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本日のオススメ

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「こなた~」
 お昼休みの三年B組教室。お弁当も食べ終わった頃、いつものようにC組からかがみがやってきた。
 その様子がいつもと違っている。いつもはちょっときつめの目つきでツンツンした雰囲気を漂わせている(だがそれがいい)かがみが、今日は妙にご機嫌というか愛想が良いというか、ニコニコと微笑み、まるで遊び相手を見つけた子犬のようだ。
 それを見て、こなたはすぐ、かがみがどういう用件で来たのかピンときた。
「ねえねえこなた、ほらこれ」
 そう言いながらこなたの目の前に差し出されたのは、案の定、一冊の文庫本だった。
「これ今週出た、こなたの好きな人がイラスト描いてるラノベなんだけど、なかなか面白かったわよ。読んでみない?」
 口調は疑問系だが、既に嫁――じゃなくて「読め」という態度だ。オススメのラノベを片手に、ズイズイと寄ってくる。というか顔が近い。めちゃくちゃ近い。ので、
「ん」
「なっ!?」
 近寄るかがみに合わせて、こなたも顔を寄せてみた。危うく唇が触れあうか触れあわないかの所で、かがみが大慌てで身を引いた。
「何すんのよいきなり!? もうちょっとでキ、キス――」
「顔が近かったもので」
「あんたは顔が近かったら誰とでもキスすんのか!?」
「そんなわけないでしょ。誰とでもだなんて」
「そ、そう?」
「せいぜいかがみとつかさとみゆきさんとゆーちゃんぐらいのもんだよ」
「十分に誰とでもだこの馬鹿!」
「まあ冗談はさておいて」
「冗談で人の唇を奪おうとしたのかおのれは……」
 こなたはかがみのオススメしていたラノベを手に取った。そのまま読むか読むまいか、かがみは反応を窺っている。
 こなたはしばし表紙を見つめてから、かがみにそれを返した。
「せっかくだけど遠慮しとくよ」
「……あ、そう」
 努めて淡々とかがみは頷く。が、しょんぼりしているのは明らかだ。犬耳尻尾が付いていれば、さぞかし寂しげ垂れさせていただろう。
「いや、やっぱり読んでみよっかな」
「ホント?」
 途端に喜色満面になるかがみ。ここですかさず、
「ウソ」
「……さてはおちょくってるだろ」
「ばれた?」
「あんたねぇ……!」
「怒らないでよかがみ。ホントに読むから」
 こなたは言葉通りラノベを手にすると、しばらく巻頭のカラーイラストに目を通してから、本文を読み始めた。
「それにしてもかがみも飽きずに勧めに来るねぇ」
「純粋に面白いと思ったから勧めてるだけよ。それに、活字だって漫画やアニメに負けないぐらい面白いんだから。こなたが食わず嫌いしてるのはもったいな――」
「本音は身近に語り合える人が欲しいんでしょ?」
「う……」
 図星を突かれ赤面するかがみ。こなたにとってはラノベの内容より、むしろかがみの反応の方が面白可愛い。
「気持ちは分かるけどね。好きなゲームやアニメについて語り合うのは楽しいし」
「あんたはそういう友達いるの?」
「主にネットで」
「リアルで欲しいとは思わない?」
「んー、いないことはないんだけど……かがみがそうなってくれたら嬉しいなぁ」
「断る」
「ふーん。私の趣味は一切拒否するのに、自分の趣味は押しつけるんだ」
「う……べ、別に押しつけなんてしないわよ」
「でも不公平だと思わない? 私の方は最近、こうしてかがみがオススメする本を、まあ……半分くらいは読んでるわけだし」
 実際は三分の一ほどだが、そのあたりは丼勘定だ。
「私にどうしろって言うのよ。言っとくけど、アダルトゲームの類は絶対やらないからね」
「つまり一般向けのゲームや漫画はOKと」
「まあ……ちょっと触れてみるくらいなら」
「よしっ! そうと決まれば早速かがみにオススメするラインナップの作成だ! 萌え萌えキャラたっぷりのアニメからガチで中毒性の高いゲームまで、かがみを私色に染めてやるぜー!」
「染めんでいい! 第一、そんな沢山できるわけないだろ! 勉強に支障の無い範囲で抑えてくれ」
「むー……それじゃあ、とりあえず軽くPCゲーのシヴィライゼーションから」
「軽くないだろそれ。確か恐ろしく中毒性の高いシミュレーションとかじゃなかったか……?」
「じゃあエイジ・オブ・エンパイヤ」
「だから何でやたら時間かかるのを勧めようとする!? そんならこっちだってグイン・サーガとか勧めるぞ」
「絶対巻数一ケタで挫折する自信があるよ」
「先が長すぎるとさすがにね……だから、あんたも勧めるものは軽めのにしといてよ」


