鬼人サンタナ VS 武人ワムウ

 ようやく此処まで来れたじゃない。
 いいねえ〜好きだよこういうの。私は大好きさ。
 アンタの事も……少しずつ、好きになれてきたよ。

 おっと、まだこっちは見なくていい。アンタは今、自分自身の生に必死なんだから。
 だから私は見物がてら、ちょいと応援させてもらうとするさ。



 おう、頑張りな。私はアンタに張ったよ。



            ◆


サンタナ
【真昼】D-3 廃洋館 エントランスホール


 暗闇の下で触れた物の輪郭は、時を経る毎に確かな触感となって、己が身に訴えてきた。
 以前までは完全なる『無』だったモノが、我が内には漂っていた。
 無いモノが、ただ在った。
 言葉は矛盾となり、不確かな外殻が何の意義も見い出せず、ただ其処に在る物として静かに埃被っていた。

 次第に、次第に、『無』は『有』へと移ろいでいった。
 時に身を焦がし。時に胎動を促し。未だ掴めない『有』の形を取ったモノは、その母体主を一種の迷いへと誘う。
 迷いはあったが……これは悪い存在ではない。不思議と、そんな確信も心にはあった。

 少しずつ、暗闇の中のジグソーパズルが完成へと近付いていく。嵌められたピース達の紡ぐ絵が、自分にとって如何なる影響を及ぼすのか。
 今やサンタナの知性は、それのみを求めていた。




 以前までとは、明らかに変わった事実がある。


(18人が消えた。恐らく、あの時オレが『喰って』やった虹村億泰、とかいう人間も含まれて)


 ここは寂れた廃洋館。その大広間であるエントランスの中央には今、二人の大男が眼差しを交えていた。
 正確には、視線は一方的である。サンタナの真正面にて仁王立ちでいるワムウの双眸は現在塞がれており、その眼をこじ開けるが如き鋭い視線を絶えず送り続けているのはサンタナだ。

レミリア・スカーレットは生きているか。分かりきっていた事……だが)

 すぐにも闘り合おうかというピリピリした空気の中、サンタナの思考は思いのほか澄んでいた。理由は、今しがた脳内に鳴り響いてきた放送の中の名前達にある。


 以前までとは、明らかに変わった事実。
 サンタナが、死者達の名前に馳せていた事だ。


 黙祷を捧げる? それは違う。
 柱の末端サンタナ。彼がたかだか下位生物らの滅びに、心を痛める事などありえない。

 敬意を払う? それも少し異なる。
 対峙し、拳を交え、名乗りを交わした相手に奇なる気持ちが芽生えても、既に死者となった見知らぬ者へと敬いの感情など生まれない。
古明地こいしが死の間際に見せた勇気に賞賛を覚えたのは、少女が自分に無いモノを見せ付けたからだ。

 分からない。18もの存在が死に逝った事実を認識した事で、自分がどう感じているかが。
 嘆きではないし、怒りでもない。特に嬉しいとも思わないし、昂りなど覚えない。

 しかし、漠然と。
 レミリアのように猛烈たる強者や、こいしのように勇ましき弱者。それら全てに平等なる死が降り掛かってしまったのだな、という他愛ない感想が、頭の底に残留して澱んでいる。

 言葉にすれば何とつまらない、それだけの感情であった。




「他人の死を意識しているのか?」


 感情が顔に現れていたとでも言うのだろうか。サンタナの思考を読んだかのような言霊が、ワムウの口から鋭く放たれた。
 じわりと汗が浮く。目が見えない筈のワムウに思考を読まれたという畏怖が、戸惑いの水となってサンタナの顔を伝いながら固めた。

「迷いは拳を……心を鈍らせる。それでも貴様が糧としたいならば、まずはおれに一太刀でも浴びせることだな」

 読まれたのは表情ではない。サンタナの思惟を僅かに含んだ空気の流れが、ワムウの雄々しい肌にまで伝わってしまったのだ。
 恐ろしい集中力。この男に、自分は今から戦いを仕掛けようというのだ。

 こんな怪物相手に、果たして勝て───────


(……違う。勝てる、勝てないではない。オレは必ず、周囲からオレ自身を…………)


 認めさせる。
 この試合は、その為だけの催し。
 たった一度きりの好機。逃せば次の機会など金輪際、訪れないだろう。

 やるしかない。同胞にすら嘲笑されてきた負け犬が、武の神へと下克上を遂げる偉業を。


「さて。さほどの興味も無い放送なぞ終えたところで……分かっているな? サンタナ」
「…………はい」


 主のカーズが、二頭の雄の境に威風堂堂と立つ。瞳の先のサンタナはなんの萎縮もせず、主の言わんとする事を察し首肯する。

「此度の『試合』は、本来我々の談合に発言権など無いお前の意見を尊重するという、過去類を見ない温情の計らいだ」

 当然、それは重々承知の上での意見。サンタナという底辺の立場では本来ありえない、主たちからの譲歩。慈悲。

「このカーズにここまでの御膳立てと台詞を言わせる事の意味……理解はしておろうな?」
「無論にございます」

 カーズの放った言葉には凄まじい重力を伴ったプレッシャーが含まれている。一度はエシディシが腰を上げようという意見を取り下ろさせてまで提唱した進言なのだ。わざわざ時間を取り、同胞同士で拳交えてまで往くと決めた。
 この闘い。罷り間違って容易く敗北する醜態など披露しようものなら、主達からサンタナへ向けられる侮蔑の眼差しは以前に増して決定的なものとなるだろう。

「カーズ様、並びにエシディシ様の御厚意を落胆で返すような裏切りは決してしないと誓いましょう」

 サンタナは今一度片膝をつき、頭を低くさせながら拳を地に付けた。気まぐれか、はたまた興味故か。なんであれ、あのカーズへと意見を通らせた事自体奇跡でしかない。
 そしてこれより、さらなる奇跡に臨むのだ。戦闘の天才へと勝負を仕掛け、ここに居る全ての同胞へと己を認めさせる。例えそれがどれほど白旗濃厚の、勝ち目が極めて薄い無謀な賭けであっても。

「その言葉、刻んでおけよ。……そして、ワムウ」

 サンタナの従順な姿に頷きで返したカーズは、次にもう一方の雄───ワムウを見やった。

「はっ」
「この地は我々にとって重要な、日傘代わりとなる拠点だ。お前の事だ、まさか必要無いとは思うが……」
「『神砂嵐』の事であれば、心得ております」
「うむ。ハンデではないが、この試合においては禁ずるとしよう」

 カーズからのワムウへの通達は、ワムウ一番の大技である『神砂嵐』の使用禁止令。火力・範囲共に広大であるあんな技を連発されたとあっては、こんな寂れた洋館などまさに嵐の後の藁の砦。日光を招き入れる大穴を自ら掘削するようなものだ。
 図らずも対戦相手の武器を封じる結果となったサンタナは、心中安堵した。ハンデだろうがなんだろうが、目的は正々堂々の勝負ではなく、いかに自分の本気を見せ付けられるかにある。その過程でワムウの戦力が削がれるのならば、それは喜んで受け入れる僥倖として捉えるべきだ。

「クク……とても余興とは思えぬ顔付きだなワムウ?」
「少なくとも、彼奴にとっては既に余興の域ではない様子。ならば、対するこのワムウとて相応のやる気を示すべきかと」
「面白い。そうでなければ永く生きる意味など無いというもの。折角の集中を茶化してしまったな。許してくれ」
「とんでもございません。このような私闘の場を提供してくださった主に心より感謝しております」

 たとえ部下であろうと、その在り方には尊厳を示すカーズ。
 そして主の計らいに、一寸足りともの毒も浮かべないワムウ。
 理想的な主従だと、今のサンタナからすれば輝いてすら見える。かつてはあの位置に辿り着きたいという羨望を浮かべる時期もあったかもしれない。
 だが今は違う。サンタナの目指すべき到達点は、ワムウの座るポジションとは別の地点にある。主従関係にこだわる必要は必ずしも無く、だからといってそこを疎かにしてはならないことも熟知している。


「では……そろそろ始めるか」


 だから必要なのだ。
 主からの許可という、唯一の綱渡りが。



「これより! ワムウとサンタナの模擬戦を執り行う! 制限時間は180秒の1本勝負!
 このカーズとエシディシが双方の心意気……責任を以て見届けると誓おう! 互いに心し、全力にて語り合えィ!」




       ワムウ 対 サンタナ

      いざ尋常に───────



         「始めッ!!」



            ◆



 相手は……強いねえ。
 多分、私より強いよ。隙が無い。

 さて。どーすんの?
 作戦はあるんだろう? 『流法』とやらの開発に賭ける?
 賭事は好きだよ。私もアンタに賭けてる身だしね。

 あぁ、酒の肴にゃ最高の見世物だね。だのに肝心の酒も無くちゃあ、酔えるもんも酔えやしない。世知辛いね。



 なあ。アンタは今、酔ってるのかい?



