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忘れられぬ日

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 バレンタイン。
 バン・アレン・タイン卿の――
 いや、それは違うから。
 バレンタイン少佐が――
 それも違うって。いや、一説では本当みたいなことも聞くけど。
 じゃぁ、お菓子メーカーが売上を伸ばすため――
 それは間違って無いけど、そんなことを言いたんじゃないってば。

 はぁ、一人で呆け突っ込みして何してんだろ、私は。
 今年が最後のチャンスなんだ、絶対に告白しないとね。
 クリスマスにはできなかったから、今度のバレンタインがほんっっとうに最後のチャンスだ。
 いや、卒業式の日ってのもありかな……
 だから駄目だって。そんな考え方してたら告白できずに終わっちゃうって。
「はぁ」
 今日は何回ため息をついたんだろう。
「はぁ」
 馬鹿なことを考えてたら、またため息ついてるし。
 気分転換に買い物にでも行こう。
 チョコレートと一緒に渡すプレゼントも買いたいし。

「むぅ、わからん」
 いくつかの店を見て回ったけど、何を贈るか決まらないよ。
 いっそのこと、私にリボンを掛けて…… 駄目だ。告白と同時にそれは無いよね。
 悩んでばかりいても時間がもったいないから、覚悟を決めてジュエリーショップに入るとしますか。
 あまり入りたくないんだけどね。だってさ――
「いらっしゃいませ……」
 ほら、店員さんがなんて声を掛けたらいいか迷ってるよ。
 小学生あたりに間違われてるんだろうな。こんなときは、この小ささが悔しかったりする。
 店員のことは気にせずに見て回ってたら、銀の三日月の中に宝石が吊ってあるペンダントが目に飛び込んできた。
 宝石のことはよく分からないけど、アイオライトって書いてある。見る角度によって色が変わるんだ。
 渡す相手、かがみのことを考えて思わず笑みがこぼれた。
 うん、金額もお手ごろだし、これに決定。
「すいませーん」
 近くの店員さんに声を掛けたら、私以外に客がいないのを確認してこっちに来た。
 いや、声を掛けたの私だから。こう見えても高校生ですよ私。もう十八歳なんですよ。
「おまたせしました」
 店員さんは、どう対応すべきか迷ってるみたいだけど、買うものが決まっちゃえば私が気にする必要はない。
「これください。友達へのプレゼントなんでリボンもお願いします」
 かがみは気に入ってくれるかな。

 決戦のときは来たっ。いや、明日なんだけどね。
 しかし、なんでうちの学校は毎年バレンタインデイは登校日なんだろうね。気を使ってくれてるのかな。
 チョコレートはもう決めてあるんだよね。無糖ココアを使ったハート型のチョコレートケーキ。
 カロリー控えめだから、かがみも食べやすいと思うんだ。
 それに、アイシングシュガーでメッセージを書いたら出来上がりっと。
 うん、練習したかいがあったね。われながらうまくできたっぽい。
 問題は、これ学校には持っていけないよね。一回帰ってきてから、かがみの家に行くか。
 だったら、予約しとかないとね。
 かがみの携帯に電話したら、すぐに聞きなれた声が聞こえてくる。私が今一番好きな声。
『おーっす。どうしたのこなた』
「ん、ちょっと予約しとこうと思ってね」
『何の予約だ。宿題とかもう無いだろ』
「いやね、かがみの時間を予約しとこうと思って」
『なんだ、それは。ところでこなた、明日の昼からは暇?』
「暇じゃないよ。色々とあってねー」
『そ、そうなんだ……』
「うん、昼からはかがみの時間を予約してるから暇じゃないんだよ」
『え、えーっと、私の都合は関係ないのか』
「かがみ暇なんでしょ」
『いや、暇じゃない。明日は昼からこなたを家に呼ぶから』
「『ぷっ、はは――』」
 暫く二人して笑った後、ちゃんと約束をしてから電話を切った。

 明日は、私にとって運命の日。
 きっと、一生忘れることが無い日になるだろう。
 かがみとの最後の思い出になるかもしれない。
 その覚悟はできている。いや、やっとできた。

