「ひよりんから連絡があってね、溜まってたアニメも一段落したし、早いけど念のために待ってた
とこだったんだけど……もしかしてずっと走ってきたの?」
雨の音と、遠くの車の音を遮って、先輩が話しかけてくる。
喉が灼けて、「はい」の一言も返せない。返事の代わりに、肩で息をしながら小さく頷く。
「よくこんなに早く着けたよね、手ぶらの私と変わんないよ」
素直に感想を漏らす。けれど、その口調は重い。
とこだったんだけど……もしかしてずっと走ってきたの?」
雨の音と、遠くの車の音を遮って、先輩が話しかけてくる。
喉が灼けて、「はい」の一言も返せない。返事の代わりに、肩で息をしながら小さく頷く。
「よくこんなに早く着けたよね、手ぶらの私と変わんないよ」
素直に感想を漏らす。けれど、その口調は重い。
「けど、ごめん……みなみちゃんには悪いけど、ゆーちゃんには会わせられない」
最善じゃないと分かっている言葉を、仕方なく漏らしているような引っかかりを残しながら。
きっぱりと、聞き間違いようのない言葉で、泉先輩は拒絶した。
最善じゃないと分かっている言葉を、仕方なく漏らしているような引っかかりを残しながら。
きっぱりと、聞き間違いようのない言葉で、泉先輩は拒絶した。
みなみべりー・ぱにっく! ~ゆたみな迷路でつかまえて~
会わせられない――
それが嘘だと信じたくて、地面に落としていた視線を、もう一度泉先輩の所まで持ち上げる。
けれど、そこにあるのはさっきと同じ。普段のまったりしたそれからは信じられない、
『ゆたかの姉』としての、真剣な瞳だった。
それが嘘だと信じたくて、地面に落としていた視線を、もう一度泉先輩の所まで持ち上げる。
けれど、そこにあるのはさっきと同じ。普段のまったりしたそれからは信じられない、
『ゆたかの姉』としての、真剣な瞳だった。
無視して通ろうとしたら、きっと先程のひよりのように、全力で止めるだろう。
こんなに疲れ切った身体で、こんなに真剣な泉先輩をかわすなんて、とても無理だ。
奔り続けていた熱が落ち着き、火傷したような喉と鼓動の痛みがゆっくり収まってくるに連れて、
ひよりに励まされる前の弱気に、逃げてしまいそうになる。
やっぱり、駄目なのかな? だけど……。
こんなに疲れ切った身体で、こんなに真剣な泉先輩をかわすなんて、とても無理だ。
奔り続けていた熱が落ち着き、火傷したような喉と鼓動の痛みがゆっくり収まってくるに連れて、
ひよりに励まされる前の弱気に、逃げてしまいそうになる。
やっぱり、駄目なのかな? だけど……。
「ゆたかに、伝えたいことがあるんです」
今すぐ会えなくても仕方ない。でも、ゆたかと大事な話がしたいとだけは、伝えて帰ろう。
――そう、続けようとした。ところが。
――そう、続けようとした。ところが。
「わかってる。みなみちゃんとゆーちゃんが話さないといけないことだしね」
私が息を整えて、次の言葉を言う前に、先輩が先に話しかけてくる。
「けど、ゆーちゃんの代わりに、ちょっと聞いてもいい?」
大人びているけど温和な、『ゆたかのお姉さん』としての口調。私は打ちひしがれた顔をやめて、
先輩と視線を合わせた。
私が息を整えて、次の言葉を言う前に、先輩が先に話しかけてくる。
「けど、ゆーちゃんの代わりに、ちょっと聞いてもいい?」
大人びているけど温和な、『ゆたかのお姉さん』としての口調。私は打ちひしがれた顔をやめて、
先輩と視線を合わせた。
「ゆーちゃんに聞いたわけじゃないけど、みなみちゃんが何したか、何となく想像つくよ。
私だって、ダテにかがみとかギャルゲーで経験積んでるわけじゃないしね」
傘をくるっと弄びながら、軽くニマついてくる先輩。
けれどきっと先輩は、こんなカマなんてかけなくても、私達のことを全部分かっていたんだろう。
あのキスを思い出して、悲しく目を伏せてしまう私に、優しいトーンで言葉を続ける。
私だって、ダテにかがみとかギャルゲーで経験積んでるわけじゃないしね」
傘をくるっと弄びながら、軽くニマついてくる先輩。
けれどきっと先輩は、こんなカマなんてかけなくても、私達のことを全部分かっていたんだろう。
あのキスを思い出して、悲しく目を伏せてしまう私に、優しいトーンで言葉を続ける。
「でも、そういうのって、アニメとかだとよくあるシチュだけど、実際にされるとショックっていうか、
混乱してわけわからなくなっちゃうんだよね。だから、凄い仲良し同士でも、よっぽど運が
良くないと、お互い変に意識しちゃって、話もできなくなっちゃてさー。
……まあ、このテのイベントは、好感度稼いであれば、『もう一度××に会いたい!』みたいの
選べば結構うまくいくけどね?」
混乱してわけわからなくなっちゃうんだよね。だから、凄い仲良し同士でも、よっぽど運が
良くないと、お互い変に意識しちゃって、話もできなくなっちゃてさー。
……まあ、このテのイベントは、好感度稼いであれば、『もう一度××に会いたい!』みたいの