            ◆


───『いい気になって酔うんじゃあないぞ、番犬の存在が』


 主のカーズは、先のサンタナの申し出に対し、軽蔑の眼でそう言った。

(酔っている。オレは……今、確かに酔っている)

 闘争と戦慄の狭間で猛るサンタナの思考の片隅。その静かな部分では、今自分へと吹いてくる逆風を冷徹に自覚することが出来ていた。
 幾度もの敗北と屈辱が、その孤独なる生物を変えてしまった。これを変化と捉えるのなら、サンタナは人生の境目で起こる変化には必ず伴う熱風に吹かれている。
 それはつまるところ、彼がどうしようもなく酔っている事と同義であり、それへの自覚も心の片隅では確かに存在してるという事だ。
 熱に浮かれている。恐らく、人生の中で後にも先にも訪れた事ない、唯一度だけの、全身の脈動を迸る程の熱が。それこそあのエシディシをも凌駕するような熱量が、我が血液の中を高速で蠢いていた。


 心で考えるより先に、気付けば吼えていた。
 果てなく遠大なる難壁。その男の名を。


「ワムゥゥウーーーーーーーーーーーーーッ!!!!」


 設けられた制限時間は長くない。この闘いはワムウを倒す為の闘いに非ず。同胞達に自らの価値と意義を示す闘いなのだ。即ち、180秒という短い尺の中でサンタナは渾身のアピールを終えなければならない。

 必要最低条件は───流法の取得。これが現状一番の近道であり、かつてのサンタナではとうとう至れずにいた段位だ。

 その流法の、骨盤だけは既に出来上がっている。
 偉大なる生物としての形を保つことすら出来なくなった、地霊殿でのレミリアらとの死闘。


 あの闘いを思い出せ。
 あの無様な姿を思い起こせ。
 偉大な種である故の、ヒトの形。
 そしてその誇り高きプライドを粉砕されたが故の、ニクの形。
 顧みない者故が手に入れる、再起への手段。
 敗北と屈辱が育んだ、新たなる進化。
 生きようとする執念がある限り、例えバラバラに分解されようと肉を寄せ集め、立ち上がれるのが闇の一族なら。
 その逆もまた、論理的には可能である。
 肉を崩し、骨を組み換え、人の形を大きく逸するまでに至るのは、泥を味わったサンタナならでは。
 負け犬のサンタナだからこそ、辿り着いた地。


 その地を、土台にしろ。
 踏み、駆け抜け、跳べ。
 もう二度と這い蹲うな。
 今のサンタナはまさに。






「───────〝チーター〟か」


 直近の部下二人の闘いを見届ける為、エントランス奥の階段上にカーズとエシディシは座していた。気品を感じさせる赤絨毯にどしりと腰を据えた二体の巨躯は、古くからの顔馴染みの様な距離感で階下の激闘を評価し合う。
 ゆっくり胡座を掻きながら、サンタナの初動をチーターと比喩したのはカーズ。
 同志の台詞に対し、横のエシディシは片膝を楽に立てた姿勢で返した。

「ほほォ〜〜。サンタナの奴、ちぃと面白い技使うな。骨格変化は俺達の十八番だが、他生物種の姿そのものの模倣となると話が違う」
「技……? あんなものは技とは言えん。精々が観客を脅かす程度の手品。流法の域には遥か及ばん」

 サンタナの披露したまだ見ぬ姿に歓楽を交えるエシディシとは対照的に、カーズの評価は冷静で芳しくなかった。勝負開始と同時に光矢が如く飛び出したサンタナには、通常とは明らかに異端なる部位があったのだ。

「チーターに類する猫科には、地上をより速く疾走する為に工夫をこしらえた骨盤がある。その最たる骨が『背骨』だ。
 彼らの背骨は通常の物とは違い、大きくアールを描いている。つまり骨をカーブさせることによって全身をバネのように駆使し、跳ねるように走れるのだ」

 分かりやすくジェスチャーを交えながらチーターの骨構造を解説するカーズの視線の先では、サンタナが猛然とした勢いでワムウの真正面から突っ込んでいた。彼の身体は、今カーズが説明した内容と同じ骨格にまで変貌してる。
 つまり、サンタナはチーターの能力を借りてワムウへと先手必勝を仕掛けようと目論んだのだ。
 それだけではない。

「ありゃあ、足そのものも変化してねえか?」
「足の指が『四本』にまで減っているな。猫科の後ろ足の指は、走る時の負担を抑える為に前足の五本より少なくなっている。
 理由は、地面を蹴る時の力を分散させず、より一点集中とさせる為だ。砂浜とコンクリートの上では、速く走れるのは当然コンクリート上であるという原理だな。地に接する足の面積が狭いほど、傾向としては速いスピードが出せるはずだ」

 サンタナの、主に背骨と足の骨格変化。その正体を瞬時に見破ったカーズの表情も、まだまだ驚愕には程遠い色合い。


「まあ、そんなもんでワムウを倒せりゃ苦労はねえわなぁ」
「無論だ。奴は戦闘の天才……サンタナでは勝てん」
「じゃあカーズ。お前ならこの闘い、どっちに張る?」
「愚問だぞエシディシ。答えなら述べた」
「クハハ! だよなあ」
「ならば……お前はどちらだ?」
「俺かァ? そりゃあカーズ……決まってるだろう」



「───俺もワムウに張る。アイツじゃあ逆立ちしたってムリだ」



            ◆



 ムリムリ。そんなんじゃあ、ムリだよ。
 わんにゃんの猿真似なんかやったって、あの武人には敵いっこない。
 違うだろ。そーじゃない。アンタ、思い出しなって。
 思い出せ。よもや忘れたとは言わせないよ。



 なあ…………最初の最初だよ。



            ◆


 まさに、瞬く間である。
 カーズが宣言した試合開始の合図と全く同時、サンタナは変貌を開始。流星の如き速度で疾走したのだ。爆発的とも言える瞬発力は周囲の地面と大気に振動を波状に広げ、爆心地と化したサンタナは恐るべき速度で以て相手へと迫る。
 今までにないスピードを生み出した秘密は、形態変化による猫科〝チーター〟の模倣。段上にてカーズが一見して言い当てた通り、サンタナは背骨と両足の骨格ごと組み換え、かの地上最速生物と同等の速度を得た。
 そこを走るのは極限にまで美しくうねるアーチ。体型を細身に伸ばし、頭部をも縮小させる事で、受ける空気抵抗を最小限に抑えた。更に足の指を四本に減らし、加えて骨を皮膚外に突出させることで鋭利な爪を生やし演出した。爪がスパイクの役目をこなし地面を掻く事で、更なる速度上昇を促すのだ。

 完全に、素早く走る為だけの姿を作った。
 全て、強敵ワムウの意表を突く為である。
 まさに瞬く間。しかし、両目を潰したワムウゆえに、瞬くことなく彼はッ!


「疾いな、サンタナ」

「だがッ!! 遅いッ!!!」


 完璧なタイミングでサンタナの攻撃を読み、拳を突いたッ!

 既に弾丸のような拳をワムウに向けて突き出していたサンタナは、相手のカウンターに対応できない。必然、両者の拳は磁石の極同士のようにぶつかり、激しい衝撃が二人の腕を波打った。
 まるで分厚く凍り付いた海を鋼で叩き割ったかのような、凄まじい轟音がエントランスホールに響き渡り、反射する。

「〜〜〜〜〜〜〜〜ッッ!!」

 普段の鉄仮面が苦痛に歪む。サンタナはここに来て、ワムウの天性を理解する事となった。
 本当に視界がないのかと疑うほどの反射神経。その由縁は恐らく、試合前から行っていた瞑想による超集中力だ。そもそもこの試合自体、闇の一族ならではの『遊び』のようなモノ。サンタナにとっては一世一代の舞台には違いないが、本来余興の延長線にあるような催しの筈である。
 だが今のワムウの反応。油断の欠片も見当たらないその集中力こそが、彼にとってもこの闘いが単なる余興などではない事を、相対するサンタナへと拳を通して伝わった。

「雄(おとこ)は拳と拳で語り合う。なるほど、その言葉の意味がよく理解出来た」

 歯を食いしばるばかりのサンタナを嘲笑うかのように、ビンと腕を伸ばすワムウの口ぶりと表情には余裕が見て取れる。
 この初撃での鍔迫り合い。一打にして互いの『本気』を心で理解し、掬い取った両者の間に膠着が生まれる。ワムウの筋力がサンタナのそれを凌駕するにもかかわらず、衝突したパワーが釣り合ったワケは、サンタナに速度という名の物理法則が味方したのが最たる理由だ。

 だが、均衡は一瞬。ぶつかり合うパワーがサンタナの突進力を停止させ、速度の力はすぐにも殺された。
 となればここからはワムウの独壇場。彼は深く落とした腰を更に踏ん張らせ、全体重を右腕という重槍に乗せてサンタナを押し返す。
 筋力や技術で劣るサンタナに、この暴風を遮る盾は無い。


「…………お前なら、ワムウ」


 今にも押し返されんと震える腕に力を込めながら、サンタナは小さく口を動かした。


「お前なら、必ず防いでくると思っていた」


 天才と讃えられた同期に対し、一種の信頼のような台詞をサンタナが漏らした直後。

 拳と拳で繋がっていた二頭の雄の交叉点。双方が送り出すパワーの集中点。そこに異変が現れた。


「〝厳格なる拳骨(トーク ウィズ フィスト)〟」


 思えば最初の最初に闘った角娘や、かのレミリア・スカーレットもそうだ。わざわざ技名を宣言した後、その行動に移すなどという非合理的な行為。これがサンタナには理解不能であった。
 今は、彼女らに少しあやかってみよう。繰り出した技に自ら名前を付け発声するという愚かな行為をサンタナが行ったのも、些細な感傷が過ぎっただけに過ぎない。

「むぅ!?」

 衝撃が残した一抹の余韻が骨身を震わせる刹那、ワムウよりも一手先をサンタナは往かんとした。試合前、幾度も行った脳内シミュレーションでは、ワムウは退くことなくサンタナの拳に付き合うという想定を出していた。

 故に、予想通り。
 ワムウが閉じた瞳をひん剥くような素振りを見せたのは、シナリオ通りに事が進むサンタナの気が許した幻惑ではないと信じたい。

 厳格なる拳骨(別名・トーク ウィズ フィスト)と名付けられた技と同時、ミシミシとひしめくサンタナの拳の甲から骨が伸び、まるでトラバサミの罠のようにワムウの繋がった右腕まで絡まり、雁字搦めとした。
 群がる骨の一本一本がワムウの皮膚を貫通し、決して引き剥がそうとしない。ダメージ目的ではなく、ほんの一瞬でも相手を拘束する為への布石である。

 肉を切らせて骨を断つ。否。
 骨を差し出し肉を断つ。

「ウォォオオオオOOOHHHHッ!!」

 雄叫びと共にサンタナが、差し出した右腕とは逆の左手を振り上げ、即座に下ろした。その形は手刀。ギロチンの刃と同等の切れ味を手にし、狙うは拘束したワムウの右腕、その切断。
 たとえ左腕での防御も脚を使っての蹴り上げも間に合わない。それほどに手綱を緩めぬ猛襲を、サンタナは抜かりのないシミュレーションによって成し遂げている。
 加えてワムウは、くどいようだが視界がない。周囲を流れる風の動きを、その敏感な感性と肌で掴み、まるで健常者の如く振る舞っているに過ぎない。
 しかし、それはつまり、どう足掻いても後手となる。相手が動き始めてから自分もそれに対応せざるを得ないという、武人にとっては究極のハンデと言うべきものをワムウは自らに課しているのだ。



──────ザンッ!



