kairakunoza @ ウィキ

泉君家の家庭の事情

最終更新:

Bot(ページ名リンク)

- view
だれでも歓迎! 編集
  「ただいま」
   今日からテスト週間だ。
   授業が午前中で終わったのはいいが、昼食はまだだ。
  「母さん、腹減った」
   そう言ってリビングを覗いてみる。
  「あれ? いない……。買い物にでも行ってるのか?」
   俺が呟いたその時、母さんが家の奥から出てきた。
  「あー、さっぱりした」
   長い髪をタオルでごしごし拭きながら、パンツ一枚の姿で……。
  「母さん!!」

  「ん? おかえりー。今日は帰ってくるの早いね」
  「テスト週間だから……ってそんな事より、何だよその格好は!!」
   俺がビシッと人差し指を突きつけて怒鳴ると、母さんはのんきに言い返してきた。
  「別にいいじゃん。家の中なんだし」
  「そういう問題じゃねぇだろ!! 服ぐらい着てから出てこいよ!! いつも言ってんだろ!!」
  「別に誰に見られるわけじゃないしいいじゃん。それにシャワー浴びたばっかで暑いんだよ」
   そう言って、タオルで顔を扇ぐ。

   ……このだらしのない格好でだらけているのが俺の母親。
   名前は泉こなた。
   平日の昼間、買い物に出かけると、ほぼ100パーセント補導されるという、自然の摂理を無視した幼い容姿の39歳だ。
   だから、平日の昼間に外を出歩く時は車の免許が欠かせない。

  「……」
   ひくひくっと俺が怒りに顔を引きつらせると、母さんはにんまりと笑ってとんでもない事を言い出す。
  「駄目だよ~。変な気起こしちゃあ。私達は親子なんだから」
  「起こすか!! あんたの裸なんぞとっくの昔に見飽きたわい!!」
  「まったく可愛げがないねぇ。いったい誰に似たんだか」
   あんた似じゃない事だけは確かだよ。
  「……もういい。それより腹減ったんだけど」
  「えー。作るのめんどい」
  「……息子が腹を空かして帰ってきたのに、その仕打ちはないだろ」
  「しょうがないなぁ。チャーハンでいい?」
  「喰えれば何でもいいよ」
  「それじゃ、ちょっと待ってて」
   母さんはそう言ってキッチンに歩いていった。

                     ※

   待たされる事、十数分。
  「出来たよー」
  「いただきます」
  「おいしい?」
  「普通」
  「可愛げがないね」
  「ほっといてくれ」
   そんな会話をしながら、母さんと二人でテーブルを挟んで昼食を取る。
  「……母さん見てるといつも思うんだけどさ」
  「何?」
  「母さん、何で年取らねえんだよ」
  「何言ってるの? この前39歳になったけど」
  「実年齢じゃなくて、見た目だよ、見た目。俺の記憶を遡る限り、母さん昔からちっとも変わらないじゃないか」
   ハーフパンツにタンクトップ姿で椅子に座って、頬杖を付いてこっちを見てる母さん。
   幼児期のおぼろげな記憶の中の姿と、今目の前に座ってる姿を照らし合わせてみるが、昔も今も変わらない容姿だった。

  「若くて美しい母で嬉しい?」
  「美しいかどうかは置いといて、容姿が変わらないのは非常識だ」
  「失敬な」
  「母さんさ、昔、人魚の肉でも喰ったのか?」
  「……そういうセリフが出てくる辺り、私の子だねぇ」
  「不本意ながらな」
  「本当に可愛げがないねぇ。昔はママ、ママって、私がトイレに行くだけでも、泣きながら後を追ってきたのに」
  「いつの話してんだよ!!」
  「ちっちゃい時は本当に可愛かったのになぁ……。毎晩おっぱい飲まないと寝なかったりして……。いつからこんなナリと態度ばっか
  りでっかい子になっちゃったんだろう」
  「子供が成長するのは当然だろう」
  「……そりゃそうだ。でもね、私だってちゃんと日々変わってるんだから」
  「……どこが?」
  「そんなに言うなら、私の昔の写真を見せてあげるよ」
   母さんは少しむくれた顔でそう言うと、自分の部屋に行って、アルバムを取って戻ってきた。