選べば結構うまくいくけどね?」
一瞬遠い視線で、ほろ苦い笑顔を浮かべる先輩。最後の方のちょっとおどけ気味の台詞にも、
隠し切れない切なさが混じっている。
でも、私が何をしたか、ゆたかが何をされたか知っている筈なのに、こうして怒らずに話しかけて
くるのはどうしてだろう。
もしかしたら、先輩も昔……。
隠し切れない切なさが混じっている。
でも、私が何をしたか、ゆたかが何をされたか知っている筈なのに、こうして怒らずに話しかけて
くるのはどうしてだろう。
もしかしたら、先輩も昔……。
けれど、私がそれを考え始めるより速く、先輩はすぐに焦点を戻して、
「でもみなみちゃん、本当にそれでいいの?」
単刀直入な言葉を投げかけてきた。
「でもみなみちゃん、本当にそれでいいの?」
単刀直入な言葉を投げかけてきた。
「私だって同じ百合のムジナだしね、ゆーちゃんとみなみちゃんのことは応援したいけど、
女の子同士のカップルって、結構大変なんだよね。しょっちゅう冷やかされるし、変な噂とかも
流されるし、先生とか親からも凄く嫌な目で見られるし……
たぶん、どんなにうまくいっても、それまで感じなかった『壁』みたいの感じて、辛いと思うよ」
女の子同士のカップルって、結構大変なんだよね。しょっちゅう冷やかされるし、変な噂とかも
流されるし、先生とか親からも凄く嫌な目で見られるし……
たぶん、どんなにうまくいっても、それまで感じなかった『壁』みたいの感じて、辛いと思うよ」
かがみ先輩と共に、学校中の羨望を集める泉先輩。でも、陵桜一のカップルとして、今のように
祝福されるようになるまで、どれほど茨の道を歩いたのだろう。
同性を好きになったことを悩んで、大切な友人関係を壊すかも知れないことに怯えて、
結ばれた後でさえ、周りからの偏見に苛まれて……。
祝福されるようになるまで、どれほど茨の道を歩いたのだろう。
同性を好きになったことを悩んで、大切な友人関係を壊すかも知れないことに怯えて、
結ばれた後でさえ、周りからの偏見に苛まれて……。
「ゆーちゃんに告白したら、振られちゃうかもしれないよね。やっぱりこれってメジャーじゃないし。
もしかしたら友達関係は続けてくれるかも知れないけど、気持ち悪がって二度と話してくれなく
なるかも知れない。両想いになれても、もしかしたら振られる以上に大変だよ。
……それでも、ゆーちゃんに本当のこと話す?」
もしかしたら友達関係は続けてくれるかも知れないけど、気持ち悪がって二度と話してくれなく
なるかも知れない。両想いになれても、もしかしたら振られる以上に大変だよ。
……それでも、ゆーちゃんに本当のこと話す?」
見上げるミントグリーンの瞳が、私を射抜く。
同性に恋をした先輩としての、ゆたかの姉としての、経験に裏打ちされた真摯な問いかけ。
気圧されそうになりながらも、私は、
同性に恋をした先輩としての、ゆたかの姉としての、経験に裏打ちされた真摯な問いかけ。
気圧されそうになりながらも、私は、
「……はい、もう一度会って、伝えたいです」
酷く自然に、そう答えていた。
すると、先輩は……
「うわー、完全に吹っ切れちゃってるよ……でも、これならもう教えることは何もないね♪」
「あ、あの……?」
真面目な表情を解いて、私を包み込むような――深い笑顔を浮かべた。
すると、先輩は……
「うわー、完全に吹っ切れちゃってるよ……でも、これならもう教えることは何もないね♪」
「あ、あの……?」
真面目な表情を解いて、私を包み込むような――深い笑顔を浮かべた。
「ゆーちゃん……今凄く悩んでる。みなみちゃんのこととか、自分のこととか、色々考えて
『答え』出そうとしてる。だから、しばらく邪魔しないで、一人にしておこうって思ったんだよ。
今みなみちゃんと話したら、ゆーちゃん、きっと流されちゃうから」
「……」
不慣れなシチュエーションに少し戸惑いながらも、先輩は普段より少し大人びた笑顔で笑う。
けれど、二階の方にちらっと視線を送るのを見ると、分かる。
ああ、ゆたかの言う通り、本当にいいお姉さんなんだ。
『答え』出そうとしてる。だから、しばらく邪魔しないで、一人にしておこうって思ったんだよ。
今みなみちゃんと話したら、ゆーちゃん、きっと流されちゃうから」
「……」
不慣れなシチュエーションに少し戸惑いながらも、先輩は普段より少し大人びた笑顔で笑う。
けれど、二階の方にちらっと視線を送るのを見ると、分かる。
ああ、ゆたかの言う通り、本当にいいお姉さんなんだ。
「だから、ゆーちゃんが自分で決めるまで、みなみちゃんを会わせるわけにはいかんのだよ。
雨の中走って来てもらって悪いけど、でもまあそこはゆーちゃんを襲った罰ってことで、
水に流してくれたまえ」
「っ!!あ、あの時は本当に……」
「いいっていいって、この話はこれで終了。でも次にゆーちゃんを泣かせたら、