 音と、血と、肉と、骨とが、一緒くたに混ざり合って舞った。

 驚愕に彩られるは、ワムウではない。

 サンタナは、空に回転する“自らの”右腕を呆然と見上げた。


「何を不思議そうな顔をしている?」


 見えていない筈の我が面貌を、見て取ったかのような口ぶり。
 サンタナはこの時、目の前で目を瞑る男を恐れた。


「あれはキサマの腕だろう」


 その通りだ。空に舞っている腕はたった今、サンタナ自身が断ち切ってしまった……我が右腕だ。

 グンと引っ張られた。骨と肉とを絡み合わせ、相手をその場に拘束したと思い込んだのが過ちだったのだ。
 サンタナの手刀がワムウの右腕を断する直前、相手は腕を自らへと引っ張っただけだった。繋がった腕と腕は物理の法則に従い、サンタナの腕をも当然相手へと引っ張られる事になる。丁度、綱引きで力比べをするみたいに。
 伸びきっていた腕にはあらぬ力が加えられ、ワムウの腕があった位置はサンタナの腕に差し替えられた。この返しにより、サンタナは意図せず自分の腕へと手刀を入れてしまった。

 右腕が千切れ飛んだ事により、骨の拘束が外れた。ワムウの身体は今、自由となり、体勢を崩したサンタナへ更なるカウンターを返せる状況。

 流石に一筋縄ではいかない。しかし。
 このような予想外など…………!


「予想済みだッ!」


 サンタナは折れない。怒涛の覇気を放出しながらも、彼が放出したのはそれだけではない。

「!」

 銀色の弾丸が、サンタナの絶たれた右腕の断面から猛飛沫となって噴射された。
 予め体内に取り込んでおいた、支給品のパチンコ玉である。散弾銃並の威力を纏いながら発射される無数の弾丸に、至近距離かつ目の見えないワムウが回避する術はない。騙し討ちの形で撃ち込んだなら尚更だ。

 無論、波紋を纏っている訳でもないただの鋼玉をいくら撃ち込んだところで、柱の男には大した効果などない。だが、怯ませる程度の効果は期待できる。
 切断された身体の痛みに顔を歪める暇もなく、サンタナは射出口と化した右腕を懸命にワムウの頭部へと合わせた。せめて急所であるなら、ダメージの倍増も見込めると判断したからだ。

 その合わせた照準の真ん中。
 ワムウの頭部が、唐突に揺れた。


「ムンッ!」


 グルリと首を縦横に回転させたかと思うと、そこへ到達する筈だった鋼玉が『逸れた』。
 一発や二発ならともかく、超速度で放たれた無数の弾丸が、全て。緩やかにカーブを描き、ワムウの側頭部を潜り抜けて消えた。

「……風」
「そうだ。よもや忘れたとは言わせんぞ。我が流法を」

 真空刃。いつの間にかワムウの頭飾りから飛び出している幾重ものワイヤーが、本体の動きによって振り翳され、そこから発生した小型の真空竜巻がパチンコ玉を逸らした正体だ。
 風の流法を操るワムウには造作もないこと。逆にサンタナの体表面の方に、真空刃で傷を入れられた痕が作られていた。
 攻防一体の闘技をモノにした武人ワムウ。この男に自分を認めさせるには、単なる武闘では到底敵わない。しからば、意表を突く以外に有り得ない。


 あの波紋使いジョセフ・ジョースターのように。


「さあ来い“サンタナ”。見せてみろ、キサマの流法を。おれを落胆させてくれるなよ」


 絶好の好機を、ワムウは挑発の時間に充てた。サンタナへ迎撃するチャンスを捨て、両の腕を軽く広げて「かかって来い」と、両の指を軽く曲げた。
 それは遊びではない。油断でもなく、驕りでもない。
 彼は楽しんでいるのだ。闘いを通して、相対する同胞の潜在能力が限界にまで引き上がったその姿を臨むが為に。
 顔肌を紅潮させ、湧き上がる闘気はまるで沸騰した水が生む水蒸気のように。


「───────ハハッ」


 溢れた笑みが、果たしてどちらの雄のモノであったか。
 次の瞬間、サンタナの胸部が倍以上にも膨張した。手渡された攻撃権、惜しみなく使ってやらんと即座に“溜め”へと入る。

「ヌオオオオオオオオオーーーーーー!!!!」

 レミリア戦でも披露した、隆々と張った胸筋が更にパンプアップ。激しい遠吠えは、次の一撃への危険度をそのまま示さんとする絶叫の一撃。
 サンタナが腰を深く落とし、雑巾でも絞るように体幹を捻じ回す。先端が失われた右腕が引かれ、キリキリと弓を引き絞る様な音が、骨と筋肉の摩擦音となって辺りに響いた。まさか無い腕でパンチを撃つとでもいうのか。

 いや、それは大きな誤りだ。無いと思っていた右腕の手首から先に異変が起こっている。
 ガキンガキンと、サンタナの体内から鉄の棒か何かがへし折られているかのような金属音が伝播した。何事かと、ワムウだけでなくカーズやエシディシもその光景を凝視する。


 製鋼していた。
 体内の鋼玉を筋密度で潰し、圧縮し、型どり、千切れた右腕の先から形を変形させて顔出していた。
 それは鋼の拳。より硬度を加えて構成した鋼拳が、ガチガチに膨れ上がった筋肉と強靭な筋繊維により、ウーツ鋼のロケット弾として構築された。


「喰らえェェェエエエエエエエイッ!!!!」


 この技を発生させるのに掛かる膨大なる隙を、ワムウはわざわざ待ち構えるという愚かな選択肢で見逃した。
 愚か、と評するのも彼に失礼だろうか。少なくともこの男は、決起の覚悟で満たされたサンタナの闘争心を、正面から余すことなく受け入れてくれようという奇特者の器なのだから。

 だからこそだ。
 真正面から技を受けんとするワムウにこそ───!




「───『意表が突ける』、とでも思っていたか」



 右腕に仕込まれた鋼鉄のロケット弾。それが点火されると同時。


「だとしたなら、おれも舐められたものだ」


 ワムウは口走る。
 男の巨躯を物語る大きな背中には、数え切れないほどの肉片が張り付いていた。


(ワムウ…………コイツ、は)


 後悔などしていない。先程ワムウに吹き飛ばされた我が右腕が、遠隔の分身体として相手の背後より取り憑かせた行為を、サンタナは恥とは思わない。

 憎き肉片(別名・ミート インベイド)。
 柱の男達の固有能力とも言える技で、本体から離れた身体の一部をアメーバ状に分散させ、相手に取り憑き細胞から喰らうというものだ。
 既にこれまでの戦いでサンタナは幾度もこの能力を使用している。今更ワムウ相手にこんな小細工が通用するとは思えなかったし、喰って消化するという能力自体も同胞相手では効能を発揮しない。

 それでも、背後から突然襲えば怯むぐらいの効果を期待していた。
 その隙を狙って、超攻撃力まで高めた一撃をお見舞いする腹積もりだった。崩れた態勢を狙えば、ワムウといえどひとたまりもない筈だと。
 ともすれば卑怯とさえ蔑まれかねないこの連携ですら、きっとワムウは戦術(タクティクス)の一つとして素直に受け入れるだろう。彼はそういう男だった。

 だが、目論見は外れた。
 あっさりと背後からの奇襲を許したワムウの双眸は……閉じていてなお────


(コイツは…………揺るがないッ!)


 全く動じない。完全なる、無動の柱。
 地球の中心にまで根を張ったと言われても信じてしまいそうな程に、ピクリとも怯もうとしない。
 世の武人が目指す極地へと至った超人は、万全100%の力でサンタナの攻撃を受け入れる態勢を保った。


「おれの視界は無。故に死角からの奇襲などに意味などナシ」


 静かなる気迫の裏に潜んだ、壮絶な闘気。
 失策だった。逆にサンタナの方が、古今無双の強敵に精神の遅れをとる事となった。




 鋼の核弾頭が、音の壁をブチ抜いてワムウの胸へと吸い込まれる。

 方や浅く笑み。
 方や深く恐怖した。




            ◆


「スゲぇ威力の撃ち込みじゃねえか。流石のワムウの奴でもキツい一発なんじゃねえか?」
「いや、寸での間隙で攻撃地点へと両掌を潜らせた。加えてワムウめ、喰らう直前に後方へ大きく跳び退いたわ。ダメージは半分ほど殺されている」


 サンタナの攻撃を正面から受けたワムウの身体は、衝撃波と共にホールの奥の石壁へと吹き飛ばされた。洋館全体が刹那、大地震に見舞われる。瓦礫が飛散し、巻き込まれた石柱もあらぬ姿となり無残に転がる。
 見る者が見れば、この試合を征服した勝者はサンタナだと答えるだろう。
 だがカーズもエシディシも、そんな安直な妄想など見ていない。事実、攻撃側のサンタナの表情を覗けば一目瞭然。手応えの笑みなど明らかに浮かんでいない。


「だがカーズ。ヤツにとってこれは別にワムウを倒すのが勝利条件ってわけじゃねえ。現段階でお前、どう見てる」
「“不採用”だ」


 興味本位でカーズの評価を問い質してみたエシディシは、同胞の即答にほんの少しだけ意外な顔を作った。

「今の一撃はこれが御前試合だからこそ成り立った攻撃だ。ワムウの奴はサンタナの器を測る為、敢えて拳を貰ってやったに過ぎん」

 パワーのみに頼った、一直線の攻撃。闇の一族であれば、そもそも攻め手の火力に重きを置きすぎる事は却って不利を呼びかねない。触れさえすれば、基本的には肉ごと消化できるのだから。

「少し溜めが長引きすぎる。例えばあの憎きジョジョであったなら、サンタナが変形に集中している間に二つ三つばかりのフザけた小細工を仕掛けられよう」
「まあな。今の攻撃もそうだが、奴は少し視野狭窄的かもなあ。背後からの不意打ちもちょいと露骨だった」

 強者二人の見立ては甘くなかった。今のサンタナではまだ、主の期待に添える結果は出せるレベルでない。
 悪くはないのだ。だが、パンチが少し足りない。あんな鋼のパンチでは、三柱に加えられる域には届かない。


「……1分経過だ。残り2分」


            ◆


 ほらほらどうしたのさ。
 腑抜けたパンチなんか打っちゃってまあ。
 アイツには効いちゃいないよ。来るとわかっていた攻撃をそのまま“受けてやった”だけなんだから。

 流法とやらはどしたん?
 それともアンタの器じゃ無理か。


 じゃあ……私を“使う”?
 貸してやらん事もない。負けた立場で宣う台詞じゃないけどね。


 いいぞ。使うべきだ。
 アンタだって私を知っているんだろ?


