく、それ故彼らの目立つ部分しか知らない。
"サンタナ"は違う。ワムウは"サンタナ"のあの全てを諦めた姿を長年見続けてきた。それが無意識下の侮りに繋がっているのだろう。

(成長、か...)

成長。それはワムウが戦士たちに期待する"強さ"。
"サンタナ"は間違いなく成長している。認めた戦士たちもこのバトルロワイアルを通じて成長しているはずだ。彼らとの戦いはより良いモノになるだろう。
だが、追いつかれて、追い抜かれるだけでいいのか。こいしに語った、『信念に基づく不変の強さ』だけでいいのか。

「......」

自分のこれまでの闘争が間違っているとは思わない。その果てには納得し満足できる最後を迎えられるだろう。
だが、成長する戦士たちの姿を思い描けば、ほんのちょっぴりだけ羨望の念が湧いてくるのもまた事実だった。


『カーズ』と『エシディシ』

「あいつら、随分と気合が入ってるじゃあねえか」

すれ違った二人の様子を見た彼は呟く。
この殺し合いを通じて思うところがあったのだろう、静かに己の心に火を点け成長しようとするサンタナ。
己の邪念や慢心を捨て改めて戦士になろうとするワムウ。
両者ともやる気は充分。俄然、奴らの試合が楽しみになってきた。

「"サンタナ"もだがワムウの奴が自戒で目を潰したのもチト驚いた。...奴らに共通するのは『スタンド使い』と出会ったことか」

サンタナとワムウ。
彼らが共通し、エシディシは共通しない経験は、スタンド使いとの遭遇である。

スタンド使い。聞けば、奴らは人の身でありながら波紋使いとも違う異能力を有しているらしい。
しかも、波紋使いは生命エネルギーを流すことを基本とするが、スタンド使いは違う。
形状からは想像もつかない未知の能力を行使するらしい。
面白い。
そういう対処が困難な相手ほど、攻略した時の爽快感は素晴らしい。
その理不尽ともいえる能力を行使するスタンド使い、是非ともお目にかかりたいものだ。
あのレミリアという小娘もだ。
食糧にしかすぎぬ吸血鬼でありながら、あそこまで自分と張り合った獲物は珍しい。
可能ならば今度こそ戦い手を下したいものだ。

名簿を取り出しその人数を計算する。

「人数は90人。最初の放送では18人落ち、この館でも4人が死んだことから、残りは多く見積もっても60人前後か」

果たしてこの中にあと何人面白い獲物がいることやら。
できれば残りの参加者を一度は見てみたいが、それは贅沢というものだろう。

(どれ。ここいらでちょいと整理しておくか)

思えば、第一回放送の時は潜伏していたDIOの館を禁止エリアにされたこともあり、色々と慌ただしかった。
そのせいで、基本的な情報の取捨選択と整理整頓する暇もなかった。

(とりあえず死亡者の整理だけでもしておくか)

死者。肉体から魂を抜かれてしまった敗北者。
関わった者ならいざ知らず、関わりのない者に対してまで情を抱く必要はない。
それらは既にいらない情報である。

「え~っと、たしか最初に死んだ奴の名は...」

荒木が呼んだ名前を記憶の彼方から引きずり出す。数時間前のことだがもはやそれはうろ覚えになっている。
なんせあの時は状況を把握するのに必死だったのだ。情けないことだが、この点だけは認めるしかない。

「あぁっと、思い出した。たしかヤツの名は...」

数分の後、ようやくその名前を思い出したエシディシは、早速名簿を確認する。

「...ん?」

エシディシは、己の抱いた違和感に思わず首を傾げそうになった。


もの寂しい一室。
カーズはカーテンの向こうにある天敵を見据えていた。

「なにを見ている?」

サンタナとワムウ、両者との接触を終えやってきたエシディシが問いかける。

「太陽だ」

太陽は美しい。その陽の光に何度焦がれたかもしれぬ。
だが自分はあの光のもとへ出ることはできない。そういう体質だから。そういう一族だから。
いまこの布を取り除けばそれだけで自分は身動きをとれなくなる。光から逃れても動ける世界は限られてしまう。
だから―――彼はそれを克服したいと思っていた。何者にも縛られぬ真の自由を手に入れたかった。