今度こそ粉砕玉砕フルボッコだからNE?」
雨の中走って来てもらって悪いけど、でもまあそこはゆーちゃんを襲った罰ってことで、
水に流してくれたまえ」
「っ!!あ、あの時は本当に……」
「いいっていいって、この話はこれで終了。でも次にゆーちゃんを泣かせたら、
今度こそ粉砕玉砕フルボッコだからNE?」
「けど、今すぐには無理だけど、ゆーちゃんのことだから、もうすぐ気付くと思うよ。
だから、もう少しだけ、待っててくれないかな?」
「――はい」
だから、もう少しだけ、待っててくれないかな?」
「――はい」
恋人か、友達か、ゆたかがどんな答えを出すかは分からない。
でも、例えどう転んだって、自分に嘘ばかりついたままで終わるよりは、絶対にまし。
だから、私は。
でも、例えどう転んだって、自分に嘘ばかりついたままで終わるよりは、絶対にまし。
だから、私は。
「では、それまでの間……ゆたかのこと、よろしくお願いします」
別れ際、今の自分の精一杯を込めて、頭を下げる。
そんな私を先輩は、
「おっけー!それまでのゆーちゃんのサポートは、お姉さんに任せてくれたまえ♪」
水溜まりを軽快に避けながら、最高のVサインを作って応えてくれた。
そんな私を先輩は、
「おっけー!それまでのゆーちゃんのサポートは、お姉さんに任せてくれたまえ♪」
水溜まりを軽快に避けながら、最高のVサインを作って応えてくれた。
「ただいまーっ」
私の見送る先から、先輩の声が上がった。
更に一瞬遅れて、玄関から漏れ出す明かりと、傘の水滴を払うばさばさという音が続く。
そして、ばたん、と扉が閉まったのを境に人気はなくなり、うらぶれた雨音だけの世界に変わる。
私の見送る先から、先輩の声が上がった。
更に一瞬遅れて、玄関から漏れ出す明かりと、傘の水滴を払うばさばさという音が続く。
そして、ばたん、と扉が閉まったのを境に人気はなくなり、うらぶれた雨音だけの世界に変わる。
「……」
これで用は済んだ。
ゆたかのことはまだ心配だけど、先輩が居てくれるなら、きっと大丈夫だ。
「また、明日……駅前で、待ってるから……」
だから、夕ご飯の前に帰ろう。早く制服を乾かして、身体を温めて明日に備えよう。
それなのに。
家に向かおうとした私の足は、10mも歩かないうちに、ゆたかの家の前まで引き返していた。
これで用は済んだ。
ゆたかのことはまだ心配だけど、先輩が居てくれるなら、きっと大丈夫だ。
「また、明日……駅前で、待ってるから……」
だから、夕ご飯の前に帰ろう。早く制服を乾かして、身体を温めて明日に備えよう。
それなのに。
家に向かおうとした私の足は、10mも歩かないうちに、ゆたかの家の前まで引き返していた。
「ゆたか……」
ざわざわと、紅葉し終えた木の葉を落としながら、雨混じりの夜風が吹き付けてくる。
それは雨と汗で濡れた制服をはらませて、走った時に蓄えた熱を、私の本来の体温もろとも
身体から奪っていく。
持ち慣れた鞄が、雨を遮り切れない折り畳み傘が、酷く重たい。
忘れていたようにのしかかる疲労に、背筋がぞわりと強張る、あの不快な感じ。
頭も酷く重くて、立っているのも億劫だ。風邪のひき始めだろうか、明らかに体調がおかしい。
それは雨と汗で濡れた制服をはらませて、走った時に蓄えた熱を、私の本来の体温もろとも
身体から奪っていく。
持ち慣れた鞄が、雨を遮り切れない折り畳み傘が、酷く重たい。
忘れていたようにのしかかる疲労に、背筋がぞわりと強張る、あの不快な感じ。
頭も酷く重くて、立っているのも億劫だ。風邪のひき始めだろうか、明らかに体調がおかしい。
ここで寝込んだりしたら、ゆたかやひよりに心配をかけてしまう。
だから……試しにあと10分だけ待ってみて、会えなかったら家に戻ろう。
うまく動かない指で携帯を開いて、親に『少し遅くなる』とメールを出しながら時間を潰す。
でも、約束の10分が過ぎても、やっぱりゆたかが気になって、また同じメールを送って……。
だから……試しにあと10分だけ待ってみて、会えなかったら家に戻ろう。
うまく動かない指で携帯を開いて、親に『少し遅くなる』とメールを出しながら時間を潰す。
でも、約束の10分が過ぎても、やっぱりゆたかが気になって、また同じメールを送って……。
……一体、それを何度繰り返しただろう。
相変わらず止まない雨の中、湿ったノートの間から、また携帯を取り出そうとした時。
相変わらず止まない雨の中、湿ったノートの間から、また携帯を取り出そうとした時。
「みなみちゃんっ!」
ずっと、聞きたかった声。
振り返った時には、もう傘を取り落として、こちらに走り出していた。
「ゆたかっ」
こんな所で濡れて、体調を崩したら大変……それなのに、ゆたかは雨も水溜りも気にせず
駆けてくると、そのまま両手で私の手のひらを捕まえてきた。
振り返った時には、もう傘を取り落として、こちらに走り出していた。
「ゆたかっ」