            ◆


 我が頭髪の一本一本が、まるで風にたなびく柳のようだと。
 風の起こらない凪の屋内だと言うのに。おかしな話もあるものだ。
 あるいは恐怖による、身体の震えが起こした揺らぎか。
 あるいは遠く吹き飛ばしてやった筈の、崩壊した石壁が舞わせる土煙の中に立つ武人が流す神風か。

 フッ……と、思わず口角が釣り上がってしまう。どちらであっても、それはきっとサンタナにとっての凶兆の証。


 失われ、製鋼した右腕が再び消滅していた。
 鋼の拳を命中させた瞬間、奴が両掌での防御を行ったのが見えた。その際に抉られたのだろう。
 これもまた、攻防一体の早業。あの武人には、無駄と呼べるような挙動が全く無かった。
 あらゆる力を受け流すそよ風を味方につけ、あらゆる防御を地軸ごと吹き飛ばす暴風をその身に蓄える。


 こんな男に認めさせるにはどうすればいい。

 どうすれば認めさせられる。

 どうすれば───────



「……クッ……ソがァァアアアァアアアァァッッ!!!!」



 咆哮が、砲口へと変貌した。
 奉公の心すらかなぐり捨て。
 放光が肉の隙間から現れる。
 撃ち込む方向など、一つだ。


「ワムウゥゥゥウウウウウウウウウウゥゥゥウウウウウウウゥゥウウゥウウウウUUUUUUU――――――――――ッッッッ!!!!」


 銀の放光の正体は、体内に残された全ての銀魂。強靭なる密度で再び圧縮を受けた鋼球が押し固められ、一個の真球にまで変化する。

 大砲しかない。あの地下の大空間で吸血姫を穿った獰猛形態。

 それを今一度、ブッ放してやるッ!



「──────────────!!!!!!」



 音の核弾頭が、悠然と走った。
 瓦礫の中心。土煙の向こう側へと。
 薄らぼやける一柱の影に、撃たれた。



「ムンッ!!!!!!」



 そこから轟いたシャウトは、一門の砲と成ったサンタナに更なる絶望を与えた。
 一瞬遅れて、土煙が一気に晴れ渡る。大気を揺らした衝撃波が、煙幕のスクリーンに映った影を粉々に散らした。



「───ヒトの形を完全に捨て去ったお前の姿……果たしてそれは『退化』か、はたまた『進化』か」



 浮き上がってきた輪郭は、ヒトの形を取っていた。
 両の脚を石の大地に突き刺し、固定して尚、大きく後方に押し出され、裂かれた罅割れ。

 その上には、大きな大きな柱が、
 折れる事なく、立っていた。


「おれはそれを、『進化』だと考えよう。
 このワムウが鍛え上げた身体を、ここまで押しやった技は見事ではあった」


 鋼の砲弾が、ワムウの両腕によって屈強に包まれていた。
 前面から飛んでくる巨砲を、逃すことなく受け止め切ったのだ。
 その剛腕で思い切り掴まれた砲弾は、メキメキと音を立てながら……やがて崩れ落ちた。


「だが、敢えて苦言を呈すなら……おれはやはり、お前自身の拳ともう一度撃ち合いたかった、というのが本音だがな」


 サンタナが、砲の形からヒトの形へと戻っていた。
 その瞳に、戦意は失われつつある。
 どうやっても、この男に届かない。
 幻想は、現実に打ちひしがれた。



「時間は……まだあるか。
 そろそろおれの拳も冷え切ってきた頃だ。

 ───────少し、温まるとしよう」



 ワムウが、飛び掛ってくる。
 膝が、動かない。瞳は虚ろだ。

 どうにもし難い、虚無の砂嵐が。
 サンタナの頭の中を覆った。





 そこからは、一方的な蹂躙であった。
 迫り来る暴風雨に、太刀打ち出来ぬまま……


 サンタナの躯と意識は、沈んだ。



            ◆






 ブザマに這い蹲うオレを見下ろす『ナニカ』が居た。


 周り全てが暗黒の中、視界の見えぬオレを見つめる視線のみを感じ取り、オレはゆっくりと顔を上げた。
 おかしな話もあるもので、闇の一族の末端たるオレですらこの闇の向こうを目視するに至れない。ワムウの様に、目を潰した訳でもあるまいに。
 だが何故か、闇に浮かぶナニカの姿だけは段々と露わになっていく。


 童だ。
 童女が闇の中で、胡座を掻きながらオレを見下ろしている。


「やあ。ようやく逢えたね。久しぶり」


 その童女は偉そうにも、旧知の仲か何かのように軽々しく手を広げ、語りかけてきた。
 まず目が行くのは、頭部に生えた二本の双角。見た事があるし、声にも聞き覚えはあった。


「そうとも。最初にアンタに敗北して平らげられた、あの時の私だよ。まさか鬼が鬼に喰われるなんて、夢にも思わなかった」


 白い歯を覗かせながらケタケタと朗らかに笑うその姿は、見た目相応の無邪気さだ。だがコイツに至ってはそうじゃない。この小さな童女が秘めた力は、見た目以上に巨大である事をオレは知っている。


「私の方からはず〜っとアンタに語りかけてたんだけどね。でも当の本人は別の事に夢中。無視されっぱも辛いんだよ?」


 知ったことか。大体、キサマは何なのだ。とっくに死んだ輩が何故、今こうしてオレの前にまた現れる?


「何故って? そりゃあアンタ、今言ったばかりじゃない」



「だってアンタ、私を喰っただろ」



 その言葉には相変わらず、恨み辛みの気持ちなど一片たりとて含まれていない。
 ただ生物競走の結果、勝者と敗者が誕生し分かれただけ。
 結果のみを淡々と、その小鬼は囁いた。


「よりによって幻想郷最強の種族である鬼を喰ったんだ。化けて現れる位のリスクを考えなかったとは言わせないよ」


 ……嘗めていた、という事か。オレも、コイツを。


「残留思念の様なものさね。これでもハンパない妖力の持ち主だって自負はあるんだ。喰い逃げなんかされちゃあ、鬼の名が廃るってもんだよ」


 フン。それで?
 わざわざ化けて現れて、無残に転がるオレの痴態でも眺めてから溜飲を下げる……それで満足か。


「あはははっ。心外だね〜、鬼ってのはそんなに心狭くない」


 快活な笑顔だった。自分を殺し、喰った張本人を前にして随分と上機嫌だなと思う。
 この女は何を企んでいる。


「企み、ねえ……そんなの一つっきゃないでしょ」


「手を貸してやるよ。あの武人に勝ちたいんだろう?」


 …………なんだと?


「私はアンタに張ったんだ。ここらでひと稼ぎして、三途の川の渡し舟で一杯やる為にね。そろそろ酒に酔わないと、流石に頭がどうにかなりそうだ」


 女は腰に括っていた瓢箪を手に取り、逆さにしてカラカラと音を鳴らした。切なく転がるその反響は、中身が既に空である事を示していた。


「何故?って顔してるね。それはね、この瓢箪と一緒さ」


 トンと、目の前に置かれた空瓢箪を凝視し、オレは疑問に塗れた視線を女へと移した。


「私は酒が大好きだ。酒に酔うのが何よりも心地好い。だからこの瓢箪は常にお酒で満たしてなきゃあ、私の居心地も悪くなる」


 まあこの伊吹瓢、無限に酒作れるんだけどね。女はそう付け加えつつ、瓢箪の蓋を指でチョンと弾いて揺らした。


「アンタの心も今や、似たようなものなんじゃないのかい?」


 オレの…………心、だと?