「我らは太陽に焦がれ、しかし触れられずにいた」
「それも赤石があれば解決する。...なんだ、やけにセンチじゃねえか」
「私とて思いにふけるときはある」

冷酷ではあるが、それ以前にカーズも感情のある生物。想い焦がれる乙女のように、太陽に触れたいと惚けるときはあるのだ。

「だが、赤石を手に入れたとしても為さねばならぬことがある」
「荒木と太田。二人の始末、だな」
「うむ」

荒木飛呂彦と太田順也。
カーズからしてみれば既に死人であるエシディシ、ワムウ、サンタナと再会させてくれたことには感謝すべきなのかもしれない。
だが、それと二人への処分は別の話。如何な生物をも死に至らせる能力と時間軸を超越し前触れもなく他者を拉致する能力。どちらも邪魔にしかならない。
ならば、二人を始末すべきという結論は当然の帰結だ。

「奴らの能力の正体。それを掴まねば話にならん」

能力の正体。特に、頭を破壊し如何なる者をも死に至らしめる能力は厄介だ。
これを攻略しなければ勝ち目はないだろう。

「そうだな。...ここいらでボチボチ考えてみるか」

カーズも頷くことで賛同の意を示し、二人は荒木と太田の能力について話し合うことにした。
とはいえ、判断材料は体験したモノしかないため、確証はほぼない。
可能性を論じる程度、もっといえば世間話程度のモノになるため、試合に集中したいであろうワムウとサンタナを呼ぶ必要はないとふたりは判断した。

「あの頭部を爆発させる能力だが、奴らはこう言っていた。
『君たちの脳が爆発する条件は主に3つ。
まずは、会場内に設けられた禁止エリアに入った場合。これは進入後10分で自動で爆発する。
次にゲームが開始して以降、連続24時間で死者が一人もいない場合。
最後に僕たちに逆らった場合』と」

「カーズよ、お前はどう思う」

「そうだな...単純に考えれば脳に爆弾を埋め込まれている、といったところか。これなら自在に爆破できる説明もつく」

単純に考えればそれが理に敵っている。
脳内に小型の爆弾を埋め込み、スイッチを押すことで爆発させる。
全身機械仕掛けのシュトロハイムとかいう軍人もいるのだ。頭部に爆弾を仕込む程度のことは造作もないだろう。
しかし、その程度のことで吸血鬼はともかく自分達柱の男や妖怪や神様とやらをすべからく殺すことができるかという疑問も湧いてくる。

「エシディシ、お前はどうだ」

「正体は皆目見当がつかんが、俺は、奴らの示した三つの条件に『ウソ』が紛れていると睨んでいる」

カーズは目を細める。
主催者の言葉に『ウソ』が紛れているだと?

「いや、『ウソ』よりは『俺たちは解釈を間違えている』の方が近いか」
「聞かせてくれエシディシ」
「俺の考えとしては、奴らは『自分の好きなタイミングでの爆破はできない』可能性が高い」
「なに?」
「あの最初に荒木達に食いかかった女とのやり取りを覚えているか?」


『あー、説明の途中なんだけど。誰だっけ君?えっと確か、秋……あき……』
『秋穣子よ! み・の・り・こッ! さっきから聞いてたら、いきなり拉致して、今度は殺しあえ!あんた達何考えてんのよッ!』
『あのさぁ、君こそ僕の説明聞いてた?それとも幻想郷じゃ、丁寧に説明している相手に喧嘩吹っかけるのが挨拶なわけ?』
『ンフフ、まあまあ荒木先生。一寸待って下さい』
『ちょうど良いじゃないですか。我々に逆らったらどうなるか説明するのは、具体例を挙げるのが一番だと思いますよ。その子"神様"の部類ですし』
『そうか、それは確かに都合がいい』

たしかこんな具合だったはずだ。
多少のざわつきはあったものの、とりわけ騒いでいたのはあの少女であるためよく覚えている。

「私は特に違和感をもたんが...これがどうかしたのか?」
「ああ。やり取りには問題はないだろう。だが、本当に違和感はないか?」

エシディシはニヤニヤと笑みを浮かべながら、大金をかけたクイズ番組の出題者のようにもったいぶりつつカーズに問いかける。
近所のいたずらっ子のように、自分の投げかけた問いでカーズが悩んでいる様を楽しんでいるのだ。
カーズもそれに付き合うように知識と記憶をフル稼働させて答えを見出そうとしている。

