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Happy dream comes true

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 お盆も明けて、そろそろ夏休みも終盤に差し掛かったお昼過ぎ。
 今日お姉ちゃんは『お祭り』の最終日と言って朝からお出掛けです。おじさんも一緒かと思っていたら、作家仲間の方達と用事があるとの事で、お昼前に出掛けていきました。
 こんな時はみなみちゃん達と遊んだり勉強会を開いたりしているのですが、今日はそれぞれ用事があったので、自分の部屋でのんびりとしています。

 2時過ぎになって玄関の開く音がしたのでそちらへ向かうと、両手一杯に荷物を抱えたお姉ちゃんが汗だくになって帰ってきていました。
「おー、ゆーちゃん。ただいま~」
「おかえり、お姉ちゃん。すごい荷物だね」
「まぁね。夏一番のお祭りだし。これでもいつもよりは少ないんだよ」
「え? ……それで少ないの?」
「ん。だって萌えエネルギーなら家でいっぱい充電出来るしね」
 そう言って意味ありげな表情でウィンクをするお姉ちゃんの言葉を理解すると、顔が赤くなるのが分かります……
「くふふ。顔赤いけどどーしたのかな~?」
「もぅ……からかわないでよ、お姉ちゃん!」
「まぁまぁ。それだけゆーちゃんの事が好きって事だよ」
 そんな言葉と共に、照れくさくてそっぽを向いてしまった私のほっぺにキスをくれました……

 お姉ちゃんがシャワーを浴びている間におやつの準備をします。今日はアイスティーとクッキーでいいかな?
 シャワーを浴び終わる頃を見計らって居間に持って行くと、お姉ちゃんがタオルを首に掛けて既に座っていました……スポーツブラに短パンという格好で……
「……お姉ちゃん、せめて服着ようよ?」
「いーじゃん、今はゆーちゃんしかいないし。別にお父さんがいても気にしないけどね~」
「わ、私が気にするのっ! それにいくら家族だからっておじさんの前でもダメッ!」
 きっとさっき以上に顔を赤くしながら、思わず大きな声になってしまいました。
 すると手を口に当ててニヤニヤ笑いながら、
「おんや~? もしかして欲情しちゃった?」
「よくっ?! そ、そんなんじゃないってば!」
「んふふふ。まぁそういう事にしておきましょうかね。んじゃちょっと服着てくるよ」
 立ち上がって部屋に戻るお姉ちゃんを見送りながら、持っていたお盆をテーブルに置いて一息つきます。
 お姉ちゃんが言ったように欲情、とまでは言わないけど、かなりドキドキしてたのは間違いなくて、あれ以上からかわれてたら……

 戻ってきたお姉ちゃんは今度はちゃんとタンクトップを着ていました。
「はい、お姉ちゃん。シロップはこっちね」
 何気ない風を装ってお姉ちゃんにお茶とお菓子を出します。
「ありがと、ゆーちゃん。いや~、生き返るねぇ」
「今日も暑かったからね。お姉ちゃんが熱中症とかにならなくてよかったよ」
「まぁ今年は今日だけしか行けなかったから、今までよりは楽だったよ」
 そう言ってストローで紅茶を啜りながら苦笑するお姉ちゃん。
 いつもなら3日間あるはずのお祭りも、他のバイト仲間の都合で今日しか休みが取れなかったみたい。
「昨日一昨日の分はひよりんとパティに頼んでおいたから平気だと思うけど、今度2人にはお礼しとかないとなー」
「ふーん、そうなんだ。えっとコミケだっけ? その前に会った時はひどく疲れてたり心配そうにしてたけど、ひよりちゃん大丈夫かなぁ?」
「んー……大丈夫じゃないかな? 昨日の帰りにパティがお店に来たんで聞いたら、大分フォローに回ってたみたいだしね」
「そっか。じゃあ明後日皆で集まるのは大丈夫そうかな?」
「それなら平気っしょ。明日は1日寝てそうだけど……そういやお父さんは?」
「ほら、夕べ言ってたでしょ? 他の作家さん達と集まるって。出掛ける時には夕方には戻るって言ってたよ」
「ふーむ。するとそれまでは2人っきりって事になるねぇ」
「えっ? あ、うん。そうだけど……」
 多分ほっぺが赤くなってしまった私を見てニヤニヤ笑いながら、私の隣ににじり寄って来ると、
「とぅっ!」
 という掛け声と共に寝転がると、正座していた私の膝に頭を乗せてしまいました。
「ひゃっ! お、お姉ちゃん!?」
「んふふふ。エッチな事されると思った?」
「そ、そんな事は……」
 口篭もる私のほっぺに手を伸ばし、優しく微笑みながら撫でてくれました。
「それでもよかったんだけどね。流石にちょっと疲れちゃったからさ。しばらくこうしてていいかな?」
 こんな風にお姉ちゃんが甘えてくるのはとても珍しく、さっきまで少しモヤモヤした気持ちがあったのに、そんなものは一瞬で消し飛んでしまいました。
 答える代わりに私はお姉ちゃんの頭を優しく撫でてあげると、お姉ちゃんは嬉しそうに微笑んだまま目を閉じ、しばらくすると穏やかな寝息が聞こえ始めました。
「お疲れ様、お姉ちゃん。大好きだよ……」

