kairakunoza @ ウィキ

本当は、甘えん坊?

最終更新:

Bot(ページ名リンク)

- view
だれでも歓迎! 編集
「ね、かがみ。ぎゅってしてー」
 そう言いながら、私はかがみの胸に顔をうずめる。
 かがみに包まれる気がして落ち着くから。
 それに、素肌で感じる温かさが心地いい。
「もう、本当にこなたは甘えん坊よね」
 やれやれ、といった感じで言いながらも、かがみは抱きしめてくれる。
「そうだよー。私は甘えん坊さんなんだよ」
 顔をちょっとかがみに向けた後、私は赤ちゃんのようにおっぱいに吸い付いた。
 私はお母さんに甘えたことが無い。
 だから、全てを包んでくれる、優しいかがみに甘えるんだと思う。
「ちょっ、やめっ。今日はもう駄目だって」
「むぅ。じゃあさ、一緒にお風呂に入ろう。汗いっぱいかいちゃったし」
「そうね。でも、もうちょっとこのままでいたいかな」
 かがみは、私を抱きしめる力をちょっとだけ強くした。
 私も、かがみをしっかりと抱きしめる。
「あのさ、かがみ……」
「なに」
「かがみも私に甘えて良いんだよ?」
 かがみは、しっかりとしたお姉ちゃんでいようと頑張っていた、って言ってたよね。
 だから、誰かに甘えることが無かったんじゃないか。
 私と同じで、誰かに甘えたいんじゃないかな。
「なっ、なによ。いきなり…… あれ、どうしてだろ……」
 顔を上げると、かがみが泣いていた。
「か、かがみ。私なんか悪いこと言った? ごめんね」
「あんたは悪く無いわよ。自分でも、なんで泣いてるのかわかんない」
 私は体を動かし、かがみの頭を胸に抱きしめた。
 そして、かがみの頭を優しく撫でる。
「泣きたいときは、私が胸貸したげるよ。あんまり無いけどね」
「ば、ばかっ」
 かがみは、しばらく私の胸で泣き続けたあと、眠りについた。





「ねぇねぇってば~」
 体を揺すられ目を覚ますと、窓から差し込む朝日が目にしみる。
 ところで、かがみってこんな喋りかたしたっけ?
「おはよー、かがみ。相変わらず早起きだねー」
 上半身を起こし、腕を突き上げ背中を伸ばす。
 声のした方に目を向けると、かがみが裸のまま立っていた。
 そっか。昨日、あのまま眠っちゃったんだっけ。
 とりあえず、シャワー浴びてから――
「お姉ちゃん誰?ここどこ?」
 えと、空耳かな。
 まだ寝ぼけてるみたいだね、私。
「かがみ、シャワー浴びよっか」
 そうすれば、目もちゃんと覚めるよね。
「なんで私の名前知ってるの?」
 あー、さっきのは空耳じゃなかったんだ。
 それにしても、かがみったら冗談にも程があるよ。
「ちょっと、かがみー。いいかげ――」
「う……」
 う?
「うぁーーん。おうちかえるーっ」
 えっ?えっ?どうなってんの?
 目の前のかがみは、間違いなく昨日一夜をともにしたかがみだよ。
 で、そのかがみが裸で…… と、これはどうでも良いか。
 いや、だから、本当の子供みたいに泣き出しちゃったよ。
 お、落ち着け、私。
 まずは、泣いているかがみを何とかなだめよう。
 でないと近所の人に、お父さんが白い目で見られるようになるっ。
「えと、かがみちゃん? お姉ちゃんは、こなただよ。泉こなた」
 こんなとき、どんな表情したら良いんだろう。
 笑えば良いと思うよ……
 うん、ベタだけどそうだよね。
 笑顔笑顔っ。
「ぅぇ、ひっく。こなた、お姉ちゃん?」
 とりあえず、返事してくれたよ。
 さて、どうしたもんかねー。
「そうだよ。そして、ここは私の家」
「どうして、私ここにいるの?」
 小首をかしげるかがみの仕草は、本当に小さな女の子みたいだよ。
 正直、可愛すぎる。
「うんとね。かがみちゃんは昨日から家にお泊りに来てたんだよ」
「ん~、そうだっけ。ね、つかさは~」
「そっ、それよりさ。お風呂入ろう、お風呂。いつまでも裸でいると風邪引いちゃうぞー」
 ごまかせるのか、こんなことで……
 今の―― 高校生のかがみなら「な~にごまかしてんのよっ」とか言われそうだけど……
「うん、はいるーっ」
 はぁぁ、よかった。
 少しは時間が稼げるな。
 お風呂に入る前にみゆきさんに電話して、家に来てもらおう。
 どう見ても、かがみがふざけてるようにも見えないし。
 みゆきさんなら、きっと何か分かるよね。