「空っぽの心。何物も映さない濁ったままの水面。
 空虚だった筈のアンタの心は、徐々に渇きを訴えてきている」


 空っぽ。いつしかの小鬼に見抜かれた台詞は、確かにオレの記憶の片隅に埃被って佇んでいた。
 その時は……「どうでもいい」と一言、投げ返しただけだったか。


「もっと酔いたいのさ。私も、アンタも。
 空虚を埋め、心を満たし、永い人生をへべれけと、楽しく生きたい。
 さて。アンタの心という空瓢箪を満たす物って、何だろうね」


 ……満たす、物。

 分からない。分からないが、それを掴む為にオレは今、闘っている。
 その手段は、と問われれば……きっと、何者からも認められる必要があるのだろう。
 まずはワムウ。そして、オレは何者からも恐怖される存在で在らねば。


「恐怖、か。いいね。その貪欲さ、まるで妖怪そのものだ。
 私はアンタの道を否定しないよ。……本当の所は、せめて無闇矢鱈な殺生をこのゲームで行うのは止めて欲しいと言いたい所だけど。
 でも、満たす為に立ち上がろうとするアンタが決めた道なら、何者だってそれを邪魔する権利なんぞ、無いよね」


 動かなかった身体へと、僅かに力が立ち込める。
 関節や拳、肺や血脈にドクドクと生命力が注ぎ込まれているようだった。
 オレは地面を這うような格好から、ゆっくりと立ち上がる事が出来た。

 同時に、胡座を掻いていた童女も軽快な仕草で立ち上がった。その恐ろしく小さな身体は、オレの目線よりも随分と低い場所にある。


「理由なんてひとつだ。アンタが段々好きになってきた。だから私はアンタに張った。だから少しだけ、手を貸してやる」


 不敵な微笑みと共に、女の身体が足から砂のように崩れていく。
 いや、砂というより霧。霧状になっていく女の身体は、まるで意思を得た煙のようにオレの身体へと纏わり付いてきた。


「『人魚伝説』を知ってるかい? 人魚の肉を喰った奴は不老不死の能力を得るって話さ。
 アンタは私っていう鬼を喰ったんだ。人魚のように、人知を超える力を手に入れる事も可能だろう。
 おぉ……身震いがするね、この鬼喰い鬼め」


 闇の一族は喰った獲物……例えば吸血鬼の血液を、エネルギーとして取り込む。我々の食事は単なる空腹を満たすだけの本能とは異なる行為。

 オレは……この小鬼を『喰った』。
 その結果、どういう事が起こるのか?
 鬼とは、吸血鬼よりも更に上位の生物であるらしい。
 そんな生物の全エネルギーを取り込めば、オレは一体『ナニ』へと成る?


 意識がハッキリ覚醒へと向かってきた。その前に、少しだけ……オレには気になることがあった。



「お前…………の、『名前』は、何だ?」



 小鬼の身体は既に失われていた。首から下が完全に霧と化し、今やオレの肉体と同化しつつある。
 完全に掻き消える前に、どうしてもコイツの口から直接名を訊きたい。


「私は既に死んでる身だ。今更名前なんか、どうでもいい事さ」
「オレの名は『サンタナ』だ。チャンスがあるのなら……最後に、お前の名前だけ、知りたくなった、のだ」


 オレは知らない。この小鬼の名前を、今まで知らずにいた。
 名を伝え、永劫胸に刻む。
 その行為が、オレには必要だと感じたのだ。


「……知ってるかい? 妖怪にとっての『死』は、誰からも完全に忘れ去られる事だ」


 やれやれと、小鬼は首を横に振って口を開く。観念したように、消えゆく身体を最後まで動かした。

 そして、周囲の闇も晴れ渡り始めた。
 小鬼の声が霞がかっていく。そろそろ、オレにも時間が来たのだろう。


「アンタ程の長生きがこれから先……ずっと私の名前をその逞しい胸に刻んでいてくれるってんなら」

「鬼冥利に尽きるってもんだ。喰われた甲斐があるよ」

「私の名前は『伊吹萃香』。それだけを覚えていてくれるなら……私という存在は、きっと死なない」

「もっと自信持ちな。アンタはこの小さな百鬼夜行に勝ったんだから。
 振り向かずに胸張って、声を大にして喜べばいい。敗者を喰う……糧にするってのは、そういう事だ」

「そうして、もし……アンタがこの闘いに勝てたのなら。
 私の一番好きな酒が呑める。そん時は、一緒に呑もうよ。
 私は彼岸で盃を傾けてるからさ」

「さっ。もう行きな。アンタの目の前にこうして現れることは、多分……もう二度とないだろう」


 小鬼───伊吹萃香の姿は、そこで完全に消滅した。

 揺蕩う霧が放つ余韻だけが、オレの鼓膜に木霊する。

 成さねばならぬ事がある。

 ……行くか。












「ああ、それと最後に一個だけ」

「今のアンタはもう、空っぽなんかじゃないよ。
 私なんかよりも、よっぽど立派な……妖怪さ。
 その背中……まさにかつて都を震わせた『鬼』そのものだ」




「頑張りな───────鬼人サンタナ」




            ◆


 伊吹萃香やレミリア・スカーレット。奴らに共通する点がひとつある。

 体格だ。

 奴らは童女相応のチビでありながら、何処から放出しているのだと言わんばかりの凄まじいパワーを秘めていた。
 妖怪とやらの生態については詳しくない。しかし恐らく、奴らはあの小さな肉体に、オレなんぞには想像出来ない程の膨大なエネルギーを蓄えてきたのだろう。
 幾百、幾千の悠久なる万劫を掛けて。生まれてから今日に至るまで、休むことなく蓄積してきた天稟の妖力。
 同じ生きた年月でも、オレとは違う。生の大半を睡眠に捧げる様な、空っぽだったオレなんかとは。

 少しだけ、学べたかもしれない。

 例えば───山をも動かす万夫不当のパワーを生み出すのに、大袈裟に発達しただけの筋肉は本来必要ない。見掛けばかり肥大した筋肉を鎧として纏った所で、圧倒的な力などそよ風にすら受け流される。
 真に強いパワーとは、日々を鍛錬に捧げた積み重ねによって研磨される、本物の『業』と『経験』によって具現する巨矛。ワムウの様な武人にこそ相応しい無類の武具であり、オレの様な模倣品ではすぐにボロが出る。

 だが、少なくともオレには!
 すぐに結果を出す必要もあるのだ!
 一朝一夕でも間に合わぬ! この闘いの中で、今すぐに!


『他人の死を意識しているのか?』

『迷いは拳を……心を鈍らせる。それでも貴様が糧としたいならば、まずは俺に一太刀でも浴びせることだな』


 試合前にワムウが語った言葉が、オレの脳裏に蘇る。

 他人の死を糧にする。それはある意味では、『絆』という言葉で言い表すことも出来よう。
 レミリアやブチャラティでいう、戦場で育まれる比類なき絆。
 ワムウや主達でいう、同胞に結われた種族の絆。
 それらはオレが一度は忌み嫌い、否定した力だ。
 オレの立場とは、それらの絆を認め、認めた上で乗り越えなければならない場所に敷かれている。

 だが、倒した相手。乗り越えた相手。それらを糧とし、我が力の源とし強くなる。
 方向性こそ違えど、それもまた一つの繋がり───『絆』と呼べるのではないか。

 『勝利する』『学ぶ』という行為自体が、先人達との絆へと昇華するのならば……!
 生者と死者の間に塞がる絶対的な隔たりさえ取り除けば、そこを繋ぐ一本の線はまさに……!



「───────オレは、新たな『絆』を手に入れられる」



            ◆


 結果など、火を見ることよりも明らかだ。
 正直な所、少しは期待していた。カーズもエシディシも、この試合でいう所の鉄板とは誰が見てもワムウであると確信していたし、大穴を予想することなく躊躇わず武人へと積んだ。

 実際は。現実は。
 どんでん返しなど起こらず、奇跡も降ることなく、幻想は現実に容易く喰われた。


「終わったな」
「粘った方だとは思うぜ。ありゃ相手が悪ィ」
「違わん。いくら吼えようと、所詮は凡夫だったか」
「あのワムウを対戦相手に組み込んどいて、容赦ねえ台詞だ。相変わらずイイ性格してやがるぜ」


 勝敗は決した。下剋上など起こらない。
 序盤の立ち上がりは悪いものではなかったが、ワムウに大技を尽く塞がれたサンタナは、見る見るうちに崩れた。
 圧倒的な暴を叩き込まれたサンタナの瞳に、始めに滾っていた戦意の炎は残っていない。残るのは、立ち塞がる壮大な壁に屈する、憐れな猛獣の転がる姿だけだ。


 冷たい石床に倒れ臥す、サンタナ。
 ピクリとも動こうとしないその男を、ワムウが見下ろす。
 他を寄せ付けない存在感を抜き放つ、巨大な柱。その一柱の根に、折れた敗者が沈んでいた。

 カーズとエシディシ。二人は眼下に広がるその光景を、美しいとさえ感じた。
 ワムウとサンタナが赤子の頃より、彼ら自身が育んできたのだ。我が子と称しても差し支えない二頭の雄が、全力で闘い拳を交わした。
 余興とするにはあまりにも。故に、主の二人は一つの闘いを見届け終え、残った試合時間の枠を余韻に浸る時間に充てようと考えた。

「サンタナも残念だとは思うがな。折角、勉強までしてこの闘いに挑んだってのに」
「勉強……? エシディシ、何のことだ」

 予想通り、大波乱は起きなかった試合。だが退屈には感じなかった。いや、満足に近かったと言っていい。
 エシディシは僅かにだが高鳴っていた鼓動を隣のカーズに悟られぬ様、努めて平静に抑えて話し掛ける。

「サンタナの奴、この勝負によほど執心なんだろう。試合前、資料室で参考書だか何だかを漁りに来たんだよ」
「ほお。番犬なりに本気という事か」

 資料室内での出来事。冊子に読み耽っていた自分の前に膝をつく忠臣の姿がエシディシの脳裏に蘇る。
 あの時は気まぐれのような気持ちでサンタナの視界から退いてやったが、奴は結局この幻想郷の知識を味方につけるには至らなかったらしい。著書に目を通す時間も、そう無かった。

 だから、精々が一冊を流し読み程度だったろう。


「で、エシディシ。奴は一体何の本を読んでいたんだ」
「ん……? いや、俺はその場をすぐに離れたが……」


 が、確か奴は……俺が戻した本をそのまま手に取っていなかったか?
 カーズに渡した資料はその本とは別物だ。あの時見ていた本は小冊子だったし、読了には時間も掛からなかっただろう。


「そうだ。確か俺が見ていた本は────」




「幻想郷の太古より住んでいた……『鬼』を記した本だ」







 潰れた虫の様に動かなかったサンタナが、ゆらりと立ち上がった。

 カーズも、エシディシも、ワムウも。意表を突かれる光景に思わず息を呑む。



 宣言した180秒まで、10秒を切った。



            ◆


 人は幻想に干渉され、現実を形作る。
 パラりと捲った頁の頭には、そんな文言が綴られていた。


(奴の意志がオレに手を貸すのか。オレの意志が奴を喰い、取り込むのか。そんな事はどっちでもいい)