「やふー、かがみ」
「いらっしゃい、こなた。寒かったでしょ。さ、早く上がって」
 出迎えてくれたかがみに何か違和感が。
 そか、ワンピース着てるからだ。初めてじゃないかな、かがみのワンピース姿なんて。
「おじゃましまーす。って、もしかして誰もいないのかな」
「そりゃそうよ、今日は平日よ。しかも、昼間なんだから」
 確かにその通りだね。それに、つかさはみゆきさんと約束してたみたいだしね。
 あの二人、夏休み明けてから今まで以上に仲良くなったもんね。
 ところで、なぜにかがみの顔が赤くなってるんだろう。
「でもさ、バレンタインなのに、相変わらず私たちには浮いた話無いねぇ」
 私にとっては、かがみに浮いた話が無いのは嬉しい限りなんだけどね。
 そのおかげで、今日だってかがみと一緒の時間をすごせるわけだし。
「ま、いいんじゃないの。これから先、時間はまだまだ有るし」
 今日のかがみは、いつにも増して表情がよく変わるね。
 今はすっごく嬉しそうな笑顔だよ。
 部屋に向かう途中で、かがみは飲み物を持ってくると言って台所へ行っちゃった。
「しつれいしまーす」
 誰もいないのは分かってるんだけど、なんとねくね。
 かがみの部屋は、いつ来ても綺麗に片付いてるんだけど、今日は少しだけ違った。
 いや、散らかっているわけではないよ。ただ、小さめのダンボールが一つ、部屋の隅においてある。
 なんか、今日は微妙に雰囲気が違ってる気がするのは、私の精神状態のせいかな。

 少しして部屋に入ってきたかがみの手には、湯気を漂わせているカップが二つとポッキー。
 ココアの甘い香りが部屋に広がる。
 カップを受け取ると、最初、冷えた手にはちょっと熱かったけど、体を少しずつ暖めてくれた。
「ふーん。で、今日はなんの用だったの」
「へっ?」
 このココアはバレンタインのチョコなのかな。
 なんてことを考えてたら、いきなり声を掛けられたもんだから、間抜けな声が出ちゃった。
「いや、昨日の電話。あんたの方からだったでしょ」
「でも先に、今日暇かって聞いてきたのはかがみだよ。私は今日とか言って無いもん。で、用件は何なのかな」
 私は、質問を質問で返して話しをはぐらかした。
 本当は今すぐにでも私の気持ちを伝えたいけど、かがみになるべく嫌な思いはさせたく無いからね。
 タイミングが大事だよ。
「ん、別に用事なんて無いわよ。息抜きにこなたと遊ぼうかなって思っただけよ」
「そうなんだ」
 かがみは、昨日の会話を思い出したのか、ちょっと恥ずかしそうにしてる。
 いつもなら、かがみをからかって、それから会話がつながっていくんだけどな。
 私が緊張してるからかな。いつもみたいに、会話が続かない。