「それじゃ、頭洗うよー」
「う…… うん」
 あれ。かがみ、どうしたのかな。
 なんだか緊張してるみたいだけど。
「どうしたのかな。かがみちゃん」
「あのね、シャンプーハットつけて欲しいの」
 最後は、消え入りそうなくらい小さな声だ。
 顔も赤くなってるし、恥ずかしいと思ってるのかなぁ。
「おけおけ」
 お父さんが使うから、普通においてあるんだよね。
 なんか、そのことの方が恥ずかしい気がする。
 頭を洗い始めると、かがみがなんか歌いだした。
 どっかで聞いたことあるような気がする。
 えーと、いつだっけ…… そうだ、みんなで始めてカラオケ行ったときだよ。
 確か「I'm proud」とかいう歌だよね。
「かがみちゃん。その歌好きなの?」
「うんっ、大好きっ。泣きたくなったりしても、この歌、歌うと元気が出るの」
「今、泣きたいの?」
「ううん、楽しいよ。でも、何でか歌いたくなったの」
 そう言うと、かがみはまた歌いだした。
 だけど、どうしてこんなことになったんだろう。
 心が子供に戻っちゃってるんだよね?
 なんて言うんだっけ、こういうの。
 かがみの体を洗い終えて、自分の体を洗ってるときまで考えてたけど、結局分からなかった。

「あーっ!」
「こなたお姉ちゃん、どうしたの」
 突然声を上げた私に驚いて、かがみは心配したような表情で声を掛けてきた。
「な、なんでもないよ。もうちょっとで洗い終わるからね」
 しまったー…… かがみの体洗わせてもらったこと無かったんだよ。
 貴重な体験だったのに、考え事してたから全然覚えてない。
 泉こなた、一生の不覚だ。

 体を洗い終わると、湯船に浸かっていたかがみが足をまげて、背中側を大きく開けた。
 これは、かがみの後ろに私が入れってことかな。
 私のほうが小っちゃいから、本当はかがみが後ろの方が楽なんだけどね。
「お邪魔しまーす」
 私が後ろに入ると、かがみは私の太もも辺りに座ってきた。
 かがみの体重を感じていると、自然と笑みがこぼれる。
 手を回して、おなかの辺りを抱いてあげる。
 身長差があって、上からは抱けなかったんだよ。
「えへへー」
 そうすると、かがみは嬉しそうに笑った。
「かがみちゃん、どうしたの」
 その笑顔が、すごく嬉しそうなのが気になって、私はかがみに聞いてみた。
「うん。いっつもね、私が後ろだから、前に座ってみたかったんだー」
 そっか。つかさと一緒に入ると、がかがみが後ろだったんだね。
 やっぱり、かがみも誰かに甘えたかったのかな。





 お風呂から上がって、かがみの髪を乾かしてあげると、自分で器用にツインテールを作ってた。
 今は、着替えも終わって私を待っている。
 私が髪を乾かし終えると、かがみがとてとてと近付いてきた。
「こなたお姉ちゃん、ちょっといいかな」
 そう言って、私の髪にリボンを結ぶ。
 かがみは手馴れた手つきで、私の髪をツインテールにしてしまった。
「お揃いだよっ」
 かがみの笑顔がすごく嬉しそうだから、今日はこのままの髪型でいよう。
 それに、今のかがみにはそれが必要な気もするしね。
「ありがとう、かがみちゃん」
 私もとびっきりの笑顔を返してあげた。
「くぅ~~っ」
 その時、かがみのお腹から可愛い音がした。
 かがみは顔を真っ赤にして、お腹を押さえる。
「お腹すいたね。何が食べたい?」
「うんと、スパゲッティミートソース」
 えーっと、ミートソースは缶詰があったはずだから。
 うん、大丈夫。
「よーっし。それじゃあ、スパゲッティにしよう」
「やったーっ」