こんな所で濡れて、体調を崩したら大変……それなのに、ゆたかは雨も水溜りも気にせず
駆けてくると、そのまま両手で私の手のひらを捕まえてきた。
「無理したら駄目、風邪……」
「みなみちゃんの方が無理したら駄目だよ。こんなに冷えちゃってるし……早く上がって」
慌てて差しかける傘なんて気にせず、青褪めた手を取ってぐいぐいと引っ張る。
普段はひんやりと感じる小さな手が、今は逆に暖かい。
「みなみちゃんの方が無理したら駄目だよ。こんなに冷えちゃってるし……早く上がって」
慌てて差しかける傘なんて気にせず、青褪めた手を取ってぐいぐいと引っ張る。
普段はひんやりと感じる小さな手が、今は逆に暖かい。
「大丈夫、これくらい平気。それに、こんなにびしょ濡れだと、ゆたかの家の人にも……」
「だめだめ、こういう時は素直に甘えなきゃだめだよ?みなみちゃんだって、私がこんな風に
してたら、抱っこしてでも連れていってくれるでしょ?」
「それは……っくしゅっ」
「ほら、みなみちゃんの方が風邪じゃない!もう嫌でも看病するよっ」
むぅっ、と可愛くむくれられる。昼間のことや、迷惑をかけたくない気持ちもあったけれど、
ずっと会いたかったひとに、こんな顔をされてしまうと断れない。やっぱり、ゆたかはずるい。
「だめだめ、こういう時は素直に甘えなきゃだめだよ?みなみちゃんだって、私がこんな風に
してたら、抱っこしてでも連れていってくれるでしょ?」
「それは……っくしゅっ」
「ほら、みなみちゃんの方が風邪じゃない!もう嫌でも看病するよっ」
むぅっ、と可愛くむくれられる。昼間のことや、迷惑をかけたくない気持ちもあったけれど、
ずっと会いたかったひとに、こんな顔をされてしまうと断れない。やっぱり、ゆたかはずるい。
「ゆーちゃ……うおわっ!?」
「あ、お姉ちゃん」
「らじゃーっ、タオルとお風呂用意するから、みなみちゃんもすぐ上がって!」
「あ、お姉ちゃん」
「らじゃーっ、タオルとお風呂用意するから、みなみちゃんもすぐ上がって!」
ゆたかの声を聞いて、傘も持たずに飛び出してきた泉先輩も、大急ぎで準備に戻っていく。
そして私は、連れ込まれるように、ゆたかの家にお邪魔することになった。
そして私は、連れ込まれるように、ゆたかの家にお邪魔することになった。
「色々とご迷惑をかけて、すみません」
「いやいやそんな堅苦しくならないでいいよ。他ならぬゆーちゃんの嫁候補なんだし」
「よ……!?」
「おぉぉ~、今の絵に描いたようなクーデレ……ひよりんならずとも、これは来るものが!」
「いえ、そんなこと……」
「いやいやそんな堅苦しくならないでいいよ。他ならぬゆーちゃんの嫁候補なんだし」
「よ……!?」
「おぉぉ~、今の絵に描いたようなクーデレ……ひよりんならずとも、これは来るものが!」
「いえ、そんなこと……」
冷え切った体を、先輩に言われるままにシャワーで温めさせられた後。前にゆいさんが置いて
いったシャツとパジャマに着替えた私は、ゆたかのベッドに腰掛けていた。
ゆたかはリビングの方で、乾燥中の制服の手入れをしたり、温かい飲み物を用意中。
それまでの間、私は先輩と、今日二回目の話をしているのだけれど……。
いったシャツとパジャマに着替えた私は、ゆたかのベッドに腰掛けていた。
ゆたかはリビングの方で、乾燥中の制服の手入れをしたり、温かい飲み物を用意中。
それまでの間、私は先輩と、今日二回目の話をしているのだけれど……。
「みなみちゃんさ、もうちょっと自信持ってもいいんじゃない?」
「自信……ですか?」
「そーだよ。頭良くて運動神経もグンバツ、ピアノも弾ける最上級のクーデレ使いで声も長門と
瓜二つ、おまけに優しくてつるぺたでリリィでshoujo-aiなんて、コアな萌え要素満載じゃん?」
「…………」
外で話した時と全然キャラが違う。それに、言葉の意味が、所々よく分からない。
前にひよりが似たような単語を使っていたような気もするけど……。
「自信……ですか?」
「そーだよ。頭良くて運動神経もグンバツ、ピアノも弾ける最上級のクーデレ使いで声も長門と
瓜二つ、おまけに優しくてつるぺたでリリィでshoujo-aiなんて、コアな萌え要素満載じゃん?」
「…………」
外で話した時と全然キャラが違う。それに、言葉の意味が、所々よく分からない。
前にひよりが似たような単語を使っていたような気もするけど……。
「でも、こーやって見てみると、やっぱりゆーちゃんが惚れたのも分かるね」
一瞬で真っ赤になった私を見ながら、うんうんと頷く。
「あの後雨の中ずーっと待ってるなんて、ギャルゲーのヒロインみたいじゃん?私だったらさっさと
帰ってたかもしれないのに」
「いえ、何度か帰ろうと思……」
「それにさぁ、私の時はこんなマリみてストパニ展開なんて信じられなくて、何日もかがみから
逃げてたのに、それをみなみちゃんは1日で……ぬ゛ぁああああぁっ、なんか負けた気がっ」
