17.
「ご馳走様。中々美味しかったわ」
「まぁね。僕もたまにしか行かないけど」
「へぇ、そうなんだ」
『くいだおれ』を出た私と彼──ただお・未来の私の父──は、四方山話で盛り上がりつつ市内を南下する。
道頓堀川に沿って繁華街を歩き、日本橋が見えた所で堺筋に入る。
東京の日本橋(にほんばし)とは違って、こちらは真上に高速道路は無い。
ロケーションは良いのだが、ただ、肝心な橋はそれほど古くは無さそうだ。
堺筋を下ってすぐに、関西最大の電気街「日本橋でんでんタウン」へ。
『東のアキバ、西のポンバシ』とは言うが、まさにその通りであり、電気製品を扱う店がびっしりと軒を連ねる。
規模の大きな家電量販店から、ラジオの部品(らしきモノ)を売る怪しげなお店。
何故かプラモデルしか売っていないお店などの例外もあったが、
今日が平日であるにも拘わらず、街はそれなりに賑わっていた。
因みに『現代』のでんでんタウンは秋葉原同様、徐々にヲタク街と化しているそうだ。
「まぁね。僕もたまにしか行かないけど」
「へぇ、そうなんだ」
『くいだおれ』を出た私と彼──ただお・未来の私の父──は、四方山話で盛り上がりつつ市内を南下する。
道頓堀川に沿って繁華街を歩き、日本橋が見えた所で堺筋に入る。
東京の日本橋(にほんばし)とは違って、こちらは真上に高速道路は無い。
ロケーションは良いのだが、ただ、肝心な橋はそれほど古くは無さそうだ。
堺筋を下ってすぐに、関西最大の電気街「日本橋でんでんタウン」へ。
『東のアキバ、西のポンバシ』とは言うが、まさにその通りであり、電気製品を扱う店がびっしりと軒を連ねる。
規模の大きな家電量販店から、ラジオの部品(らしきモノ)を売る怪しげなお店。
何故かプラモデルしか売っていないお店などの例外もあったが、
今日が平日であるにも拘わらず、街はそれなりに賑わっていた。
因みに『現代』のでんでんタウンは秋葉原同様、徐々にヲタク街と化しているそうだ。
ふと、手に持っている紙袋に目をやる。
ずっしりとピンクな同人誌が詰まった紙袋。
この『紙袋の持ち主』はおそらく、ヲタク街と化した『現代の』でんでんタウンを好みそうだ。
どんな人なんだろう。持ち主はおそらく『男』だろう。中身が中身なだけに……。
ずっしりとピンクな同人誌が詰まった紙袋。
この『紙袋の持ち主』はおそらく、ヲタク街と化した『現代の』でんでんタウンを好みそうだ。
どんな人なんだろう。持ち主はおそらく『男』だろう。中身が中身なだけに……。
気が付けば恵美須町(えびすちょう)まで下っていた。
交差点を地下道──地下鉄駅の通路も兼ねる──で抜けて、3番出口の階段を上る。
すると、白いブロックが敷き詰められた広い通りに抜ける。
「ここって……」
そう、ここは大阪のもう一つの名所、新世界。その向こうに見えるのは通天閣。
テレビや雑誌でよく見る光景が、そこにはあった。
道頓堀はたこ焼き屋とお好み屋が冗談の様に林立していたが、
こちらは串カツ屋と居酒屋が何軒も軒を連ねる。そして、当たり前のようにたこ焼き屋もある。
もっと賑やかなところだと思っていたのだが、新世界は意外と閑散としていた。
まぁ、お店がお店だから、夕方になればお勤め帰りのお父さん達で賑わうのだろう。
交差点を地下道──地下鉄駅の通路も兼ねる──で抜けて、3番出口の階段を上る。
すると、白いブロックが敷き詰められた広い通りに抜ける。
「ここって……」
そう、ここは大阪のもう一つの名所、新世界。その向こうに見えるのは通天閣。
テレビや雑誌でよく見る光景が、そこにはあった。
道頓堀はたこ焼き屋とお好み屋が冗談の様に林立していたが、
こちらは串カツ屋と居酒屋が何軒も軒を連ねる。そして、当たり前のようにたこ焼き屋もある。
もっと賑やかなところだと思っていたのだが、新世界は意外と閑散としていた。
まぁ、お店がお店だから、夕方になればお勤め帰りのお父さん達で賑わうのだろう。
「どう、感じる? 『気配』」
「あぁ、感じるぜ? ただ、ここじゃねぇな。もっと、南の方で感じるぜ。ヒッヒッ」
相も変わらず緊張感が無い奴ね。まぁいいわ。
「あぁ、感じるぜ? ただ、ここじゃねぇな。もっと、南の方で感じるぜ。ヒッヒッ」
相も変わらず緊張感が無い奴ね。まぁいいわ。
「今日は色々と有り難う」
「いいえ、どう致しまして。お役に立てられて何よりです」
「兄ちゃん、恩に着るぜ? あんがとよ。ヒッヒッ」
「こちらこそ。元の時代に帰るまで、かがみさんをお願いしますよ」
「おう、まかせとけ!」
「私はすんげー心配だけどな。本当に帰れるか」
バカマルコに軽くツッコんで、再び彼の方を向く。
ちょっと癖のある短髪をかき上げる仕草をして、彼は柔らかく笑う。