 ちょっと遅めの朝ごはんを食べた後、部屋でゲームをしていると呼び鈴が鳴らされた。
「はーい。今出ますよー」
 かがみを残して玄関に向かう。
 扉を開けると、待ち焦がれていたみゆきさんの姿があった。
「こんにちは。泉さん」
「やふー、待ってたよー。大体は電話で話した通りなんだけどさ」
「ええ。おそらくは幼児後退ではないかと」
「で、どうやったら元に戻るの?」
「あの、泉さん……」
 みゆきさんの視線は、私の後方へと向けられている。
 その視線を追っていくと、かがみが部屋から顔だけを覗かせていた。
「ま、ここで立ち話もなんだから、部屋に行こっか」

 部屋に入ると、お互いの自己紹介。
 朝、私のことを分からなかったみたいだから、みゆきさんのことも分からないだろうしね。
「かがみちゃん。私の友達のみゆきさん」
「こんにちは、かがみさん」
「こ、こんにちは」
 かがみは恥ずかしそうに、みゆきさんに挨拶を返した。
「かがみさんは、今何歳なのですか?」
「8歳。小学2年生」
 あ、そっか。年齢聞けばよかったんだよね。
 さっすが、みゆきさんだね。
 今、かがみは躊躇なく返事したよね。
 ってことは、やっぱり心が若返ってるのか。
「ね、かがみちゃん。ちょっとみゆきさんと話してきていいかな」
「うん……」
 寂しそうな表情を一瞬見せたけど、かがみはすぐに笑顔になった。
 この頃から、我慢することを覚えてたんだ。
 なんか気が引けるけど、かがみの前で話すことじゃないもんね。
「すぐ戻るからねー」





 リビングに移動して、みゆきさんに事の成り行きを説明した。
 電話では、かがみの様子だけしか伝えてなかったからね。
「そうですね。やっぱり幼児後退だと思います」
「さっきも言ってたけど、なんなのそれ」
「見ての通り、精神が幼児期に戻ることですよ」
「で、どうやったら元に戻るのかな。みゆきさん」
 今のかがみも可愛くて良いんだけど、さすがにこのままって訳にはいかないよ。
「泉さんの話を聞く限り、小さい頃に人に甘えていないことが原因ではないかと思います――」

 みゆきさんの話では、幼児後退は過度のストレスなんかで起こる。
 他には、小さい頃にできなかったことを体験しようとして、起こることもあるらしい。
 かがみの場合は後者ではないか。
 きっかけは、私が「甘えてもいい」と言ったことじゃないか、とのことだ。

「ってことは、思いっきり甘えさせてやれば、元に戻るってことでいいのかな」
「確証はありませんが、おそらくは。病院に行って診て貰う方が良いと思うんですが」
「うん。夕方まで私がやってみるよ。で、駄目だったらかがみの家に連絡する……」
 本当はすぐにでも連絡した方が良いんだろうけど、私の言葉が原因なら、私が治してあげたい。
 それに、かがみも他の人に、こんな状態を見られたく無いだろうし。
「そうですか。それでは、私は失礼しますね」
「うん。ありがとう、みゆきさん。それと、このことは内緒にしといてね」
「ええ、心得てますよ」





 みゆきさんを見送ってから部屋に戻ると、かがみはゲームをやっていた。
 だけど、楽しんでる感じじゃないね。
「おまたせ。ごめんね、かがみちゃん」
 声を掛けると、かがみはゲームを放り出し、私に抱きついてきた。
 瞳がわずかに潤んでいる。
「ごめんね、寂しい思いさせちゃって」
 かがみを抱きしめ、頭を優しく撫でてやる。
 かがみは、ずっと我慢してたのかな。
 誰かに甘える姿を見られないように。
 しっかりしたお姉ちゃんである為に。
 私の前では、そんな事しなくていいんだよ。
 私がかがみに甘えるように、かがみも私に甘えてほしいよ。
「ね、かがみちゃん。今から何しよっか? 今日は一日やりたい事やろうね」
「お姉ちゃんと一緒に、お昼寝したい」
 間髪いれずにそう言ったかがみは、顔を真っ赤にして恥ずかしそう俯いていた。
「じゃあ、今からお昼寝だね」
「うん、一緒に寝てくれるの?」
「もちろんだよ。でもその前に、着替えようね。服にしわが付いちゃうから」
「うんっ」
 パジャマに着替えて、ベッドに二人で横になる。
 昨日と同じように、私の胸にかがみの頭を抱きしめながら。
 昨日と違ったのは、かがみが嬉しそうにしていること。
 かがみは私の胸で、安らかな寝息を立てている。
 それを見ながら私も眠りについた。
 起きたときには、かがみが元に戻ってることを祈りながら。