「そんな、勝ち負けなんて……それに、たぶん私は先輩達を見ていたから、その……」
一瞬で真っ赤になった私を見ながら、うんうんと頷く。
「あの後雨の中ずーっと待ってるなんて、ギャルゲーのヒロインみたいじゃん?私だったらさっさと
帰ってたかもしれないのに」
「いえ、何度か帰ろうと思……」
「それにさぁ、私の時はこんなマリみてストパニ展開なんて信じられなくて、何日もかがみから
逃げてたのに、それをみなみちゃんは1日で……ぬ゛ぁああああぁっ、なんか負けた気がっ」
「そんな、勝ち負けなんて……それに、たぶん私は先輩達を見ていたから、その……」
反応に詰まる私をよそに、頭を抱えていらいらし始める先輩。
先輩に対して失礼だけど、こんな先輩は新鮮で、見ていてちょっと可愛いと思ってしまう。
でも……。
先輩に対して失礼だけど、こんな先輩は新鮮で、見ていてちょっと可愛いと思ってしまう。
でも……。
「……おや、そろそろゆーちゃんが戻ってくる気配だね。私は色々することもあるし、そろそろ
退散するよ」
「あ、わかりました……」
階段の音を聞きつけてか、ぴょんっと立ち上がる先輩を見て、身体が強張る。
あと少ししたら、ゆたかと話になるわけで……。
「ほらほら、本番前からそんなに緊張しなくても大丈夫だって。フラグだってバッチリだし、
後はゆーちゃんを信じて……ね?」
退散するよ」
「あ、わかりました……」
階段の音を聞きつけてか、ぴょんっと立ち上がる先輩を見て、身体が強張る。
あと少ししたら、ゆたかと話になるわけで……。
「ほらほら、本番前からそんなに緊張しなくても大丈夫だって。フラグだってバッチリだし、
後はゆーちゃんを信じて……ね?」
去り際にエールを残して、部屋を出て行く。
訂正。さっきはキャラが違うように思ったけど、先輩はやっぱり先輩だ。
おたくといえば、そうかも知れないけど、それ以上に凄くしっかりした、ゆたかのお姉さんだった。
そして……
訂正。さっきはキャラが違うように思ったけど、先輩はやっぱり先輩だ。
おたくといえば、そうかも知れないけど、それ以上に凄くしっかりした、ゆたかのお姉さんだった。
そして……
「お姉ちゃんに、変なこと言われたりしなかった?」
「ううん、むしろ元気付けてくれた。ゆたかのことも、凄く心配してた」
「良かった。変にニヤニヤしてたから、ちょっと不安だったんだけど……」
「ううん、むしろ元気付けてくれた。ゆたかのことも、凄く心配してた」
「良かった。変にニヤニヤしてたから、ちょっと不安だったんだけど……」
どうにか話題を作りながら、まだ甘い湯気が出ている紅茶を、ふーふーしながらいただく。
……おいしい。
お昼から何も食べていなかった身体に、一口ごとにぬくもりが広がっていく。
でも、紅茶で温めても、お茶菓子のクッキーをかじっても、心のほうは落ち着かない。
……おいしい。
お昼から何も食べていなかった身体に、一口ごとにぬくもりが広がっていく。
でも、紅茶で温めても、お茶菓子のクッキーをかじっても、心のほうは落ち着かない。
「みなみちゃん、どれくらい待っててくれたの?」
「別に、来てすぐの所だったから」
「そんなわけないよね。あんなに体が冷えてたし、制服だってあんなにびしょびしょだったし……
多分、お姉ちゃんが帰ってきた頃から、ずっと待っててくれたんだよね?」
「それは、ゆたかが、心配……だったから……」
「別に、来てすぐの所だったから」
「そんなわけないよね。あんなに体が冷えてたし、制服だってあんなにびしょびしょだったし……
多分、お姉ちゃんが帰ってきた頃から、ずっと待っててくれたんだよね?」
「それは、ゆたかが、心配……だったから……」
紅茶を飲むふりをして、火照った顔を隠す。
でも、カップの中身がもう半分くらいしかなくて、ちょっと飲むのが躊躇われてしまう。
でも、カップの中身がもう半分くらいしかなくて、ちょっと飲むのが躊躇われてしまう。
「みなみちゃん……」
「…………」
言葉が途切れて、部屋の中が静まり返る。
こっそり顔を上げると、顔を紅葉のように赤くして、テーブルに視線を逃がすゆたかがいる。
私も、同じ。
二人きりの部屋で、どうしても落ち着かなくて、ゆたかをどう見つめたらいいのか分からない。
「…………」
言葉が途切れて、部屋の中が静まり返る。
こっそり顔を上げると、顔を紅葉のように赤くして、テーブルに視線を逃がすゆたかがいる。
私も、同じ。
二人きりの部屋で、どうしても落ち着かなくて、ゆたかをどう見つめたらいいのか分からない。
本当に好きな人に告白するのは、凄く勇気がいる――
ドラマとか小説とか、色々な所で聞く言葉だけど、それをまさに実感していた。
あんなに覚悟していた筈なのに、いざ好きな人と二人きりになると、こんな風に固まってしまう。
泉先輩みたいにかっこよくなれない、ひよりみたいに好きなものに貪欲になれない、
ゆたかみたいに、素直になれない自分。