 ああ、どっちでもいい。
 ただ……あの本に描かれていた『鬼』達は、人間共のかつての恐怖の象徴として載せられていた。
 その鬼の内の一人として───名前こそ無かったが───伊吹萃香らしき姿もあった。
 オレが最初に喰ってやった童女。食い違いがなければ、確かにかの女が大暴れする姿が本の中にはあったのだ。

 少し、興味を持った。闘い、下した女が、まるで伝説の怪物かの如く畏れられていたのだから。


(思い出せ……小鬼と闘ったあの時、奴は『何を』してきた)


 本には、簡潔にこう書かれていた。

 ───密と疎を操る程度の能力、と。





「立ち上がるかサンタナよ。ならば今一度問おう。
 その執念……主に認められたいが故か」


 覇王の風を纏う柱が、オレの前に立っていた。
 思えば初めにこの土地で会った時も、この男に同じ台詞を投げ掛けられたのだ。


───『お前は、我らが主に認められたいか?』

───『共に闘う「戦士」として認められたいか?』

───『もしそう思うのならば、相応の成果を出せ』


 思う所が無かった訳ではないが、その時は大して揺さぶられやしなかった言の葉だ。
 今はどうだ。何故、ワムウがそのような言葉を投げるに至ったか。少しだけ、理解出来た。


(そうだ。オレ、は───────)


 オレの、空っぽだった心は。
 渇きに飢え、満たされたがっていた。

 気付いてしまった。


 オレは、ワムウや主達に、認め









───『手を貸してやるよ。あの武人に勝ちたいんだろう?』


 小鬼が……伊吹萃香が先刻放った言葉が、オレの吐き出そうとした言葉を遮った。




「…………違う」


 そうだ。
 なんて、単純。
 なんて、馬鹿馬鹿しい。
 オレは、気付いてしまった。
 そうではなかった。

 オレは、
 オレは、ただ。




「お前に勝ちたいのだ。…………ワムウ」




 クワ、と。
 ワムウの潰された両の眼が、音を爆ぜらせ勢いよく見開かれた。


「良かろうッ! 自ら抉ったこの眼は自戒の念を込めた証だが!
 このおれと真に闘う為、奮い立たんとする男を見ようともしない行為は侮辱以外にないなッ!」

 柱の男の異常治癒力は、閉ざされた眼であろうとやろうと思えばいつでも復活など出来た。敢えて治療を先延ばしていた男のハンデとも言えた瞳は、サンタナの闘志に触発され、一瞬にして十全の視覚を取り戻した。

 これより相打つは、互いを眼中に入れた二人の男。

「サンタナよ! 少し見ない内に、キサマは変わったッ!
 その『姿』が、お前の手に入れた『流法』というわけか!」

 武の構えを取るワムウ。
 サンタナが、最後の攻撃を仕掛ける。


「面白いぞッ! その流法、自ら名付けてみよッ!」


 其処に立つは。



「────『鬼』の流法(モード)……」



 鬼人。



「行くぞワムウッ!!」

「来いッ!! サンタナッ!!」

 鬼の流法と称されたサンタナの、額に突き出した二本の短かった双角。
 それが今。大きく、巨大化を遂げていた。

 まるで、かつて都を震わせた小さな百鬼夜行が携えた、それのように。
 恐怖そのものを示す、鬼達の自己顕示。その最強たる象徴。

 双角の狭間。額の中心に位置するは、紅き紋様。
 その奥に秘めたるは、幾星霜の刻を掛けて萃(あつ)めた妖力。
 これは『糧』だ。決して借り受けた物などではなく、サンタナ自身が勝利し、奪い、取り込んだ力だ。

 これもまた、絆。
 何処かで小鬼の笑い声が、響いた。

(オレが奴を『喰った』ところで……密と疎を操る能力とやらをそのまま引用できるわけではない……!)

 物事はそう単純にはいかない。たとえ萃香の全妖力を身の内に取り入れたとしても、彼女の能力はあくまで彼女自身が磨き上げ、発展させてきた力だ。

(ならば……オレの『流法』の原型を発展させ、組み合わせれば……)

 流法そのもののイメージ。その土台は吸血鬼の娘との闘いで既に作ってきた。
 鬼と闘い、取り込み、妖力を得、幻想郷の知識も少しだが勉強した。

 後は……オレが、オレ自身の力で、完成させる!


「それが我が鬼の流法だッ!」


 サンタナが翔ける。
 ボロボロの躯を疾風の如く操り翔ける、力強い疾走だった。
 その身体に蓄えられた筋肉は、これまでのサンタナと比べてもそう変貌しているわけではない。寧ろ、巨体だった全身は細身を帯びている様にも見えた。
 無論、実態はそうではない。筋肉・骨・腱・皮膚・血脈・細胞に至る殆どの体組織を、彼は限界まで高密度に圧縮し、闘士として暴れ回れる最小の規格かつ最大の出力を、可能な限り己が身躯に詰め込んだのだ。
 見た目は縮小した様とさえ感じられるが、パンパンに張り詰められた筋量を注ぎ込まれた拳から生まれる破壊力は、以前の比ではない。
 まるで、物の密度を自在に操る伊吹萃香の様に。サンタナは己の躯を一回りほど縮小させ、その上で全身の筋肉だけは退化させることなく器に閉じ込めた。
 パワーのみが増加したわけでは、当然ながら無い。筋力とは即ち速度を生む。筋量を増しつつも、以前の図体から小型化を図った事により生まれた俊足は、他の三柱と見比べても頭抜けた身のこなしを彼に与えた。
 先のチーター化を直線的なスピードと比喩するなら、鬼の流法は曲線的かつ臨機応変のスピードとなる。

 例えるならば、かの日本・五条大橋にて怪力無双の武蔵坊弁慶へと、小柄な身一つで向かった牛若丸。勇猛果敢と知れ渡った彼ら二人のパワーとスピードが、一個の肉体に合わさったのだ。


(想像以上に疾いッ! 恐らく、奴の拳も先に相打った鋼拳より更なる膂力を身に付けている!)

 迫り来る『鬼』の姿に、ワムウは刮目した。おぞましき、得体の知れない力が今のサンタナには備わっていると、一目にて見破ったのだ。
 如何にして迎え撃つか。ワムウはそれを考えるより先に、反射的に腕を前面へと掲げた。それは、攻よりも守に傾いた思考が瞬時に動かした行動であった。


「鬼人『メキシコから吹く熱風』」


 ワムウの片腕が前方から疾走するサンタナの姿を、視界から半分程隠した刹那。
 目元から下だけを覗かせたサンタナの口元が、それを囁いた。

 伊吹萃香の扱う『密と疎を操る能力』とは、砕いて説明すると“物質や精神を萃(あつ)めたり、逆に疎(うと)めたり出来る”事である。以前に彼女が霧のように拡散し、サンタナの背後をとった業前もこれの恩恵だ。
 萃香含む鬼の資料本を元にサンタナが編み出した流法は、筋肉を移動させ集中点へと萃める形態変化の他にも、彼へと武器をもたらした。


 正体は、弾幕攻撃である。


 幻想郷の少女達の戯れ。サンタナがかつて嘲笑した『スペルカード』と呼ばれる命名決闘法を、少し真似てみようと思った。
 下等なる種族共の、しかも女子らの遊戯である。男がやるには少々滑稽で、誇りある闇の一族ともなれば尚更だ。だが、一度は崩れた誇り。こうなれば最早、恥もない。

 サンタナは猛りと共に、左腕を払った。指先の一箇所に萃まった高熱が、弾幕───妖力を纏った波状光線と化し、待ち受けるワムウへと飛び掛かる。


 邪人カーズは、体内から光を産み出し、敵を眩く斬り裂く。
 狂人エシディシは、体内を流動する血液をマグマへと変え、敵を灼き尽くす。
 武人ワムウは、体内から湧き出る風を薄く圧縮し、敵を圧し潰す。
 吸血鬼ディオやストレイツォは、眼球から高圧で発射される体液『空裂眼刺驚(スペースリパー・スティンギーアイズ)』で敵を貫く。

 それらの技は、彼らが『進化』を望んだ末に体得した独自の能力であった。
 数多の敗北を経験し、プライドも砕かれたサンタナが、ここに来て初めての『進化』を求めたのならば。
 それに応えない運命など、最初から存在しない。

 人は幻想に干渉され、現実を形作る。
 この地でも。そしてサンタナにも。
 法則は、例外とはならなかった。

 サンタナの放った弾幕を、ワムウは勢いよく散らそうと右腕を翳す。その鋭敏な触覚は、一つの危機をワムウへと伝えた。

「ムゥゥ! この『弾幕』……相当の熱エネルギーッ!」

 幾千もの年月を重ねた妖力は、サンタナの額を中心としてそのまま心の臓に運ばれ、脈を伝って左腕の更なる先端に到達。爪先から発射される高熱の弾幕は『鬼火』と化してワムウへと、


「だがッ! 温いッ!!」


 ───到達、出来ない。

 その程度の、謂わば付け焼き刃で放った攻撃などでは、まだまだ完成された武人には届かない。
 躊躇わず、ワムウの右腕が鬼火を振り払った。軽い爆発が腕全体を包み、熱傷のダメージを負ったにも関わらず、ワムウの動きに一片たりともの無駄と戸惑いは無かった。
 エシディシの『熱』と、ワムウの『風』を組み合わせたサンタナの弾幕「鬼人『メキシコから吹く熱風』」。こんな即席弾幕では、とても敵わない。


「─────本命は“こっち”だ」


 目眩し。サンタナの弾幕の真意がそれだとワムウが気付いた時には、既に鬼の腕が胸に迫っていた。
 低く……予想より遥かに低い位置から、サンタナの囁きが響いた。これも小型化させた事による恩恵か、サンタナは思い切り体全体を屈め……左腕に全妖力・筋力を一点集中に萃めた。
 アッパーカットに近い体勢を作り、狙うは一撃必殺。これを外せば、溜め込んだ左腕以外、肉の防御力0の無防備状態となった本体へと返しの刃が刺さるだろう。
 全身全霊の一撃。目眩しが効いたのか、力と速度の両方を成立させたこの拳にワムウは、回避以外の選択は取れない。
 幾らワムウとは言え、鬼の怪力と熱量を纏った拳に正面から打ち合うのは危険な賭け。どんな猛者であれ、これに対して鍔迫り合いで戦ろうなどという無謀は行わない。

 従ってワムウは、必ず回避───────


(しないッ! コイツは……絶対に避けないッ!)