 お喋りしたり、ゲームしたりしながら、タイミングを計ってた。
 だけど、今日に限って、間が空きそうになるとかがみが話しを振ってくる。
 私の気持ちをよそに、時間だけが過ぎていく。
「ねえこなた、ちょっと聞いてくれる」
 その声と表情があまりにも真剣で、私は何も言えなくなった。
「あ、うん」
 かがみが私に告白ってことは無いよね。だって、かがみは常識ってものをすごく気にする。
 同性の恋愛はきっと嫌悪してるだろうし。
「あ、その前に、つかさとみゆきは親友よね?」
「もちろんだよ」
 質問の意図は分からないけど、はっきりと答えられる。
 三人がいなければ、高校で友達が一人もいなかったかもしれない。
 私をちゃんと受け入れてくれた、かがみ、つかさ、みゆきさんは親友だよ。
「何があっても?」
「うん」
 私が嫌われることはあっても、私が嫌うことは絶対無い。
 今日、かがみに告白することで、かがみに。いや、三人に嫌われるかもしれない。
 それでも、私はみんなを嫌いになんてならない。
 時間は掛かったけど、その覚悟をして今日はここにいる。
「そう、よかった」
 かがみは、心底安心したように大きく息を吐くと、さっきまでの真剣な表情を崩し、笑顔になった。
「実はね、夏休み中からつかさとみゆきは付き合ってるの」
「えっ……」
 その事実よりも、それをかがみが認めているのかが気になった。
 いや、認めているからこそ、かがみの口から伝えられたんだろう。
 かがみの言葉で、ちゃんとそのことを確認したい。
「で、かがみは、認めてるのかな……」
 かがみは言葉を選んでいるのか、すこし考えてから答えてくれた。
「認めているわ。最初は戸惑ったけどね。私、恋愛は異性とするものだと思ってたから。
 でも、つかさとみゆきから付き合ってるって言われたとき、意外とすんなり受け入れられたの。
 二人が本当に好きあってるのが分かって、恋愛ってこういうことなのかなってね」
 意外な言葉に、私は時間が止まったような錯覚を覚えた。
 何も言わない私に、かがみが問いかけてくる。
「で、こなたはどうなのよ。二人のことをどう思うの」
「私は、二人を祝福するよ」
 否定する理由が無い。
 そういう世界があるのは知ってるし、人の恋愛感に口を出すつもりも無い。
 それに、私自身、かがみに恋をしてるから。
「そ、良かった。二人とも心配してたのよ、こなたに嫌われるんじゃないかって」
 でも、親友だと思っているから、大事なことは直接聞きたかった。
 きっと、なにか理由があってのことだろうけどね。
「だけど、二人から直接聞きたかったかな」
 かがみは顔を赤くしながら、ばつが悪そうに私から顔を背ける。
「私が二人に頼んだのよ。私から伝えさせてって」
 そう言うと、かがみはいきなり立ち上がり部屋から出て行っちゃった。
 えと、二人がかがみに頼んだんじゃなくて、かがみが二人に頼んだって。
 なんで、かがみがそんなこと頼んだんだろう。
 ぜっんぜん分かんないや。ま、今は自分のことを考えよう。
 かがみが同性の恋愛を受け入れてるのは嬉しいんだけど、想定外だったなぁ。
 私は、告白することでかがみに嫌われることばかり考えてた。
 それに対する覚悟はできたけど、振られた後でも、友達として傍にいることなんて考えてなかった。
 ましてや、かがみと付き合える可能性なんて無いと思ってたんだけど。
 もしかしたら、可能性はあるのかな。

 部屋に戻ってきたかがみは、苺とマシュマロ、チョコレートにミルクを持ってきた。
 それをテーブルに置くと、部屋においてあったダンボールから何か取り出し始めた。
「つかさに相談したら、これなら簡単だからって進められてね」
 準備しているのは、小さなコンロに小さなお鍋。
「チョコレートフォンデュかな、それは」
「これなら、形も関係ないしからかわれないでしょ」
 かがみはこちらを見ずに準備している。きっと照れてるんだね。
 かがみは私の為に、これを準備してくれた。
 少なくとも、私のことを気にしてくれている。
「ね、かがみ。ありがと」
「なによいきなり。それより、もうそろそろ大丈夫そうよ」
 かがみからフォークを受け取ると、苺を刺してチョコレートにくぐらせる。
 それを、すこし冷ましてから口に運んだ。
「ね、どう?」
 私にラノベを勧めてきたときみたいに、楽しそうに、そして何かを期待するようなかがみ。
「ん、美味しいよ。かがみも食べなよ」
 意外、と言ったら怒られるかもしれないけど、とっても美味しかった。