……だけど。
ドラマとか小説とか、色々な所で聞く言葉だけど、それをまさに実感していた。
あんなに覚悟していた筈なのに、いざ好きな人と二人きりになると、こんな風に固まってしまう。
泉先輩みたいにかっこよくなれない、ひよりみたいに好きなものに貪欲になれない、
ゆたかみたいに、素直になれない自分。
……だけど。
『ゆーちゃんが自分で決めるまで、みなみちゃんを通すわけにはいかんのだよ』
先輩の言葉を、思い出す。
ゆたかは、自分から私を迎えに来てくれた。
あんなに体が弱いのに、あんな冷たい雨の夜に家を飛び出して、私のことを見つけてくれた。
だから、都合のいい解釈をしてしまうことにする。
ゆたかは私が、大事な秘密を打ち明けるのを待っていてくれてるんだって。
ゆたかは、自分から私を迎えに来てくれた。
あんなに体が弱いのに、あんな冷たい雨の夜に家を飛び出して、私のことを見つけてくれた。
だから、都合のいい解釈をしてしまうことにする。
ゆたかは私が、大事な秘密を打ち明けるのを待っていてくれてるんだって。
「ゆたか」
冷めてしまった紅茶を、テーブルの上に戻しながら、ゆたかと目を合わせる。
昼間のことを話すのは怖い。
思い出したくない記憶を掘り起こして、ゆたかに辛い想いをさせてしまう。
でも、もう一度、あの時の話をしたい。話して、謝って……今度ははっきり、伝えたい。
昼間のことを話すのは怖い。
思い出したくない記憶を掘り起こして、ゆたかに辛い想いをさせてしまう。
でも、もう一度、あの時の話をしたい。話して、謝って……今度ははっきり、伝えたい。
「凄く、大事な話がしたい……ゆたかには、少し辛い話かもしれないけど、いい?」
ベッドをぽんぽんと叩いて、ゆたかをすぐ隣に招く。
「……うん」
のぼせたように真っ赤になりながら、頷いてくれるゆたか。
そのまま、肩が触れ合いそうなほど近くに腰掛けて、私を見つめてきた。
膝の上でぎゅっと握られた手や、強ばり気味の背筋を見れば、緊張しているのが一目瞭然
なのに、それでも精一杯笑顔を作って、私を後押ししてくれている。
ベッドをぽんぽんと叩いて、ゆたかをすぐ隣に招く。
「……うん」
のぼせたように真っ赤になりながら、頷いてくれるゆたか。
そのまま、肩が触れ合いそうなほど近くに腰掛けて、私を見つめてきた。
膝の上でぎゅっと握られた手や、強ばり気味の背筋を見れば、緊張しているのが一目瞭然
なのに、それでも精一杯笑顔を作って、私を後押ししてくれている。
可愛くて強くて、こんな時も私を励ましてくれるゆたかに、愛おしい気持ちが膨らんでいく。
ありがとう、ゆたか。だから私も、思っていることを話すよ。
ありがとう、ゆたか。だから私も、思っていることを話すよ。
「昼間は……ごめん、ゆたかにあんなことして」
ゆたかを求めた痛み、ゆたかが感じただろう痛み、ゆたかから逃げた痛み……
本人をすぐ前にして、また色々な『嫌な感情』が溢れてくる。
だけど、もう逃げたりしない。
隠し続けていた気持ちは、あの時明かしてしまっているのだから。
それに何より、それを伝えようとする私を、ゆたかが待ってくれているのだから。
本人をすぐ前にして、また色々な『嫌な感情』が溢れてくる。
だけど、もう逃げたりしない。
隠し続けていた気持ちは、あの時明かしてしまっているのだから。
それに何より、それを伝えようとする私を、ゆたかが待ってくれているのだから。
「あの時は、ゆたかが優しかったから、甘えてしまって……だけど……」
胸が、苦しい。
顔だってますます赤く、熱くなっていくのが分かる。
それは間違いなく、私の人生で一番どきどきしている時間で。
顔だってますます赤く、熱くなっていくのが分かる。
それは間違いなく、私の人生で一番どきどきしている時間で。
「私、無表情で、人付き合いとか苦手で、高校生になるまで、仲良しの友達なんていなかった。
だからいつも一人で本を読んで過ごして、学校で誰かと話すことなんて、殆どなかった。
でも、入試でゆたかに出逢って……採寸の時に再会してから、すごく変われた。
ゆたかが笑ってくれて、ゆたかと話ができて、ゆたかのお陰で一緒に遊ぶ友達もできて……」
だからいつも一人で本を読んで過ごして、学校で誰かと話すことなんて、殆どなかった。
でも、入試でゆたかに出逢って……採寸の時に再会してから、すごく変われた。
ゆたかが笑ってくれて、ゆたかと話ができて、ゆたかのお陰で一緒に遊ぶ友達もできて……」
真っ平らな胸の奥で、心臓が張り裂けそうで。
「それが、ゆたかと過ごすうちに、いつの間にか、友達以上になりたいって思うようになってた。
泉先輩とかがみ先輩みたいに、もっと……あんな風にゆたかと一緒にいたいって。
こんな気持ちは変だから、ゆたかに迷惑になると思って、ずっと秘密にしてきたんだけど、
弱まるどころかどんどん酷くなって、それで……。
あの時は、本当にごめん、ゆたかにあんな思いをさせて。だけど……」