  「ほら、見てごらん」
   母さんが開いたページに貼られた写真を見ると、水着を着て砂浜に立ってるツインテールの女の子、頭にリボンを着けた女の子、眼
  鏡をかけたナイスバディの女の子、それとスク水を来た母さんが写っていた。
  「懐かしいなあ、この写真、かがみんとつかさ、みゆきさんと一緒にゆい姉さんと黒井先生の車に乗って泊まりで海に行った時のだ」
   懐かしそうにそう説明する母さん。
   ああ、どうりで一緒に写ってる女の子に見覚えがあると思った。
   若い頃のかがみおばさん達か。
   かがみおばさん達は母さんの高校時代からの親友で、たまに家に遊びに来る。
  「……って、なんで母さん小学校の時の水着なんだよ!!」
  「んー、若気の至りってやつ?」
  「訳わかんねえよ!!」
  「それで、こっちのページはと……。ほら、お父さんが写ってる」
   母さんが指差した写真には、陵桜学園桜藤祭と書かれた垂れ幕や出店の中、若い頃の母さんと父さんが一緒に写っていた。
  「桜藤祭の準備期間中に○○君が転校してきてね。この写真は私が○○君に攻略された時の奴」
  「攻略とか言うなよ。ゲームのキャラか、アンタは」
  「んー、でも○○君に攻略されたから、○○君と結婚したわけだし」
  「……父さんはどうして容姿だけでなく、頭の中まで若いままのこのおばさんを選んだんだろう」
  「あれあれぇ? なんだか酷い事言われてるよ?」
   言ってんだよ。
  「まあいいや」
   いいのかよ。


  「○○君が私を選んだ理由だけどね。○○君がロリコンだからだよ」
  「自分がロリキャラだって自覚あるんかい。つーか、息子の前で父さんの悪口言うなよ」
  「別に悪口なんか言ってないよ。本当の事だし」
  「……母さんさぁ、もしかして父さんの事嫌いなのか?」
  「好きだけど。嫌いだったらあんたの事、産んでないよ」
  「……あっそ。ところでこの先の写真見ても母さん、全然変わってないんだけど」
   かがみおばさん達とばかり写ってる写真に比べ、高校3年生の秋以降は父さんと一緒に写ってる写真が増えてきた。
   しかしどの写真を見ても、まったく容姿が変わってないんだが……。
  「あんたの目は節穴だね」
   何だと。
  「良く見てごらん」
   そう言って、さっきの砂浜の写真と、大学時代に父さんと二人で海に行った時の写真、それぞれを指差して見せてくる。
  「別に変わってるとこなんかないじゃないか」

  「胸のとこよく見て」
  「胸?」
   ……あ。胸の大きさが違う。
   高校時代の母さんは着ている物にまったく違和感を感じないほどつるぺたの幼児体型なのに……。
  「大学時代はちょっと発育のいい中学生くらいの体型になってる!!」
   出るべき所が出て、引っ込む所は引っ込んでいた。背の高さは相変わらずだったが。
  「その言いかた、少しムカツクんだけど……。まあいいや。しかしアレだね」
  「こうやって、昔の写真で見ると良く分かるよ」
  「何が?」
   良く冷えたウーロン茶を飲みながら尋ねる。
  「胸ってさ、男の人に揉まれると大きくなるって言うけど、本当だったんだなって」
  「ブーッ!!」
  「うわっ!! 汚っ!!」
  「あんたが変な事言うからだろうが!! つーか息子にそういう事言うなよ!!」
  「別にいいじゃん。○○君がいっぱい触って大きくなったから、あんたをちゃんと母乳で育てられたんだし」
  「……もういい。部屋で勉強する」
   俺はそう言って母さんを残して自分の部屋に戻る。

  「ただいまー。あっお兄ちゃん!!」
   俺が自分の部屋に戻ろうとしたその時、妹のそなたが小学校から帰ってきた。
  「お兄ちゃん、今日は早く帰ってきたの?」
  「テスト週間なんだ」
  「テスト週間?」
  「ああ。中学校や高校だとテストがある時は、半日で帰ってきて家で勉強してからテストを受けるんだよ」
  「それじゃ、これからお勉強するの?」
  「ああ」
  「それじゃ、お勉強の邪魔しないようにお外で遊んでくるね」
  「ああ。車に気をつけるんだぞ」
  「うんっ」
   妹のそなたは、死んだ婆ちゃんに似て、小さくて、純粋で、とてもかわいい。
   母さんは私に似たと言っているが、断じて認めない。
   死んだ婆ちゃんに似たんだ。
   そう言ってやったらムッとした顔をしていた。
   だがそんな顔をしても、俺は断じて 認 め な い 。
   そなたがリビングに歩いてくのを横目に、俺はリビングの隣にある自分の部屋へと入った。