同族とはいえあくまでも主従であるワムウと番犬のサンタナ相手では見られない光景だろう。

悩むこと数分。

「...わからんッ。教えてくれエシディシ」

音をあげたカーズはついに答えを求める。
エシディシは待ってましたと云わんばかりにイタズラ大成功!な笑みを浮かべた。

「あのミノリコとかいう女が食ってかかったから、荒木たちは説明を兼ねた見せしめとして殺したのがあの状況だ。
この条件で言えば、例えば俺がミノリコのように声を荒げ邪魔をすれば俺が処刑されたことになる。だがそれにしては奇妙なことがあるのだ」
「奇妙?」
「名簿にやつの名が記載されていないことだ。アクシデントにしちゃあ随分と都合が良くないか?」
「!!」

そこまで言われればカーズも理解した。
あの状況は、参加者として招かれた筈のミノリコが説明を遮り食ってかかったというイレギュラーな事態であり、荒木と太田はそれの対処と爆発の効果を知らしめるために行った措置、というのが今までの認識である。
つまり、最初の参加人数は『90人』ではなく『91人』。そこからアクシデントで死亡したのが『秋穣子』である。
だが、名簿には『秋穣子』という参加者の名は記載されていない。まるで、『あらかじめ彼女は参加者として扱うつもりはなかった』かのように。
つまり、あの状況と名簿は矛盾しているのだ。

「あの女が死んだから名簿を作りなおした?まあ、その可能性もある。だが俺が奴らの立場なら...」

エシディシは指を軽く噛み、名簿に記載された、自らが殺した『ロバート・E・O・スピードワゴン』の名に、滲む血で横線を引く。

「こうする。こっちの方が手間がかからんしな」
「ふむ...確かに、私もそうするな。いや、それ以前に修正をする必要もない」
「まあな。あの女が死んだという認識は参加者全員が持ってるんだ。名簿にそのまま載ってても死亡者扱いされるだけだ」

名簿には90人の名が連ねられている。ここから一人が減った程度でと思うかもしれないが、これがコピー機という便利な存在を知らない彼らにとっては中々に面倒な作業であるのだ。
なんせ名簿から一人が消えただけで90人の名簿を書き直し、それを90人分行うというのだから全くもって無駄な手間だといえよう。
仮にコピー機の存在を知っていたとしても、90人分の印刷をし直すのはやはり無駄な手間だと判断していただろう。

「ではあのミノリコとかいう女が食ってかかったのは」
「ああ。荒木達があらかじめそうするように指示していた可能性が高い」

91名の中から秋穣子だけを選別し自分達に歯向かわせるのは困難を極めリスクの高すぎる賭けといえるだろう。
ならば、彼女は既に荒木たちの手の内にあったと考えた方が無理はない。
では、なぜ秋穣子が見せしめとして協力したか、という問いに答えるのは簡単だ。
考えられる理由は三つ。

①秋穣子はなにか弱みを握られて従うしかなかった。無難だがこれが可能性が高いだろう。

②荒木たちには他者の意識を強制的に誘導あるいは乗っ取る能力がある。これが一番厄介な答えになるだろう。
なんせ、奴らを追い詰めたところで意識を乗っ取られれば一気に形勢を覆されてしまう。できれば当たってほしくないものだ。

③秋穣子は荒木たちの純粋な協力者であった。できればこれが一番当たって欲しいと思えるものだ。
見せしめではなく純粋な協力者であれば、あの女は実は生きている可能性が高い。つまりあの爆発はブラフであり自分達を致死に至らせる威力がない可能性が生まれる。そうなれば、即刻に荒木達を始末し、もうこんな遊戯に付き合う必要もなくなる。
...もっとも、彼女があの寸前に裏切られ、本当に死亡している可能性の方が遙かに高いが。

「だがなぜ奴らはそうまで手のこんだことを」

カーズの疑問は当然である。
秋穣子を見せしめとして予め決めておいたにせよ、自由に爆破できるのならわざわざ用意周到に手の込んだことをせず、適当なタイミングで爆破させればいいだけの話だ。
わざわざ『説明→実演』から『説明→乱入→中断→実演』と手間を増やす必要はない。

「なぜ奴らがこうまで手の込んだことをしたか―――あの頭を爆発させる能力は、奴らの指定した条件を満たさなければ発動できないというのが俺の仮説だ」
「その条件が『禁止エリアへの侵入』『24時間の死者が出なかった場合』『奴らに逆らった場合』のいずれか、か。...しかし、それでは自由に起爆できるのと変わらないが」
「いいや。奴らに逆らったと認識させなければいい。目を瞑っててもできるのと目を開けてなきゃ出来ないのではだいぶ違ってくる。なんにせよまともに突破するのは困難だろうが、やりようによるさ」