「ごちそうさまー。ほんと美味しかったよ、かがみ」
 かがみは嬉しそうに、照れくさそうに顔の前で手を振っている。
 さて、今度は私の番。
「ね、かがみ。私からのプレゼント」
 鞄から、ケーキを取り出して、かがみに差し出す。
 かがみは包みを開けて中を見ると、またか、と言った表情になる。
 ケーキに入れたメッセージは『かがみは私の嫁』だったから、当然かな。
「それね、無糖ココアを使ったチョコレートケーキだからカロリー控えめだよ」
「あ、ありがと」
 やっぱり、かがみがいつもと違う気がする。
 いつもなら、『太ってるって言いたいのか』くらい、返ってきそうなんだけどな。
「ねえ、食べてみてよ。練習してまで作ったんだよ」
 さっきかがみがしていたように、私も楽しそうに、期待してかがみを見つめる。
「これ、美味しいわね。こなたも一緒に食べよう」
 差し出されたフォークを受け取って、私もケーキを一口だけ食べる。
「もう一つ、かがみにプレゼントがあるんだ」
 ペンダントを取り出し、テーブルの上に置く。
 かがみは何も言わずに、手に取ると、リボンを外して包みを開ける。
 中身を見て、かがみは俯いてしまった。
「ねえ、こなた。こなたは私のことどう思ってるの」
 かがみの表情は見えないから、何を思ってるのか想像もできない。
 ただ、その声に明るさはなかった。
 きっと、私の気持ちに気が付いたんだと思う。
 そして、戸惑っているんだろう。
 でも、私は今一番伝えたいことを言うだけ。
 でないと、きっと後悔するから。
「かがみ、私はかがみの事が大好き。いつもかがみのことを考えてる。私はかがみに恋してる」
 かがみは相変わらず俯いたまま、何も言ってくれない。
「ごめんね、かがみ。私は嫌われるのが怖くてずっと言えなかった。
 でも、今日言えなかったら、一生言えないと思ったんだ。
 ただ私の気持ちを知って欲しかったんだ。ごめんねかがみ」
 かがみは肩を震わせている。泣いているみたい。
 私が泣かせた。そのことが辛くて逃げ出したかった。

「ごめんね、かがみ。もう、帰るから」
 立ち上がり、かがみの部屋を出ようとする。
「待ってっ、こなた」
 私はそのまま、部屋の出口に向いたまま立ち止まった。
 どれだけの時間が過ぎたのだろう。五分? 一分? もしかすると、三十秒も経ってないのかもしれない。
 それでも、私には永遠にも感じる時間。
「こなた、私ね嘘ついた。さっき、つかさとみゆきを見て同性の恋愛を受け入れたみたいに言ったけど、あれは嘘」
 かがみは何が言いたいんだろう。
 嘘ってことは、同性の恋愛は今でも理解できないってことだよね。
 きっと、つかさの良き姉でいるために、二人のことは受け入れたんだ。
 そうだとしたら――
 そっか、やっぱり私は嫌われたんだ。
「かがみ、もう友達ではいてくれないよね……」
 僅かな間を空けて、かがみはちゃんと答えてくれた。
「そう、ね。友達じゃいられない、かな……」
 思ってた通りじゃないか。
 今日は一生忘れられない日になった。
 かがみとの最後の想い出。
 私の初恋が終わった日。
 その覚悟はしてきたじゃないか。
 なのに、なんで涙があふれるんだろう。
 色々な思い出が頭の中を駆け巡り、それが終わると何も考えられなかった。
「ごめんね、かがみ。今までありがと…… じゃあね」
 真っ白になった頭で、何とかそれだけは言うことができた。
 最後に見せるのが泣き顔なんて嫌だ。
 だから、振り向かずに部屋を出て行こうとして、不意に体の動きが止まる。
 いや、止められた。
 藤紫色の髪が私の視界に入ったことで、後ろから抱きしめられていることに気付いた。
 私を抱きしめている手が、僅かに震えている。
「こなた、勘違いしてる」
 かがみの声が優しく響く。
「私ね、つかさとみゆきの事を聞く前から、同性の恋愛を受け入れてた。だって、私が好きになった人は女性だったから」
 私を抱きしめる力が、すこし強くなった。
「ずっとこなたを見てた。気付いたらこなたのことを考えてた。
 でも、あんたは同性に興味無いって言ってたから…… 嫌われたくなかったから言えなかった」
 かがみにそこまで言われて、ようやく理解できた。
 一緒だったんだ、私とかがみの気持ちは。
 もう、涙はいらないよね。
「ね、かがみ。私はまだ、かがみの気持ちを聞いて無いよ」
 まだ震えているかがみの手に、そっと手を重ねると少しだけ冷たかった。
 徐々に震えが治まったいくのに合わせて、手がぬくもりを取り戻してきてる。
 かがみが私を解放したから、振り向いてかがみと向き合う。
 精一杯の笑顔で。
「私、こなたのことが大好き。ずっと一緒にいてくれるかな」
 照れてる表情のかがみを、今度は私が抱きしめる。
「もちろんだよ。だって、かがみは私の嫁だもん」
 私の言葉を聞いて、かがみも抱きしめてくれた。