やっぱり、お父さんと同じ『あたたかさ』を感じる。そりゃそうだ。本人なんだから。
「それじゃあ、僕はここで………あ、そうだ!」
別れ際、彼は突然何かを思いついたようで、詰め襟のポケットに手を入れてガサゴソさせる。
そして中身を取り出し、私の前に差し出される。
それは、小さなお守りだった。
「これを、貴方に」
「い、いいの?」
私は差し出されたお守りを本当に受け取って良いのかどうか迷っていると、
彼は「ええ」と短く答え、それから、
「『貴方に天下最強の幸運を』」
と何処かで聞いた事のある台詞を残してその場を去った。
その場に取り残された私とオマケ約1『名』は、何故か呆然としていた。
「いいえ、どう致しまして。お役に立てられて何よりです」
「兄ちゃん、恩に着るぜ? あんがとよ。ヒッヒッ」
「こちらこそ。元の時代に帰るまで、かがみさんをお願いしますよ」
「おう、まかせとけ!」
「私はすんげー心配だけどな。本当に帰れるか」
バカマルコに軽くツッコんで、再び彼の方を向く。
ちょっと癖のある短髪をかき上げる仕草をして、彼は柔らかく笑う。
やっぱり、お父さんと同じ『あたたかさ』を感じる。そりゃそうだ。本人なんだから。
「それじゃあ、僕はここで………あ、そうだ!」
別れ際、彼は突然何かを思いついたようで、詰め襟のポケットに手を入れてガサゴソさせる。
そして中身を取り出し、私の前に差し出される。
それは、小さなお守りだった。
「これを、貴方に」
「い、いいの?」
私は差し出されたお守りを本当に受け取って良いのかどうか迷っていると、
彼は「ええ」と短く答え、それから、
「『貴方に天下最強の幸運を』」
と何処かで聞いた事のある台詞を残してその場を去った。
その場に取り残された私とオマケ約1『名』は、何故か呆然としていた。
ぴゅうっと、天気の安定しない空から乾いた風が一吹き。
それではっと我に返った私は、バカマルコが感じる『気配』を頼りに、恵美須町駅から阪堺電車で更に南を目指した。
それではっと我に返った私は、バカマルコが感じる『気配』を頼りに、恵美須町駅から阪堺電車で更に南を目指した。
*
「この街には、もう『気配』が感じねぇ」
「てコトは、そろそろ次の場所に移動って訳ね」
「そういうコトだ」
我孫子町(あびこちょう)駅から国鉄阪和線の通勤電車に乗った私達は、
両側に迫る住宅街を眺めながら大阪駅へと向かっていた。
南海電鉄阪堺線(現:阪堺電軌阪堺線)の我孫子道(あびこみち)駅で降りた私達は、
住宅街を東へと進み、市営南住吉住宅という団地の敷地内で『星のカケラ』を発見した。
「我孫子」という地名は埼玉県のお隣、千葉県に都市名として存在するが、
まさか500キロ以上も離れた大阪にも全く同じ地名があるとは思わなかった。
おそらく、大阪の我孫子に住んでいる人は、千葉県に「我孫子市」という町がある事に驚くだろう。
天王寺駅から今度は環状線に乗り換える。駅の構造が複雑で、成り行きで外回り電車に乗る事にした。
天王寺から大阪までは、外回りも内回りも時間的には大して変わらないらしい。
車両は阪和線と同じやつだが、オレンジ色の車体は数年前までの武蔵野線を連想する。
たぶん武蔵野線で走っていたやつも、今乗っているコレと同型だろう。
鉄道興味は生憎持ち合わせていないので、あまり良く分からないけど。
「てコトは、そろそろ次の場所に移動って訳ね」
「そういうコトだ」
我孫子町(あびこちょう)駅から国鉄阪和線の通勤電車に乗った私達は、
両側に迫る住宅街を眺めながら大阪駅へと向かっていた。
南海電鉄阪堺線(現:阪堺電軌阪堺線)の我孫子道(あびこみち)駅で降りた私達は、
住宅街を東へと進み、市営南住吉住宅という団地の敷地内で『星のカケラ』を発見した。
「我孫子」という地名は埼玉県のお隣、千葉県に都市名として存在するが、
まさか500キロ以上も離れた大阪にも全く同じ地名があるとは思わなかった。
おそらく、大阪の我孫子に住んでいる人は、千葉県に「我孫子市」という町がある事に驚くだろう。
天王寺駅から今度は環状線に乗り換える。駅の構造が複雑で、成り行きで外回り電車に乗る事にした。
天王寺から大阪までは、外回りも内回りも時間的には大して変わらないらしい。
車両は阪和線と同じやつだが、オレンジ色の車体は数年前までの武蔵野線を連想する。
たぶん武蔵野線で走っていたやつも、今乗っているコレと同型だろう。
鉄道興味は生憎持ち合わせていないので、あまり良く分からないけど。
『まもなく、西九条、西九条。安治川口、桜島方面と、阪神電車はお乗り換えです』
時代が時代なので、車内アナウンスに「USJ」の単語は出てこない。
最寄り駅は、確か「ユニバーサルシティ駅」だっけか?