 その日の夜。就寝前のかがみは、自室で本棚と睨めっこしていた。成り行きでこなたとオススメの一品を交換するようなことになったので、次に何を読ませようか考えているのだ。
「うーん……やっぱりラノベが無難かな。イラスト付きなら、一般レーベルのでもいけそうだけど……ミステリーとかは読まないだろうなぁ」
 こなたの前では何だかんだ言いつつ、楽しそうなかがみである。
(あいつ、オタクだけあってハマる時はとことんハマるし、これをきっかけに本をよく読むようになってくれるかも……)
 そうすれば今までかがみには半分以上分からなかったこなたの話題も、少しずつかがみ寄りになるかもしれない。
 そんな期待を胸に抱きつつ、かがみは本棚を物色する。
「あ、これ懐かしいな……また読もうと思ってそのままだっけ……」
(昔読んだ小説を、何年か経って読むとまた違った印象があったりするのよね……一度読んでるはずなのに、びっくりするほど新鮮に感じたり)
 そういうのも本を読む楽しみの一つである。こなたにも是非、そういうことを解ってもらいたい。そして語り合いたい。そしてもっと仲良く――
「いやそこより先は無い!」
 誰にともなく突っ込み、かがみは物色を続ける。
「よし、これにするか」
 色々と迷ったあげく、一般レーベルのファンタジー小説を選んだ。
「こなたの方が何勧めてくるか不安だけど……ま、覚悟しとくか」
 遠足前の小学生というほどではないが、期待の新刊が発売する前日くらいにワクワクしながら、かがみは寝床についた。


 翌日。
「うん、確かに面白かったよー。擬人化萌えにも通じるところがあったし」
「それは良かったです。この作者の小説は、他のもなかなかオススメですよ。例えば――」
 お昼休みの三年B組教室。こなたとみゆきが何やら楽しそうに会話をしている。どうやら小説の話題で盛り上がっているようだ。
 教室に入ってきたばかりのかがみは、何とも言えない表情をしながらそれを横で聞いていた。
「あ、かがみ。どうしてのぼーっとして?」
「いや、別に……何の、話してるの?」
「みゆきさんに借りた小説のこと」
「ふーん……昨日、私が貸したのは、読んだ?」
「ううん、まだ途中」
「そう……ところでみゆき」
「何でしょう?」
「今までもこなたに小説とか勧めてた?」
「ええ。たまにですが。ジャンルに関わらず興味を示されるので、勧め甲斐があります」
「へ~……そうだったんだ、みゆきには」
 会話しながら、かがみの背中から何かしら黒いオーラが立ち上る。属性でいえばツンデレのデレ分が限りなくゼロに近い、そんなオーラだ。
「こなた……あんた今まで私に散々活字嫌いみたいなこと言ってたのは……」
「アニメとか漫画に比べりゃそりゃね。別に嫌いってわけじゃないよ」
「じゃあ何で私が勧めてたのは半分以上断って……」
「みゆきさんに比べたら、勧める頻度とタイミングがねぇ」
「~~っ!」
 いよいよかがみが噴火しそうになる。が、
「でもちゃんと読むようになったのは、やっぱりかがみがしつこく勧めてくれたお陰かな」
「え……?」
 こなたの言葉に、かがみは目を丸くする。黒いオーラがたちまち引っ込んだ。
「で、かがみ。本日のオススメは?」
「オススメって……」
「昨日のこと忘れたの? ちなみに私のオススメはこれだ!」
 そう言ってこなたは一冊の漫画を差し出した。可愛い女の子が表紙の四コマ漫画だ。
「あ、わ、私は、その……これ」
 かがみはおずおずと、昨日選んだ本を渡す。
「うむ確かに。では昨日のも合わせて読ませて貰うよ。かがみもちゃんとそれ読んでね。絶対面白いから」
「わ、分かったわよ。あんたこそちゃんと読みなさいよ! それじゃ」
「あれ? もう行くの?」
 こなたが止める間もなく、かがみはそそくさと教室を出て行った。

 廊下を歩きながら、かがみは反省する。こなたが既に本を読むようになっていたからといって、怒る必要など無かったのだ、と。
(むしろ目指す所に思ったより近かったんだから、喜ぶべきよね……)
 目指す所というのが、具体的にどういう所なのか不明だが。
「よしっ、頑張ろう」
 こなたを真の活字好きにする日まで、かがみの戦いは続く……。



「こなちゃん。ひょっとしてお姉ちゃんがオススメする本よりも、オススメするお姉ちゃんが目当てじゃないの?」
「その通り! ……あれ、つかさいたの?」
「はぅ……最初からいたよぅ」


おわり











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  • 終始ニヨニヨさせていただいた。が

    つかさがあまりにも空気過ぎてカワイソスwwww
    つかさも何か読めよwwwww
    料理本なら・・・こなたも料理やるから・・・ダメかな・・・w -- 名無しさん (2009-11-07 03:08:25)
  • オススメって人によってクセみたいなのが出ますよね。
    みゆきさんは相手に合わせられるくらい幅広く読んでるんだろうなぁ…

    自分はこなかが、かがこな、どっちも好き。
    便宜上こなかがと言っているが、受け責めはその時によりけりで。 -- 名有りさん (2009-11-06 22:34:23)
  • こなたが渡したのって、らき☆すた?

    作者さんGJです!

    ↓たしかにw つかさの空気っぷりは異常www

    自分は、かがこな派です -- 名無しさん (2009-11-05 23:15:50)
  • かがみん 可愛いいなぁ

    ラノベ 以外にも こなた本人好きになればいいのに (自分は生粋のこなかが派なので)



    つかさ マジ 空気
    ゆきちゃん 以上に空気 -- ラグ (2009-01-09 00:41:09)
  • 空気・・・w -- 名無しさん (2009-01-05 10:55:14)
  • かがみがかわいいなー
    ラノベ好きは同志がなかなか見つかりにくいから、
    こなたも好きになってくれると良いねえ。 -- 名無しさん (2009-01-04 22:09:52)
  • いいですね。
    私もラノベ好きなんで
    かがみの気持ちがすごく
    わかります -- 無垢無垢 (2009-01-04 21:26:30)

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