「ねえこなた、これ着けても良いかな」
「あ、私が着けてあげるよ」
 ペンダントを受け取って、かがみの後に回る。
 うなじを見てたら、ちょっといたずら心が湧いてきたけど、自重しよう。
 着け終わってかがみの正面に戻ると、ペンダントを目の前に掲げながら宝石を楽しそうに見つめている
「この宝石、綺麗な色よね。それに、見る角度で色が違って見える」
「色はかがみの髪の色。そして、色が違って見えるのが、表情豊かなかがみを連想させたから選んだんだ」
 私と一緒にいるときのかがみは、いろんな表情を見せてくれる。
 まあ、それは私がからかったりしてばっかりだからなんだけどね。
「どうかな。気に入ってくれた?」
「うん。ありがとう、こなた。それでね、私からもプレゼントがあるの」
 そう言うかがみは、耳まで真っ赤になっている。
 プレゼント渡すのがそんなに恥ずかしいということは、手作りの物なのかな。
 私は期待で、思わずニマニマしてしまう。
「ちょ、ちょっと準備してくるから待ってて」
 かがみは立ち上がり、部屋から小走りで出て行った。
 一人残された私は、今日一日のことを振り返ってみる。
 最初は、かがみの傍にいられなくなることを覚悟して、告白するつもりだった。
 でも、つかさとみゆきさんの事をかがみが認めてるって知って、もしかしたらって期待して。
 告白した後、かがみの言葉を悪いほうに勘違いしちゃって。
 期待が生まれてた分だけ、ショックも大きくて、思わず泣いちゃったんだ。
 最後はかがみが告白してくれて、恋人になれたから結果オーライだね。


「ねえ、こなた。ちょっと目瞑っててくれるかな」
 扉の外からかがみが話してる。
「え、うん。分かった」
 なんだろね。びっくりさせる気かな。
 そう簡単には驚かないよ、私は。
「ね、ちゃんと目瞑った?」
「大丈夫だよ、ちゃんと目閉じてるから」
 かがみのお願いだから、薄目で覗いたりするのは止めておこう。
 扉が少しだけ開けられる音がした。
 覗いて、私が目を閉じてるか確認してるんだろう。
 うーん、目を閉じて待たされるって、焦らしプレイだね。
 扉を開く音がして、かがみが部屋の中に入ってきたみたい。
「かがみー、まだー」
「まっ、まだ駄目っ。もうちょっと待って」
 なんだろう、かがみの声がすごく緊張してるように聞こえる。
 それから、大きく深呼吸をしてるみたい。
「かがみー、目開けちゃうよー」
 開けるつもりは無いんだけど、きっかけを作らないと、ずっとこのままのような気がする。
「あとちょっとだけ」
 かがみは、なにやらぶつぶつと呟いてから、小さな声で「いいわよ」って言った。
 目を開けて、私は言葉を失った。
 ついでに、思考回路が完全に停止。
「えと、かがみさん。どういうことかな……」
 目の前には、今まで見たこと無いくらい真っ赤になったかがみ。
 体に紫色のリボンを纏い立っている。
 さすがに裸は躊躇われたのか、下着はつけているけど。
「わ、私が、こなたへの、プレゼントよっ」
 ぷいっと横を向いて言い放つかがみ。
 これは超弩級の萌えですよ。
 ってか、これなんてエロゲー?
 あ、思考が戻ってきた。