 サンタナは……その確信を抱いていた。
 ワムウという男なら。彼が本物の武人である筈なら。
 這い上がってきた男の。
 自分に勝ちたいとまで宣言してきた男の、全霊の拳を……

 『躱そう』などと、考えるわけがないッ!



「───────。」


 その無言を発したのは、サンタナか、ワムウか。
 鬼の力が武人を貫かんとする、刹那の刻。
 空白が、二人を包んだ。


 かつてない心踊る脅威が、戦闘の天才に『禁』を破らせた。





 コォォオオオオオオ…………





 空白を破ったのは、静かなる風の音だった。
 ワムウの双つ腕が、信じ難いほどゆったりとした動作で……前へ伸びた。否、伸びていた。
 時間が止まったような感覚。サンタナの機敏であった筈の攻撃は、まだ炸裂しないでいる。

 『これ』を見る度に、背筋が凍る。
 初めて目撃した時は、臆面もなく身体を震わせた記憶がある。




 そう、だ

 これ、は

 ヤツの、風の

 必殺流法……





   闘  技


     神

        砂

  あ


    ら










「そこまでッ!!」





 空間を裂いて飛び込んだ大音声が轟き。

 嵐が止んだ。

 それと同時に、鬼人の膨張した腕も収縮した。

 半醒した意識がハッとする。いつの間にか、闘う二人の間には二つの影が立っていた。


「───180秒。時間だ、ワムウ」


 両腕を合わせる事で発揮するワムウの闘技。その腕と腕の僅かな隙間に、妖しく輝く輝彩滑刀が潜り込み、ワムウの動きを上から抑制していた。

「カーズ様……!」

 燃え滾っていた瞳が一気に冷やされ、ワムウの頭が現実へと回帰する。およそ彼らしくない、動揺に振り回された姿だ。


「正直、続きを見ていたかったがなァ。俺らが止めに入ンねぇと、どっちかがくたばってただろうよ」


 暴れ鬼と成ったサンタナの左腕。それに触れる事をせず、全身の肉という肉を身動き取らさずに縛るワイヤー。完璧に動きが停止させられたサンタナが目線だけを寄越して見たそれらは、幾本もの気色の悪い血管。

「エシディシ……様」

 未だ額を伝う冷や汗は、何故に。
 雁字搦めにされて動けずにいるサンタナの脳裏には、安堵という感情が次第に現れ始めた。

 180秒の制限枠。サンタナは、まさに今……設けられたその尺に命を救われたのだと認識した。
 エシディシは今、どちらかがくたばっていたと言ったが……恐らく二人の主が間に飛び込んでこなければ、くたばっていたのは神砂嵐に全身を巻き込まれた自分の方だったろう。
 それを遅れて理解したが故に、サンタナはもう一度恐怖を感じている。



「試合終了! 勝者は……ワムウ!」



 カーズの発した宣言に、サンタナの頭は再び蒼白に彩られる。


「お……お待ちを! カーズ様……!」
「ワムウ。このカーズが判じた結果に不満でも?」

 主の足元に跪き、ワムウが異議を唱えた。カーズは変わらず、冷たい瞳でそれを見つめる。

「我が事ながら……試合前に主自ら言い渡された『禁』を破ったのはこのワムウです」
「だから……この勝敗には『物言い』だと?」
「……恐れながら、私がたとえ一瞬でも気圧されたのは事実にございます。結果、禁じ手の神砂嵐を使用してしまいました」

 カーズが試合前、ワムウへと直接言い渡した項は『神砂嵐の使用禁止令』。これを突如破られたとあっては、相手側のサンタナにしてみれば不意打ちを食らったようなものである。
 誇り高き武人であるワムウは、そこを心痛しているのだろう。だがカーズは、頼れる忠臣の異論を予め予想していたように素早く言葉を返した。

「ウム。だがワムウよ、私はこうも言ったぞ。
 『互いに心し、全力にて語り合え』と。お前はその言葉に違わず、全力で技を放った。サンタナの奴もそうだろう。
 もし神砂嵐を使わずに闘いを終えれば、お前は果たして本当に最高の闘いだったと言い切れるかな? たとえ勝とうが負けようが、だ」
「む……ゥ」

 言い分自体はワムウに理がある様にも思える。だが勝負とは主に心の、信念のぶつかり合い。自身の心に嘘をつけば、その蟠りはこの先ずっと引き摺っていくだろう。古明地こいしと出逢う直前までのワムウと、同じように。
 実際、ワムウはこの試合を清々しい気持ちで終える事が出来ていた。判定の黒星白星などは関係なく、今確かに昂っているこの心境だけは、本物だ。
 となれば、主であり立ち会いをも務めたカーズの出した結論に、これ以上口を挟むのは不毛であり無礼でもある。


「それに元々、私やエシディシはお前が禁を破るなど予想済みであったわ」
「……何と?」


 カーズの冷たい仮面が剥がれ、口の端がニヤリと釣り上がった。見ればエシディシも同じ顔である。

「かの武人がたかだか口約束以下の戯れ言を、律儀に守り通すとも思わん。お前なら必ず、いざとなれば全力を出す。
 そういう男だととうに知っている故の、言ってみれば遊び心よ。許せワムウ。はーーっはっはっはっはァ!!」

 邪人の高らかな笑みが、半壊したホールに響き渡った。

「そうだそうだ笑え! いったん感情を爆発させりゃあ、お前のクソ堅ぇ異議などスッ飛ぶぜ!
 ガーーーッハッハッハッハッハッハァ!!!」

 それに釣られるように、エシディシも大声で笑い始める。カーズの笑い声を上から丸ごと覆い被せるほどに、腹の底から湧き出す豪快な大声であった。

「────フッ」

 ワムウも、一切の邪気なく笑う主二人の姿を暫し唖然と見つめた後、対照的に浅く笑った。
 見抜かれている。我が本質を。そう思ったのだ。
 全くこの御方達には敵わん、という意も込めた微笑である。



 その三柱をよそに、サンタナだけは動けずに立ち惚ける。
 負けたのだ。自分は間違いなく、敗北した。
 つまり、これより先にサンタナにはチャンスは訪れない。
 自身の存在意義を確固たる域へと留める為の道が、閉ざされてしまったのだ。
 鬼の流法も完全解除され、普段の姿を取り戻したサンタナ。
 彼の旅は、ここで終わりを告げた。


「────さて、気持ち良くひと笑いした所で……『サンタナ』」


 ビクリと、名を呼ばれた事で動揺する。

「先のキサマの……確か『鬼の流法』とか言っていたか」
「………………はっ」
「成程、面白いとは思った。力の集中点に感じた高熱エネルギーは、肉体に流れる筋肉・血液を瞬間的に高速運動させた故の反動か」
「…………」

 そう、なのだろう。
 エシディシは血液そのものを500℃にまで高めることが可能だが、サンタナにその能力はない。
 心臓・内蔵を動かしたり、呼吸をしたりで発生するエネルギー代謝は、熱エネルギーに変換される。その基礎代謝数値の内、意識的に鍛えて数値を上げることが出来る部位は筋肉であり、全体の25%程度を占める。そして代謝によって産み出された熱は、血液によって全身に運ばれる。
 だからサンタナは血液を高速で循環させた。細胞・分子が運動するという事は、熱を発生させる要因ともなる。それにより自身の身体能力を一時的にだが、飛躍的に上昇させ、あのパワーと速度を生むに至った。

 肉体を細胞レベルで操作できる柱の一族の能力と、炎を扱う鬼族の特性も合わさり、後押ししたが故の独自の流法であった。
 恐らくサンタナの最後に放った拳には、相当の熱量が萃まっていただろう。ワムウとて喰らえば、肉が焦げる程度の負傷では済まなかったに違いない。

「それに肉体を肥大化させるのではなく、逆に縮小させるという逆転の発想。
 通常そんな真似をすれば、当然パワーは下降する筈。随分と器用かつ頑丈な筋繊維。何より得体の知れんエネルギーを体得しているようだが……そこに至った経緯は敢えて訊くまい」

 そっと、サンタナは無意識に額を摩った。今はそこに紅い紋様は描かれていない。角も通常通り、短い寸のままだ。

「しかし傍から見ていただけでも短所は見付かるぞ。お前はどうやら肉体の筋肉を一箇所に集中させ攻撃の主とする様だが……例えばその瞬間、そこ以外の箇所に攻撃を受ければ脆く崩れるだろう」
「…………たし、かに」

 エシディシの血管による背後からの拘束が、あっけなく成功した要因はそこだろう。捨て置くべきでない、短所である。

「単なる肉体強化に終わらず、ワムウへと放った弾幕のような放出技も悪くない。
 だがそもそもキサマは圧倒的に『経験不足』。基礎が成り立っておらん故、過剰に膨れ上がった身体能力に、戦闘において必須の判断力がまだまだ足らない」

 またしても見抜かれている。カーズは、サンタナが決死の想いで作り上げた新流法の穴を早くも指摘した。

「己の身体を見てみろ。疲弊し、マトモに動けておらんだろう。自分では気付きにくいだろうが、筋肉が悲鳴を上げているのだ。
 先の鬼の流法……そう連続しては使えんらしい。そこもまた、実戦では使い所に悩む一長一短の流法よ」

 疲弊。言われてサンタナは察した。
 対決に敗北した心的ショックもあるだろうが、先程から身体が動かない理由はそれか。

 理解、してきた。この『鬼の流法』は……


「───まだまだ未成熟。だから私の最終裁定はワムウへと寄せた」


 ガクンと、サンタナの膝が折れた。
 それは決して主へ忠誠を立てる意でなく、全ての希望がへし折られた事に絶望を覚えた男の末路である。




「そうとも。キサマはまだまだ『半端者』……実戦をどんどん積んで、有用な犬へと進化させるのが主である私の義務だと考える」




 ………………え?



