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An affair ~何かが違う日~

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匿名ユーザー

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「あ、こなちゃんだ。……こなちゃん、おはよー」
すがすがしい朝、駐輪場の脇の中庭。いつものように、つかさが声をかける。

私達の前には、見慣れた後姿。青く長い髪が、梅雨の晴れ間のそよ風になびいてる。

でも……なんだろ、いつもと同じ光景のはずなのに、何か違和感が……


……あ、そうか。『アレ』がないんだ。


雨の日も風の日も、病めるときも健やかなる時も……ちょっと違うか。
頭の上にぴょこんと飛び出した、一房のアレが。

振り返ったこなたは、いつものように挨拶を……

「あ、おはよー、かがみちゃん、つかさちゃん」


……へ?


――――――――――――――――――
  An Affair ~何かが違う日~
――――――――――――――――――


―硬直。


「……どしたの、二人とも?」
見上げるように、私たちの顔を覗き込むこなた。
ぱっちりと開いた、くりくりとした瞳。いつもの眠そうな目じゃない。
誰かに似てると思ったら……そうか、従妹のゆたかちゃんにそっくりなんだ。

「ちょ……『どしたの?』はこっちの台詞よ。変なモノでも食べたの?それともまた何かのアニメの影響?」
いつもの調子で、つっけんどんに言い放つ。

「そ、そんなんじゃないよぉ……ひどいょぉ、かがみちゃん」
こなたの表情が歪み、目元に涙が滲む。

「うわ、ちょ、ゴメン!そんなんで泣かないでよ……」

ちょ、調子狂うなぁ……

「じゃあ、一体何があったっていうのよ……いうの?」
ちょっと猫撫で声で言い直す。……また泣き出されたらかなわないしね。

「あ、あのね、あのねっ」
両の拳を口元に当てて、一日の出来事を母親に話す幼児のように、こなた。

「昨日お休みだったでしょ?だからね、久しぶりに床屋さんに行ったの」
「へぇ……あんた、少しは身だしなみに気を使うこともあるん……」
「!……ふぇ……ひど……」
「あ、ウソ!冗談!忘れてっ!」

はぁ……何をかいわんや、だわ。


「そ、それでどうしたの?こなちゃん」
つかさのゆるい語り口が、いい具合にフォローになってくれた。
「うん。……そんでね、理容師さんがてっぺんの毛を切っちゃったの」
いや、床屋なんだから当たり前だろ……といいかけて、口をつぐむ。
「そしたらね、なんか変な気持ちになっちゃって……」

なるほど。それで今日のこのリアクションなわけね。


……って、ちょっと待て。あんたの『アホ毛』は一体どういう機能なのよ!?


 ― × ― ― × ― ― × ― ― × ―


「すっかり遅くなっちゃったわねー」
「そだね~……なんか怖いね……」
学校の帰りに糟日部のゲマズに寄って、私の宿題を写して……とやると、もうこんな時間。夜はもうとっぷりと暮れていた。

ところどころにしか街灯のない、薄暗い公園を駅へと向かう。
私の服の裾をしっかりと掴んで放さない、弱気なこなた。
いつもなら玄関までの見送りだけど、今日はなぜか、そばについていてやらないといけない……そんな気がして。

池の周りの植え込みを回りこんで、噴水のある広場の前に出ようとした、その時。
―私たちは、急に誰かに腕を掴まれて、茂みに引きずりこまれた。


………………


「嫌ぁ……嫌だよぅ……」
「こ、こなたぁっ!」
抑えこまれながら、叫ぶ。

こなたは、その顔を涙でぐしゃぐしゃにして、しゃくり上げてる。
胡坐をかいたもう一人の男の上で軽々と持ち上げられ、両脚がMの字を描いている。
足元に打ち捨てられた、こなたの『お気に入り』の可愛らしいショーツ。