 どれくらい眠っていたんだろう。
 私は胸に違和感を覚えて目を覚ました。
 まだはっきりとしない意識で視線を胸元にやる。
 パジャマの前が開けられ、かがみが私の胸を吸っていた。
「ちょっ、かがみちゃんっ」
 私の声に反応して、かがみが視線を上げる。
「どうしたの?こなたお姉ちゃん」
 なぜ驚いているのか分からない、と言った表情を見せると、再び私の胸に吸い付くかがみ。
 私の祈りは届かなかったらしい。
 かがみはまだ、元に戻ってないみたいだね。
「ん、なんでもないよ。かがみちゃん」
 目の前の菫色の髪を撫でながら、これからのすべきことを考える。
 まずは、かがみの家に連絡。
 それからのことは、なるようにしかならないよね。
 多分、かがみは病院に行って、検査を受けることになるだろう。
 そうなったら、私はできるだけかがみの傍に居よう。
「ね、こなたお姉ちゃん。ぎゅ、って抱きしめて」
 かがみに目を向けると、照れくさそうに私から視線を外す。
 私は、抱きしめている力をちょっとだけ強める。
「しかたないなぁ。かがみちゃんは甘えん坊さんだね」
「そうよ。ずっと、こうして誰かに甘えたかったのよ」
「そっかー…… って、かがみ?」
 かがみの肩に手をやり、顔が見えるように少しだけ体を離す。
「やっ…… こなた、抱きしめてて」
 私は言われた通りに、かがみを抱きしめなおす。
 抱きしめている力を、ちょっとだけ強める。
「ありがとう、こなた」
 そう言ったかがみの声は涙声だった。




















コメントフォーム

名前:
コメント:
  • 戻ったのか!? それとも演技なのか!?
    かがみがかわいすぎる 溶けそうだ〜(^o^) -- オビ下チェックは基本 (2009-06-15 20:21:07)
  • これはかがみが黒いのかそうでないのかで
    感想が180度変わるなww
    敢えて、白いかがみならばと仮定すると・・・

    かわいすぎ!!!! -- taihoo (2009-03-10 01:34:43)
  • GJ

    -- 名無しさん (2009-03-07 19:09:12)
  • 全俺が泣いた。 -- 名無しさん (2009-03-07 09:15:19)
  • 全米が泣いた。 -- 名無しさん (2009-03-07 08:10:22)
  • イイハナシダナァ -- 名無しさん (2009-01-04 16:27:20)
  • ぐはああああっっっ!!!かがみ可愛えええええっっ!!お姉さんこなたってのもいいなあ… -- 名無しさん (2008-10-07 21:06:43)
  • 良いお話すぐる! -- 名無しさん (2008-07-23 23:16:16)
  • おっぱい!! -- 名無しさん (2008-07-23 22:55:16)
  • これは良いお話ですねぇというよりかがみもやるのぉ -- 泉こなた(九重龍太) (2008-07-23 13:04:40)
  • いいねっ!GJ! -- 名無しさん (2008-07-23 08:51:51)
  • 良い話だな!
    ↑これしか、言えない!! -- 名無しさん (2008-07-22 23:47:48)
  • きゅんときた!
    エロから始まってピュアにおとすのっていーな~ -- 名無しさん (2008-04-28 10:32:46)
  • 良い話っすね。ふと思ったのですが..かがみは本当に
    一時的に幼児後退してて後半でこなたに強く抱きしめられた
    時に元に戻ったのか..それとも最初から演技だったのか..
    後者だとしたら..かがみ..怖ろしい子っw -- 名無しさん (2008-04-28 03:00:43)
  • なぜか涙が溢れていたー -- 名無しさん (2008-04-28 01:53:07)
  • 癒された。 -- 名無しさん (2008-04-26 19:09:44)

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
記事メニュー
ウィキ募集バナー