「この試合はキサマの負けではあるが……私は初めからキサマが勝てるとは思わん。あくまで力を見る為の催しだ」


 カーズが、その長髪を靡かせる。
 瞳は、鋭かった。



「分からんか? 『合格』だと言っているのだ」



 ごう、かく…………!


「元々DIOを討つに足りる力量があるか、それを見定める試合だった。お前は確かに、未完成とはいえ『流法』を作り上げた」


 いつしか、『認められたい』という気持ちよりも『勝ちたい』という感情が心の多くを占め始めていた。
 だからかもしれない。敗北を言い渡された瞬間に、全ての気力が抜け落ちていったのも。
 ワムウと闘うに至ったそもそもの目的を、失念してしまっていた。

 酔って、いたのだ。
 そして、酔いたかったのだ。
 勝利の美酒に。
 あの小鬼の一番好きな酒に。
 敗北者のオレに積んでしまった奴めは、今頃はさぞ泣きを見ていることだろう。
 共に盃を交わそうと誘いを掛けられたが……美味い美酒に酔えるのはもう少し先になりそうだ。


「ワムウ。勝者の意向を訊いておこう。……必要はあるまいが」
「私は主と……そしてこのサンタナが望む闘いをしたまでです。異論など、あろう筈も御座いません」

 武に生きる忠臣は、それ以上の言葉を挟まなかった。
 ただ、下げた頭の横からチラリと覗いた頬は、釣り上がっていた様にも見えた。

「エシディシ」
「最初は俺が行くつもりだったがな。気が変わっちまったよ」

 残る男も同意する。結果……闇の一族全員が、現時点で『認めた』という事になる。

 ここに居る、サンタナを。

 最早、悲願とも呼べない。こんな未来は、想像だにしていなかったのだから。
 歓喜……喜ぶ、という表情をサンタナはまだまだ知らない。だがレミリアに初めて認められたあの時よりも、言葉に言い表せない感情が心を支配した。


「と、いうわけだサンタナ。まさか疲弊負傷を言い訳にはせんだろうな」


 泥と化し崩壊しかけていたサンタナの肉体が、活力を得たかの如く再生を始めた。
 ワムウに断たれた右腕も、原型を形成し床に転がっている。接着は容易い。
 波紋を流された訳でもないならば、すぐにも五体満足の身体へと戻れるだろう。疲弊だけは如何ともし難いが、重かった身体は不思議と軽くなっていく。


「───ハイ。行けます」


 その宣誓を、全員がしかと耳に入れた。
 決して主の為ではなく。種の繁栄の為でもなく。
 サンタナ自身が、サンタナ自身の為だけに往く。




「ならば往くのだサンタナ。我々の絶対的な『恐怖』……奴に刻み尽くして来い!」




 カーズの命が、激しく下された。
 サンタナはそれに無言で頷くと、ゆっくりと行動を開始した。





 その光景を天井から見下ろしていた少女は、満足気な顔で微笑むと。
 霧となって、まだ雨の滴る灰色の空へと還って行った。


【D-3 廃洋館/真昼】

【サンタナ@第2部 戦闘潮流】
[状態]:疲労(大)、右腕欠損、全身に切り傷、再生中
[装備]:緋想の剣@東方緋想天、鎖
[道具]:基本支給品×2、パチンコ玉(17/20箱)
[思考・状況]
基本行動方針:自分が唯一無二の『サンタナ』である誇りを勝ち取るため、戦う。
1:戦って、自分の名と力と恐怖を相手の心に刻みつける。
2:地下ルートから紅魔館へ赴き、DIOと対決。
3:自分と名の力を知る参加者(ドッピオとレミリア)は積極的には襲わない。向こうから襲ってくるなら応戦する。
4:ジョセフに加え、守護霊(スタンド)使いに警戒。
[備考]
※参戦時期はジョセフと井戸に落下し、日光に晒されて石化した直後です。
※波紋の存在について明確に知りました。
※キング・クリムゾンのスタンド能力のうち、未来予知について知りました。
※緋想の剣は「気質を操る能力」によって弱点となる気質を突くことでスタンドに干渉することが可能です。
※身体の皮膚を広げて、空中を滑空できるようになりました。練習次第で、羽ばたいて飛行できるようになるかも知れません。
※自分の意志で、肉体を人間とはかけ離れた形に組み替えることができるようになりました。
※カーズ、エシディシ、ワムウと情報を共有しました。
※幻想郷の鬼についての記述を読みました。
※流法『鬼の流法』を体得しました。以下は現状での詳細ですが、今後の展開によって変化し得ます。
 ・肉体自体は縮むが、身体能力が飛躍的に上昇。
 ・鬼の妖力を取得。この流法時のみ、弾幕攻撃が放てる。
 ・長時間の使用は不可。流法終了後、反動がある。


【カーズ@第2部 戦闘潮流】
[状態]:胴体・両足に波紋傷複数(小)、シーザーの右腕を移植(いずれ馴染む)、再生中
[装備]:狙撃銃の予備弾薬(5発)
[道具]:基本支給品×2、三八式騎兵銃(1/5)@現実、三八式騎兵銃の予備弾薬×7、F・Fの記憶DISC(最終版) 、幻想郷に関する本
[思考・状況]
基本行動方針:仲間達と共に生き残る。最終的に荒木と太田を始末したい。
1:サンタナの報告を待つ間、どうするか。
2:幻想郷への嫌悪感。
3:DIOは自分が手を下すにせよ他人を差し向けるにせよ、必ず始末する。
4:奪ったDISCを確認する。
5:この空間及び主催者に関しての情報を集める。パチュリーとは『第四回放送』時に廃洋館で会い、情報を手に入れる予定。
[備考]
※参戦時期はワムウが風になった直後です。
ナズーリンタルカスのデイパックはカーズに回収されました。
※ディエゴの恐竜の監視に気づきました。
※ワムウとの時間軸のズレに気付き、荒木飛呂彦、太田順也のいずれかが『時空間に干渉する能力』を備えていると推測しました。
 またその能力によって平行世界への干渉も可能とすることも推測しました。
※シーザーの死体を補食しました。
※ワムウにタルカスの基本支給品を渡しました。
※古明地こいしが知る限りの情報を聞き出しました。また、彼女の支給品を回収しました。
※ワムウ、エシディシ、サンタナと情報を共有しました。
※「主催者は何らかの意図をもって『ジョジョ』と『幻想郷』を引き合わせており、そこにバトル・ロワイアルの真相がある」と推測しました。
※「幻想郷の住人が参加者として呼び寄せられているのは進化を齎すためであり、ジョジョに関わる者達はその当て馬である」という可能性を推測しました。
※主催の頭部爆発の能力に『条件を満たさなければ爆破できないのでは』という仮説を立てました。


【ワムウ@第2部 戦闘潮流】
[状態]:疲労(中)、身体の前面に大きな打撃痕
[装備]:なし
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:掟を貫き、他の柱の男達と『ゲーム』を破壊する。
1:サンタナの報告を待つ間、どうするか。
2:空条徐倫(ジョリーンと認識)と霧雨魔理沙(マリサと認識)と再戦を果たす。
3:ジョセフに会って再戦を果たす。
[備考]
※参戦時期はジョセフの心臓にリングを入れた後~エシディシ死亡前です。
※失明は自身の感情を克服出来たと確信出来た時か、必要に迫られた時治します。
※カーズよりタルカスの基本支給品を受け取りました。
※スタンドに関する知識をカーズの知る範囲で把握しました。
※未来で自らが死ぬことを知りました。詳しい経緯は聞いていません。
※カーズ、エシディシ、サンタナと情報を共有しました。
射命丸文の死体を補食しました。


【エシディシ@ジョジョの奇妙な冒険 第2部 戦闘潮流】
[状態]:上半身の大部分に火傷(小)、左腕に火傷(小)、再生中
[装備]:なし
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:カーズらと共に生き残る。
1:サンタナの報告を待つ間、どうするか。
2:神々や蓬莱人、妖怪などの幻想郷の存在に興味。
3:静葉との再戦がちょっとだけ楽しみだが、レミリアへの再戦欲の方が強い。
4:地下室の台座のことが少しばかり気になる。
[備考]
※参戦時期はロギンス殺害後、ジョセフと相対する直前です。
※ガソリンの引火に巻き込まれ、基本支給品一式が焼失しました。
 地図や名簿に関しては『柱の男の高い知能』によって詳細に記憶しています。
※レミリアに左親指と人指し指が喰われましたが、地霊殿死体置き場の死体で補充しました。
※カーズからナズーリンの基本支給品を譲渡されました。
※カーズ、ワムウ、サンタナと情報を共有しました。
ジョナサン・ジョースター以降の名簿が『ジョジョ』という名を持つ者によって区切られていることに気付きました。
※主催の頭部爆発の能力に『条件を満たさなければ爆破できないのでは』という仮説を立てました。
※幻想郷の鬼についての記述を読みました。

※廃洋館エントランスホールが半壊しました。



182:泣いて永琳を斬れ 投下順 184:黄昏れ、フロンティアへ……
180:Quiets Quartet Quest 時系列順 187:災はばらまかれた
154:強者たちの舞台裏 サンタナ 193:黄金へ導け紫鏡之蝶 ──『絆』は『夢』──
154:強者たちの舞台裏 エシディシ 187:災はばらまかれた
154:強者たちの舞台裏 ワムウ 187:災はばらまかれた
154:強者たちの舞台裏 カーズ 187:災はばらまかれた

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最終更新:2018年11月26日 19:09