ただまあ、とエシディシは付け加え残念そうに己の顎を指で弄る。

「コイツはあくまでも仮説だ。それも、ロクな確証もないな。真実を知るには判断材料が少なすぎる」
「それでも充分だ。いくら考えようが私には辿りつけなかった。...しかし、よくもまあ名簿とあの状況を結び付けられたものだ」

先刻の『ジョジョ』と『幻想郷』のことといい、やはりエシディシはその好奇心を持ってカーズの興味を向けず気付けないモノを拾ってくれる。
それは非常に心強く頼もしいことだ。カーズは素直に彼を称賛した。

「好奇心は猫を殺すということわざがあるが、同時に好奇心こそが生を彩るものだと俺は考えている。視野を広く持つのは生を楽しむ上では欠かせないことだ」
「その手の本も好奇心の産物か?」
「ああ。書斎で手に入れた幻想郷に関する資料だ。気晴らしにでも読んでみろ。嫌い、見下しているだけでは進歩は遅くなるぞ」

カーズは幻想郷の進化しようとしない在り方を嫌い見下した。
しかし、それが全て要らぬものかどうかを触れもせずに断じるのは早計である。
こいしの話だけでは全てが解るはずもないし、当然、語られていないだけでカーズの興味を引くものも隠されているかもしれない。

「わかった。お前の助言、しかと受け入れよう...だが、こういった書物があるのならあのこいしとかいう小娘の発言と照らし合わせておくべきだったか」
「お前も俺ほどじゃないが荒っぽい気質だから仕方ないが、あそこで小娘を殺してしまったのはチト迂闊だったなァ」
「考えてみれば、禁止エリアに放置し爆発の真偽の実験にも使えたか...ムウゥ」
「お前も俺のように短時間で感情を抑制する方法を身に着けた方がいいかもしれんな。どうだ、ひとつ俺に倣って...」
「やらんぞ」

かくして、柱達の一幕は静かに過ぎていく。
このバトルロワイアルにて多くの激戦を繰り広げてきた彼らも、波乱も敵もなければ存外大人しいものなのである。


【D-3 廃洋館/昼】

※書斎には幻想郷関連のモノが置いてあるようです。

【カーズ@第2部 戦闘潮流】
[状態]:疲労(小)、胴体・両足に波紋傷複数(小)、シーザーの右腕を移植(いずれ馴染む)、再生中
[装備]:狙撃銃の予備弾薬(5発)
[道具]:基本支給品×2、三八式騎兵銃(1/5)@現実、三八式騎兵銃の予備弾薬×7、F・Fの記憶DISC(最終版) 、幻想郷に関する本×1
[思考・状況]
基本行動方針:仲間達と共に生き残る。最終的に荒木と太田を始末したい。
1:第二回放送終了後、ワムウとサンタナの『試合』に立会い、サンタナの意思を見極める。
2:幻想郷への嫌悪感。
3:DIOは自分が手を下すにせよ他人を差し向けるにせよ、必ず始末する。
4:奪ったDISCを確認する。
5:この空間及び主催者に関しての情報を集める。パチュリーとは『第四回放送』時に廃洋館で会い、情報を手に入れる予定。
[備考]
※参戦時期はワムウが風になった直後です。
ナズーリンタルカスのデイパックはカーズに回収されました。
※ディエゴの恐竜の監視に気づきました。
※ワムウとの時間軸のズレに気付き、荒木飛呂彦、太田順也のいずれかが『時空間に干渉する能力』を備えていると推測しました。
 またその能力によって平行世界への干渉も可能とすることも推測しました。
※シーザーの死体を補食しました。
※ワムウにタルカスの基本支給品を渡しました。
古明地こいしが知る限りの情報を聞き出しました。また、彼女の支給品を回収しました。
※ワムウ、エシディシ、サンタナと情報を共有しました。
※「主催者は何らかの意図をもって『ジョジョ』と『幻想郷』を引き合わせており、そこにバトル・ロワイアルの真相がある」と推測しました。
※「幻想郷の住人が参加者として呼び寄せられているのは進化を齎すためであり、ジョジョに関わる者達はその当て馬である」という可能性を推測しました。
※主催の頭部爆発の能力に『条件を満たさなければ爆破できないのでは』という仮説を立てました。