スカートの襞から見え隠れする、まだ幼い『大事なところ』。
こなたの身体がゆっくりと下ろされ、男の禍々しいモノが押し当てられる……

「うぇ……ひっく、怖いよぅ……」
「やめて!やめてぇっ!」
「うるせぇっ!このアマ!」
弾けるような音とともに、私の左頬を衝撃が襲う。……ヒリヒリとした熱い感触と、血の味。

「うぐっ……」
「へっ、気丈な嬢ちゃんだな。……ま、そういうのをヒィヒィ言わせるのが楽しいんだがな」
くっ……こいつ、最低だ……

「う……うぁあぁぁ~ん……」
男のモノが、こなたの秘所を撫で回す。
ぴちゃぴちゃという音に、弱々しい泣き声がかぶる。

「……へへっ、やっぱりガキはこの泣き声がたまんねぇよなぁ」
「ったく、お前のその趣味だけは理解できねぇな」
「うっせぇよ。……あぁ、もう我慢できねぇや。さっさといただくとするか」

片手をわきの下から胸へと回し、こなたの胴をがっちりと抑えこむ。

「やめてぇぇっ!私はどうなってもいいから……あきらめるから、こなただけはっ!」
抑えつけられ身動きの取れない身体をよじって、叫ぶ。

「うっせぇな……こいつの後はお前だ、楽しみにしてな」

もう片手をこなたの肩にかけ、その男は力を込める。
男のモノが、こなたの大事なところをこじ開けようとする。

「ひっ……やだ、やだぁ!やだやだやだぁぁぁ~~っ!助けて、かがみちゃん!お父さぁぁん!!」
「こなたぁぁぁっ!」

……お願い、神様っ!
こなたを……こなたを助けて!!


―突然、強い風が公園を吹き抜けた。

「うわっ!?」
木々を揺らし、電線を鳴らし、看板を叩き、私たちの髪を巻き上げて……


……ほどなく、風が止んだ。
めちゃくちゃに煽られたこなたの髪が、再びまとまる。

―でも、ひと房だけが、重力に負けずに立ち上がった。
「?」の形にも似た、その姿は……

恐怖に見開かれていたこなたの目が、すぅっと細くなった。
いつものアホ毛、いつもの半眼。……いつもの、こなた。

「むふ♪ゴーカンとはお兄さんも若いねぇ」
肩越しに後ろを振り向くと、自らを貫こうとしている男を見つめ、にんまりと笑う。
「……なんだァ?」
さっきまでメソメソ泣いていた『ガキ』の、突然の豹変。呆気に取られ、間抜けな表情を晒す。

―次の瞬間。

「さわんなっ!」
鋭い声。こなたは身を僅かにひねり、後ろに向かって肘鉄を一発。
こなたの細い肘が、男の鳩尾に深々とめり込んでいた。

「………ぐ・」
声を上げることもできず、男が崩折れる。
その胸板を足場にして、こなたが跳んだ。

「たりゃぁっ!」
「……っ!このガキぃっ!」
男が私を放り出して体勢を立て直すのと、こなたがその懐に飛び込んだのは、ほとんど同時だった。

掴みかかろうとする男の腕をかわして、
「ふんっ!」
低い位置から、右アッパーを一発。

「ぐぶっ・」
鳩尾に一発もらった男の膝が、がくん、と崩れる。
間髪入れず、反対側に引いた、こなたの左拳が疾(はし)った。

「真・昇龍拳っっ!!!」

顎を跳ね上げる拳、後を追うように肘。そして鳩尾に食い込む膝。
見事な多段ヒット。……つか、まさかそれをリアルで決めるヤツがいるとは。


舞い上がっていくこなたと、のけぞり吹っ飛ばされていく男の姿が、やけにスローモーションに見える。
二人の背後に、この辺では有名なスポーツ用品店の看板が見えた。

オレンジ色の文字で、「YOU WIN」。
……って、ハマりすぎだろそれ。


 ― × ― ― × ― ― × ― ― × ―


少ないとはいえ人影のある、駅近くの大通り。
ここまで来れば人の目もあるし、もう安心だ。

「……はぁ、はぁ………はぁっ。……ここまで来れば、大丈夫、よね」
ドキドキと脈打つ心臓、滝のように流れる汗。
正直しんどいけど、こうやって無事に戻ってこられたんだな、と思うと、息苦しさまでもが少し嬉しい。