 私が近付くと、かがみはビクッと身をすくめる。
「ね、かがみ。本当にいいの」
 怖がらせないように、できるだけ優しく声を掛ける。
 私はかがみの手を取り、ベッドに座る。
 つられて、かがみも私の横に座る。
「私、我慢できないよ」
 かがみの沈黙を肯定と受け取って、かがみに顔を近づけキスをする。
 ファーストキスは、唇を触れ合わせるだけの優しいキス。
 かがみの唇はやわらかくて、気持ちよかった。
 軽く抱きしめて、耳元で囁く。
「かがみ、大好きだよ。愛してる」
 その言葉で、緊張で固まっていたかがみの体から、すこし力が抜けた。
 そのまま、覆いかぶさるようにベッドに倒れこむ。
 横を向いているかがみの顔に手をやり、私のほうに向けると再び唇を重ねる。
 今度は舌を唇に這わせると、意図を理解して受け入れてくれた。
「くちゅっ、ちゅ――」
 かがみの口内を舐め舌を絡めていると、二人の混ざり合った唾液がかがみの口から溢れ出す。
「んっ、はぁ」
 口を離すと、銀糸がお互いの唇に橋を掛ける。
 かがみは、目が少し虚ろになっている。
 私は手を伸ばし、かがみのツインテールのリボンを外す。
 前に、髪を下ろしたかがみを見て、大人っぽくて綺麗だと思ってたから。
 すると、かがみが私の背中に手を回し、引き寄せられキスをしてきた。
 今度は、かがみが私の口内を弄ぶ。
 舌が絡み合えば合うほど、私の脳に電気が走る。
「ね、かがみ。いいよね」
 答えを聞く前に、ブラのホックを外す。
 そのまま、ブラをたくし上げかがみの胸をあらわにする。
 その頂は既に立ち上がり、その存在を主張していた。
 左手で胸を揉みながら、舌を、首、鎖骨へと走らせる。
「んっ、あっ」
 小さな喘ぎを聞きながら、胸の谷間に舌を落とす。
 そこから、頂へと滑らせ、その周りを丹念に攻めると、かがみの声に比例して、さらに自己主張を強める。
 少しだけ焦らした後、乳首を舌で転がしてから口に含む。
 押しつぶしたり吸ったりした後、軽く噛むと先ほどまでより大きく喘ぐかがみ。
「はぁっ、んっ、あんっ」
 かがみは恥ずかしさのためか、ずっと横を向いて目を閉じている。
 それを良いことに、私は空いている右手をかがみのあそこへと伸ばし、手の平で包み込むようにして全体を軽く揉む。
 突然の行為に、驚いてこっちを向いたかがみにキスをする。
 人差し指で、割れ目をなぞるようにすると、下着の上からでも熱く湿っているのがわかる。
「ね、かがみ。下も脱がせるからね」
 今度は、かがみが小さく頷くのを確認してから、パンティに手を掛ける。
 愛液が糸をひき、シーツにしみを作る。
 途中でリボンに引っかかって、膝上辺りまでしか脱がせられなかった。

 両足を抱え上げると、私はかがみの秘裂に舌を這わせる。
「ちょ、こなた。そんなとこ汚いわよ」
 私はその声を無視して、時折中に進入させながら舐め続ける。
「あっ、いや――」
 中から溢れ出す液体を舐め取り、すこし膨らんだ陰核を刺激する。
 そのたびにかがみは、それまでとは違う喘ぎを漏らす。
 もっと感じて欲しくて、そこを中心に攻め続けていると、シーツのしみが大きく広がっていく。
 再びかがみに覆いかぶさりキスをすると、かがみは私の首に腕を回してきた。
 口に含んだ愛液を流し込みながら、あそこへ中指を浅く挿入する。
 かがみが痛みを感じて無いのを確認して、軽く抽送をくり返しながら、陰核を刺激する。
 かがみの息が荒くなり始め、目が虚ろになっている。
 私は僅かに深く指を抽送させながら、包皮を剥き陰核を直接刺激する。
「こな、た、こなたっ。も、もう駄目っ。もう――」
「かがみ、いいよ。私の指でいって」
 強く陰核を刺激すると、かがみの体が大きく跳ね、絶頂を迎えたようだ。
 ぐったりとしたかがみの隣に横になると、軽く唇を触れさせる。
「かがみ、可愛かったよ」
 かがみが手を伸ばし、私の髪を撫でながら微笑む。
「ね、こなた」
「なに、かがみ」
「ずっと一緒にいようね」
「もちろんだよ」