【ワムウ@第2部 戦闘潮流】
[状態]:疲労(小)、失明(いつでも治せるがあえて残している)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:掟を貫き、他の柱の男達と『ゲーム』を破壊する。
1:第二回放送終了後、サンタナと試合を行う。
2:霊烏路空(名前は聞いていない)と空条徐倫(ジョリーンと認識)と霧雨魔理沙(マリサと認識)と再戦を果たす。
3:ジョセフに会って再戦を果たす。
[備考]
※参戦時期はジョセフの心臓にリングを入れた後~エシディシ死亡前です。
※失明は自身の感情を克服出来たと確信出来た時か、必要に迫られた時治します。
※カーズよりタルカスの基本支給品を受け取りました。
※スタンドに関する知識をカーズの知る範囲で把握しました。
※未来で自らが死ぬことを知りました。詳しい経緯は聞いていません。
※カーズ、エシディシ、サンタナと情報を共有しました。
射命丸文の死体を補食しました。

【サンタナ@第2部 戦闘潮流】
[状態]:疲労(小)、再生中
[装備]:緋想の剣@東方緋想天、鎖@現実
[道具]:基本支給品×2、パチンコ玉(19/20箱)@現実
[思考・状況]
基本行動方針:自分が唯一無二の『サンタナ』である誇りを勝ち取るため、戦う。
0:書斎になにか新たな『流法』のヒントがあればいいのだが...
1:戦って、自分の名と力と恐怖を相手の心に刻みつける。
2:第二回放送終了後、ワムウと試合を行い、新たな『流法』を身につける。
3:自分と名の力を知る参加者(ドッピオとレミリア)は積極的には襲わない。向こうから襲ってくるなら応戦する。
4:ジョセフに加え、守護霊(スタンド)使いに警戒。
5:主たちの自分への侮蔑が、ほんの少し……悔しい。
[備考]
※参戦時期はジョセフと井戸に落下し、日光に晒されて石化した直後です。
※波紋の存在について明確に知りました。
※キング・クリムゾンのスタンド能力のうち、未来予知について知りました。
※緋想の剣は「気質を操る能力」によって弱点となる気質を突くことでスタンドに干渉することが可能です。
※身体の皮膚を広げて、空中を滑空できるようになりました。練習次第で、羽ばたいて飛行できるようになるかも知れません。
※自分の意志で、肉体を人間とはかけ離れた形に組み替えることができるようになりました。
※カーズ、エシディシ、ワムウと情報を共有しました。

【エシディシ@ジョジョの奇妙な冒険 第2部 戦闘潮流】
[状態]:疲労(小)、上半身の大部分に火傷(小)、左腕に火傷(小)、再生中
[装備]:なし
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:カーズらと共に生き残る。
1:ワムウとサンタナの試合を見学したい。
2:神々や蓬莱人、妖怪などの幻想郷の存在に興味。
3:静葉との再戦がちょっとだけ楽しみだが、レミリアへの再戦欲の方が強い。
4:地下室の台座のことが少しばかり気になる。
[備考]
※参戦時期はロギンス殺害後、ジョセフと相対する直前です。
※左腕はある程度動かせるようになりましたが、やはりダメージは大きいです。
※ガソリンの引火に巻き込まれ、基本支給品一式が焼失しました。
 地図や名簿に関しては『柱の男の高い知能』によって詳細に記憶しています。
※レミリアに左親指と人指し指が喰われましたが、地霊殿死体置き場の死体で補充しました。
※カーズからナズーリンの基本支給品を譲渡されました。
※カーズ、ワムウ、サンタナと情報を共有しました。
ジョナサン・ジョースター以降の名簿が『ジョジョ』という名を持つ者によって区切られていることに気付きました。
※主催の頭部爆発の能力に『条件を満たさなければ爆破できないのでは』という仮説を立てました。
※ナランチャのナイフ@ジョジョ第5部はリビングルームに放置されています。
※頭の潰れたホル・ホース、射命丸文の片翼、ぐずぐずに溶けた火焔猫燐の肉塊が廃洋館ミュージックホールに放置されています。


153:スターゲイザー 投下順 155:この子に流れる血の色も
153:スターゲイザー 時系列順 155:この子に流れる血の色も
145:MONSTER HOUSE DA! サンタナ 183:鬼人サンタナ VS 武人ワムウ
145:MONSTER HOUSE DA! エシディシ 183:鬼人サンタナ VS 武人ワムウ
145:MONSTER HOUSE DA! ワムウ 183:鬼人サンタナ VS 武人ワムウ
145:MONSTER HOUSE DA! カーズ 183:鬼人サンタナ VS 武人ワムウ

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最終更新:2018年03月13日 21:01