横を見ると、こなたも荒い息をついている。私ほどじゃないけど。
「はぁ、はぁ……あ、ぱんつ忘れてきちゃった」
「そういう問題じゃないだろ、つか声に出すなよそんなコト」
「まあいっか、あれが動かぬ証拠となって、あわれ暴漢ご一行さまはお縄頂戴!というわけだよ、かがみん」

アホ毛をぴんぴんと動かして、のんびりとした口調。……うん、いつものこなただ。

「ていうか、あんたは本っ当マイペースよね……私なんて、」
つい数10分前の、あの出来事を思い出したら。

―急に、身体の震えが止まらなくなった。

「……かがみ?」
「……ぅ……な、何でもないわよっ!」

安堵の涙がこぼれそうになるのを、ぐっとこらえる。
こなたの前で泣いたりしたら、後でどう言いふらされるか。……堪(こら)えろ、堪えなさいよ私。

そんな私の手を、こなたが取った。
「かがみ、……ほら」
私の手を握り締めた、こなたの手は、

―私と同じで、小刻みに震えていた。

「……いやー、さすがにリアルで体験すると、かなり……クるもんだねぇ」
まいったネ、といった調子で苦笑い。

でも、その目尻には、私と同じ、光るものがあった。

私は、思わずこなたに抱きついた。
少しの間の後……こなたも、私を抱き締め返す。
もう、人の目なんてかまっている余裕は、なかった。

「……こなた……よかった……よかったね……」
「うん……かがみが無事で……ホント、よかったよ……」


公園のほうで、パトカーのサイレンの音がふたつ聞こえた……


 ― × ― ― × ― ― × ― ― × ―


あの忌まわしい事件から数日後。私たちはいつものように、放課後の中庭を歩いてる。
三日ぶりに登校してきた学校。クラスメートの声がこんなにも安心させてくれるものだなんて、今まで気づかなかった。

「犯人が逮捕されたそうですね。……本当によかったです、大事に至らなくて……」
「十分大事だけどね。引っぱたかれて口ん中切れるし、制服はボロボロだし……」
「あっ、す、すみません!そういう意味ではなくて、取り返しのつかない最悪のケースに至らなくて、という……」
あわててフォローするみゆきさん。くすっと笑う私。
このあたりが、こなたに『天然系』といわれる所以なのかもね。

「私なんて、お気に入りのぱんつなくしちゃったよ~」
「!ぱ、ぱん……っ」
つかさの顔が、ボッ、と音を立てて赤くなる。
「だから、それを大声で言うなっ」
「んにぃー☆」
頭に手をやって、ちょろっと舌を出すこなた。

……一見、大したことでもなかったかのように振舞ってるこなた。
でも、私はゆたかちゃんから聞いた。
こなたもおじさんもあの後、いわゆる、その、りょ……『凌辱系』のエロゲーを全部捨ててしまった、ということを。

「♪私のぱ・ん・つ・返してよね~♪」
「あーもうっ!やめいっつーの!」
「お~、さすが本場モノの『あーもうっ!』は違うねぇ」

こなたの心の傷だって、浅くはないはず。
でも、こうやっていつものように……ううん、いつも以上にハイテンションに振舞う、
そんなこなたを見ていたら……

「こなたっ!」
「ほぇ?」
きょとん、とした顔。
「こ……これから何があっても、私が守ってあげるからっ!」


真っ赤になって硬直するつかさとみゆきを放置して、私はこなたを……力いっぱい抱きしめた。
「おほわっ!?突然デレモード発動ですか、かがみん!?」


― Fin. ―



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コメント:
  • よかったよ。らんらんるー☆ -- ドナルド (2011-03-31 19:54:34)
  • おもしろかったよ! -- 名無しさん (2009-02-14 15:31:42)



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