 ふと微かな物音に気づくと、おじさんがカメラを構えてこちらを見ています。
「あ、お帰りなさい。おじさん……って、あれ? 寝ちゃってたんだ」
「いやぁ、いい物見せてもらったよ。ほら、こんな感じ」
 にっこりと笑いながらカメラを操作して見せてくれた液晶画面には、膝枕をしたまま眠るお姉ちゃんと私がはっきりと映っていました……
 思わず叫びそうになった私の唇におじさんは指を当てて、
「大声出すとこなたが起きちゃうぞ? 悪いけどそのままでいてやってくれないかな?」
 お姉ちゃんをからかういつもの意地悪な笑みではなく、どこまでも穏やかな『父親の顔』で私達を見るおじさんに私は叫びや抗議の言葉を飲み込んで素直に頷きました。
「ありがとう、って俺が言うんじゃないんだろうけどな。こなたの奴、最近ちょっと頑張り過ぎみたいだからさ」
「ええ、そうですね。私の……ううん、私達の為に頑張ってくれてるんですよね、お姉ちゃんは」
「まーな。でもゆーちゃんはあまり気にしなくていいんだぞ? ゆーちゃんはまず学生生活を目一杯楽しむ事。どんな進路に進むのかはわからないけど、卒業したら色々考えるんだって遅くはないんだしね」
 おじさんは一旦言葉を切ってお姉ちゃんのほっぺを突付くと、くすぐったいのか逃げるように体ごと向きを変えて私にしがみついてきました。
「それにこんな風に無防備に甘えるのもゆーちゃんだけだろうしね。ゆーちゃんには本当に感謝してるよ」
 予想外の言葉におじさんを見ると、今度は私の頭を大きな手で撫でてくれました。
「ゆーちゃんと付き合うまでは割と先の事に無関心だったからな。それが今じゃこんなに真剣に物事に取り組むようになって、親としては寂しくはあるけどようやく安心したって感じだよ」
 そう言って笑うとおじさんは立ち上がって、
「さて、今夜は俺が食事を作るよ」
「え? でも、今夜は私が当番ですよ?」
「いやいや、なんだか急にやりたくなっちゃってさ。ゆーちゃんはそのまま抱き枕になっててくれないか?」
 悪戯っぽく笑ってウィンクをするおじさんは、失礼だと思いながらもいつもよりカッコ良く見えました。
「それじゃ買い物行ってくるから、留守番とこなたをよろしくな」
 そんなおじさんを手を振って見送る事しか出来ませんでした。
 しばらくして、再びやって来た眠気に誘われて私はまた眠りの世界に旅立ちました……