泉先輩とかがみ先輩みたいに、もっと……あんな風にゆたかと一緒にいたいって。
こんな気持ちは変だから、ゆたかに迷惑になると思って、ずっと秘密にしてきたんだけど、
弱まるどころかどんどん酷くなって、それで……。
あの時は、本当にごめん、ゆたかにあんな思いをさせて。だけど……」
でも、恥ずかしさと緊張でよく分からなくなっていく自分を、思い出で支えて。
「もう、ああいうことはしない。ゆたかが嫌なことは、もう絶対にしないから……
だからもう一度、昨日までみたいに、ゆたかと仲良しに戻りたい。
そして、ゆたかがいいなら、私……」
だからもう一度、昨日までみたいに、ゆたかと仲良しに戻りたい。
そして、ゆたかがいいなら、私……」
こわくて、不安で、目を逸らしたいのを我慢して。
普段よりぎこちない声で、何度も途切れ途切れになりながら、ずっと好きだったひとに。
普段よりぎこちない声で、何度も途切れ途切れになりながら、ずっと好きだったひとに。
「ゆたかの、恋人になりたい」
精一杯、勇気を振り絞った言葉。
でも、それを声に出せたのが不思議なくらい、頭の中は真っ白だった。
緊張が五感を振り切って、もう目の前のゆたかの顔を、見つめているのかも分からない。
やっと伝えられたことを実感する余裕なんてなくて、ただ、ゆたかにまで聞こえそうな鼓動だけが
全身に響いていて。
でも、それを声に出せたのが不思議なくらい、頭の中は真っ白だった。
緊張が五感を振り切って、もう目の前のゆたかの顔を、見つめているのかも分からない。
やっと伝えられたことを実感する余裕なんてなくて、ただ、ゆたかにまで聞こえそうな鼓動だけが
全身に響いていて。
何倍……いや、何十倍にも長く感じた、数秒間。
これ以上続いたら、もう何が何だか分からなくなりそうな、言葉のない時間。
切なくて、耐え切れなくて、もう目を閉じようとした時。
これ以上続いたら、もう何が何だか分からなくなりそうな、言葉のない時間。
切なくて、耐え切れなくて、もう目を閉じようとした時。
「みなみちゃん……私の方、見て」
「ゆ、た……!?」
「ゆ、た……!?」
ゆたかの声が聞こえて、反射的にその名前を呼ぼうとして……
でも、私が言葉にする前に、唇を塞がれていた。
これって、ゆたかと……?
頭がついて行かなくて、目を閉じるのも忘れてしまった私をぎゅうっと抱き寄せながら、
ゆたかが舌を絡ませてくる。
でも、私が言葉にする前に、唇を塞がれていた。
これって、ゆたかと……?
頭がついて行かなくて、目を閉じるのも忘れてしまった私をぎゅうっと抱き寄せながら、
ゆたかが舌を絡ませてくる。
「ふぅっ……ん、ぁ……」
どうすればいいのか考えられなくて、ゆたかに流されるままの私。でも、甘いキスに酔わされる
うちに、いつしかその心地よさに溺れていく。
視界いっぱいのゆたかを見るのが恥ずかしくて目を閉じて、小さな背中を強く抱きしめる。
絡め合う舌の感触に蕩けて、時折肌をくすぐる吐息に頬を染めて……。
「……っ、ふぁっ」
息が苦しくなるまで求め合ってから、名残惜しむように舌を解く。
恥ずかしげに目を開けた私とゆたかの間には、銀色の糸がきらきらと橋を渡していた。
どうすればいいのか考えられなくて、ゆたかに流されるままの私。でも、甘いキスに酔わされる
うちに、いつしかその心地よさに溺れていく。
視界いっぱいのゆたかを見るのが恥ずかしくて目を閉じて、小さな背中を強く抱きしめる。
絡め合う舌の感触に蕩けて、時折肌をくすぐる吐息に頬を染めて……。
「……っ、ふぁっ」
息が苦しくなるまで求め合ってから、名残惜しむように舌を解く。
恥ずかしげに目を開けた私とゆたかの間には、銀色の糸がきらきらと橋を渡していた。
「ありがとう、みなみちゃん」
頬を桜色に上気させて、ゆたかが微笑む。
背中に回した腕を、解かないままで。
頬を桜色に上気させて、ゆたかが微笑む。
背中に回した腕を、解かないままで。
「あの後家に帰ってから、ずっと落ち込んでたの。
いきなりキスされた時はびっくりして、わけがわからなくて……でも、私が返事するのが遅かった
から、みなみちゃんのこと、あんなに傷つけちゃって」
「そんなことない、あれは私がゆたかを……」
「違うよ。みなみちゃんにされた時、びっくりしたけど全然嫌じゃなかった。むしろ、嬉しいというか、
すごくどきどきして……」
「え……?」
いきなりキスされた時はびっくりして、わけがわからなくて……でも、私が返事するのが遅かった
から、みなみちゃんのこと、あんなに傷つけちゃって」
「そんなことない、あれは私がゆたかを……」
「違うよ。みなみちゃんにされた時、びっくりしたけど全然嫌じゃなかった。むしろ、嬉しいというか、
すごくどきどきして……」
「え……?」
ずっと自分を苛んできた記憶が、正反対に書き換えられていく。
それって……それって……?
それって……それって……?