 暫く余韻に浸りながら、かがみと話をした。
 今までのこと、今日のこと。そしてこれからのこと。
 それから、私は疑問に思ったことを尋ねた。
「ね、どうしてつかさとみゆきさんのこと、どうしてかがみが私に伝えたかったの?」
 かがみは、二人から頼まれたじゃなく、二人に頼んだって言ってた。
「私ね、こなたと同じで、今日告白しようと思ってた。
 でも、もしこなたが同性愛を否定するんだったら、今までのように友達でいようと思ってた。
 だからといって、女性を好きになるってどう思う、なんて聞けないしね」
 かがみはさっきからずっと、天井を見ながら話している。
 どういう表情をして良いか分からないって感じ。
「そか。それで、つかさとみゆきさんのことを聞いた私が、どう反応するかで判断したかったと」
「そ。そのせいで、こなただけが二人のことを知らないって状況になったの。ごめんね」
 私のほうを見たかがみは、うっすらと涙を浮かべている。
「かがみ、謝らないで。今日、告白できたのは、かがみから二人の話を聞いたからなんだから」
 あの時、かがみが二人のことを認めてるって言ったから、私は告白できた。
 じゃなければ、私はまた逃げてたかもしれない。

「後一つ聞きたいんだけど、良いかな」
 そう、これはとても重要なこと。
 絶対に聞いとかなきゃ、夜も眠れないよ。
「良いけど、何?」
 その返事を聞いて、私はニヨニヨしてしまう。
 猫口になった私を見て、かがみが慌てる。
 気付かれたかな。
「なっ、まさかっ」
「多分、かがみが思ってること。ちゃんと答えてよね。拒否権は無いっ。
 というわけで、裸、じゃなかった。下着姿にリボンで私がプレゼントってさ、どこのエロゲ。
 それに、あのリボン。一人では無理なところがあったよねー」
 最後のは、ブラフだけどね。
「そ、それは、つかさとみゆきに相談したら、こなたが萌えることすれば良いんじゃないかって言われて。
 ほら、ゲームだと、クリスマスとかバレンタインとかに良くあるシチュエーションみたいだし」
 照れながらも、律儀に答えてくれるかがみ、萌え。
「あと一つ答えてないよね。つかさに手伝ってもらったのかな」
「そっ、そうよっ。もういいでしょ」
 ちょっといじめすぎちゃったかな。
「ごめんね、かがみ」
 私はもう一度、かがみにキスをした。
 今日は本当に忘れることのない日になった。
 かがみとの想い出は、これから新たなページを迎える。
 私は幸せに包まれている。



「ね、こなた」
「なに、かがみ」
「まだ時間あるし、その、もう一回しない? 今度はこなたを感じさせたいんだけど」
「う、うん。私ももっとかがみを感じさせたい」
「でね、その余ったチョコなんだけど、その…… こなたに塗って食べて良いかな」
「えっ…… えと、どうしても?」
「どうしても。拒否権はないっ」




















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  • GJ!!! -- 名無しさん (2023-08-29 22:56:08)
  • GJ!! -- 名無しさん (2023-04-26 17:08:55)
  • GJ! -- 名無しさん (2022-12-30 17:35:16)
  • GJ -- 名無しさん (2022-10-10 22:12:08)
  • いい…いい… -- 名無しさん (2019-09-17 13:02:00)
  • -- チョココロネ (2014-06-26 22:25:55)
  • -- チョココロネ (2014-06-26 22:24:59)
  • 雰囲気がGJ -- 名無しさん (2012-08-09 21:00:30)
  • 良い!!!! -- 名無しさん (2010-09-13 19:25:43)
  • エロと甘々がイイ感じに混ざり合っててよかった -- 名無しさん (2010-08-18 11:13:00)
  • 時期はずれですがいい話でした。 -- 名無しさん (2010-06-12 13:41:10)
  • なんかこっちまで幸せになってきた


    -- 名無しさん (2010-05-22 16:46:00)
  • 全体に流れる甘々な雰囲気が堪らん
    二次創作の醍醐味を感じますた
    GJ -- 名無しさん (2008-08-16 00:15:29)
  • ちょっとしたことでも不安になったり悲しくなったりするこなたの心理
    甘々の展開、上手いけれど優しいこなたの攻め・・・ いいもの読ませていただきました。 -- 名無しさん (2008-05-18 20:31:20)
  • かがみはこなたのYOME!!! -- 名無しさん (2008-02-16 12:28:37)

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