時代が時代なので、車内アナウンスに「USJ」の単語は出てこない。
最寄り駅は、確か「ユニバーサルシティ駅」だっけか?
『次は、福島、福島です』
えぇ?!
これは驚いた。
大阪にも「福島駅」があるとは思わなかった。
『福島、福島です』
駅名もズバリ「福島」。福島県出身の人が見たら感動するかも知れない。
〈随分と楽しそうだな、可憐なる鉄道旅行者・ヒーラギカガミ?!〉
〈うるさいうるさいうるさい。放っといて!!〉
えぇ?!
これは驚いた。
大阪にも「福島駅」があるとは思わなかった。
『福島、福島です』
駅名もズバリ「福島」。福島県出身の人が見たら感動するかも知れない。
〈随分と楽しそうだな、可憐なる鉄道旅行者・ヒーラギカガミ?!〉
〈うるさいうるさいうるさい。放っといて!!〉
『有り難うございました。大阪、大阪です。
東海道線、阪急電車、阪神電車、地下鉄電車はお乗り換えです』
環状線の電車はあっと言う間に半周し、大阪駅に到着した。
電車の窓から景色を眺めるのは、幾つになっても楽しいわね。
東海道線、阪急電車、阪神電車、地下鉄電車はお乗り換えです』
環状線の電車はあっと言う間に半周し、大阪駅に到着した。
電車の窓から景色を眺めるのは、幾つになっても楽しいわね。
個人的には大阪駅から阪急梅田駅に行き、そこから甲陽園まで行きたかった。
理由? 簡単よ。あのラノベの舞台が甲陽園の周辺だからよ。
理由? 簡単よ。あのラノベの舞台が甲陽園の周辺だからよ。
一旦改札を出て、財布から岡山行きの乗車券を取り出し、再び改札口を通る。
途中下車した場合、再び列車に乗るには、下車した駅まで戻って改札しなければならない。
当然と言えば当然だけど、何か面倒だ。
『まいどご利用有り難う御座います。この列車は、姫路行き、新快速です。
停車駅は三ノ宮、神戸、明石、西明石、終点・姫路です』
大阪駅からは東海道線での新快速に乗る。車両は、2つ扉の旅行用の電車だった。
この電車、塗装は白地に青帯と塗装は異なれど、客室設備は昨晩乗ったあの大垣夜行を連想して嫌になる。
このトラウマはあと10年は引きずる事になろう。
ボックスシートだけの車内に身を預けると、自然と瞼が降りてくる。
やがて私は、モータの駆動音と線路のジョイント音をBGMに、いつしか深い眠りについていた。
途中下車した場合、再び列車に乗るには、下車した駅まで戻って改札しなければならない。
当然と言えば当然だけど、何か面倒だ。
『まいどご利用有り難う御座います。この列車は、姫路行き、新快速です。
停車駅は三ノ宮、神戸、明石、西明石、終点・姫路です』
大阪駅からは東海道線での新快速に乗る。車両は、2つ扉の旅行用の電車だった。
この電車、塗装は白地に青帯と塗装は異なれど、客室設備は昨晩乗ったあの大垣夜行を連想して嫌になる。
このトラウマはあと10年は引きずる事になろう。
ボックスシートだけの車内に身を預けると、自然と瞼が降りてくる。
やがて私は、モータの駆動音と線路のジョイント音をBGMに、いつしか深い眠りについていた。
〈良い夢を。儚き時の旅人・ヒーラギカガミ〉