「それからは、ずっとみなみちゃんのこと考えてた。みなみちゃんと同じで、一度『そうなんだ』って
気付いたら、後はずっと深まるばかりで。……だから、辛かった。
あんなことがあったのに、会っていいのか凄く不安で、落ち込んで元気が出なくて……
でも、色々考えたり、お姉ちゃんに励ましてもらって、やっぱり会いに行こうと思って、
それでみなみちゃんの家に行こうとしたら、家の前で待っててくれて……」
気付いたら、後はずっと深まるばかりで。……だから、辛かった。
あんなことがあったのに、会っていいのか凄く不安で、落ち込んで元気が出なくて……
でも、色々考えたり、お姉ちゃんに励ましてもらって、やっぱり会いに行こうと思って、
それでみなみちゃんの家に行こうとしたら、家の前で待っててくれて……」
心の奥から、どんどん感情が溢れてくる。
それが何かは分かっているのに、余りに幸せ過ぎて実感が沸かない、そんな嬉しい気持ち。
それが何かは分かっているのに、余りに幸せ過ぎて実感が沸かない、そんな嬉しい気持ち。
「さっき告白されて、凄く嬉しかった。私からは、怖くて言えなかったかも知れないから。
でも、今なら言えるよ」
でも、今なら言えるよ」
一旦手を離すと、ぴょんっ、とベッドから立ち上がる。
それを追うように立ち上がる私から、ちょっとだけ距離を取って背中を向ける。
展開の分からない私が見守る中、ポケットから何かを取り出して……。
それを追うように立ち上がる私から、ちょっとだけ距離を取って背中を向ける。
展開の分からない私が見守る中、ポケットから何かを取り出して……。
「みなみちゃんっ」
「ゆたか、それ……!?」
私が今朝持ってきた、ブルーのハンカチを手に、くるっとこちらに向き直る。
入試の日にゆたかにあげて、採寸の日に返してもらった、私とゆたかを繋いでくれたハンカチ。
あのキスの時、保健室で失くした筈のそれを、いつかのように笑顔で差し出しながら。
「ゆたか、それ……!?」
私が今朝持ってきた、ブルーのハンカチを手に、くるっとこちらに向き直る。
入試の日にゆたかにあげて、採寸の日に返してもらった、私とゆたかを繋いでくれたハンカチ。
あのキスの時、保健室で失くした筈のそれを、いつかのように笑顔で差し出しながら。
「私も、もう一度、みなみちゃんと仲良しに戻りたい。
ううん、みなみちゃんがいいなら、ただの仲良しじゃなくて、みなみちゃんと恋人になりたい。
……大好きだよ、みなみちゃんっ」
ううん、みなみちゃんがいいなら、ただの仲良しじゃなくて、みなみちゃんと恋人になりたい。
……大好きだよ、みなみちゃんっ」
「ゆたかっ……!」
幸せな涙を零しながら。
嬉しくて、凄く嬉しくて、ハンカチを受け取るのも忘れて、ゆたかをぎゅっと抱きしめた。
ゆたかもそれに応えて、私の男の子みたいな胸の中で、ほころぶような笑顔を浮かべている。
ただそれだけのことでも、もう本当に、狂おしいほど幸せで。
幸せな涙を零しながら。
嬉しくて、凄く嬉しくて、ハンカチを受け取るのも忘れて、ゆたかをぎゅっと抱きしめた。
ゆたかもそれに応えて、私の男の子みたいな胸の中で、ほころぶような笑顔を浮かべている。
ただそれだけのことでも、もう本当に、狂おしいほど幸せで。
「なんだか、本当に採寸の時みたいだよね。もう逢えないかもって思ってたみなみちゃんに
また逢えた時、3年間よろしくって……みなみちゃん覚えてる?」
「うん、うんっ……」
「でも、今度は3年間じゃないよ、もっと先まで、みなみちゃんとずっと一緒だよ?」
また逢えた時、3年間よろしくって……みなみちゃん覚えてる?」
「うん、うんっ……」
「でも、今度は3年間じゃないよ、もっと先まで、みなみちゃんとずっと一緒だよ?」
私が零す涙をハンカチで拭いながら、自分の涙は拭わずに微笑んでくる。
やっぱり、ゆたかはずるい。
片思いの時も、ずっと好きだった筈なのに、恋人同士になってから、殆ど時間が経って
いない筈なのに。
こんなに優しいから、可愛いから、両想いになれた後もどんどん『好き』が深まって、
ますます嬉し泣きが止められなくなってしまう。
やっぱり、ゆたかはずるい。
片思いの時も、ずっと好きだった筈なのに、恋人同士になってから、殆ど時間が経って
いない筈なのに。
こんなに優しいから、可愛いから、両想いになれた後もどんどん『好き』が深まって、
ますます嬉し泣きが止められなくなってしまう。
だから、これ以上恥ずかしい泣き顔を見られないように。
「ありがとう、ゆたか。私も、ゆたかと……」
「みなみちゃん……」
「ありがとう、ゆたか。私も、ゆたかと……」
「みなみちゃん……」
ゆたかに合わせて俯きながら、もつれ合うようにベッドに倒れこんだ。
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- 感動した -- 名無しさん (2009-08-02 09:44:12)
- これはwwwwwwwwwwww
GJすぐる☆ -- 名無しさん (2008-07-04 16:17:48)