 ん~……いい匂いがする
「こなた、ゆーちゃん。ご飯が出来たわよ」
 あれ、女の人の声だ……聞いた事ないけど聞いた事がある、どこか懐かしいような声
 ゆっくりと目を開けると、驚いたゆーちゃんの顔が飛び込んできた
 あぁ、膝枕してもらったまま寝ちゃったんだ
 ゆーちゃん、足痺れちゃってないかな?
「おはよーゆーちゃん。そんな顔してどしたー?」
 私の言葉に無言で正面、私の背後を指差すゆーちゃん。
 体を起こして振り向くと……そのまま固まってしまった。
 そこにはエプロン姿でお鍋を持っている『私』が立っていた。
「やっと起きたわね。本当にこなたはお寝坊さんなんだから」
 『私』がしょうがないと言った表情で苦笑する。
 いや、『私』じゃない。この人は……
「おかーさん?」
 勝手に口が言葉を紡いだ。すると、
「ええ、そうよ。久しぶりね、こなた。それに初めまして、ゆーちゃん」
 持っていたお鍋をテーブルに置くと、私とゆーちゃんを一緒に抱き締めてくれた。
「こんなに立派に育ってくれてありがとう、こなた……寂しい想いをさせてごめんね?」
「そんな事ないよ。お父さんがいたし、ゆきおばさん達やゆい姉さん、ゆーちゃんがいたから。そんなに寂しくなかったよ」
 そう言う私の目尻をお母さんはそっと拭ってくれた。
「あ、あれ? おかしいね。せっかくお母さんに会えたのに、なんで泣いてるんだろ?」
「いいのよ、こなた。泣きたい時は思いっ切り泣いて、すっきりしちゃいましょう?」
 その言葉を聞いて、私の中にあった何かが切れた……
「うわぁぁぁ、お母さん! 会いたかった! ずっとずっと会いたかったよぅ! 寂しかったんだからー!!」
 お母さんにしがみついて声をあげて泣く私を、お母さんは何も言わずただ強く抱き締めたまま優しく頭を撫でてくれていた……

 しばらくしてやっと落ち着いた私は力を抜いてお母さんから離れると、お母さんは涙やら何やらでぐしゃぐしゃになった私の顔を拭いてくれた。
 いつの間にかゆーちゃんは少し離れた所にお父さんと一緒に座っていて、ハンカチで目元を拭っていた。
「ん、もう平気。変なところ見せちゃったね」
「全然おかしくなんてないわよ。自分の気持ちに素直になるのは恥ずかしい事じゃないわ」
 ポンポンと頭に載せられる手は私と同じくらい小さいはずのに、それだけでまるで優しく抱き締められてる気がした。
「良かったね、お姉ちゃん!」
「さて、落ち着いたんならご飯にしようか。今夜は俺とかなたが腕を振るったんだぞ~」
「え~~、お父さんも手伝ったの? どうせならお母さんだけの方が良かったなー」
「なっ!? 何と言う事を!」
「ほら、こなた。そんな風に言わないの。そう君が手伝ってくれないと大変だったのよ?」
「まーお母さんがそう言うなら我慢しましょうかね」
「かなたー。娘が冷たいよ~」
 そう言ってお父さんがお母さんに抱きつく光景がどこか危険なものに見えた事は心の奥底にしまっておいてあげよう。