                     ※

  「ただいま」
  「あっパパー。おかえりなさーい」
  「おかえりー。出張お疲れ様」
   しばらく部屋に篭って勉強をしていると、下からそんな声が聞こえてきた。

  「もうこんな時間か。ちょっと休憩すっかな」
   俺は自分の部屋を出て、階段を降りながら帰ってきた父さんにおかえりと声をかけた。
  「ところで、おみやげは?」
   母さんが笑顔で父さんにみやげをねだる。
   そなたがやるならともかく、いい年をしてそれはないだろ、マイマザー。
  「はい」
   父さんは母さんに紙袋を渡すと、そなたにも小さな紙袋を渡す。
  「ありがと」
  「パパありがとー」
   ……なんだかなぁ。

                     ※

   夜7時頃、母さんがテーブルに料理を並べ終わる頃に、爺ちゃんが外から帰ってきた。
  「おかえり、お父さん」
  「ただいま。編集さんとちょっと話が長引いてな。すっかり帰るのが遅くなってしまったよ」
  「おじいちゃん、おかえりなさーい」
  「ああ、ただいま」
   そう言って笑いながら、妹の頭を撫でる爺ちゃん。
   アニメ好きでゲーム好きで、女の子大好きという困った爺ちゃんだが、俺と妹には優しいいい爺ちゃんだった。
   新しいゲーム機やゲームも簡単に買ってくれるしな。

   そんなこんなで全員が食卓に着くと、楽しい一家団欒のひと時が始まった。
   父さんの出張先での話や爺ちゃんと母さんの仕事の話など、話題が尽きる事はなかった。
   ちなみに爺ちゃんは小説家で、母さんは専業主婦兼作家(コラムやエッセイ集等を書いてる)。
   父さんは泉家の婿養子で、会社員だ。

  「そうそう。今日さ、午前中にちょっと病院行って来たんだけどさ」
   食事を取りながら、みんなで話をしていると、母さんが不意にそんなことを言い出した。
  「12月頃、もう一人家族が増えるから」
  「ぶっ!!」
  「うわっ!! 汚っ!!」
  「喰ってる時にいきなり言うからだっ!!」
  「ふぇ? 何のこと?」
   母さんの言った事が良く分からないらしく、小首を傾げる妹の頭を撫でながら、爺ちゃんが言う。
  「つまり、ママに赤ちゃんが出来て、そなたに弟か妹が出来るって事だよ」
  「本当? わーいわーい」
   無邪気に喜ぶそなた。

  「でかしたぞこなた!!」
   父さんが母さんを両手で抱き上げて喜ぶ。
   みんなが新しい家族が出来る事を喜んでいた。
   俺はそんな家族を見ながら、ふうっと一息ついて、母さんに言う。
  「……母さん、これからは俺に出来る事があったら、何でも言ってくれよ」
  「……俺の弟かもう一人の妹がいる、大事な体なんだからさ」
   俺がそう言うと、母さんはにこりと笑ってこう言った。

  「頼りにしてるよ、お兄ちゃん!!」
   ……ああ、そっか。
   父さんは母さんのこの笑顔に惚れたんだな。
   俺は素直にそう思った。
   けど、別に俺はロリコンでもないし、マザコンでもないからな、か、勘違いするなよ!!

                                                         おわり













コメントフォーム

名前:
コメント:
  • こなたの息子声:杉田さん -- 名無しさん (2010-08-28 23:27:44)
  •  微笑ましいですね --  アナログ (2009-12-07 04:20:54)
  • こなたの息子 声:立木文彦
    そなた 声:くじら -- 名無しさん (2009-12-03 00:17:58)
  • そなたってww -- 名無しさん (2009-01-26 03:57:26)
  • 息子ツンデレww -- 名無しさん (2008-07-21 22:50:45)
  • 人魚の肉なんてネタ分かる奴が何人いるんだろうかw -- 名無しさん (2008-01-02 14:34:07)
  • ツンデレ息子か
    しかし
    >ちょっと発育のいい中学生くらいの体型
    これってそれなりにはあるんじゃないか?
    胸ランク中以上ぐらいには。 -- 名無しさん (2007-11-11 00:07:28)
  • そのかわりツンデレか -- 名無しさん (2007-10-30 00:11:16)
  • 秀逸です
    ごちそうさまでした。 -- 名無しさん (2007-10-29 23:34:05)

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
記事メニュー
ウィキ募集バナー