 生まれて初めてのお母さんの手料理は本当に美味しかった。
 お父さんの料理とどこか似てるのは、きっとお父さんが一生懸命お母さんに習った証だろうね。
 何より、初めての家族一緒の食事はこれ以上ない幸せなものだった。
「そう言えばお父さん」
「んー、なんだ?」
 お父さんとの料理争奪戦を一旦休戦して気になっていた事を尋ねる。
「お母さんがこうしてここにいる事に全然驚かないね?」
「あぁ、だって知ってたからな。かなたが帰ってくるの」
『は?』
 私だけでなく、お母さんから色々料理の事を話していたゆーちゃんまで手と口を止めてお父さんを見る。
「いやだから。かなたが帰ってくるのは知っていた、って」
「ちょ! それどーゆー事さ!?」
「どういうもこういうも。前にかなたから聞いてたし。まぁ正確な日にちは分からなかったけどな」
 ポカンと口を開けたままの私達に向けて言葉を続けるお父さん。
「ほら、卒業式の前の夜。2人とも夢でかなたに会ったって言ってただろ? その時に会って話をしてたんだよ。今度はお盆くらいに来るってな。
 で、お盆には来なかったしコミケもあったし、来るなら今日の夕方か明日くらいかなって思ってたら、さっき買い物に行く時にちょうどかなたが帰ってきて、じゃあ一緒に夕飯作ろう、って。な?」
 と、お父さんがお母さんに話を振ると、お母さんは舌をペロッと出して、
「本当はすぐに会いたかったんだけどね。そう君からこなたとゆーちゃんが仲良くお昼寝してるから、ちょっと驚かせてみようかって」
「おーそうだ。ほら、よく撮れてるだろー」
 そう言って見せてきたデジカメに映っているのは、眠っているゆーちゃんを抱き枕&膝枕に寝る私という微笑ましくも恥ずかしいものだった。
 顔を真っ赤にするゆーちゃんを見ながら、テーブルに突っ伏したままお父さんに声を掛ける。
「何でお母さんに会ったって教えてくれなかったのさ……」
 キョトンとした後、胸を張って誇らしげにこう答えてくれた。
「何でって決まってるだろう。2人をビックリさせたかったから!」
「……お父さん」
「んー、なんだ?」
「今後私にペタペタ引っ付くの禁止」
「はっはっは、何を今更。お前達が付き合い始めてからそんな事はしてないだろう?」
 言われてみれば確かに去年の夏以来くっ付いて来たのは幽霊写真騒動くらいだっけ。
「それに今はかなた分を一杯充填するからな。2、3日はいられるんだろ、かなた?」
「えぇ、今回は1週間いられるわよ」
「おー、そりゃいい。だったら家族4人でどっか出掛けよう。確かこなたもバイトの休みがあったろ? ゆーちゃんも空いてる日ってあったよな?」

 夕飯とお風呂を済ませて、ここはゆーちゃんの部屋。
 ベッドに腰掛ける私にもたれ掛かるゆーちゃんの下ろした髪をゆっくりと梳いてあげる。
「今日は本当にビックリしたね、お姉ちゃん」
「だね~……しっかし、こんな事もあるんだねぇ」
「でも本当に良かったね、お姉ちゃん。かなたさんに会えて」
「ん、まぁね。奇跡は起きないから奇跡だと言うあれは何だったのやら」
「ふふっ。なぁにそれ?」
「んー、何でもないよ。そんな言葉が昔のゲームにあっただけ」
「そうなんだ。でも本当にいいの? せっかくかなたさんがいるのに、一緒に寝たりしないで……」
「あーいいのいいの。今夜くらいはお父さんに譲ってあげなきゃ。寂しかったのはお父さんだって同じなんだし……今頃は2人してニャンニャンしてるんじゃないかなー?」
 そう言ってゆーちゃんをベッドに押し倒すと、ほんのりと頬を染めたゆーちゃんが潤んだ目で見つめてくる。
「ここしばらくご無沙汰だったからねー。ゆーちゃんが大丈夫なら、このまま美味しく食べちゃおうかな?」
「いいよ、お姉ちゃん……私も、して欲しいから」
 目を閉じたゆーちゃんの唇に自分の唇を重ねると、待ち切れないとばかりに唇を割って舌を絡めてくる。
 長い夜は今始まったばかりだ。

 翌朝。
 ゆーちゃんと2人で朝食を作っていると、お父さんとお母さんが手を繋いでやって来た。
「おはよー2人とも」
「おはようございます。おじさん、かなたさん」
「おはよう。こなたにゆーちゃん」
「おはようさん。悪いな、朝ご飯作ってもらっちゃって」
 そんな風に朝の挨拶を交わすと、ふと出来心で爆弾を投下してみたくなった。
 思い立ったが吉日と言う言葉に従って、実行に移す事にする。
「2人とも。昨夜はお楽しみでしたね?」
 するとお母さんは顔をリンゴのように真っ赤にし、お父さんは照れ臭そうにそっぽを向いて鼻の頭を掻き始めた。
 ……BINGO?




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